2008年07月03日
株式会社としてのサッカークラブ、株式会社の経営者としての最良の判断 とは?~神戸安達社長の大久保OA招集拒否騒動について~
大久保選手のオリンピック代表招集拒否(以下、オ代表招集拒否)に関する一連の騒動について、既にマスコミやこのスポナビブログでも多くの方々が情報を発信している。私が改めてこの騒動の経緯をなぞる必要はないだろう。 この一連の騒動には、実に多くの利害関係者が存在する。当事者である大久保選手、神戸側を代表する安達社長、オリンピック代表チームの反町監督や協会側の窓口であった小野技術委員長、その他にもオリンピック代表のサポーターや神戸のサポーターなど、挙げただけでも、これだけの利害関係者としてこの騒動に関わっている。 今、挙げた利害関係者らは、それぞれの考えや思い、そして「思惑」があるのは当然であろう。今回はその中で、頑なに協会からのオ代表招集を拒否したヴィッセル神戸代表安達氏の観点でこの騒動について考えてみたい。 なぜ安達社長は大久保のオリンピック代表招集を拒否したのか? 安達社長が招集を拒否をした理由として、大久保選手の怪我の具合への配慮、また、反町監督や小野技術委員長をはじめとする協会側の対応の悪さによる協会不信などとマスコミ中心に報じられている。 今回の神戸のオ代表招集拒否は、所属選手の、代表チームへの招出がクラブにとって「デメリット」であるという前提に立っている。安達社長は、大久保選手をオリンピック代表に出すことにより、神戸にとってデメリットと感じたということに他ならない。 今回のケースで言えば、大久保選手が代表でプレーすることによって、2月に受けた右足の手術個所が悪化するのではないかという懸念と、北京オリンピック開催中に行われるJリーグの試合に主力である大久保選手が出場できないという戦力的な問題から大久保選手の代表招集は神戸にとってデメリットと判断された。 クラブにとって所属選手の代表招集は、本当にデメリットなのだろうか? そもそもクラブにとってのメリット・デメリットとはどのような基準で考えるべきだろうか。 監督と社長の目的の違い オ代表招集によるクラブのメリット・デメリットを考える前に、サッカークラブにおける「チーム」と「クラブ」を明確に分けておきたい。Jリーグにおけるチームとは、まさにサッカーをプレーすることによって相手Jチームに勝利をする。そのために日々訓練をしているプロフェッショナル組織と定義できるだろう。一方、クラブと言えば、チームの運営を中心に、下部組織の運営、グッズ商品の企画・販売など事業を行う事業組織であり、Jリーグクラブにおいては、法人化が義務付けられ、ほとんどのクラブが「株式会社」の形態をとっている(唯一モンテディオ山形を運営するスポーツ山形21のみが「社団法人」)。 「チーム」が試合に勝つことを目的にしているのに対して、株式会社である以上、「クラブ」の目的は、利益を出すことである。Jリーグクラブは、公共性が高いので一概に、一般の株式会社と一緒にするべきではない、という意見もあるが、私はそうは思わない。浦和レッズを例にとっても、地域貢献を実現しながら収益を確保しているクラブは存在する。また、世界に目を向ければその数は更に増える。「クラブ」は、「サッカーチーム」を内包しているが、2つの組織は、明確に目的が異なるのである。 【大宮アルディージャを運営するエヌ・ティ・ティ・スポーツコミュニティー(株)の主な事業内容】 (1)プロサッカークラブの経営 (2)サッカー、その他の各種スポーツ競技の興行及びその仲介 (3)サッカー等の選手の養成及びコンサルティング (4)その他の関連業務 異なる2つ組織での“長”である「社長」と「監督」の目的もまた異なる。チームの長である監督※の目的は、戦術・練習・選手起用を駆使して強いチームをつくり、試合に勝つことである。一方、クラブの長である社長の目的は、事業を継続し利益をあげることである。 今回の大久保選手のオリンピック代表招集拒否による一連の騒動に関しても、クラブ経営者の社長視点で言えば、大久保選手のオ代表招集についても、如何に利益を挙げられるかという基準で判断するべき事項である。 ※近年では、GM職の概念が浸透し、選手の編成を含めたチームの責任者はGMで監督はチームの戦術面での責任者というポジションと見る向きもある。 神戸にとって大久保選手のオリンピック代表出場はメリットだったのかデメリットだったのか? 大久保選手のケガへの配慮、またオリンピック期間中の大久保選手のJリーグの欠場は、長期的には、クラブの利益に関わることである。オリンピック出場したことによる大久保選手のケガや、オリンピック期間中のJリーグの欠場は、チームの戦力をダウンさせ、観客動員減少へつながるかもしれない。 ただ、短期的に考えれば大久保選手のオリンピック出場は、クラブよりチームとしてのデメリットと考える方が自然である。 逆に、大久保選手がオリンピック代表として大会に出場した場合のメリットを考えてみる。すぐに思いつくのは、大久保選手代表選出による「PR効果」である。大久保選手がオリンピックに出場すれば、マスコミの取材や実際の試合で、ヴィッセル神戸というクラブ名を目にすることは各段に増える。大久保選手が北京で活躍すれば露出は更に増え、大会後、大久保選手を観にスタジアムに足を運ぼうというサポーターも増えるかもしれない。 PR効果だけを考えれば、大久保選手がフル代表として、南アフリカ3次予選に出場するよりも、OA枠で北京オリンピックに出場した方がクラブの利益になったかもしれない。 私は、経営コンサルタントでもなければ、経営者でもないので、大久保選手の北京オリンピックの出場がどれほどの経済効果を神戸にもたらすのか、また今回のようにオ代表招集を拒否したことによって神戸にどれほどの利益をもたらすのかわからない。ひとつ気になるところは、安達ヴィッセル神戸社長が、社長として、代表招集拒否という判断をしたかどうかである。チームの監督者である松田監督が、オ代表招集へ容認ともとれる発言をしていたに対して、社長が招集を拒否したということで何か納得の行かないところがあった。 私がもし安達社長の立場であれば、大久保選手が試合に出場できない程の怪我を負っているのであれば別だが、14節大分戦、また次の15節大宮戦に出場できる状態であり、更にはオリンピック期間中のJリーグにも出場できる体調であるならば、進んで大久保選手を北京に送りだすところである。なぜならその選択の方が神戸というクラブの利益につながると考えるからだ。 代表取締役とゼネラルマネージャーを兼務する安達氏 賛否両論あるが、安達社長は、オ五輪招集拒否という経営判断を下した。 社長として経営判断を下したということであれば、もう何も意見はないのだが、現在、安達社長は、「GM(ゼネラルマネージャー)」も兼務しているのである。今回の招集拒否の判断が、経営者としての判断なのか、それともGMとしての判断なのか、更に疑問が深まる。当然、経営者として、そしてGMとしても招集拒否という判断をしたかもしれない。チームが強くなることが、クラブの利益確保の重要な要因の一つであることを考えれば、経営者とGMの判断が一致することはままあるはずである。ただ、利害の一致しない可能性も考えられるこの2つのポジションを兼務できるのかという疑問も残る。 例えば、選手の補強の際や、選手の待遇や環境改善など、GMとしてクラブに「コスト」要求することもある。対して経営者として、それらの「コスト」を拒否する判断を必要とする場合もある。このような場合、経営者とGMの主張は相反する。 このようの相反する可能性のあるポジションを兼務するということが、Jリーグクラブや世界のクラブにおいてもあるのだろうか? 大久保選手のオリンピック代表招集拒否騒動から思いもよらない興味が湧いてしまった。 社長とGMではないけれども、立場が違えば主張も変わる訳で、オリンピック代表を応援する一サポーターとしては、「反町監督はなぜそれほど大久保にこだわるのか?他にいいFWいるだろッ!」と言ってやりたいところである。 また、フル代表もオリンピック代表も一人も選出されない、大宮アルディージャサポーターとしては、なんとも羨ましい「騒動」である。 そして、大宮のサポーターとして今週末のアウェー神戸戦には絶対負けたくないと決意する。
posted by toddocom |21:40 |
サッカーその他 |
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