2012年01月06日

浦和レッズを通してサッカーをきちんと考える その3?

 その3という事で、多分これが最終回です。今回は、08年末以来一人歩きを続けている言葉、スタイルについてです。

スタイル≠戦術 スタイル=価値観

 そもそも、スタイルってなんですか?という話が必要で、それが全てと言っても過言ではないのですが、やはりそこは避けて通れないわけですね。

 最初にぶちあげてしまうと、チームのスタイルは戦術ではありません。所謂パスサッカーであったり、カウンターであったり、堅守速攻であったり、放りこみであったりというのは、表面的に出ているもの、つまり戦術であって、相手との力関係であったり、試合の状況によって変化していくわけですよね。スタイルというのはそんなに軽いものではなくて、譲れないものであり、不変のものです。

 あなたの人生のスタイルとはなんですか?という問いを受けた時に、どのような事を考えるでしょうか。細やかな生活の知恵であるとか、工夫よりも先に、人生における価値観であったり譲れない部分を答えるのではないでしょうか。なぜなら、生活の知恵というのはその時々で変化するものであり、これはサッカーでいうと戦術なんですね。で、根底にある価値観であったり譲れない部分がスタイルになるわけです。

 例えば、「とにかく勝てばなんでもいい」という価値観のもとでは、基本的にはリスクを負わない戦術を採用するでしょう。その時々で、例えば足の速いFWがいる時期には後ろで守ってカウンター、堅守速攻という戦術を取るかもしれませんし、前線に長身で狭いエリアでも得点が出来るFWがいればロングボールの放りこみ戦術を取るかもしれません。前者がエメルソンを指して、後者がワシントンですね。

 どちらの戦術も、根幹にある同じ価値観の上に乗っかっているものです。05年~06年ごろに、浦和レッズというクラブは地上戦の速攻からロングボールの放りこみへ戦術の転換を行っているのですが、この時にはスタイルがブレただの、何だのとは言われなかったわけですよね。つまり、戦術はスタイルではないという事ですし、両者は1つの価値観の上に並び立つものであり、その土台が浦和レッズのスタイルであり、価値観であったわけです。

サッカークラブにおける価値観とは

 スタイルと価値観という部分が同義であるとして、じゃあそれがサッカークラブではどのような事になってくるかと言えば、何を大切にしてどんなプレーを高く評価するかという事ですね。

 前述の勝てばなんでもいいという価値観で、後ろでリスクを負わない価値観の上では、バックラインでショートパスをつなぐ行為は高い評価の対象にはならないわけです。極端にいえば、バックラインでは前に蹴っておけばいいという事ですね。ところが、「マイボールを大切にして自分たちからアクションを起こしていこう」という価値観のもとでは、ショートパスをつなぐ行為が高く評価されて、蹴っ飛ばす行為は評価されないわけです。

 これが、クラブのピッチ上におけるスタイルであり、価値観であり、哲学なわけです。もう少し枠を広げていくと、例えば選手構成の部分でもそうです。極端な例を挙げればアスレチック・ビルバオになるわけですが、仮に下部組織出身の選手を大事にしていこうというクラブ哲学のもとでは、自分たちの下部組織でどのような選手を育てていくのか。どのような選手をセレクションしていくのか。という部分にも関わってくるわけです。

 極端な言い方をすれば、プロのクラブのユースチームが個性派集団というのは下部組織としては必ずしも成功ではない可能性があるわけです。その理由は、今までに書いてきたとおり、何を大切にしてどんなプレーを高く評価するかがブレている可能性があるからですね。

 その意味で言えば、山田直輝、原口元気などがユースにいた頃にはマイボールを大切にする価値観でトップはやっていなかったわけです。フィンケさんに監督が代わってからトップに絡むようになったため問題は大きくなりませんでしたが、クラブ全体としてのスタイル・価値観に一貫性が無い事が見て取れる一面でもあるわけです。

スタイル構築を依頼した事が対立を生んだ

 フィンケさんに監督を依頼した時に、「スタイルを構築してほしい」とのオーダーを当時の藤口社長はしたわけです。恐らくフィンケさんはその言葉を言葉のまま受け取ったでしょうから、ピッチ上でもピッチ外でもクラブの価値観の部分にドイツのスタンダード、フィンケさんのスタンダードを持ち込もうとしたわけです。言わば、こういうプレーを高く評価すべきなんだよ、という見本を見せようとしたわけですね。強調しておきたいのは、この価値観が正しいとかそういう問題ではなくて、スタイルを作ってくれという依頼はこういう意味だという事です。

 そこで、執拗に結果を追い求める価値観から転換できなかった古参のサポーターとの軋轢を生み、ある種の対立構造を生んだわけです。また、メディアとの付き合い方の部分でもドイツのスタンダードを持ち込もうとしただけに、提灯メディアとも対立を生んだ事で、盛大なネガティブキャンペーンを張られた側面は否定できません。

 ここで、クラブが自分たちが何を依頼して何を大切にしていくのかという部分を明確にフィンケさんに伝えて、双方の落とし所を探った上で結論を出せばよかったのですが、自分たちで論破もコントロールもできない上に、メディアとサポーターの声を口実に監督を交代させるという最悪な逃げ方をしたわけです。

 もし、勝利こそが全てであるという価値観でクラブを運営するのであれば、私たちのスタイルはこうである、と胸を張って言うべきです。そこの部分で合意ができ、納得ができなければ監督は契約書にサインをする事はありません。なぜなら、監督もそれぞれにサッカーに対する自分の価値観=スタイルを持っているからです。

クラブはサポーターと対立してでも監督をサポートするべき

 2012年シーズン、浦和レッズはミハイロ・ペトロビッチ監督が就任します。11年まで指揮していた広島を見る限りでは、間違いなくマイボールを大切にする価値観の持ち主ですし、得点につながるためのリスクを負うプレーを評価する監督です。勝利こそが全てであり、リスクを負わずにやるという価値観の持ち主が少なからず残る浦和のサポーターと対立する場面が遠くない将来にやってくる可能性があります。

 フィンケさんにスタイルの構築を依頼した結果として、基本的に浦和のメンバー構成は育成部門から上がってきた選手が数多く、マイボールを大切にして自分たちからアクションを起こす価値観のサッカーにフィットする構成になってきています。

 だからこそ、ゼリコ・ペトロビッチがフィットしなかったわけであり、経験が浅くも根本的な部分でフィットする堀孝史監督のもと、ギリギリでJ1を残留を果たす所まで持ち直したわけです。この過程にあるクラブにおいて、ミハイロ・ペトロビッチ監督というのは適任であると言え、緩やかにである可能性はあるものの、確実にチームが前へ進める可能性は高いと言っていいでしょう

 クラブがこのようなマイボールを大切にして自分たちからアクションを起こす事をスタイルとして、価値観として定めるのであれば、古くからスタジアムに来てサポートしてきた人たちと決別する場面が出てきたとしても監督をサポートするべきです。強化費の配分も、監督のリクエストとすり合わせる形で考えるべきです。なぜなら、自身のスタイルに適合できない選手を監督がリクエストするわけがないからです。

 本来は、このような部分全体を統括して、言わばプロデュースをするのがGMなのですが、このクラブにそれを期待する事はできません。当然、ここの部分も改革が必要な部分ではあるのですが、現在のクラブに言える事は1つ。余計な手や口を出して、作り上げられつつあるスタイルが熟成される邪魔をするなという事ですね。

posted by tetsu11k |01:50 | 浦和レッズ | コメント(4) | トラックバック(0)
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浦和レッズを通してサッカーをきちんと考える その3?

コメント投稿者ID : ELG00032219

僕も浦和出身のレッズファンです。
と言っても、今まで一度もスタジアムで試合を見たことはありません、、、。
Jリーグが出来た年に、他県に引っ越しその数年後から海外移住になり、日韓W杯すら自国で味わえませんでした、、、。
年少期のサッカー観戦といえば、客のいない国立での読売クラブ対日産、なんて時代を過ごしたので、僕もレッズに対して、どこか遠目で見てるところがあるのかなと。
去年の柏の活躍、素直にうれしいし、、、。
マンUとやったG大阪は、いいチームだったと思うし、、、。
その前年のレッズ対ミランは、あんまり面白くなかったし、、、。

でも、やっぱりレッズには、内容やスタイルやいろんな要素を含めて、”いいチーム”になってもらいたいです。
なんてたって、浦和はサッカーの町だから!
高校サッカーも最近の埼玉勢は寂しいです、、、。

最後に、大変楽しく読ませて頂きました。
ありがとうございました。

posted by コッチー | 2012-01-06 09:10

浦和レッズを通してサッカーをきちんと考える その3?

コメント投稿者ID : ELG00036320

※※※プレビューで見るとこのコメント欄では改行が有効にならないみたいですね。長い文で読みづらくなってしまっているかもしれませんがご容赦のほどを。※※※  

内容のほとんどについては同意できるもので、非常に分り易くまとめてくださっていると思います。どうもありがとうございます。

ただ、最後の結びのところで「クラブはサポーターと対立してでも監督をサポートするべき」としている部分については疑問符を投げかけておきます。

「古くからスタジアムに来てサポートしてきた人たち」の価値観も様々ですし、比較的に新しく応援しだしたような方の中にだって「勝利こそが全てであり、リスクを負わずにやるという価値観の持ち主」はいますよね。「古い」「新しい」というステロタイプな切り分けは意味がないと思います。

また、「対立してでも」という前提で考えることはどうなんでしょう?

まずはクラブがしっかりとした方針を持ち、それをサポーターも含めた関係者全てで共有していくように努めること。

そのうえでその方針にはどうしても納得できないサポーターが出てきてしまうことはいたし方ないと思いますが、別に「対立」する必要はないですよ。大切なのは『他者と「対立」』することではなく『自らが「ぶれない」』ことなんじゃないですか?

逆を言うと、その結果として離れてしまうファン、サポーターが出てきてしまったとしてもしかたがないと言えるだけの、しっかりとした方針を持つこと。それが重要ですよね。そういう方針をクラブがしっかりと持っていることが伝われば、「対立」するようなサポーターなんて微々たるものになると思いますが、いかがでしょう? (もちろん、その「方針」が口先だけのものでないことが大前提となりますけれど…)

例えばですが、他のクラブと違ってレッズはトップチームの試合の時、チームマスコットであるレディアファミリーを表に出すことはありませんよね。これも一つの「レッズスタイル」ではあるわけですが、異を唱える人はほとんどいないのではないでしょうか。もちろんこれは勝ち負けに影響する部分ではないので「どっちでもかまわない」という人が大多数であるということもあるのでしょうが、これについては繰り返し「何故」を発信し、理解を求めていることも大きいのではないかと思うのです。

私も「古参のゴール裏サポーター」の一人になると思いますが、不満を感じているのは勝ち負けという結果についてではなく、クラブそのものの有り様についてです。極端な話、J2に落ちようが、JFLに落ちようが、「俺達のレッズ」と思える限りは応援しますよ。

posted by HeliosReds | 2012-01-10 12:52

>コッチー さん

コメント投稿者ID : tetsu11k

コメントありがとうございます。
人のいない国立や西が丘での日産対読売というのは
僕にとってもサッカーの原風景です。

posted by tetsu11k | 2012-01-21 02:33

>HeliosRedsさん

コメント投稿者ID : tetsu11k

はじめまして。コメントありがとうございます。

傾向と絶対を分けて考えてないと議論は不毛なものです。
「男は女より足が速い」という言葉に対して、「足が遅い男もいる」とか、「足が速い女もいる」という言葉は無意味ですよね。というのは、前提としているのが傾向であり、個々の絶対ではないからです。

浦和というクラブの時間軸を線で見た時に、傾向としてこうであるという話をしています。
個々にどうのこうの言いだしたら、5万通りの話をしなくてはいけません。

クラブや監督とサポーターが対立する必要もないし、対立しないで済むに越したことはないですが、対立したとしても監督をサポートすべきであると言っているのみです。クラブが方針を持とうが、監督が信念を持って仕事をしようが、対立する時はするものです。

フィンケさんが浦和で仕事をしている時に、愚にもつかない難癖をつけた御用メディアのお歴々がいる事をご存じないとは思いません。申し訳ないですが、監督と一部サポーターの対立構造に対してクラブが監督を見捨てたように"見えた"過去を踏まえれば、そんな馬鹿げた事は繰り返すべきではないという話です。

posted by tetsu11k | 2012-01-21 02:45

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