俺は本当はデブじゃない

小塚崇彦の引退に物思う

このエントリーをはてなブックマークに追加

小塚崇彦がアマチュア競技の引退を表明した。

小塚の公式HPは、TOP画面に感謝の言葉を載せている。所属先、指導者、スケ連、そしてファンへの感謝を、簡潔ながらにしっかりと綴っている、小塚らしい文章だ。

小塚崇彦オフィシャルWEBサイト

去就は所属先だったトヨタ自動車。フィギュアスケートのファンでない人には驚かれたかもしれないが、恩返しの意味も込めて、という意図もあるだろう。その辺の真面目さも小塚らしいような、そうでないような。

彼の引退にいたっては、申し訳ないが驚きはない。そう遠くないだろうとは思っていたから。

思い返すと、小塚の競技人生は我々フィギュアファンがその名を知る頃には既に堂々たるものだった。ジュニアGPファイナル優勝は日本男子初だったし、高橋大輔、織田信成に続いて世界ジュニアでも優勝している。

女子に比べれば弱いという印象だった男子。原因は層の薄さだったが、小塚が活躍する頃は高橋、織田、小塚と3枚岩ができて、男子の観戦も非常に頼もしいものだった。メディアは「三強」という言葉を使った。皆が強者だった。

個性あふれる先輩2人に小塚が埋もれなかったのは、佐藤有香に憧れて始めたということもあって身に着けたスケーティングの美しさに他ならない。私としては、あの滑らかで自由自在な滑りは、現役ではパトリック・チャンと小塚の2トップだった。

よくスケーティングの上手さを表現するとき、「音がしない」とか、「ガリガリ削らない」とか、そんな言葉を使われたりするが、小塚のスケーティングはそんなものでは表現できなかった。まさに自由自在で変幻自在。他の選手なら減速してしまいそうなターンも、小塚にかかれば加速力に変えているように見えたほどだった。

言動を追っていれば、小塚がヘソ曲がりで、負けん気が強くて、言ってしまえば面倒くさい性格なのはすぐわかる。でも、彼の演技しか見ない人にはそれが伝わらない。理由を聞けば、「だって、あんなにキレイに滑るんだから」と返ってきた。彼のスケーティングが与える印象は、それくらい真っ直ぐなのだ。

2011年の世界選手権は銀メダル。あの時の滑りは本当に小塚の良さが出た。本来は日本開催だったはずの世界選手権は、3・11の影響もあって1か月遅れてのロシア開催となった。暗い日本にあって、小塚の銀メダル獲得は明るいニュースとなって日本を照らした。

今思えば、その頃をピークに、徐々に調子を落としていくことになる。競技人生の晩年は怪我との戦いでもあった。

故障が見つかるタイミングも悪かった。先天的な股関節の問題を手術で治すとすれば全治半年。ソチ五輪は近すぎた。そのオリンピックを諦めては、次のオリンピックは遠すぎる。ほとんど30歳に近い年齢で優勝争いができるとは、小塚も思っていなかっただろう。手術をしない道を選んだ小塚は全日本選手権で気迫の演技を見せるも、五輪代表は落選した。スケ連も難しい選択だっただろう。

結果として見れば、その判断をしてからの小塚の競技結果は酷く中途半端になってしまったかもしれない。たまに出る大当たりも単発だった。大きな大会では不調続きだった。あの時手術をしていれば、後年の競技の結果は変わったかもしれない。でも、小塚はそのことを言い訳にはしなかった。少しヘソ曲がりな表現も、彼の本気さを隠してはいなかった。

本来なら昨年引退していてもおかしくなかった。彼のスケーティングがアマチュア競技会で見れなくなってしまうのは非常に残念だが、いくらスケーティングが上手くても、ジャンプが跳べない選手が勝てるほど今のフィギュア界は甘くない。それを重々承知で今季も戦ってきたのは、彼の負けん気の強さ故だろう。

2ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
フィギュアスケート
タグ:
小塚崇彦

【お知らせ】
Yahoo! JAPAN IDで記事にコメントできるようになりました

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

小塚崇彦の引退に物思う

再返信が巧く入らないというのは、単に長いため文字数制限を超えているからだと思われます。そのためにGoogle+に転載していただいていると思いますが、申し訳ありませんが、このブログはスポナビから出る気はありませんし、Google+での投稿を閲覧するためにGoogle+アカウントを用意するつもりもありませんので、このブログ内で完結できる長さでの投稿をお願いします。

小塚崇彦の引退に物思う

3月25日付の再返信が巧く入らないので、転載しています。(3月25日付)
https://plus.google.com/u/0/115413242867658634990/posts/p/pub

「小塚崇彦の引退に物思う」へのコメント

erika_sonoさん、コメントありがとうございます。

公式サイトに書かれた本人のコメントで「氷上を去ることになりますが」とあるので、本当に一従業員としての就職なのかと思っています。指導者としての道もなくはないと思いますが、股関節の故障が指導者としての道にも影響していないことを願うばかりです。

スケーティングも修論も正攻法だった小塚選手。トヨタでも指導に当たれるよう、いい方向に行くことを願っています。

「私としては、あの滑らかで自由自在な滑りは、現役ではパトリック・チャンと小塚の2トップだった。

よくスケーティングの上手さを表現するとき、『音がしない』とか、『ガリガリ削らない』とか、そんな言葉を使われたりするが、小塚のスケーティングはそんなものでは表現できなかった。まさに自由自在で変幻自在。他の選手なら減速してしまいそうなターンも、小塚にかかれば加速力に変えているように見えたほどだった。」



全く同感です。

私は、トロント移籍後の羽生選手が飛躍的に伸びてくる以前、つまり、高橋、織田、小塚の三強時代は、小塚選手のファンでした。

3人の中では、オーソドックスなクラシック音楽が一番似合う。どこまでも気持ちよく伸びて、変幻自在のスケーティングは、どこかヴァイオリンの運弓を思わせ、観ていて心地よい。高橋さんの色っぽさ、織田さんのコミカルな表現とは違って、もっと正攻法で、本質的に音楽と一体化していると思わせるものがありました。


そういう意味では、ソチ・オリンピック辺りまでの羽生選手の癖のある滑り方には、どんなにジャンプやスピンが美しくても、どこか正攻法でないものを感じていました。

でも、それはオーサーコーチも指摘していたことだし、「ユヅルの姿勢の悪さやラフさを根本的に改革するのは、オリンピック後」だと言っていましたよね。

事実、羽生選手のオリンピック後のスケーティングや表現の進歩は目覚ましくて、スケーティングの美しさで評価されていた小塚選手やテン選手の影が薄くなってしまった感がある。チャン選手は、スケーティングだけではなくて、表現改革も口にしていたから、まだ食らいついていくつもりなのでしょうが……。


小塚選手は、股関節の故障だけではなくて、そういうフィギュアスケートの目覚ましい発展に、少し乗り遅れてしまったのかな、という気はしています。

それでも、不振だった先シーズンの世界選手権後、現役引退するか否か、去就を保留し、6月まで3か月間、競技を離れて小塚選手が執筆した修論のテーマが、自身のスケートの動作解析だったというのは、彼自身、努力して身に付けた美しいスケーティングの価値をよく知っていたということですよね。


トヨタでは、スポーツ関係の仕事に従事するとのことですが、トヨタのスケート部のコーチや顧問、監督ではなくて、スポンサー企業としての、もっと一般的な業務に当たることになるのでしょうか? 

やはり最近、競技引退を表明した体操の塚原選手が、父君の後を継いで、所属先の企業の体操チームの総監督への就任が決まったとのことでしたので、小塚選手も、そういう形でトヨタに残れるのならいいな、と私は願っていました。


でも、今シーズン限りでの引退ということですから、正式な引退は、シーズン末である6月ですよね。逆に言えば、シーズン末の6月までは、トヨタ所属の選手としての契約がまだ持続しているのでは? 

ですから、トヨタ側も、小塚選手をどういう部署に配属して、どういう仕事をさせるのか、詳細はこれから詰めることになるのではないでしょうか?


競技の合間を縫って、正攻法で修論も書いたことだし、その成果を生かして、指導にも当たれるよう、いい方向で決まることを祈っております。

こんな記事も読みたい

LS北見が、ヨーロッパ王者のロシアに完勝して3連勝! アイスリーディングがさえる!(世界女子カーリング選手権2016)【0 to zeroのhorizon】

LS北見 ロシア撃破!欧州女王世界5位相手に序盤から圧倒!初の3連勝スタート!強さの要因は?【「KC」だよ!「カンザス」ではない!】

2015-16シーズン終了 W-CUP最終戦サンモリッツ【アルペンスキー撮影記】

ブロガープロフィール

profile-icontricky_hands

ソルトレイク五輪からのフィギュアスケート好きオッサンです。
TV観戦しかしませんが、お付き合いいただければ。
コメントには「ぐら」という名前でお返事させていただきます。
記事では敬称略にて失礼します。
  • 昨日のページビュー:7873
  • 累計のページビュー:1859174

(05月01日現在)

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. 高橋成美&木原龍一組 ペア解消について
  2. 浅田真央は苦手とするルッツとどう向き合っているのか
  3. 全日本選手権2015 今さら観戦記~代表選考への気構え~
  4. 2013-2014シーズンを振り返り、2014-2015シーズンを考えてみる
  5. 世界選手権2016 今さらすぎる観戦記
  6. ソチ五輪 フィギュアスケート女子FS今さら観戦記
  7. ISU communicationsから2015-2016シーズンのルールを確認する
  8. GPファイナル2015 今さら観戦記~新採点方式の成熟~
  9. GPシリーズ2015エリック・ボンパール杯(FS中止) 観戦記~スポーツと平和~
  10. GPシリーズ2016まとめて観戦記 ~日本女子の今~

月別アーカイブ

2017
04
2016
12
11
05
03
02
2015
12
11
10
06
05
04
03
2014
12
11
10
04
03
02

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2017年05月01日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss