ある美なる日々

企業スポーツの衰退となでしこの行方

このエントリーをはてなブックマークに追加

 FIFA女子ワールドカップ2011ドイツ大会での日本代表、なでしこジャパンの優勝はアルビレックス新潟レディースをL2リーグ参加当時の2004年から見つづけている者として、感に耐えないものがある。特に新潟所属の選手2名(阪口夢穂、上尾野辺めぐみ)が活躍したとあっては、感慨もひとしおである。FIFAワールドカップ2010南アフリカ大会でも当時新潟から矢野貴章が参加し、わずかな時間であったが途中出場を果たしたことも感激だったが、今回は阪口選手が全試合に先発出場し、ボランチとしてチームの柱となったというのは本当に素晴らしい。

 マスコミは未だにおおはしゃぎだが、この大会前にはほとんどのマスコミは女子サッカーなど報道していなかったはずで、勝てば官軍の日本のマスコミの調子の良さにはたまげる。一過性のブームが去った後に厳しい状況が待っていることは良くあることでなでしこの今後について考えてみたい。

 ここ数年間長引く不景気の影響で女子サッカーリーグも大きく変貌をとげつつある。強豪TASAKIペルーレの廃部、日テレベレーザの予算削減、そして今回の震災に伴う東響電力TEPCOマリーゼの活動休止と、従来の企業チーム主体のリーグ維持は年々厳しさを増している。その中で可能性を感じるのがアルビレックス新潟レディースのようにJリーグ傘下のチームで、現在ジェフ・レディース、浦和レッズ・レディースがなでしこリーグに所属している。新潟は2004年に当時のL2リーグに昇格、2007年からは1部のなでしこリーグに所属し、現在リーグ2位につけている。選手はプロではなく、県内の受入企業の社員として昼間働き、5時以降のわずかな時間を練習に当てている。新潟の場合、2009年の新潟国体への強化という大義もあったと思われるが、現在ではJリーグ自体が全国的な女子サッカーの振興策を掲げているので、新潟はそのモデルケースとも考えられる。これはJリーグの専務理事を以前新潟の社長だった中野幸夫氏が務めていることも関係していると思われる。

 アルビレックス新潟はサッカーだけでなく、複合的なスポーツクラブとして、バスケットボール、野球の独立リーグ、ランニングクラブ、スキー・スノーボードクラブ、レーシングチームなど多彩なスポーツクラブと連携している。そうした実績から昨シーズン廃部となった女子バスケットボールの日本航空JALラビッツを譲受け、新潟アルビレックスBBラビッツとして活動を開始した。こうしたチーム運営にも女子サッカーの経験が生かされているだろうし、これらのチームの存在は地域のスポーツ環境の活性化に大いに貢献している。必ずしも各クラブの経営は順調とはいえない部分もあるだろうが、一企業の業績に振り回されること無く、地元の密着度を高めることが、生き残りのために最も必要なことであるとアルビレックスは知っているのだ。

 今最も心苦しいのは福島県のTEPCOマリーゼの活動自粛である。なでしこの中でマリーゼは最も多数の観客動員を誇っていた強豪である。しかし親企業が未曾有のピンチであり、ホームのJビレッジも自衛隊の救援基地となっており、サッカーのできる状態ではない。このままチームが廃部ということになると、選手は移籍ということもできるが、地元サポーターはもはや心のよりどころを失うという厳しい状況になってしまう。これは種目は違うが、バスケットボールbjリーグの東京アパッチの次期シーズン参戦見送りという状況にも似て、応援していたサポーターははしごをはずされた格好です。昔アルビ関係の掲示板に「チームは誰のものか」という問いに対して「当然サポーターのものだ」と書いたら、大ひんしゅくを買いました。いわく「チームは経営者のものだ」「当然選手やスタッフが主体となるべきだ」などの意見が多数派でしたが、私は昔からスポーツチームはファンやサポーターのものだと思っています。ファンなくしてチームは存在しえないし、ファンを楽しませることこそがチームの存在意義だと考えるからです。それはやはり、アルビレックスというチームが当初からファン、サポーターの力に大きく支えられているからこその考えであるわけです。女子サッカーの将来が明るいものになるか、それはリーグとクラブがどれだけファンを大切に思えるか、にかかってくると思うのです。

PS:東京アパッチのチアリーディングチーム、東京ガールズが東京アパッチより独立して活動の場を広げていくというニュースを見つけました。マネージャーはアルビレックス・チアリーダー出身の柳下容子さん。一旦チームが立ち上がると、そこにはさまざまな人たちが集まってきます。チームの経営失敗は、こうした多くの人たちに影響を与えてしまうので、絶対に避けなければならないのです。



1ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
サッカー
タグ:

【お知らせ】
Yahoo! JAPAN IDで記事にコメントできるようになりました

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

企業スポーツの衰退となでしこの行方

OMA同盟参上さん、コメントありがとうございます。私のつたない文章をお読みいただき、恐縮です。

もちろん、チームは別に誰か特定の者のものではなく、それに関わるいろいろなひとのためのものであることは重々承知しております。ただ、その当時、というのは2001年ぐらいでしたが、スポーツの王様はプロ野球でしたし、バレーボールにしろバスケットボールにしろ強豪チームは即ち大手企業の「所有物」でした。プロ野球もまだまだジャイアンツがそれこそ「巨人」としてそびえたち、揺るがないものに見えていました。Jリーグにしても、地域名を冠してはいたもののやはりビッグクラブの後ろには大企業が控えており、チームは誰のもの、と問えば間違いなく所有企業のものである、というのは歴然たる事実でした。だから「企業内の人事異動」というオーナーの一言で監督は退任させられ、企業の都合でチームは廃止、選手やスタッフは職を失う、というのは時折問題にされることはあっても、そのチームを応援してきたファンのことは、チームにとって「お客様」であってもチームと共に歩む存在ではなかった。

 そうしたスポーツ界の「常識」からすれば1998年に横浜フリューゲルスが企業の都合により消滅することになっても、ファンは同じ横浜を本拠地とするマリノスを応援すればいいじゃないか、程度にしかJリーグも考えていなかったのではないか。Jリーグは少なくとも、フリューゲルスの消滅からファン、サポーターなくしてリーグの存立はありえない、ということを強く感じたのではないか、と思うのです。その後鳥栖、水戸、大分など厳しい経営状態に陥ったクラブにおいても簡単に消滅させてはいけない、という判断をするようになったのは大きな進歩と思います。

 一方、Jリーグ以外では、チームが地元のファンに立脚していると考える団体は少ないように思えます。バスケットボールの大和証券が廃部され、それを新潟アルビレックスが引き継いだのは2000年です。サッカーのアルビレックス新潟がJ2でありながらJリーグ最高の観客動員数66万人を達成したのが2003年。バックに大企業がいない、スタープレーヤーがいるわけでもない、とりたてて強いわけでもないチームが達成したこの数字は、いろいろな要素が重なり合った結果であるけれども、やはりチームがファン、サポーターの満足を一番に考えて実行したことの証であると思います。

 そのアルビレックスも昨今では相当観客数も減っています。当時は招待券が大量に配られていたことから実質的にはそれほど減っていないということもあるのですが、やはり大観衆の中でみるゲームと少ない観客の場合とは選手もそうですが、観客の側としても満足度は違います。観客は確かにお客様ではあるけれども、同時にスポーツの舞台装置のひとつでもあるのです。だから、チームが誰のものか、それはもちろんチームに関わるフロント、選手、スタッフ、それぞれのものであるのは百も承知だけれども、それよりなによりファンのものでなければならないのだ、と強く思うのです。

企業スポーツの衰退となでしこの行方

こんにちは。

> 昔アルビ関係の掲示板に「チームは誰のものか」という問いに対して「当然サポーターのものだ」と書いたら、大ひんしゅくを買いました。いわく「チームは経営者のものだ」「当然選手やスタッフが主体となるべきだ」などの意見が多数派でしたが、私は昔からスポーツチームはファンやサポーターのものだと思っています。

ある種、企業は誰のものか?と言う問いかけに通じますね。
私は、常日頃、この論争に意味の無さを感じています。
つまるところ、誰かのものではないのではないか、と思っているわけです。
経営者も、そこで働く人間も、お客も、ともにお互いに利益になる構造でなければ、商売は回っていかない、ですよね。
スポーツチームもおんなじですよ。サポがよければ選手が苦労していいわけもないし、経営者が大もうけして、選手は貧乏、サポは不満、なんてのもありえない。
上手くいっているスポーツチームは三位一体が上手く回っているし、いずれかに問題があれば、他の2つも程なく問題を抱えるはずです。
そこが対立構造になっている、という発想自体が間違っちゃないですかねぇ?

こんな記事も読みたい

なでしこ優勝が教えてくれたもの【かぼすシュートの蹴球アラカルト】

世界サッカーの潮流と日本サッカー!【海外スポーツファンの溜まりBAR】

U-17日本代表 3-2 メキシコ代表【サッカー鍋【石に立つ矢】】

League Cup Preliminary Rd, vs Tanjong Pagar【アルビS 海の向こう側での挑戦。】

J1第5節清水×新潟:交代が裏目に出て自滅の結果に【ある美なる日々】

<移籍>新潟、柏から村上選手を獲得【サッカー観戦記です。】

S.League 21st leg, vs SAF FC【アルビS 海の向こう側での挑戦。】

J1第3節鹿島×新潟:今年初の逆転勝利【ある美なる日々】

ブロガープロフィール

profile-icontomos_sports

ハンドルネームTomo。新潟市在住55歳。スポーツは見る専門のシロウト。
2001年に新潟で開催されたコンフェデレーションズカップの日本戦を見たことがきっかけで地元のサッカーを見始め、アルビレックス新潟のJ1昇格という最も甘美な瞬間を体験する一方、バスケットボールの新潟アルビレックスも観戦。ローカリズムを大切にしアウェーツアーでの地元グルメをこよなく愛す。
mailto:tomos@tomo-s.com
  • 昨日のページビュー:0
  • 累計のページビュー:215263

(11月09日現在)

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. 日本1-2コートジボワール
  2. 西村雄一氏はW杯決勝に起用されるのか
  3. ワールドカップ開幕戦の日本人審判
  4. 企業スポーツの衰退となでしこの行方
  5. 国際ユースサッカーin新潟
  6. 天皇杯3回戦「新潟×松本山雅」:松田直樹の魂が松本に勝利をもたらした
  7. 山形:降格したら監督は解任、でいいのか?
  8. 全日本女子サッカー決勝「神戸×新潟」:力及ばず準優勝。でも、国立には愛が満ちていた。
  9. J1第31節「柏×新潟」:柏の強さは本物だった
  10. なでしこL第2節「新潟×神戸」:澤穂希に脱帽でした

月別アーカイブ

2014
07
06
2012
03
02
01
2011
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2010
12
11
10

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2017年11月09日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss