2008年11月26日
「スポーツイベントとチケッティング戦略」その1 ~観客動員に関する素朴な疑問
数万人規模のスタジアム。そこは、2万、3万、4万人という観客で埋め尽くされる。一方、5,000人にも満たないアリーナ。そこは、半分以上が空席の少し寂しい空気が漂っている。この差は何なのか?。 チケット価格はそれほどの差はありません。しかし、万単位のスタジアムのキャパシティの中には、やはり万単位の観客が集まります。少なくとも、1万前後は・・・。それが、インドアスポーツでは、スタジアムのキャパシティの1/10以下のアリーナですら、空席が目立ってしまう。これは、単にスポーツとしてのコンテンツの力の差だけなのでしょうか?。つまり、観客動員の力の差だけなのでしょうか?。私は、ほとんどが後者の立場で仕事をしてきた人間ですので、プロ野球やJリーグのスタジアムの観客席を見て、常に単なる素朴な疑問としてその様子を眺めていました。人気の差、と言えば簡単ですが、本当にそれだけなのかどうか?。 チケットの価格はほぼ同じでも、バスケットボールやバレーボールのトップリーグの試合には、3,000~4,000のキャパシティですら満員になることは稀です。エンタテイメント華やかなバレーボールの国際大会は、テレビパワーという強力な飛び道具があり、これとの比較は些かレベルが違うとは思いますが、この華やかなテレビイベントも、1万人にも満たないアリーナのキャパシティを、連日満員にすることは至難の業です。観客動員力が落ちてきたといわれているサッカーの日本代表の試合でも、最低だった時にでも2万人を切ることはありません。その線を割っていたら大事になっていたことでしょう。それに比べて、バレーボールですら、国際試合でも先の通りに満員でも1万人を割る数字です。アリーナとスタジアムでは収容能力が違うから、というのは正しい考え方なのでしょうか?。 かつて携わっていたNBAの公式戦を開催した際に、1994年までは、来日するチームへのホームゲーム入場料収入の保証額は、2チーム合計で凡そ2億円弱程度でした。それが、1996年には、ある程度の人気チームだったこともあって、大きな入場料収入を稼いでおり、前回の1.5倍の3億円近くの金額になりました。そこで決断したことは、試合会場を東京ドームにすることでした。前回までの横浜アリーナは、約14,000人。それが、約4万人のキャパシティに挑戦しなければならなくなったのです。支出コストの増加に対する収入確保、という観点からの会場変更ですから、是が非でも満員にしなければなりません。しかし、キャパシティにして約3倍弱の規模です。2日間で8万人を動員する。そして、チケット価格の設定は、収入確保という視点からの計算で、巨人戦よりも高い価格帯に設定しなければなりませんでした。安い価格で多くのファンに見てもらう、というキレイ事は通用しなかったのです。巨人戦ではほぼ満員になる状態があるのだから、観客が来ない、という理屈にはならない。では、どうしたら多くの観客に来てもらえるようにできるのか?。結果的には満員になりましたが、大きな要因は、アメリカプロスポーツの公式戦が日本で見られる、という希少価値や、プロリーグとしてバスケットボールでは世界トップの実力が認知されていたことだと解釈しています。つまり、単なるバスケットボールファンを集めたのではなく、プロスポーツとしての魅力を分かっている、また、娯楽としてプロスポーツの観戦の魅力を知っている人たちが、世界的なエンタテイメントを求めてやってきた、ということなのだと思います。エンタテイメントとは、単なる芸術的なものだけを指すのではなく、スポーツのパフォーマンスレベルをも含んだ意味です。 もし、どんなにチケットを買いたい人が潜在的にいたとしても、現実的にアリーナ施設の構造的な限界から、スタジアム施設のようなキャパシティを用意することは不可能です。そこで、NBAなどでは、チケット価格を高く設定しています。これは、単なる儲けを狙った短絡的なものではなく、4万人のスタジアムのキャパシティに対して、2万人のアリーナは、満員に出来る潜在力があれば、倍の価値を持つ、ということです。ダフ屋行為でもありますが、チケットが完売になったイベントでは、間違いなくチケットの裏取引ではその価格が高騰します。まさに、需給原理です。このことから考えると、アリーナが小さいから観客動員数は少ないんだ、という理屈はどこにもなく、逆に、小さいからこそ希少価値がある、というマーケティングが出来なければなりません。しかし、現実は、チケット価格がスタジアムイベントと同じかそれ以下でも満員にならないのです。理由は幾つか考えられますが、コンテンツバリューの程度問題が、その最大の理由だと私は考えます。そして、それは、プロ球団でない限り、経営的な視点で解決できる問題ではありません。つまり、企業スポーツでは解決できない。プロとしての組織の必要性がそこにはある、ということです。もちろん、プロになればすべては解決するわけではなく、プロ球団としての経営手腕が発揮される場が作られる、というビジネスとしての環境の問題です。 プロ野球やJリークも、ただ何もせずにいれば、アリーナ規模の収容人数ですらクリアできないかもしれません。しかし、プロ球団としての経営もあり、そしてプロリーグとしての興行的価値も存在します。人を動かす力が生まれている、ということだと思います。もし、インドアスポーツでもプロとしての経営が取り入られれば、間違いなく可能性は生まれ、やがて現実のものとして実績が生まれてくることになるでしょう。事実、bjリーグには、少なからず兆しはあります。しかし、bjリーグの課題は、プロ野球やJリーグのように、球団の一つ一つも然り、リーグは当然のことながら、本当のプロリーグとしての基盤が出来上がるのには、まだまだ時間が掛かる、ということでしょう。いまは、そのプロセスの真っ只中にある、ということだと思います。その点から考えると、bjリーグには、長い目で成功して欲しいですし、インドアプロスポーツとしての良い日本のモデルにもなって欲しい気がします。
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posted by umekichihouse |05:05 |
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