フシ穴の眼 〜スポーツ編〜

【アンタッチャブルか?】10秒00と2時間6分16秒【停滞・低迷か?】③

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■ハンマー投げ:室伏広治=2003年/84m86㎝=この記録はA「更新できないのも無理はない偉大な記録」、B「更新されるべき時間はとっくに経過した記録」、C「更新されるべきだが競技人口・注目度も低すぎるがゆえに残存してる記録」、全ての性格をはらんでいます。

室伏は陸上競技のフィールド選手としては異例の著名人です。2001年エドモントン世界陸上で銀メダル受賞、2004年アテネオリンピックで金メダル、2011年大邱世界陸上で金メダル、2012年ロンドンオリンピック銅メダル。187㎝、100kgの室伏が小さく華奢に見える世界の投擲競技で圧倒的な実績を残したことはもちろん、「筋肉番付」などバラエティ番組でそのずば抜けた身体能力の高さを披露、日本中にその名が知れ渡りました。

確かに「更新できないのも無理はない偉大な記録」と呼ぶのに差し支えないように思えますが、日本歴代2位は父親の室伏重信で8m90㎝も下回る75m96㎝(1984年)、3位は10m以上引き離された土井宏昭の74m8㎝(2007年)。このことからは「競技人口・注目度が低いがゆえに残存している」ということも十分に窺えます。そして、更新どころか誰も近付くことすら出来きていないとはいえ、15年近くも経つ現状は「更新されてても然るべき時間は経過している」と見ることも出来ます。

もちろん、競技人口・注目度が低い本当に劣悪な環境の中で研鑽を重ね、薬物漬けの東欧の巨人たちと互角どころか、優勢な勝負を展開した室伏の偉大さに異論を挟む余地はありません。

日陰のスポーツに全身全霊をかけて真摯に打ち込み、世界的にも傑出した業績を上げることで世間の注目を引き寄せて、陽のあたらない場所に光を注いだのです。まさにアスリートの鑑です。

ただ、第2、第3の室伏が生まれるには日本の環境は厳しくなる一方です。箱根駅伝が首都圏の交通網を半日以上麻痺させることは許されても、日本の投擲競技選手はその放物線を国立競技場の大空に描くことは許されません。旧国立競技場でも、Jリーグ、サッカー人気に押されて「芝生を傷める」投擲競技は聖地から〝追放〟されたからです。

そして、2020年東京五輪に向けて建設中の新国立競技場では五輪後は球技専用の仕様に改修、陸上競技はトラック種目も聖地でパフォーマンスを見せることが出来なくなります。

メイン会場となる新国立競技場のトラックは大会後に無残にも剥ぎ取られ、サッカーを主とした球技専用のスタジアムに改修される予定です。新国立競技場で選手が陸上競技のパフォーマンスを見せることが出来るのも、ファンが観戦することが出来るのも、五輪の数週間だけということになります。

人気が無いスポーツは、その舞台までも奪われる。ハンマーや槍、円盤など広い場所が必要なマイナースポーツは消え去るのみ。

市場優先の流れが加速する時代では当然といえば、当然の行政判断ですが、元陸上競技選手としては悲しい現実です。

現状でも高校はおろか大学でも好きなだけハンマーを投げられる環境の陸上競技部はまずないでしょう。この市場優先の流れが強まれば、きっとその方向が加速するでしょうが、老朽化したハンマーや槍、円盤、保護ネットを購入する予算を計上する高校や大学はなくなり、近い将来、競技そのものが消滅するかもしれません。

そうなると、室伏の記録は未来永劫、絶対不滅です。ハンマーもネットも、何よりも選手がこの国には存在しなくなるのですから。

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出張が多い仕事柄、移動の合間に書き込ませていただいています。

新幹線の車窓に流れる日本の郷愁あふれる街の風景や、夜の航空機から暗い雲間の隙間に現れるきっと訪れることのない知らない街の光に、えもしれぬ感傷に耽りながら大好きなスポーツの試合を独断と偏見で書き綴るのは、最高にリラックス出来る贅沢な時間です。

健康診断のたびに「運動せねば」「酒は控えねば」と自戒しつつもまた翌年の診断を迎える怠惰な中年ですが、アスリートの美しい躍動に、歓喜と感謝と精一杯の拍手を送っていきたいと思います。
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