フシ穴の眼 〜スポーツ編〜

パックマンはどこへ行くのか

このエントリーをはてなブックマークに追加

マニー・パッキャオの次戦が誰とどこで戦うのか大揺れに揺れています。

当初、トップランク(TR)のボブ・アラムから発表されたのは豪州のブリスベーンで地元のジェフ・ホーンと初防衛戦を行うというものでした。「ジェフ・フェネックとアズマー・ネルソンの対決よりも大きなイベントになる。パッキャオの名前はこの二人よりもはるかにでかい」と、1992年にメルボルンに3万7000人を集めた剛腕対決を凌ぐ関心を呼ぶとホーンサイドは盛り上がっていたものの、パッキャオはツイッターで「何も決まっていない。ホーンのことも何も知らない」とこの発表を否定。

さらに「次はUAEで戦う。みんなは私に誰と戦って欲しい?」とファン投票を募ります。総数4万4815票の中で“当選”したのは48%とダントツの得票をマークしたアミール・カーン。以下、ケル・ブルック24%、テレンス・クロフォード21%でホーンは7%に終わりました。

かつては「誰とでも戦う」と言いながらも「次は誰になるかはプロモーターが決める」とアラムに一存していたパッキャオですが、両者の関係はかなり変質しているように見受けられます。聖人君子キャラに見られがちな(でもないですかね、世界的に非難された差別発言なんかもありましたし)パッキャオですが、トップランクとゴールデン・ボーイ・プロモーション(GBP)という2大プロモーションと二重契約を結んでいたこともあり、非常に打算的な面も持ち合わせています。

もちろん、パッキャオからしたら「俺たちは闘鶏のようなもの。戦えなくなれば捨てられるだけだが、俺たちだって間抜けじゃない、飼い主を利用する」ということでしょう。GBPを立ち上げたオスカー・デラホーヤもかつてはトップランク傘下で戦っていましたが、ファイトマネーの3分の1近くを手数料として“ピンハネ”されていたことに反発、「ボクサーに利益を還元する」ことを第一に掲げたGBPを起こしました。

同じような流れでフロイド・メイウェザーJrもアラムと袂を分かち、GBPと提携、自らもメイウェザープロモーションを設立しています。パッキャオとの「世紀の一戦」がなかなか実現しなかった原因の一つもメイウェザーとアラムの確執でした。

プロモーターが手数料を取り過ぎなのか、選手のわがままなのか。これは難しい問題です。一般的にはアラムが選手を搾取しているように見えますが、TRはまだ人気のない若い才能もたくさん抱えています。こうした選手がしっかりボクシングに集中出来るファイトマネーを支払わなければなりません。こうして第二、第三のデラホーヤやメイウェザーが育つのです。また、引退した選手が苦境に陥っている時に手を差し伸べることもあります。日本でもおなじみの元世界王者ヘナロ・エルナンデスが難病に苦しんでいた時に莫大な手術費を工面していたのはアラムでした。

ただ、本来はプロモーターの役目ではないのかもしれません。MLBやNFLには強力な選手会が存在して、引退後は豊潤な年金制度まで用意されています。統括団体も選手会も存在しないプロボクシングの世界では、著名な世界王者でも引退後に路頭に迷うことは珍しくありません。かつて胸躍らせ、大きな感動をもたらしてくれたボクサーがグローブを外した後に不遇の人生を歩んでいることを知るのは、本当にやるせなくなります。昨年、脳震盪の影響で苦しむNFLの選手がリーグに補償金を求めて認められた時に、脳震盪が健康に大きな害を及ぼす根拠の一つに長年蓄積されてきたボクシングの実態が挙げられました。NFLよりももっと以前からその影響が認められ、誰もが理解してきたにもかかわらず、ボクシングでは選手への補償など夢のまた夢の世界です。

2ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
タグ:

【お知らせ】
Yahoo! JAPAN IDで記事にコメントできるようになりました

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

この記事にはまだコメントがありません

こんな記事も読みたい

ボクシング 夢の対決 2017<スーパー・ウェルター級>【運動科楽からスポーツ再考!!】

観戦記1280 WBCバンタム級王座戦 山中慎介vsカルロス・カールソン【人生マイペンライ】

【大相撲】三月場所の展望あれこれ【西の落伍家】

ブロガープロフィール

profile-icontanutan

出張が多い仕事柄、移動の合間に書き込ませていただいています。

新幹線の車窓に流れる日本の郷愁あふれる街の風景や、夜の航空機から暗い雲間の隙間に現れるきっと訪れることのない知らない街の光に、えもしれぬ感傷に耽りながら大好きなスポーツの試合を独断と偏見で書き綴るのは、最高にリラックス出来る贅沢な時間です。

健康診断のたびに「運動せねば」「酒は控えねば」と自戒しつつもまた翌年の診断を迎える怠惰な中年ですが、アスリートの美しい躍動に、歓喜と感謝と精一杯の拍手を送っていきたいと思います。
  • 昨日のページビュー:0
  • 累計のページビュー:1470007

(10月24日現在)

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. 山中は戦った、そして敗れた。「セコンドを心配させた」の真意は?
  2. ミゲール・コットとは何者か?
  3. いったい誰がロマチェンコに勝てるというのか?
  4. 具志堅用高は本当に強かったのか。13連続防衛は本当に偉大なのか。③
  5. 膠着、ミドル級。あからさまな不当判定、ボクシング界は腐っている。
  6. 日本ボクシング史上最大の番狂わせ!木村がゾウをTKO!
  7. 具志堅用高は本当に強かったのか。13連続防衛は本当に偉大なのか。②
  8. VIVA MEXICO! メキシコ史上最強は誰か!?
  9. ミゲール・アンヘル・コットは日本人が戦った最大の名前なのか?
  10. 日本人の身体能力は黒人に劣るのか?①

月別アーカイブ

2017
10
09
08
07
06
05
04
03
02

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2017年10月24日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss