2008年10月31日
「総合型地域スポーツクラブの育成と将来」その3 ~実態と実例の検証
スポーツ振興くじ「toto」の売上が、今年度は史上最高額になりそうです。10月時点で、既に、660億円を越え、最終的には、800億円にも近付く勢いなのです。そして、この「toto」の売上には、総合型地域スポーツクラブを運営している人たちも、かなり注目しています。「toto」の売上は、原則50%が配当金となり、原則15%が経費となります。残り35%がそれぞれ、1/3が国庫に納付され、2/3がスポーツ振興に使われるのですが、その半分は、地方公共団体を通して、地域のスポーツ振興のための財源となるのです。しかし、2003年から一昨年の2006年までは、200億円にも届かない規模までに落ち込んでいました。しかも、2006年は130億円でした。上記の計算からすると、今年の最終売上を700億円とした場合、約100億円が地方の自治体へ還元されます。それに対して、2006年は18億円。これでは、満足にスポーツ振興が活発になるほどの助成は無理です。「toto」は、昨年から一時の隆盛を取り戻し、600億円を超える規模までに復活してきました。今年、過去最高となりましたが、この勢いが持続すれば、目標値に対して停滞していた総合型地域スポーツクラブの育成にも、拍車がかかるかもしれません。 しかし、現在混迷を続ける政治の世界では、税金の無駄遣いをなくそうとする動きの中で、この総合型地域スポーツクラブの育成をはじめとする文部科学省のスポーツ振興基本計画に水を差す出来事がありました。8月4日、自民党の“無駄遣い撲滅プロジェクトチーム”が、文科省の5事業について、「必要性が認められないか、現行の制度や予算規模のままでは継続すべきでない」、としたのです。スポーツに関わってきた人間として言うわけではありませんが、これは、あまりにもスポーツ振興や普及、育成の現場を知らなすぎる話しであり、この結論を導いた政治家は、官僚以上に机上でしか物事を見ていない人たちだ、と言わざるを得ません。確かに、税金の無駄遣いは問題視されるべきものです。しかし、スポーツ振興の、しかも、自主財源による自主運営を目指して育成しようとしている総合型地域スポーツクラブの役割やその効果を全く無視しては、スポーツ行政そのものが崩壊してしまうのではないか、とも考えます。以前に述べたように、スポーツ振興法の改正や「スポーツ立国ニッポン」政策を掲げて活動しているスポーツ議員連盟の方々の動きもありますので、すべてが決定付けられた分けではありませんが、このままでは、北京五輪後に報道されていたスポーツ省(庁)の設立など、夢のまた夢物語に終わってしまいます。 では、総合的地域スポーツクラブの実態は、どのようになっているのか、いくつかの実例を用いて検証してみたいと思います。最近の調査資料ではありませんが、日本体育協会が、2004年に行った各クラブに対する聞き取り調査の結果資料がありましたので、この中から、4例のクラブの実例を抽出してみたいと思います。 ※下記の内容は、調査が行われた2004年当時のものであり、名称や数値も現在とは異なります。 ◇シンマチスポーツクラブ(群馬県新町) ・会員数: 527名 ・財源規模: 約250万円 ・クラブハウス: なし(クラブ会員の事務所内に臨時設置) ・事務局: 専任スタッフはいない ◇NPO法人ウェブスポーツクラブ21西国分(福岡県久留米市) ・会員数: 620名 ・財源規模: 約800万円 ・クラブハウス: あり(所有権は久留米市) ・事務局: 専任スタッフ常駐 ◇NPO法人ゆうスポーツクラブ(山口県由宇町) ・会員数: 1,791名 ・財源規模: 約1,800万円 ・クラブハウス: あり(町文化スポーツセンター内) ・事務局: 専任スタッフ常駐 ◇エアーアクションスポーツクラブ(鹿児島県姶良町) ・会員数: 1,703名 ・財源規模: 約510万円 ・クラブハウス: なし(事務所を教育委員会内に置く) ・事務局: 専任スタッフはなし 前記2団体と後記2団体とでは、会員数に倍の開きがありますが、財源規模を見るとバラバラの状態です。ゆうスポーツクラブの例を挙げてみると、ここは、活動拠点ともなっており、クラブハウスを置く町の文化スポーツセンターの管理運営をクラブが受託していることが、比較的大きな財源となっている理由です。その額は、約1,400万円ですから、維持管理費としての支出も大きくはなりますが、財源全体としても、ほとんどはこの収入が大半を占めている分けです。残りの400万円は、会費収入ですから、この点から考えると、同じ会員数規模のエアーアクションスポーツクラブと比較しても大きな差はありません。(エアーアクションスポーツクラブの財源510万円中、約180万円は、町からの補助金です。)また、ウェブスポーツクラブ21西国分も、多目的ホールの管理を委託されていることから、同じ会員数規模のシンマチスポーツクラブと財源規模に3倍ほどの格差が生まれているわけです。公表されている内容から推測する部分もありますが、地元行政から受託業務収入がある場合とない場合では、クラブの財源に大きく差を生むことがよく分かります。また、NPO法人格を取得することは、こうした受託事業収入を得ていくためにも重要な施策であることも、同時によく理解できます。更に、NPO法人となり、経営的にも、名実供に自主運営を目指していくためには、クラブハウスを持つことや、常駐の事務局員を雇用していくことも必要となります。数字だけ見ても、NPO法人格を取得したクラブとそうでない場合との差は、財源の規模にも現れているように見えます。 前述した「toto」によるスポーツ振興助成も、クラブの経営には大きなインパクトがあるようです。助成金でスポーツ用具を購入したり、また、外部の指導員やゲスト講師に支払う謝礼に当てたり、基本的には、クラブ独自で実施している各種プログラムの実践に使われているケースが大半のようです。この助成の有無が、クラブ経営の根幹を成す活動の具体化に及ぼす影響が、まだまだ大きいようなのです。一方で、既に助成の有無にクラブ経営を左右されないように自衛策を講じているクラブもあります。ゆうスポーツクラブです。原則的に、一切の助成を受けておらず、自前で活動資金を集めているのです。「クラブの目的にかなった経営を、自助努力で行うことに意味があり、将来にわたり継続できるクラブが本来の姿だと考えている」。聞き取り調査結果には、このように明記されていました。ただし、創設期には、ゆうスポーツクラブも、行政からの支援を人的にも資金的にも受けていたようです。しかし、NPO法人化した時点から、職員を自前で採用するなどして、自主運営組織に脱皮してきた、ということです。また、ゆうスポーツクラブの関係者は、クラブの成功している要因を、採用した職員がクラブ経営の職務を十分に遂行できる人たちだった、ということを一番に挙げています。資金的にも、運営の人材に関しても、名実供に自主運営を目指してきたクラブのポリシーがしっかりと具体化されている、素晴らしいケースのように思いました。ちなみに、ゆうスポーツクラブにも問題があり、それは、近隣市町に総合型クラブがないために、町外からの施設利用者や会員が増えてしまい、施設の収容能力との兼ね合いで、適正な会員数規模を図りかねている、ということでした。嬉しい悩みなのかどうなのか?。こんなケースもあるのですね。 一概には言えませんが、クラブ経営の課題として、やはり大きくクローズアップされるのは、収入の確保に関するものでしょう。地域行政からの指定管理者としての受託業務や、スポーツ教室の開催等の事業の請負いなどは、実際の現場でも、かなり重要なポイントになっていることが、前述の聞き取り調査結果においてよく分かりました。会費の料金設定も、それぞれの地域の事情や経営方針によってバラツキがありますが、ひとつ言えるのは、先のゆうスポーツクラブのように、確固たる自主運営に対する意識があり、経営という視点から目を背けない姿勢が大事であるように感じます。行政からの補助や助成は、比較的手続きの問題だけで得られるケースが多々あります。「toto」の補助事業も、売り上げ復活の状況を見ると、今後はその補助金を当てにするクラブも数多く出てくるかもしれません。しかし、それでは、先の自民党の無駄遣い追及の網に、自らが掛かってしまうことにもなりかねません。財源の確保、専任の人材確保と組織作り、そして活動拠点となるクラブハウスの設置は、施設管理や事業運営などの行政からの受託業務を得ていくためにも、クラブに対する評価を得るための必須条件になっているように思えます。クラブの主体となる活動内容は、地域の事情によってさまざまですが、スポーツ少年団の活動を主体としたり、小・中学校の部活動を地域で統合する形で行ったり、住民の健康増進という視点を重視した活動を主体としたりと、地域の実情に沿ったクラブ運営が行われている中で、その運営を支える収入の確保に関しても、クラブ毎に独自の手法や方法論を見出していかなくてはならないのかもしれません。自主運営、ということを前提とする総合型地域スポーツクラブが本当の意味で社会的に認められていくためにも、補助や助成に頼らない経営スタイルを模索していかなければならないのでしょう。先に述べたような国の不穏な動きも合わせて、今後の動向に注目し続けたいと思います。 ちなみに、総合型地域スポーツクラブを支援するNPO法人があることを知りました。福島県福島市に事務局を置く「クラブネッツ」という団体です。総合型地域スポーツクラブの設立はもちろんのこと、NPO法人を取得する際のアドバイスから、クラブ運営に関する助言まで、幅広くサポートすることを謳っています。ただし、会員になるためには、一定の年会費が必要になるようで、ここでも受益者負担は同然のことながらあるようです。金額は、正会員で年間10万円ですから、小規模なクラブ運営の団体には、少し負担があるかもしれません。総合型地域スポーツクラブの育成を推進する役割も担っている日本体育協会にも、こうした団体に勝るとも劣らずというレベルで、より一層のサポートを期待したいものです。 点がやがては面のように広がり、それぞれが自主独立した活動の中でさまざまなノウハウが蓄積され、そして優秀な人材が生まれてくる。そうした総合型地域スポーツクラブの育成のプロセスの中で、企業スポーツ、プロスポーツ、そして大学、高校、小・中学校に至る教育機関などとの連携を強めていくことにより、いままでにない新しいクラブ経営の姿が生まれてくるかもしれません。国がその可能性の芽を摘み取らないように願うばかりです。
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posted by umekichihouse |07:16 |
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