2008年05月21日
13節川崎-大宮戦 樋口サッカーを見失った前半、そして再び、取り戻した後半~大宮は後半に何がかわったのか?~
■試合前~1週間前の札幌戦から当日まで~ 12節当時、下位札幌戦での敗戦、降り止まない雨のなか大宮選手に対して罵声とブーイングが飛んだ。大宮サポーターになって初めて目の当たりにする選手へのブーイング。数千人のサポーターにブーイングをされる選手も辛いだろうが、その光景を見ている私もとても辛かった。そしてその日は、気の晴れないままスタジアムを後にした。 大宮サポーターが管理するブログやSNSサイトでネガティブな意見が飛び交う。 札幌戦で発せられたサポーターからの「シュート打て」コール。そのコールに苛立ちの表情を見せたとされる藤本選手(事実不明)が当日更新した自身のブログ「主税日記 」にはサポーターからこの敗戦の悔しさを伝えるコメントが多数寄せられた。札幌戦での敗戦が予想以上にチーム、サポーターの雰囲気を悪くした。 また、この敗戦のダメージもさることながら当時の大宮のリーグでの状況もサポーターをナーバスにさせた。12節終了時点で、Jリーグ中断前の1試合を残し4勝4敗4分、それまで一桁順位をキープしていたが、この札幌戦の敗戦で順位を11位まで下げた。リーグは混戦状態、次の試合を落とせば降格圏も見えてくる。そのような重要な試合の対戦相手は川崎、12節終了時点でリーグ3位。前節浦和に惜敗するも、関塚前監督の後任高畠監督就任から4戦連続の逆転勝ちの4連勝と序盤戦の躓きから脱し、チームの調子は上向いていた。川崎に勝たないと順位を更に落とすことになる・・勝利してほしいという想いと格上とされる川崎に勝利できるのかと不安が頭を過ぎる。 試合前夜、テレビ埼玉のアルディージャ情報番組「ole!アルディージャ」内のインタビューで吉原選手の「札幌戦ではポゼッションを意識し過ぎていたので相手のライン裏をもっと狙おうとチームで確認した」と言う旨のコメントを耳にした時、今までのスタイル=樋口サッカーから方向転換があるのか?と瞬時に思った。 札幌戦では、敗戦するも修正をして後半は樋口サッカーをみることができた。樋口監督の目指すサッカーを貫き、修正すべき箇所は試合を重ねるごとに修正していく、そうすればリーグ終了時には、満足のいく結果が残せている。樋口監督のサッカーを信じよう。そう前節札幌戦後に決意してところであったので、川崎戦で大宮がどのようなサッカーをするのか非常に気になった。 そして試合当日、今期2度目のアウェー観戦。等々力競技場はNACK5スタジアムと同様、ゴール裏エリアが立ち見席となっており等々力スタジアムに親近感を持つ。ついに約1,000名の大宮サポーターが見守るなか川崎戦が始まった。 ■樋口サッカーを見失った大宮イレブン 前半は、全くのよいところがなかったと言えるほど、川崎にペースを握られた。前日、吉原選手のコメントしていたように相手ラインの裏を突こうというフィードを多用する。しかし、その意識が強すぎて、大宮バックラインからのボールはことごとく相手ディフェンダーにカットされる。相手のディフェンスラインはそれ程高くなく相手ディフェンダーを超えるようなフィードはほとんどなかった。「川崎タワー」などとも呼ばれる寺田選手や伊藤選手などの長身選手と藤本選手を競らせるのは酷な話である。戦術上の欠陥が早くも露呈した。唯一前半、波戸選手から小林大悟選手へのアーリークロスが通ったように、もっと高い位置から横に揺さぶるような「クロス」を多用すればもう少し状況が変わっていたかもしれない。守備に関しても川崎選手を全く捕まえ切れない。少し下がり目の位置にポジションをとった中村憲剛選手を起点に、サイドに張った両翼の森選手と山岸選手、縦横無人に動く大橋選手に谷口選手、そしてJリーグ屈指のFW、ジュニーニョ選手とチョンテセ選手にボールが配給される。そして有機的な動きとスピードに大宮選手はうまくプレスが掛けられず最終ラインでなんとか防いでいたという状況であった。試合を振り返ると、よく37分の間、無失点でいられたなと思うほど大宮は川崎に翻弄された。 そして37分、チョンテセ選手の個人技からのオウンゴール、試合内容をみれば入いるべくして入ったゴール。チョンテセについていた波戸選手やオウンゴールをした冨田選手を責める気にはなれなかった。その5分後、ジュニーニョ選手のやはり個人技で片岡選手が抜かれ、ゴールキーパーの江角選手がかわされ2点目のゴールを許したとき、この試合の残りのことよりも、今シーズン開幕から少しずつ築きあげた「今年の大宮は違う!」という思いの塊が崩れ落ちるような感覚だった。今年もこのまま下位に甘んじるのか…と思わざるを得ない瞬間であった。 前半を終了した時点で、「高い位置でのプレスからポゼッションを高めるアグレッシブサッカー」を標榜する樋口監督のサッカーはそこにはもうなかった。 ■大宮は後半何が変わったのか? 結果を先に言えば、小林慶行選手の55m弾を締めに、土岐田選手のプロ初ゴール、デニス・マルケスの技ありゴールのドラマチック3ゴールで逆転勝利をした。等々力競技場を訪れた約1,000人のサポーターは、点が入る毎に喜びを爆発させた。 点を決めること、チームに勝利をもたらすことが、これほどサポーターを盛り上げるのかいうことを目の当たりにした。サポーターはやはりチームが勝つことを一番望んでいるのである。後半、大宮がどうかわったのか振り返ってみたい。 ■変化1 樋口サッカーのキープレイヤー「吉原宏太」の動き 後半、吉原選手が投入されて明らかに流れが良くなった。吉原選手はチームに何をもたらしたのだろうか?最大の功績は、チームに流動化をもたらしたことである。 吉原選手のストロングポイントは、スピードに乗って流れのなかでボールを受けるプレーができることである。これは単にスピードがあるといった話ではない。スペースに飛び込むプレー、もっと言えばスペースを自ら作りだし自ら飛び込むプレーに長けているのである。~一度、下がったり、横に動いたりしながらスペースを創出し、瞬時にそのスペースに飛び込むプレー~FWに不慣れで、ボールをキープできる藤本選手などボールを受けるために下がってしまう。ジュニーニョに得点された2点目は、ボールを受けに下がってきた藤本選手と佐伯選手との連携ミスから始まった。藤本選手が受けようとしたエリアは中盤の選手の活動エリアであり、その点、FW一筋の吉原選手は自分がボールを受ける位置がもっと相手ゴールに近いことをよく知っている。 この吉原選手のプレーは中盤の選手にパスコースを一つ提供する以上の効果をもたらす。それは相手ディフェンダーを引きつけることによって、他の選手へのパスコースをも作りだすのである。 前半の大宮のプレーは流動の対局にあるプレースタイルであった。そして後半吉原選手投入をキッカケにした流動化した大宮に川崎ディフェンスに戸惑うのは容易に想像できる。 ■変化2 相手サイドハーフを守備に回らせた波戸の攻め上がり もう一つ大宮が大きく変わったのは、両サイドのポジションである。前半は川崎にビルドアップされ大宮のサイドバックは川崎FWとSHの対応に追われるばかりであった。しかし、後半は小林慶行選手や佐伯選手が前を向いてボールを持てるようになると両サイドのポジションは徐々に上がっていった。特に左サイドの波戸選手は顕著でCBの冨田選手が左サイドをカバーするポジションをとり3バック(2バック)のようになっていた。69分の波戸選手のオーバーラップからのセンタリング(デニスマルケスのヘディングシュートはゴールを外れる)は大宮のサイド攻撃の理想型であった。大宮の場合長身でフィジカルの強さでゴールを狙うタイプの選手がいないため、むやみにサイドからセンタリングを上げてもゴールに繋がる可能性は低い。長身の森田選手でさえ相手ディフェンダーと同じ状況で競り勝ち、得点することは難しい。大宮のサイド攻撃には相手ディフェンスを崩すプレーが必須なのである。 波戸選手は前日練習で語ったプレーを後半、宣言通りしたことになる。 札幌戦では左サイドで主税とコンビを組みましたが、去年も同じサイドでプレーすることが多かったですから、主税も僕の良さをわかっているし、僕も主税の良さを分かっていると思います。彼が中に入って僕がサイドから出ていくような形もありますから、バランスがとれているのかなと思います。もちろん、うっちーにはうっちーの、慎には慎の良さがあります。左サイドのミッドフィルダーの選手に合わせて、僕も少しずつプレースタイルを変えています。常に同じスタイルでプレーしても、うまくいかないものです。僕もそれなりに経験を積んできましたから、自分の前にいる選手の特長を活かしつつプレーしていきたいと思っています。(大宮アルディージャホームページ 川崎フロンターレ前日レポート 波戸選手のコメントを引用) 結果的に波戸選手の攻撃参加は川崎森選手の大宮陣地でのプレーを極端に減らすことになった。 変化3 小林慶行のプレーの向き-小林慶行の出来不出来で試合が決まる― 樋口サッカーにとって、吉原選手と同様にカギを握る選手が小林慶行選手である。小林選手は大宮のボランチを務める選手である。すべてのボールは小林慶行選手を経由していると行っても過言ではない。攻撃を仕掛けるのか、ポゼッションして状況をうかがうのか、すべて小林慶行選手の判断によるものである。 前半、ほとんど前線にボールを配給できずにバックパスをする場面が多かったが、後半は、左右のサイドバックや前線にボールをうまく散らしていた。また、いくつか決定的なパスもだした。周りの選手の動きによって、どれだけ小林慶行選手にアグレッシプなパスの出しどころつくるか重要であるが、小林慶行選手の出来不出来により大宮の試合展開は大きく変わる。小林慶行選手は、大宮のまさにボランチ(ハンドル・舵)である。だからハンドル役の小林選手に、エンジンやタイヤの役割を求めてはいけないのかも知れない。しかし今後、小林選手に覚醒によってか、また別の選手の台頭・出現によって、ボランチの選手が、もっとアグレッシブに相手ディフェンスの裏をとる動きをしたり、両サイドバックが攻め上がったときのカバーリングをしたりなどプレーに幅がでてきたら大宮樋口サッカーの更なる成長につながるのではないかと感じた。 大宮の逆転劇の裏には、前半と大きく変わったいくつかのプレーがあったのだ。 もう一つ、後半の逆転勝利の陰に、小林大悟選手と金澤慎選手の交代劇があった。小林選手や金澤選手の不調を指摘する声もあるが、コンディションの問題と言うより、戦術的な役割が不明確になっているのではと考えている。今回のように毎試合劇的な逆転劇を期待できるわけでもなく、どのチームも試合を重ねるごとに大宮のサッカーに対するスカウティングを強化してくるに違いない。1ヶ月後のJリーグ再開後の試合では、樋口サッカーを行おうとする大宮とそれを阻止しようとする他チームと激しいせめぎ合いが予想される。そうなった時に小林大悟選手や金澤選手のようなプレイヤーは必ず必要となってくる。この件は別の機会に述べてみたい。 最後に、今回の逆転劇を等々力競技場で目の当たりにした。大宮のサポーターになってよかったと思えるゲームを繰り広げた大宮の選手に感謝したい。 本当にエキサイティングなゲームであった。
posted by toddocom |00:58 |
大宮アルディージャ |
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