2008年11月06日

「欧州の現状、そして日本バスケットボールの行く末」その2 ~欧州バスケットボール事情②

日本では、現在、日本バスケットボール協会傘下の日本バスケットボールリーグ、JBLと、独立プロリーグのbjリーグの2つのリーグがあります。各種報道を賑わしたように、プロを志向する一部チームのJBL脱退から始まった分裂は、まだまだ市場としては小さな日本のバスケットボール界の中で、選手たちはもちろんのこと、ファンとしても複雑な思いを抱いている人は多いのではないでしょうか?。それぞれに経営のポリシーはあるし、それぞれに目指す方向性もあるようです。しかし、ビジネス、そしてファンを含めた底辺層の拡大という視点からは、言葉は悪いですが、何か無駄をしているような気がしているのは、私だけでしょうか?。

そして、実は、ヨーロッパでも、リーグの分裂騒動は起こっていました。

1990年代、国際バスケットボール連盟、FIBAは、サッカーと同様に、欧州各国クラブによるヨーロッパチャンピオンズカップを開催していました。1991年には、ヨーロッパの各国プロリーグの振興と発展を目的に、イタリア、スペイン、フランスの各リーグによりULEBが設立されます。“U”とはUNIONの頭文字ですので、当初は連合組合的な意味合いだったのでしょう。その後、1996年からULEBへの加盟リーグが徐々に拡大していき、独自のリーグ運営を模索し始めます。それまでは、ULEBは、直接的にはFIBAとの関係性はあまりなかったようです。組織が拡大したULEBは、2000年にFIBAから正式に独立し、独自にユーロリーグを立ち上げることになります。この時、FIBAにはユーロリーグの商標権がなく、ULEBが引き継ぐ形になってしまいました。ここでFIBAは、これまた独自にスープロリーグ(Suproleague)を立ち上げることになるわけです。ここに2つの欧州全域を対象としたリーグが誕生し、各国リーグに所属するクラブは、混乱にさらされることになりました。この時、FIBAは、スープロリーグの立ち上げと同時に、以下の決定を下します。

・ユーロリーグ(ULEB)に参加するクラブは、FIBA主催のクラブの大会に参加できない。
・各国協会には、国内リーグに関する規定を再定義することを要求する。
・ユーロリーグ(ULEB)で審判を行った人は、FIBAおよび各国協会主催大会で審判することが出来ない。

まさに、JBLに加えてとbjリーグが誕生した時点での措置と似ています。しかし、それぞれ1シーズン終了した時点で、直ぐ様、FIBAとULEBは混乱収拾のための協議を開始し、次のシーズンからは両リーグを統合すること、それまでFIBAが主催していた2つの大会(Korac CupおよびSaporta Cup)を2002年で終了させる決定をしました。そして、これまた統合する形で、ULEBカップを新たに創設したのです。ちなみに、Saporta Cupとは、サッカーで言うところのUEFAカップウィナーズカップと同じような大会で、各国リーグのカップ戦の優勝者によって開催されていた大会でした。よって、ULEBカップは、各国カップ戦優勝クラブと、ユーロリーグに出場するクラブに準じる成績のクラブに出場権か与えられる大会となったのです。

更に、2005年には、FIBA、正確にはFIBAヨーロッパ(2002年より組織改変によりFIBAヨーロッパが欧州地区を統括することになる)は、ULEBが運営するユーロリーグをFIBA公認大会として認可して、ルールをすべてFIBAルールにすることを、FIBAヨーロッパとULEBは決めたのです。それまでのユーロリーグのルールは、NBAの一部のルールを採用するなど、独自のルールで行われていました。これで、FIBAヨーロッパは、各国代表が欧州チャンピオンを決するユーロバスケット(欧州選手権)、そして女子のユーロリーグ、更に、U-20,U-18,U-16などの欧州選手権と供に、クラブに関しては、2002年に始まり、2005年にFIBAユーロカップと名称を変更した大会と、ULEBカップの第1次、第2次の予選大会の主催を担うことになりました。つまり、ULEBは、ユーロリーグと、ULEBカップのレギュラーシーズンの主催をするということになったのです。

更に、今年2008年7月には、それまでの混乱の収束のまとめとして、「ユーロリーグ」はそのままに、ULEBカップを「ユーロカップ」に、そして、FIBAユーロカップを「ユーロチャレンジ」と正式名称を発表しています。これで、ヨーロッパの欧州全域を対象としたクラブの大会は、各国上位クラブのみを対象とする「ユーロリーグ」、それに準ずる成績のクラブおよび各国リーグのカップ戦勝者を対象とした「ユーロカップ」、そしてヨーロッパ全クラブが出場可能な「ユーロチャレンジ」の3つに整理統合されたのです。

それぞれの大会のフォーマットを見てみると、下記のようになります。

<ユーロリーグ Euroleague>
・主催: ULEB  ※ユーロリーグすべてのステージ
・出場クラブ: 24クラブ
(各国リーグ上位クラブ、および前年のユーロカップのチャンピオン)
※ユーロカップの優勝クラブがイタリア、スペイン、フランスのULEB創設時のリーグのクラブである場合は、2位のクラブでも出場権が得られる。
<レギュラーシーズン>
・試合方式: 6クラブづつ4グループに分かれてのホーム&アウェーで2戦づつ戦う
(上位4クラブづつの計16クラブが「トップ16」に進出)
<トップ16>
・試合方式: 4クラブづつ4グループに分かれてのホーム&アウェーで2戦づつ戦う
(上位2クラブづつの計8クラブが「クォーターファイナル」に進出)
<クォーターファイナル>
・試合方式: 各対戦を5回戦で戦う
(3戦先勝した4クラブが「ファイナルフォー」へ進出)
<ファイナルフォー>
・試合方式: ひとつの開催地でトーナメント方式によるノックダウン対戦
(3位決定戦も行う)

<ユーロカップ EuroCup>
<第1次予選>
・主催: FIBAヨーロッパ
・出場クラブ: 16クラブ
(ユーロリーグおよびレギュラーシーズンへのストレートインが認められた8クラブ以下のクラブで、シードにならないクラブ)
※上位8クラブが第2次予選へ進出(敗退した8クラブは、ユーロチャレンジへ回る)
<第2次予選>
・主催: FIBAヨーロッパ
・出場クラブ: 16クラブ
(第1次予選をシードされた8クラブと第1次予選勝ち上がり8クラブ)
※上位8クラブがレギュラーシーズンへ進出(敗退した8クラブは、ユーロチャレンジへ回る)
<レギュラーシーズン>
・主催: ULEB ※以降はすべてULEBの主催となる
・出場クラブ: 32クラブ
(各国リーグカップ戦優勝クラブ、およびユーロリーグ出場クラブ以外の各国リーグ上位クラブの24クラブ、そして予選勝ち上がり8クラブ)
・試合方式: 4クラブづつ8グループに分かれてのホーム&アウェーで2戦づつ戦う
(上位2クラブづつの計16クラブが「ラスト16」に進出)
<ラスト16>
・試合方式: 4クラブづつ4グループに分かれてのホーム&アウェーで2戦づつ戦う
(上位2クラブづつの計8クラブが「ファイナル8」に進出)
<ファイナル8>
・試合方式: ひとつの開催地でトーナメント方式によるノックダウン対戦
※優勝クラブが翌年のユーロリーグへの出場権を得られる
(優勝クラブがイタリア、スペイン、フランスのリーグ所属のクラブの場合は、2位のクラブもユーロリーグ出場権を得ることが出来る。)

<ユーロチャレンジ EuroChallenge>
・主催: FIBAヨーロッパ ※ユーロチャレンジのすべてのステージ
・出場クラブ: 32クラブ
     ※ストレートに参加できる8クラブ
     ※ユーロカップ予選敗退クラブ 計16クラブ
     ※ユーロチャレンジ独自の予選勝ち上がり8クラブ
<レギュラーシーズン>
・試合方式: 4クラブづつ8グループに分かれてのホーム&アウェーで2戦づつ戦う
(上位2クラブづつの計16クラブが「トップ16」に進出)
<トップ16>
・試合方式: 4クラブづつ4グループに分かれてのホーム&アウェーで2戦づつ戦う
(上位2クラブづつの計8クラブが「クォーターファイナル」に進出)
<クォーターファイナル>
・試合方式: 各対戦を3回戦で戦う
(2戦先勝した4クラブが「ファイナルフォー」へ進出)
<ファイナルフォー>
・試合方式: ひとつの開催地でトーナメント方式によるノックダウン対戦
(3位決定戦および5位決定戦も行う)
※上位2クラブが翌年のユーロカップへ推薦される。

以上のように、各国リーグでの成績を元にして、最高峰のユーロリーグから、ユーロカップ、ユーロチャレンジと、そしてそのまた予選ラウンドと、膨大のピラミッドを作りながらヨーロッパのクラブリーグは毎年動いている、という分けです。ユーロリーグでは、最大で23試合程度、ユーロチャレンジでも17試合を戦い、その予選ラウンドから勝ち上がってくるクラブは、更に10試合前後を行うことになります。大きな底辺があるからこそ、ユーロリーグの価値も高まるのでしょうが、国内リーグも含めると、50試合から60試合もの試合数をシーズン中の7ヶ月あまりの間に行っているヨーロッパのプロリーグの選手たちのタフさ加減には、本当に改めて驚かされます。そして長いシーズンの後は、ナショナルチームでの活動が待っているわけですから、更に凄いです。日本の倍から3倍近い試合数をこなしているこのプレー環境こそ、ヨーロッパの底力を作り上げているとしか思えません。まさに、強いものだけが頂点に立てる、という図式そのものです。

ちなみに、注目の18歳、スペインのリッキー・ルビオが所属する「DKV Joventut(ホベントュート・バダローナ)」は、昨シーズン、当時のULEBカップ(現ユーロカップ)を制し、今季のユーロリーグ出場権を得ています。スペイン国内リーグのカップ戦を制しての出場だったようですが、FIBAユーロカップ(現ユーロチャレンジ)で2006年に優勝した他には、2000年以降のタイトルがなく、そうした意味からも、リッキー・ルビオは救世主になったのかもしれません。ホベントュート・バダローナは、登録選手13名の内、ルビオの18歳は最年少ですが、19歳2名、20歳3名がいる若いチームなのです。ユーロリーグは1994年に一度制していますが、現在のような体制以前の時代ですから、新しい歴史を刻むためにも、今後の戦いが楽しみです。またまたちなみに、先程の若い5名の選手の内、2人はスペイン人ですが、1人はコンゴから、1人はロンドン五輪を控えるイギリスから、もう1人はオランダからの選手です。各国とも、ヨーロッパは若い選手たちの成長には著しいものがありますね。

次に、ユーロリーグに出場している各クラブの財政状態を覗いてみたいと思います。

バスケットボールチームに限った年間予算として、WEBなどで調べられる範囲でのみ比較してみると、昨年のチャンピオンであるロシアのCSKAモスクワが約50億円台でダントツのようです。また、ファイナルフォー常連のギリシャのパナシナイコスも40億円台の前半程度らしいです。恐らく、ファイナルフォー進出クラスとトップ16クラスのクラブでは、スポンサー収入や入場料収入などの純粋な興行収入から推定すると、10億円前後の開きがあるように感じました。あくまでも、正式なデータではないので、推測を含みますが、JリーグのJ1の平均値が約30億円程度ですので、浦和の約70億円を筆頭に1:4くらいの開きがあるJ1の各クラブの財務状況と似ている部分があるのかもしれません。ただし、各クラブのオーナーの財力によって、クラブの予算は大きく違ってくると思いますので、一概には言えませんが、ビジネスとしても成長して来ているヨーロッパのバスケットボールクラブは、ますますその興行価値を高めていくように思います。見えない部分を挙げるとすると、テレビ放映権料収入です。今季開幕戦のパナシナイコスのホームゲームでは、インターネット放送のユーロリーグTVの他に、7ヶ国の放送局に加えてお馴染みのアルジャジーラが中継しており、すべてライブになっています。中継数が少ない試合でも、3ヶ国の放送局は中継しており、普通で考える放映権料を国別に積算すると膨大な権料になるのではないでしょうか?。ULEBに各参加チームへの分配金システムがあるのか?、また、放映権料の管理は、すべての試合においてリーグ管理になっているのかどうか?、など不明な点が多いので正確な規模は分かりません。しかし、サッカーのプレミアリーグの昨シーズンの国内放映権料が約1,200億円くらいですが、これは倍近くに跳ね上がったものとして半分と見ても500~600億円が動いているわけですから、国内リーグではなくユーロリーグ全体の価値として考えた上で、少なくとも100億円単位のものになっているような気はします。これが24クラブに分配されるとしたら、1クラブ当り最高で10億円前後になるのではないでしょうか?。クラブの年間予算の中で、非常に大きなウェイトを占めますね。

一方で、入場料収入について見てみると、日本では見たことがないようなチケッティングをしているクラブがありました。サッカーでもお馴染みのスペインのFCバルセロナです。FCバルセロナは、バスケットボールでもいまやヨーロッパの強豪であり、人気の高いクラブになっていますが、このクラブのチケッティングは、対戦カードによってランクが分けられており、そのランクに応じたチケット単価が、席種別に設定されているのです。この設定はユーロリーグではなく、国内リーグでのものですが、例えば、最高ランクの試合は、国内リーグのライバルでもあるレアル・マドリッド戦で、最も高い席で約7,000円。安い席で約3,000円程度です。逆に、最もランクの低いグラナダ戦では、レアル戦の40%程度に抑えられているのです。このランクは、A++、A+、A、B、Cと5段階に分けられていて、16の対戦相手の中で、最も多いランクはBの6対戦でした。ファンの心理を突いた計算高い売り方だと思います。そして、リーグにおけるプロチームの経営としては、非常に参考になる手法ではないか、と考えます。

ユーロリーグが今年も開幕していますが、開幕戦時の各試合の入場者数を見ると、3,000人クラスから、ドイツのアルバ・ベルリンの13,000人クラスまでバラツキがあるようです。ベルリンのホームアリーナであるO2ワールドは、今季のファイナルフォーの会場で、今年完成したばかりです。素晴らしい施設は客を呼ぶのかもしれません。

posted by umekichihouse |06:37 | バスケットボール | コメント(2) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL: (表示は許可制となっています)
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/umekichihouse/tb_ping/108
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
「欧州の現状、そして日本バスケットボールの行く末」その2 ~欧州バスケットボール事情②

コメント投稿者ID :

NBAもゲームによってpremium gameとかいって格付けしてますよね。個人的には統一してほしいのでが。。。まあ、ビジネスか。

ユーロリーグのチーム大抵は総合スポーツクラブとかでサッカークラブとかと一緒なんで運営はどうなんですかね?
最近気になってます。

posted by andy | 2008-11-07 01:26

「欧州の現状、そして日本バスケットボールの行く末」その2 ~欧州バスケットボール事情②

コメント投稿者ID :

最も多い試合が上から4番目のBランクというのは
本当心理を突いてビジネスする側としては
うまい売り方ですよね。

posted by Shu | 2008-11-07 00:12

コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」