2007年03月05日

最後の夜。

今日のテーマをひとことで。

マイナー競技のジレンマ。



 この大会を見るまで、生まれてこの方、ジャンプもクロカンも生で見たがなかった。この実習に参加して、一番の収穫はなんだと聞かれたら、僕は記者としてクロカンを生で見られたことだと答えるだろう。(もっとも、ここ最近はずっと聞くばかりの立場だから、聞かれることはないのだけど)

記者の持つ特権。それは、レース終了後の選手の話を聞けること。

だけではないと僕は感じた。選手のやり遂げたあとのその顔、その瞳を見ることができる。選手の表情と心情をその言葉から読み取ることができる。テレビの前からでもなく、紙面や文面からではなく、選手から読み取ることができる。

日本人のクロカン選手が抱える苦悩。

 それはマイナー競技であるが故に抱える、半ばクロカン自体が持つジレンマのようなものだ。日本での世界大会だというのに、テレビ放映がないくらいだ。競技人口は必然的に少ないし、派手さのあるジャンプをやる選手はいても、クロカンとなるとどうしても少なくなる。競技者が少なければ、強化費も出ない。強化費が出なければ、競技力は上がらない。競技力が上がらなければ、テレビ放映も世間的注目も集まらない。認知度が低ければ競技人口は増えない。と永遠にこの負のループを辿るのがマイナースポーツの抱える運命なのかもしれない。


日本人選手は口々に語る。神津も、駒村も、石田も。

「自分がやることは成績を出して注目を集めることだ」と。

 それしかないことが分かっていても、国家予算のナショナル合宿も満足に行えない中で、己で己を、世界レベルへと高めていく。かつて、荻原兄弟(似ているといわれることもあるけど)は複合というマイナーだった競技を日本国民に認知させた。それまでは何人が複合を知っていただろうか。

方法は、自分がトップになること。

 ポピュラーではないスポーツに力を入れる企業は少ない。(アメフト然り。日本の社会人チームでは働きながら、週2日の練習がやっと。学生代表対社会人代表の日本一決定戦では、学生が勝つこともしばしば)スキーでは、アスリートとしてのスタイルが企業側と折り合わないのを原因、選手は所属を変えることがよく見られる。当然、所属を探す負担は大きいうえに、一旦離れると連盟からの補助を受けづらくなるそうだ。

神津はアルバイトから今のブルボンに入ったそうだ。
大山も今シーズンは新しい所属先となった。

 そういう中で、自分のためだけじゃなく、競技の発展のために走る選手を初めて見た気がする。野球やサッカーではもはや見られないかもしれない。

彼らはとてもひたむきで、話していて気持ちがいい。
(記者のはずなのに、気を抜くと「ファンになりました!!」って握手を求めそうになるから、要注意。)

神津は言う。
「力不足だけど、組織も変わらなければだめだ」と。


 では、その組織はというと。
今日、今大会の運営組織の会長(札幌市長)と副会長(日本スキー連盟)、事務局長の記者会見があった。びっくりしたのは彼らが事前に立てた計画が最大入場者数を見込んでの入場料収入だった点である。白旗山で9500人入れるつもりだったと説明したが、少ない日では900人、多くても3000人。その結果、目標とした19万人には大きく届かない9万人だった。平日に競技場がいっぱいになるなんてあり得ない話だと思う。(現実的に950人だったし)目標みたいにある組織が向っていく方向にあるゴールには当然論理だてられた根拠が必要なはずである。何故何故何故と解決されない疑問符が並んだ。

 でも会見後も執拗に質問したおかげで、一つだけ分かった。サッカーや野球のようにメジャーでないスポーツには広告費も宣伝費も限られている。今回PRが不十分だって心の底から思ったけど、一概に運営組織が悪いとも言えないようだ。これもまた、マイナースポーツの抱えるジレンマであることを、佐々木事務局長の「(PRを)やってるところではやってるんだけどねぇ。でもそれが届かなかった人は、PR不足だというから。資金は潤沢ではない」という肩を落とす姿に見つけた。
 ただし、個人的には限られた財源の中でも、もっと創意・工夫がしようがあったと思う。昔の人はよく言ったもので、失敗は成功のもと。ぜひ次回に活かして欲しい。(もちろん、次の日本開催はいつだよ…なんて言わずに。)


 それでも、この大会の寂しさをジレンマという一言では片付けたくはない。伊藤SAJ(全日本スキー連盟)会長はこの寂しさを選手の成績のなさと言い切った。果たして本当にそれだけだろうか。

僕の頭を神津の言葉がよぎる。

選手だけの問題と言い切る前に、組織として何かできることはなかっただろうか。会長のあなたなら、この大会をもっと盛り上げる力はないのですか。仮にもあなたはスキーに関しては、日本の代表なのですから。学級でいうところの学級委員なのですから。声を上げてください。アクションを起こしてください。選手は現場で必死です。孤軍奮闘です。

ある有名なドラマで「事件は会議室で起こってるんじゃない。現場で起こってるんだ」っていう台詞があったっけ。組織のトップって保守的になりがちなのかもしれない。でも変わることを怖れていたら、決して大きな一歩を踏み出すことはできない。この札幌大会をきっかけに、このSAJという組織が変わることを、そして、選手が救われることを僕は祈る。


なぜなら僕は生でクロスカントリーに触れてみて(ミーハーだと言われようが)
強い衝撃と激しい感激を得たからだ。
石田や駒村や神津の目に、打ちのめされたからだ。

同じアスリートとして、自分以外の何かのために種目を続けるその姿は容易ではないことを僕は知っているからだ。
目に見えない人々に感動を届ける彼らの姿に単純に惚れたんだ。


そうして、こうやって選手に触れられる機会も素晴らしかったけど、
なんと言っても、いっちょ前のジャーナリストとしてこの世界大会に関わって、選手とスタッフと観客と僕たちジャーナリストで一つの何かをやり遂げられたような感覚を僕は今覚えている。


さようなら、札幌。
そして-。
トゥーセン・タック。(ノルウェー語でありがとう)

トゥーセン・タック。
トゥーセン・タック。
さよなら、札幌。


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posted by 加藤 隆介 |00:23 | FIS ノルディックスキー世界選手権編 | コメント(0) | トラックバック(0)
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