2007年11月29日

未来は不知顔さ、自分で創ってく。

隣の芝は青く見えるとはよく言った物で、自分にはない長所を持っているひとを
見たら、その長所が自分にもあればなぁとよく考えたりします。
私はどちらかと言えば、できるだけ人とは違う方向性を持っていたい、
自分なりの価値観や考え方を失いたくはないという気持ちが強い方なのですが
それでも、なんとなく周りを見渡して、ふと羨ましく感じてしまうことも多いです。

野球選手にも、そのような揺らぎ、よく言えばあこがれは存在しているようで、
例えばヒットに徹した選手が長打力を狙ってみたり、
中継ぎで結果を出した投手が先発転向を目指したりします。
ただし、これは単純に「憧れ」のみが存在しているとは言い切れないでしょう。
人間という物は絶えず今以上を求めたいものだし、変化の中に進歩を
見いだしたいと言う欲求は、そのレベルが上がれば上がるほど強くなる様です。
イチロー、松井秀喜、ダルビッシュ有、青木宣親と言った選手達が絶えず
違うピッチングフォーム、バッティングフォームを模索したり、
活躍した選手が変化を求めて移籍を求めたりするのも、そういう理由だと思います。
「一流選手は変化を恐れない」と言ったのは野村克也氏ですが
どれだけ変化をしようと自分は自分、何も変わりはしないという
確固たる自信を自分の内部に(あるいは断続的に)持ち続けられているのでしょう。

しかし、どうやって彼らは、自分の確固たる力を身につけているのでしょうか。
少し、イチローと言う選手を取り上げてみたいと思います。
この人はどの方向から見ても、どの切り口からでも書きたい事は
沢山あるのですが、特に彼のメンタリティは、非常に興味深いと思います。
ごく率直に言いますと、私はイチロー選手は、人間とは思えない、と感じたりします。
基本的に彼は正直な人間です。思ったことはなんでも口にするし、
憎たらしい事も平気で言います。報道の人間達にも、
「それは違う」と思ったことはずばずばと指摘したり、
「それは今聞くことではないですよね?」と言い放ったりします。
イチロー選手は報道を敵視している、と書いている人もいました。
私の思うところ、彼は単に率直に言っているだけの話です。
ただその率直さが、人を傷つける事になんの厭いも感じず、
更に人よりも深い洞察力と論理性を持っているに過ぎないのでしょう。

決して彼は「良い人」には見えません。
で、少し思ったのですが、松井秀喜選手が「自分は良い人と
思われたくないんだ」と言う発言をしていたのを聞いたことがあります。
彼はまぁ「グッドガイ賞」と言う賞まで受賞している訳で、
私は「良い人」である事は彼の何よりの長所だと考えているし、
それを恥じる事はないと思っているんですね。
でも、「良い人」と言う言葉に、「自分を我慢してまで人に主張しない」
と言う、ネガティブな印象を感じているのでしょう。
ひとが「良い人」と言われてよく不快を感じるのは、おそらくそういうところに
根ざしていると思います。
ちなみに、2004年での松井選手との対談では、
イチロー選手のテーマは「許す」なのだとか。
許すことができたら、いろんな人と距離感をうまく保ちながら接することが
できる、それで、松井選手は「僕はそういうタイプだ」と答えていました。
この対談で、先程のメディアとの距離に関してイチロー選手は、
「メディアと選手はお互いが育て合うものだと思っているから。
緊張感が欲しい。こっちもそれなりの覚悟で来てるんだから
そっちもそれなりの覚悟で来てよ、と言う感じもある」と語っています。
彼は常にお互いを切磋琢磨するため、敢えて人にもそれを求めるのでしょう。
ただ報道の人達が必ずしもイチロー選手と同じ考え方を持っているわけではなく、
何かを吸収したいと言う姿勢を持たない人間の持つ独特の臭気に
怒りを感じることも多いようで、「俺なんか、いやなやつの顔を見たら
それだけでストレスになる」なのだとか。

閑話休題。
イチロー選手だって、迷いがない訳では勿論なく、
人間的なバイオリズムといったもの(好不調の揺らぎ)も存在していたり
するわけで、2007年には、彼にとっても大きな決断を
しなければならない時期にありました。
2007年のシーズン終了後、イチロー選手はマリナーズ残留が
一番大きい決断でしたね、と言うインタビューを受けていて、こう答えました。

「わりとみんな一時的な感情で軽く言っているな、と。
こちらから話題を振った以上、彼らの率直な反応はそれでいい。
でも、僕がその一時的な感情に振り回されてはいけないと思いました」

このインタビューを見て、彼はなんと淡々とすごい言葉を出せるのだろう、と
私は改めてイチロー選手に畏敬の念を抱きました。

彼はどれだけ迷っていたとしても、「ごっちゃにしない」思考法を持っているわけです。
スランプに陥ったとき、あるいは迷ったときに何が一番怖いのかと言うと
「自己憐憫」と「良い物と悪い物の区別がつかなくなること」であると思っているのですが、
野球選手がスランプに陥ったとき、コーチにアドバイスを受け、監督の意見を聞き、
報道陣にまで改善点を聞き回って、結局すべてが混ざってしまって、
何が良くて何が悪いのかがわからない状態になり、余計にどつぼにはまることが
多いのだと言います。その時に「人に聞かずに自分でできるだけ答えを考えてみる」
と言うのが私の考え方で、私は不調に陥ったときは、できるだけ人に相談せず、
自分の内部で解決するまで待つタイプで、イチロー選手も実はそうだと
思っていました。しかし、彼は迷いながら色々と人に聞いた上で、
それが自分は流されてはいけない、と割り切ったと言うのです。

あぁ、そうか。でもそんなこと、考えもしなかった。

勿論、イチロー選手が必ずしも正解とは言えないと思います。
私は松井秀喜選手のメンタリティはイチロー選手と対照的ながら、
彼の姿勢は必ずチームに好影響を与えられる選手だと思っています。
人によって、率直な人もいれば、自分の中で考えればいいと感じている人も
いるでしょう。率直な言動が人を傷つける事も多いですし、
傷ついた人を弱い人間だと責めることはできないと思います。
それは個性の違いと言う物であって、どちらかが○で
どちらかを×と区分けする事はできないのではないでしょうか。

ただ、自分にはない物まで貪欲に求めようとする姿勢や、
成長の為に「割り切って正解を見つけ出す」論理的なメンタリティを課している
イチローと言う人間は間違いなく、素晴らしいでしょう。

ちなみに、私は苦悩とか不幸とか、ピンチとか言う奴が最近すごく好きだったり
します。イチロー選手の言葉を借りれば、

「苦悩というものは、前進したいって思いがあって、
それを乗り越えられる可能性のある人にしか訪れない。だから苦悩とは飛躍なんです」

この言葉は、逆説に満ちていて、「乗り越えられる人にしか、そういう壁はこないと
思っている」とのことですが、全くそういう事はないと思います。
乗り越えられない人にだって苦悩は訪れるし、スランプ、不調、不幸、なんだってそうです。
ただ、乗り越えれば乗り越えるほど、その苦悩の度合いは強くなるし、
もうそうなったら、乗り越えれないと感じてしまう。そういう壁を乗り越えるのは
「これを乗り越える事でもっと成長できる」と自覚し、もっと言えば自分から
「そういう壁が来て欲しい」と密かに願うほどの覚悟を持たないとできない。
だからこそ彼は「乗り越えられる人にしか、壁は来ない」と言うのでしょう。
私はかなりそういう事を気づくのが遅かったですし、
現実にそうなったときにはかなり落ち込んだり迷ったり弱いタイプでは有りますが、
自分が一番成長できるのは実は苦悩を与えられてそこで多くのことを感じることだと
気づかされてからは、以前ほどそういう物への恐怖感はなくなるようになりました。

「僕はね、苦しい時こそ諦めない。100%出せないと感じることがあるよね。
けど、50%のうちの100%を出そうとする自分がいれば、立ち直りが早いと思っている」

最近では、成績上では、イチロー選手に大きな変化はないかも知れません。
しかし、元々彼の積み重ねた数字や経験が素晴らしいからこそで、
更に、チームパワーとして、自分と人を積極的に前に出そうとする姿勢が
ハッキリと感じられます。

「少しずつ前に進んでいるという感覚は、人間としてすごく大事」

スランプに陥ったとき、イチロー選手の言葉にちょっと触れてみると、
なにか、きっかけを与えてくれるかも知れません。

追記:なお、タイトルは東京事変「スーパースター」の歌詞冒頭より引用させていただきました。念のため。

posted by 智 |17:07 | イチロー | コメント(6) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
未来は不知顔さ、自分で創ってく。

一流選手のメンタルなんて凡人の自分には分かりませんがすばらしいものがあるんでしょうね。この文章のように。おすそ分けしてもらいたいもんです。

posted by スーパースター | 2007-11-29 17:37

未来は不知顔さ、自分で創ってく。

イチローも松井も野村も高卒なんだよな。
いまは職業のみならず人生・人格に関することまで『スキル』という技術論で語られる時代。
高度情報化社会でシステムによる教育によらず、自力独行による求道者になれるのは、だんだんかぎられた世界にしか存在できなくなるのだろう。

posted by 教養と教育 | 2007-11-29 17:41

未来は不知顔さ、自分で創ってく。

イチローって確か自分は天才じゃねえ~みたいな事言ってたけどそれにしか見えませんよね、何がいやなのかな?

posted by 天才プレパラート | 2007-11-30 14:32

未来は不知顔さ、自分で創ってく。

不知顔はしらぬかおて読むのかな?
漢字の字面と日本語での意味がずれてるような気がするんだけど、こういう用法で意味が通るの?
わかるようでわからない文だと思う。気分で聞き流す歌詞ならそれでも良いのだろうが。

posted by 知らぬ顔の半兵衛 | 2007-12-10 02:18

未来は不知顔さ、自分で創ってく。

なかなかレスができなくってすいません。
やばい、全然更新できてねぇ(汗


>スーパースターさん

おそらくスーパースターさんは良くご覧いただいてる方だと
思いますので、それ故この文章が良いなぁって感じてくださったと
思うんですね。でも後述しますが、これはなんだか伝わりにくい
文章だなぁと自分では思っています。おすそ分けできるレベルには
ほど遠いっす^^;

>教養と教育さん

私もそう思います。ただ、今のシステムがちょっと違うんじゃないか、
こういう欠点があるんじゃないか、完璧じゃないんだ。と言う
疑念や解釈は心の底でみんな感じていますし、それに取って代わる
新しい価値観を求めている、そんな状態なのだと思います。
その価値観を作れるか、作れないかは別として、個人が生きて行くには
組織側、システム側になるか、その枠に自分に当てはめて迎合するか
もしくは自分自身の才能を信じるしかないんでしょうね。
大きい会社がよく、違うやり方で才能を発掘して、あれはすごく良いことだと
思っています。ただ、おそらくシステムがある程度確立されている
巨大な組織では完全にシステムを組み替える事は不可能だと思いますので
どれだけ小さな組織が新しいシステムを作り上げて、それに対抗しうる
力を持つかにかかってくるんじゃないでしょうか。その新しいシステムを
作る側がその信念を人に説得力のある形で伝える事ができれば、
その時今の価値観に取って代わることができるとは思っています。
ただ、その価値観が成熟すると、また弊害が出てきはしますが・・・。
結局のところ、新しい才能が常に成長する事にかかってるんでしょうね。

>天才プレパラートさん

イチロー選手の思うところの天才が文字通り
「天に与えられた才能」と言う意味での解釈だからでしょうね。
考えてプレーし、練習してる彼だからこそ、
「天才っていいよな、やっぱ物が違うよな」と、
それだけで済まされる事に違和感を感じてるんでしょうね。

>知らぬ顔の半兵衛さん

わからない文なのは私の文章力の問題であるので、
もう、すみませんとしか言いようがないですね^-^;
私も今回の文は良い文だとは思いませんでした。
伝えたい事の説得力が見えない文なので。
イチロー選手の事を書くとどうしても、人を説得させ得ない何かが
産まれてくるので、自粛してきたのですが、どうしても
その時は書きたかった、何かを伝えたかったと言うことですので
お許し下さい(汗
ちなみに個人的には過去の稲尾さんの話なんかが
説得力がある方だと思います。(なんだこの自己アピールは・・・)

「不知顔」は「知らん顔」と読むそうです。
私の言葉ではありません。
東京事変「スーパースター」の歌詞の一節で、
イチロー選手をイメージして作った歌とのこと。

http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B13007

椎名林檎さんの歌詞や造語についての言及はここでは避けますが、
造語を作るときに、語感で作る場合と、その意味を考えて欲しくて
敢えて作る場合とあると思うのですが、おそらくこれは
「親不知(おやしらず)」をヒントに、語感から作った物でしょうね。
ちなみに親不知自体は、私は知らなかったのですが、地名の
事であって、成人してから生えてくる奴は「親知らず」って
表記だそうですので、この漢字表記も後からできた造語なのでしょうね。
(と言っても「親不知」の表記も歴史的にはかなり長いでしょうが)
私は割と造語が好きな方ではあるんですが、好まれない方も多く
眉をしかめられるパターンも多いので、これは造語に限った事ではなく
全ての表現がそうなんですが、出来が良くなかったり、
伝えたいことが読み取れなかったり、不自然な流れの文章の場合には
不快を与える可能性がある、という怖さを感じています。
(なので、なるべくそういう可能性を排除したいと思ってます)
気分で聞き流すような歌詞と言うのは、それはそれで構いませんし、
感じ方はそれぞれだと思います。
ただ自分では何かを伝えたいと思って書いてたりします。
気分で聞き流すような文章を書いているつもりはありませんし、
それで少しでも人が何かを感じてくれればいいな、と思っています。

posted by 智(ブログ主) | 2007-12-10 03:15

未来は不知顔さ、自分で創ってく。

追記です↑↑

「未来は不知顔さ、自分で創ってく」
と言うのは
「未来に根拠の無い期待を抱いても、そこに
何かを求めても、それは意味がないことで、
自分が今何かをすることで、その延長線で作られる
ものでしかない」と言う意味を少し自分の弱さと
そう言い切れる人(=スーパースター)の強さを
対比した上で表してるのだと思います。
ってか、下手な意訳ですいません。

posted by 智(ブログ主) | 2007-12-10 03:28

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