フシ穴の眼 〜スポーツ編〜

具志堅用高は本当に強かったのか。13連続防衛は本当に偉大なのか。①

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山中慎介が、具志堅用高の持つ連続防衛記録にあと一つと迫りながら、失敗してしまいました。

記録を阻んだルイス・ネリは「山中はワンツーを打った後に必ずガードが下がる」「相手の射程距離でも両手のガードを上げないこともある」「上体が突っ立て固い山中は、連打で攻め込まれたら反撃できない」…戦前から作戦を明らかにして山中の欠点を羅列していましたが、それだけ山中が研究され、自信を持っていたということです。

もちろん、山中のガードの甘さと上体の固さは、今になって指摘されたことではありません。ただ、これまでののべ12人の挑戦者の誰もがそこを突くスピードが無かった、あるいはそこを突いて着弾させても試合を決定づけるだけのパンチ力が無かった、ということです。

山中もスピードは世界基準とは言えませんが、これまでの対戦相手もまた、世界基準かそれ以上の速さを持った挑戦者は見事にいませんでした。これは、内山高志の防衛相手にも共通して言えることです。

山中は、ネリを「向き合ったときは大したことないと思った」「簡単にパンチを合わせられそうだと思った」と振り返っていますが、もしこの言葉が本心だとしたら、やはり非常に危険な状態だったと言わざるをえません。ストップの瞬間まで、キャリア最大の苦戦が続いていたのは、誰の目にも明らかでした。

当の本人だけが、その危機に気づいてなかったのだとしたら、あのストップがなかったとしても悲惨なフィナーレが待っていただけでしょう。

試合開始のゴングから主審が止めるまでの約11分30秒の間、多くのファンがずっと「これは危ない」と感じ続けていたはずです。リング誌など多くの海外メディアが今回のネリを「相変わらずジャブをまともに打てない」「全てのパンチが遠回りする」とその技術の低さを批評する一方で、「野生的なアタックが簡単に成功したのは、山中のディフェンスの欠陥だけでなくスピードの欠如」と的を射ています。

スピードで劣り、防御に穴がある山中相手には、ジャブで攻撃の起点を探ったり、ガードを崩す必要などなく、むしろ荒々しいだけの突進が勝利への最短距離でした。

1−3のオッズをひっくり返して、ネリは完全敵地で番狂わせを起こしました。ただ、山中ではなく、WBO王者ゾラニ・テテが相手だったら何もさせてもらえなかったでしょう。実際にネリはテテを含めて複数の王者への挑戦が交渉に乗っていたと言いますが、山中に決めたのは「世界的評価が一番高かった」だけではなく、最も確実に勝てると踏んだからです。

ネリもまた、山中を選んだのです。

テテについては山中のキラーともなりうると見られていましたが、山中を倒すには技術は不要で、スピードだけで十分だったことになります。

ネリは、リング誌認定のバンタム級王座も山中から奪いました。アルファベット団体よりも遥かに信頼出来るこのランキングの1位はジェイミー・マクドネルですが、この世界基準の武器を何も持たないWBA王者はネリの敵ではありません。

ただ、テテはもちろん、IBF王者ブライアン・バーネット、WBAスーパー王者ザナト・ザキヤノフと戦うとなると分が悪いでしょう。このバーネットとザキヤノフが10月21日に、英国は北アイルランドのベルファストで統一戦を戦います。

近い将来、バンタム進出を見据える井上尚弥はネリもターゲットに挙げていますが、ベルファスト決戦の勝者やテテをぶっ倒して欲しいところです。

まだ進退を表明していない山中も、動き出したバンタム級ウォーズを彩る強打のプレーヤーです。

「現役続行ならネリとの再戦」と言われています。心情的には理解出来ますが、評価、栄光だけを求めるならネリ以外の王者なのですが…。研究され欠点を晒されている現在の山中にとっては、世界基準のボクサーは誰が相手でもハイリスクです。

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具志堅用高は本当に強かったのか。13連続度防衛は本当に偉大なのか。①

偉大に決まっているだろうに!
山中だって偉大だよ。左ストレートの引き戻りの遅さという欠点がありながらも、12回も防衛したんだよ。他の名チャンピオンだって欠点はあるし、散る局面だってある。
素直に評価してやれよ!
この記事、何か偏屈でないか?

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