2008年11月21日
ホームアドバンテージとイベントオペレーション
“ホーム・アンド・アウェイ”という方式があるのは、ホームでの戦いに“地の利”があることを認めていることだと思います。ただし、ホームで戦う選手には、大応援によって鼓舞されてより強い力が生まれる一方で、逆に、勝たなければならない、というプレッシャーも生じさせるでしょう。選手個々の性格やコンセントレーションの仕方によって一概には言えませんが、逆に、アウェイの怒号が飛び交う中で、勝つためのプレッシャーから開放されて伸び伸びとプレーできる選手がいるかもしれません。期待というプレッシャーと、精神的に追い詰めようとするプレッシャーは、どちらが勝るのか?。何れにしても、応援するサポーターの立場に立てば、“ホーム・アンド・アウェイ”という方式は、ファンの熱狂を加熱するための格好の装置なのだと思います。そのことからすると、試合を行う選手たちには、ホームアドバンテージという利点はあまり関係なく、お互いのサポーター同士の熱狂する仕掛けとしての楽しみ方、それがサポーターにとってのホームアドバンテージになっている、ということなのかもしれません。 国際大会におけるホームアドバンテージについては、前回も取り上げましたが、ここではイベントそのものを運営する立場から、ホームアドバンテージを検証してみたいと思います。結論から言うと、ホームアドバンテージを作り出すために自国開催を望む場合が多い、ということです。先に述べたように、勝たなければならない、というプレッシャーは、国を代表する選手たちには、通常のリーグ以上のレベルで襲いかかることでしょう。しかし、そのプレッシャー以上の利点が、自国開催の国際試合にはあります。日本でのことではありませんが、アジアの国々で行われる世界への予選の場では、信じられないことが当たり前のように行われるのです。 ・ホテルに到着して練習会場を確認すると、車でも1時間以上離れた場所を言われた。 ・当日の朝に突然試合のスケジュールが変更された。 ・練習スケジュールを予約していたのに、勝手に変更されていた、・・・などなど。 実際に、私が関わった大会の中でも、他の国の人が聞いたら間違いなく怒り出すような不公平がいくつもありました。前回取り上げた女子バスケットボールのアテネ五輪予選では、毎日のように、メインアリーナでの日本チームの練習が朝一番に行われました。こうしたレベルの試合では、大会直前にのみメインアリーナでの公式練習は割り当てられますが、期間中の試合日の当日にメインアリーナでの練習を公に許可するはずがありません。それを知っていても、我々は日本チームのために最善の準備を行います。それが、ホーム開催の強みのひとつでもあります。後で、中国の関係者が気付いてクレームを入れたそうですが、中国でも自国開催の際には平気でやっているのです。ロッカールームを最も設備の整っていて入退場に便利な位置にあるものを日本チームのために割り当てたり、移動用のバスの配車を優先して割り当てたり、チームのスタッフが何か必要なものがあれば直ぐに届けたり、と、大会運営という計画の柱の隣には、日本チームのサポートをすべてにおいて優先する、という別の計画の柱がキチンと設定されているものです。もちろん、運営マニュアルの何処を見てもそんなことは書いていませんが・・・。 オリンピックで、野球の日本代表が選手村に入らず、別のホテルに宿泊していたことに対してJOCの役員の方が意見を言っていたようですが、単一競技による日本での国際大会開催の場合に、日本チームだけを別のホテルに宿泊させることも当たり前のように行います。他国の選手たちとの接触云々というところではなく、食事や選手たちの部屋の割り当てなども、自由に計画できるところに利点があるからです。選手たちは通常はツインルームで2人づつの部屋割りが当然ですが、大会期間が長くなると一人づつの部屋割りの方が選手もリラックスできる場合があります。大会であっても住環境というのはコンディションに大きく影響するからです。選手個々が好きな食べ物を調達しやすいのも、日本開催のメリットですね。 オリンピックの予選などになると、グループ分け等の組み合わせ抽選に、国際連盟も同意の上で、開催国チームに有利になるような操作が行われることは暗黙の内に了解されているものです。もちろん、明らかな不公平はできませんが、対戦国との相性などにより、微妙な操作があります。世界へのキップが限られている場合は、如何に有利な条件で上に勝ち進むかがカギになりますから、ここでもホームとしての利点が発揮されるのです。北京五輪への女子バスケットボール世界最終予選は、当初は日本開催で内定していました。FIBA、国際バスケットボール連盟の視察も行い、後は正式発表を待つばかりでしたが、残念ながら開催を辞退する結果となっています。開催地はスペインのマドリッド。ここでも日本チームは善戦しましたが、最後の1枚のキップに手は届きませんでした。もし、日本で開催していたらどうなっていたか・・・。今頃言っても遅いのですが、それだけ日本開催による利点は間違いなくあるのです。そして残念ついでに、男子バスケットボールは、昨年それを活かせなかった、ということです。 サッカーでは、ヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグなどで、ホーム・アンド・アウェイのアウェイでの得点が2倍になって計算されるシステムが採用されています。ホームで3-1で勝っても、アウェイで0-2で敗れると、勝敗的には1勝1敗ですが、得点計算では3-4となり、逆転勝利という結果になります。アウェイで勝つことの難しさを前提としたハンディキャップ的な意味合いと、“ホーム・アンド・アウェイ”という方式の面白さを得点システムに取り入れたという意味合いがあるのだと思いますが、このことはホームアドバンテージという前提から考えるべき事ではないでしょう。これは、2戦目にも逆転の可能性を残し、試合を盛り上げるための興行的な施策なのだと、私は思います。
posted by umekichihouse |05:36 |
イベントオペレーション |
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