2008年11月09日
「欧州の現状、そして日本バスケットボールの行く末」その5 ~日本の課題はどこにあるのか①
今年からプロバスケットボールの独立リーグ、bjリーグに参戦している滋賀レイクスターズのヘッドコーチ、ロバート・ピアース氏は、かつてJBLのチームはもちろんのこと、代表チームのコーチを務めた経歴もあり、また、NBAクリーブランド・キャバリアーズではアジア地区担当のスカウトを務めていたこともあります。丁度、2006年に日本で開催された世界選手権の時で、その当時のインタビュー記事を見ると、彼は日本のバスケットボールの現状に関して、このように述べています。 「例えば、2mの選手は、日本ではセンターを務めている。それ以外のポジションでプレーするチャンスはほとんどない。選手の先のキャリアを考えて、より高いステージへ進もうとしている選手に対しては、日頃からどのポジションで練習すべきか、ということを考えなければならない。もちろん、チーム事情もあるだろうが、チャレンジする場は用意してあげるべきだと思う」。 学校という教育システムが、勉強だけではなく、スポーツ活動の拠点にもなっている日本では、まず中学や高校のときから、そのチームが勝つためのチーム編成の中でプレーをさせられます。バスケットボールの場合、昔から、背の高い選手はセンターであることは当然でした。全国から選手をスカウトしている強豪といわれるチームでは、その背の高い選手をキーパーツとしてチームを組み立てていきます。最近では、マラソンの如く、アフリカ各国からの留学生を取っている高校も珍しくはなくなりました。強ければ強いチームほど、全国で勝つことが宿命付けられ、そのチームの中でのみの環境では強化されたとしても、その選手がその上のステージでどのように伸びていくのか、という視点はあまりないように感じられます。中学であっても、高校であっても、有力選手が集まる強豪といわれるチームは、選手個々の立場に立った育成よりも、チームとしての勝利が先に立っている、ということです。このことは、前回までのヨーロッパの現状と比較すると、如何に日本は、選手の育成という観点で世界に遅れをとっているのか、ということを明解に示すものだと思います。ただし、中学では中体連が、高校では高体連が、体育という観点からスポーツを捉えるため、有望な選手たちが、彼ら自身の人生の中にバスケットボール選手としてのキャリアを見出す余地を見出せない状況を作り出しているのかもしれません。プロの世界が登場し始めたのは最近のことですから、これからの課題でもあるのですが、世界で勝てるチーム作りをいくら叫んでも、選手の日常の環境が変わらなければ、全く愚の骨頂であることは明白です。ヨーロッパの実情は、そのことを露骨に示したものだと思います。 先のロバート・ピアース氏は、日本の指導者についても以下のように言及しています。 「コーチは、チームのことだけじゃなくて、選手の将来も考えるべきじゃないか。私がコーチを務めるアメリカ・バスケットボール・アカデミー(USBA)では、208cmの中国人選手がいるが、試合ではセンターだが、練習では常にいろいろなポジションを学んでいる。日本では、そうしたことを考えるのは大学を卒業してからだ。その意味で、日本は中国に4年遅れている。そのうち、198cmの選手がチームではセンターだけど、ポイントガードに挑戦したい、と言ってくるかもしれない。指導者や競技団体は、そうした選手をきちんとサポートしてあげるようにならなければならない。それがコーチングであり、指導者のあり方だと思う」。 USBAとは、アメリカにある全寮制のバスケットスクールで、ここには中国からも20人以上の選手が送り込まれているようです。中には、中国のU-18代表選手も多数含まれているとのことで、中国でも新しい選手育成の手法が取り入れられてきたのでしょう。トップチームである中国代表のヘッドコーチは、前回も取り上げたリトアニア出身のジョナス・ガズラウスカス氏で、彼は、2001年までリトアニア代表チームも指揮しており、シドニー五輪銅メダルの功労者でもあります。アメリカからも、そしてヨーロッパからも、世界のバスケットボールをどんどん吸収しようとする積極的な姿勢に、いまの中国の強さの一端を垣間見る気がします。 このテーマの最初にも書きましたが、元トヨタ自動車のヘッドコーチを務め、現在ドイツのプロチームでコーチをしているジョン・パトリック氏も言っている通り、高校時代や大学時代にチームが勝つことだけを追い求められてきた選手の多くは、基礎の技術や体力がキチンと身についていない選手が、日本には多かったようです(敢えて現在に関しては言及しませんが・・・。)。2006年の世界選手権に出場した日本代表を率いたジェリコ・パフリセビッチ監督も、あまりに基礎練習が多すぎる代表合宿への関係者からの批判に対して、こう言っていました。「基礎技術や基礎体力からして日本はできていないから、代表練習でもここから始めないといけない」。 日本が諸外国の強豪と対戦する時、常に話題になることは体格差についてでした。しかし、2006年の世界選手権で来日していた多くのバスケットホール専門記者のコラムで、日本選手のサイズの問題以前に、基礎技術のレベルの低さを指摘する内容を見ることが出来ました。本来、そうした基礎を学ぶ、身に付ける時期に、身長が高い選手たちはどんどん試合に起用されます。チームの勝利を指導者が求めているからだと思います。その場に立つ指導者の立場からすれば、仕方のないことかもしれません。しかし、その選手の将来を考える余裕というか、環境的なものを作らない限り、日本は堂々巡りのまま、アジアでも取り残されていくような気がします。 滋賀レイクスターズも、ようやく勝利を挙げ、これからがファーストシーズンの勝負の時になります。ロバート・ピアース氏には、いまの日本の選手たちがどのように映っているのか、気になるところです。
posted by umekichihouse |06:37 |
バスケットボール |
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「欧州の現状、そして日本バスケットボールの行く末」その5 ~日本の課題はどこにあるのか①
いつも興味深く拝見させていただいています。
宮城県の明成高校は全員がオールラウンドな技術の習得から練習しているそうです。
実際に見た試合では、いつもはフォワードを務めている188㎝の選手が県選手権(AJ予選)の決勝という大切な試合で、大学生相手にPGをする場面がありました。
練習だけでなく、公式戦でもチャレンジしているのだと、うれしくなりましたね。
(その試合は3点差で負けたけれど、今日のAJ東北予選では優勝しました!)
洛南の比江島選手もU-18ではPGをやったと聞きました。
これからは世界を目指した指導も増えてくると思います。
posted by 東北より | 2008-11-10 00:54


