フシ穴の眼 〜スポーツ編〜

いったい誰がロマチェンコに勝てるというのか?

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8月7日現在、ワシル・ロマチェンコのPFPランキングはリング誌で5位(山中慎介は10位、井上尚弥はマイキー・ガルシアに押し出される形でランクアウト)、ESPNで3位(井上が13位)と、いずれもNo.1ではありません。

ウクライナのハイテクはプロ転向から9勝(7KO)1敗、この短いキャリアで2階級制覇に成功しているとはいえ、評価基準で最も重要視される「誰に勝ったのか」となると文句無しの強豪はゲイリー・ラッセルJrとニコラス・ウォータースの二人だけ、殿堂クラスの相手とは戦っておらず、PFPトップに推すのは確かに憚られます。

実際に、ロマチェンコをPFP1位と考えているのはテディ・アトラスらほんの一部の専門家だけで、リング誌ではアンドレ・ウォード、ゲンナディ・ゴロフキン、ローマン・ゴンザレス、テレンス・クロフォードが、ESPNではウォード、ゴロフキンがウクライナ人よりも高い評価を獲得しています。

しかし、ロマチェンコがPFPキングであることは、もはや疑いようがありません。

強さを見せつける物差しには、「圧倒的なKO」から「僅差判定」という目盛りが刻まれています。相手の肉体を追い込み、生理的(肉体的)に戦闘不能に追い込むことが、この競技の目的です。生理的な限界の前に心理的な限界で試合を投げてしまうケースもありますが、これは最も軽蔑される負け方で、生理的な戦闘不能状態で試合が終わる、止められるというのがボクシングのあるべき姿です。

ところが、ロマチェンコはは、もはやこの尺度では測定不可能です。「圧倒的なKO勝ち」よりもさらに上の強さを見せつける目盛り、グレードがあることを、直近の3戦で世界に知らしめました。

昨年11月のニコラス・ウォータース、今年4月のジェイソン・ソーサ、そして昨日のミゲール・マリアガ。この3戦以前も圧倒的な力量差を見せつけていたロマチェンコですが、その強さは従来の物差しでも測定出来るものだったのですが…。

【リング誌のPFPでは5位ロマチェンコ、6位リゴンドーと、超絶アマエリートがランクされています。現時点の主戦場で2階級離れている二人が戦うことは現実的でないと思われていましたが、急転直下、12月にニューヨークで激突する可能性が出てきました。】

昨日のマリアガ戦は衝撃的な失神KO劇でも、何もさせない完封勝利でもありませんでしたが、それ以上に背筋が凍りつくような冷酷な強さを見せつけました。

日本の銀座の雰囲気も参考にして建設されたというロスアンゼルス・Microsoftシアターのシートを埋めたのは4102人、ボクシング史上最高の技術の一つが披露された舞台としては美しいミュージックホールでも物足りないものがありました。

しかし、4102人は〝マトリクス〟と形容されるロマチェンコの信じられない動きに驚き、シンクロする手と足の速さと美しさに感動し、マリアガをピエロにしたパフォーマンスに笑い、最後は底の見えない強さに凍りつき、贅を尽くした30分足らずの時間を堪能できたのです。羨ましい。

素晴らしい試合には驚きと感動が付き物ですが、ボクシングの試合で笑いを誘うパフォーマンスまで演じて魅せるというのは非常に珍しい光景です。

その高度な技術についてはフロイド・メイウェザーやギレルモ・リゴンドーが対抗馬に挙げられ、北米にルーツやファンベースを持たずにスーパースターの座を射止められるかどうかという点では大きな成功を収めたマニー・パッキャオが先人として語られていますが、ハイテクの類い稀な高等技術についてはメイウェザーやリゴンドーとは明らかに別のステージを築き上げています。

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ワシル・ロマチェンコ
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健康診断のたびに「運動せねば」「酒は控えねば」と自戒しつつもまた翌年の診断を迎える怠惰な中年ですが、アスリートの美しい躍動に、歓喜と感謝と精一杯の拍手を送っていきたいと思います。
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