2008年10月30日

「総合型地域スポーツクラブの育成と将来」その2 ~文科省育成マニュアルより

日本全国の市町村、そして、そのまた各地域、つまり、住民が暮らす身近なコミュニティから生まれる総合型地域スポーツクラブを、日本全国に育成することを推進している文部科学省のホームページには、総合型地域スポーツクラブの育成マニュアルなるものが掲載されています。クラブ作りのマスタープランの策定から、クラブ設立準備、そしてクラブの設立からその運営方法に至るまで、どんな形のクラブ運営形式にも対応できる細かな情報が網羅されています。クラブを作ろうとしている人でも、現在クラブを運営している人でも、また、よりクラブを発展させようとしている人にも、基本となる情報がそこにはありますので、クラブ運営に携わる人たちには、非常に良いマニュアルになっているのではないか、と思います。今後は、実際に運営されているさまざまなクラブの実態や、独自の成功例やノウハウなどを、それぞれのクラブが情報共有できるサイトなどが構築されていけば、ますます価値の高いものになっていくのではないか、と考えます。100のクラブがあれば、100通りの運営手法や運営形態があっていいと思います。自主運営には、自由である利点もありますが、そこにはリスクも常にあります。そのリスクをひとつのクラブで回避するのではなく、リスクマネジメントという観点からも、全国の組織でお互いの情報を共有していくことは、重要な取組みに今後なっていくのではないでしょうか?。

今回は、文部科学省のホームページにある総合型地域スポーツクラブの運営面に関する内容にフォーカスして、クラブの特徴などを検証しながら、その自主運営に向けての課題を探り出したいと思います。

まず、クラブの自主運営に関するマニュアル項目には、下記の10項目が記載されています。

1.運営委員会と事務局
2.クラブマネージャーの役割
3.多様な財源の確保
4.魅力的な活動プログラム
5.広報活動
6.活動の記録と報告書の作成
7.クラブハウス(交流の場)
8.指導者・スタッフの育成
9.NPO法人格の取得
10.リスクマネジメント

まず、「1」「2」「7」「8」「9」の5つの項目は、最も重要な、クラブの運営組織体制に関するものです。自主運営とは言っても、クラブを経営していくわけですから、公益組織という観点からも、NPO法人格の取得は、クラブに対する信頼を得ていくためにも必要でしょう。また、クラブ運営の核として、事務局組織もしっかり整えていく必要があります。そこには、単なるボランティアというだけでなく、専門的な知識や経験があり、経営に関してもマネジメント力を備えたクラブマネージャーを筆頭とした人的組織も必要でしょう。当然のことながら、協力機関との関係を緊密にして、人材の確保もしていく必要はありますが、外部に依存していくだけではなく、自らのクラブから人材を育てていくことも念頭に置くべきでしょう。地域から優れたスポーツ選手が生まれていくことと同じように、地域からスポーツビジネスや事業のスペシャリストを生み出していくことも、地域の大きな財産となっていくことは間違いありません。また、事務局の設置やクラブ会員の交流の場として、“クラブハウス”も常設で設ける必要があります。クラブ経営を管理する事務局はもちろんのこと、そこには、クラブ会員が相互に交流できる場がなければ、クラブは単に一方的な参加機会だけに終わってしまいます。会員は、クラブに参加するためだけの存在ではなく、クラブの運営にも積極的に協力してもらえる存在であることが望ましいのです。よって、会議スペースや懇談の場、また、年を重ねることに保管資料も多くなるでしょうから、小さな会社的な機能を備えた事務所、または戸建のハウス的なものが理想となります。総合型地域スポーツクラブは、自主運営を基本としますので、事務局の運営や、ましてやクラブハウス設置などというと、設立資金の面やランニングコストなど、金銭的な不安も生じますが、「クラブハウス整備に関る国の補助制度」もあるようです。公立学校施設の中に設置する場合、地域の屋内スポーツ施設などに設置する場合、そして屋外スポーツ施設に設置する場合など、補助条件等は3通りのケースに分かれていますが、何れも1/3の補助率となっています。長い目で活動の拠点を必要としていく事業ですから、クラブハウスの必要性は、その設置の可能性を地域内で検討し、また、行政の助言を得るなどして、緻密に計画すべきポイントでもあります。

尚、総合型地域スポーツクラブの組織モデルは、育成マニュアルの中にも例として記載があり、主要な組織機能は以下の通りです。

◇総会
◇運営委員会(理事長、理事、幹事または会長、委員など)
◇事務局(クラブマネージャーなど)
   ・総務部会(運営統括)
   ・財務部会(財源確保及び会計事務管理)
   ・広報部会(クラブの広報、会員募集など)
   ・指導者部会
   ・研修部会(指導者研修会、会員研修会など研修事業の企画運営)
   ・企画部会(スポーツ教室、スポーツイベントなどイベント事業の企画運営)
   ・医科学部会

規模の違いはあれども、その組織機能としては、凡そ、プロスポーツ球団の組織とそれほどの違いはありません。つまり、自主運営とは言えども、経営という観点では、この組織体制は必然と言えるのです。ただし、クラブ会員に、より廉価で質の高いサービスを提供していくためには、会員のボランティアシップに頼らざるを得ないのも現実です。コストが高くなれば、それだけ会員に対する負担も高く強いる結果になるからです。この辺の見極めも、クラブそれぞれの特性に応じて、綿密に競技、検証すべきポイントとなるでしょう。以前、スポーツボランティアについてブログでも取り上げましたが、ボランティアは単なる安い労働力と考えては大きな落とし穴に陥ります。専門性の高い知識やノウハウを導入しつつ、その過程でキチンとボランティアを育てていくことも、クラブの経営を安定させていくためには重要な課題であると言えます。コストだけを考えても運営レベルは高まりませんし、運営レベルが高まらなければ会員に満足のいくサービスは提供できません。非常に難しいところです。

また、「4」「5」「6」の3つの項目は、クラブ運営における実務業務に関するものです。特に、活動プログラムの立案、計画、実践は、クラブの特徴をそのまま現すものであり、より多くの会員に参加してもらうという点でも、クラブ経営の生命線となります。単にスポーツの参加機会を作るだけではなく、スポーツ活動を通して、何を目指すのか、何を目標として行うか、などの目標設定を明確に持つことも必要です。トップ選手を地域から生み出すための育成を主眼に置いたものでもいい、スポーツの普及ということだけでもいい、また、生涯スポーツを謳うならば、お年寄りにも安全に参加できる体制作りも必要になります。それぞれの内容に応じて、クラブとしての広報活動も計画されていくことになりますし、その記録や実績を残すことによって、先に述べた目標設定に対する達成度も図っていくことができます。また、クラブは私益を生むのではなく、公益のためにあるのですから、情報をキチンと的確に公開していくことも広報の役割になっていきます。

最後の、「3」の自主財源の確保と、「10」のリスクマネジメントに関しては、現存の地域密着型のプロスポーツ球団ですら、大きな課題を抱えているポイントです。まさに、クラブ経営の根幹を成す要素でもあります。育成マニュアルには、以下の6つの収入確保方法について示しています。

・会費収入
・事業収入
・寄付金収入
・受託事業収入
・協賛金収入
・助成金

自主運営という観点からは、会員からの会費収入がクラブ運営の基礎を賄うものになります。また、総合型地域スポーツクラブは、「受益者負担」という考え方を基本にして運営される組織ですから、会費の設定においては、会員が参加しやすい、ただし、相応で的確な料金設定が望ましいと言えます。サービスの質をどれだけ高めていけるかが、会費収入を安定して確保していくためのテーマになるとも言えます。プロスポーツ球団の入場料収入施策と、どこか似ている部分もあります。スポーツ教室などのクラブ事業からの収入においても、その内容によって参加者が得られるメリットに応じて、参加費や受講料を徴収していくシステムを構築していくべきでしょう。会費とは、クラブへの参加資格を得るためのものであって、各会員がクラブをどのように活用していくかは、会員それぞれに還元されるメリットですから、その都度参加費を支払うのは当然です。そして、会員が、その“当然”と言えるだけのプログラムを作り、充実させていくための務めがクラブ側にはあります。まさに、受益者負担です。

また、外部から、クラブのノウハウを利用したイベント開催や運営を請け負っていくことも、クラブに安定した収益をもたらすことになります。更に、指定管理者として、スポーツ施設の管理・運営を受注できるように、クラブ体制を整えていくことも収入確保の現実的な手段として必要です。地域のスポーツ施設に活動拠点を置くクラブにとっては、非常に現実的な収入確保に繋がる手段とも言えます。更に、クラブの人材としての指導者などの専門スタッフの派遣事業にも、実現性の高い収入確保手段となるでしょう。

何れにしても、財源確保は、クラブ設立段階からの重要な計画課題として、十分に検証し、安易な方法だけを模索していくのではなく、クラブの持つ企画力や運営力、そして人材に対して、正当な価値を評価してもらえるようにクラブを組成していかなければ、その対価として必要な収入を得ることは出来ません。自由な運営という裏側には自主財源の確保という課題を如何にクリアしていくか、という大きな命題があることを見逃すことはできません。

posted by umekichihouse |05:42 | イベントオペレーション | コメント(0) | トラックバック(0)
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