2013年12月28日

デルボスケからジダンに贈られた、たったひとつの冴えた助言 / ポジションを保つ事の重要性とスペースの管理

オラオラオラ〜!!みんな出てこ〜い!!安心しろ。クリスマスは終わった。隠れてる奴は出てこい。もう忙しフリをしなくてもいいぞ。

前回のあらすじ
前回「ディマリアはポジションを放棄しすぎ」って話をしました。それで、ちょうど今朝行われたバレンシア戦で、そのディマリアがナイスゴールを決めたんですけど。彼がどこでボールを受けてゴールを決めたのか見てみましょう。

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はい。サイドですね。ここでボールを受けてドリブルを開始、
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ゴールを決めました。超うまかった。 それで、この時ディマリアはしっかりとポジションを保ってました。ってことで、今日は「ポジションを保つ事の重要性と、それに伴うスペースの管理」です。 サイド攻撃の重要性 皆がサイドを放棄して中に入ってくると、例えば今のレアルだと、
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こうなります。それで、こんな感じに「SBを上げて中央に人を集めれば、ほら相手を崩せるでしょ?」とは、なりません。こういったシステム上の数勘定だけで相手を崩せれば誰も苦労はしない。なぜか?はチェルシー時代のアンチェロッティに教えてもらいましょう。



09/10・プレミアリーグ第25節・チェルシー対アーセナル
守備の局面で最も注意すべきだったのは、中盤で自由にボールを動かさせないこと。具体的には、2ライン間(特に中央)で3トップやファブレガスが前を向いてボールを持ち、突破やスルーパスを仕掛ける状況を作らせないことだった。中央突破を許しさえしなければ、サイドにボールを展開されても構わない。そこからクロスを入れられたところで、中央で我々のDFに競り勝てる選手は相手には皆無なのだから。その為に重要なポイントは --中略-- そして2ラインの間隔を詰めて常にコンパクトな陣形を保ち、DFラインの前に入れられないようにすることだった。(カルロ・アンチェロッティ、片道道郎『アンチェロッティの戦術ノート』河出書房新社、2010年、33頁より)



このように相手に舐められます。敵はサイドを捨てて、

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中央に人を集めてきます。「全てをガードする」なんてのは前時代的。今のディフェンスの基本は「危険度の高い所から優先的に」です。サイドバックなんてほっとけば良い。ボールを持たせておけば良い。本当に危険なのはロナウドでありディマリアなのだから、そちらに人を割く。 それで、この時ボールを持ってるサイドバックに敵を切り崩せって言っても無理です。彼らの仕事は、あくまでビルドアップにおける幅を取る事と、前にいるアタッカーのサポートです。そんな彼らに「どうにかしろや」っていう注文は、お門違いです。例えばSBとしては、ちょっとハミ出る攻撃力を持っているマルセロであっても、かなり苦しいです。 じゃあ誰が崩すべきなのか? レアルには色んなタイプのSBがいます。コエントランにマルセロ。カルバハルにアルベロア。彼らはあくまで“一流のサイドバック”なのであって“一流のアタッカー”でありません。アタッカーとしては精々1.5流です。 じゃあ誰が崩すべきなのか? ロナウドやディマリア、そしてベイルという“超一流のサイドアタッカー”たちです。彼らが相手を崩します。その為には、彼らがサイドのポジションを保つ必要があります。中央が堅い時に、彼らがポジションを放棄してしまうと、SBに過剰な負担がかかり、攻撃に詰まります。
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こうではなく、
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こうです。そして、この時ボールを持った超一流の選手たちを軽視すると、必ず痛い目に合います。 これが超一流のサイドアタッカーの実力だ!! 去年のシティ戦。シティに二度先行されたけど、最終的にはレアルが逆転した試合です。その時ロスタイムに決まったロナウドの得点シーンを見てみましょう。
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今、マルセロがボールを持ってます。それで中央にはたくさん敵がいます。こういう時は、セオリー通りにサイドにポジションを取ります。ロナウドはしっかりとサイドに張ってますね。この後、ロナウドにボールが入ります。そしてマルセロは中央へと進み、ロナウドから離れます。バスケのアイソレーションのように、ロナウドとサパレタの一対一の関係を作り出します。これも“サポート”です。主役は誰か?を、マルセロはちゃんと把握しています。
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ロナウドがボールを持ちました。この時、中央にシティのDFは沢山いますが、肝心のサパレタのサポートには誰も入ってません。紐が付いてない。ロナウドを舐めてる。あり得ない。
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それで失点。大逆転。シティのDFは一体何を守っているのか。まあ、これが超一流のサイドアタッカーの力です。バレンシア戦のディマリアと同じ形ですね。
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上と下、どちらが怖いか? クッソ攻撃力が高いマルセロと比べても、ロナウドがボールを持った時の方が遥かに怖い。あくまでSBは脇役です。SBに求められているものは、前にいる一流のアタッカーのサポートです。ロナウドが前にいてこそ、マルセロは最強です。何倍にも輝きます。またロナウドの良さもあくまで外→中というダイナミズムにあります。しっかりと外を意識させる事で中へのカットも生きてきます。 サイドの怖さを見せ付けないで、中央に人を集めると、相手に見切られます。すると「中に人はいるが、あまりそこからは崩せない」という感じになります。今のレアルもこんな感じです。中央をこじ開けるのって難しい。特にアンチェロッティのレアルは、まだ始動したばかりなので、時間が必要です。それに一口にポゼッションといっても、所属する選手が違うわけだから最適解を求めるのに、これも時間が必要です。アンチェロッティもプレシーズンから色々と試してました。最近やっと、この段階が終わったって感じです。 それで、こういった今のレアルの欠点を当然、中央大好きアンチェロッティも分かっていて、そんな時は、



コペンハーゲン戦後のアンチェロッティの会見
アンチェロッティ「相手チームが非常にコンパクトだったので、我々の方でいくつかの点を修正した。より多くのセンタリングを上げるため、クリスティアーノとディ・マリアがこれまで以上にサイドに開いてプレーした。最初の2ゴールは良いコンビネーションで、サイドをうまく利用することができた。イジャラとケディラ、モドリッチは良い仕事をした」(→realmadrid.jp)

→レアル・マドリード : リーガ開幕からユベントス戦まで / 442とは一体何だったのか?



適時に修正します。これ結構前の試合の話です。という事で、

2013年12月22日・リーガ17節、対バレンシア戦
バレンシア戦の終盤。同点という状況で、点がとにかく欲しいアンチェロッティはイスコとアルベロアを下げてヘセとカルバハルを投入しました。そしてディマリアを左に動かしました。だから、この采配って凄い分かりやすいですね。

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相手をサイドから崩したい。仮にサイドを崩せなくても、そこからのクロスで中央のロナウド(あと一応ベンゼマ)に仕留めてほしい。
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ヘセの逆転弾が決まったシーンです。今、白丸のモドリッチがボールを持っていて、中央にはバレンシアのDFがうじゃうじゃいますね。そこを避けて、赤丸のディマリアとヘセはサイドにいます。両者とも手を上げてボールを要求してます。この後、モドリッチから下の赤丸のヘセにボールが渡り、そしてゴールが生まれました。また、この直前のシーンでもヘセはSBのカルバハルを上手く使ってチャンスを作ってました。アンチェロッティが彼にどんな指示を与えたのか分かりますね。 あと、この時GKは完全にヘセを舐めてた。
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ヘセのシュートが放たれた直後。GKは画面左方向に倒れようとしているのがハッキリと分かる。その為、ヘセのニアに対するシュートへの反応が遅れた。 「どうせ中にいるロナウド様にクロスっしょ?カンテラ君?ぷぷぷ」 サイドと中央、持ちつ持たれつ このように強力なプレーヤーが「サイドのポジションを保つこと」は非常に重要です。「中央を崩したい」って下心丸出しだと、相手も気付く。馬鹿じゃない!! だから、
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超一流の選手がサイドにポジションを保ち、ボールを持つ。そこで、しっかりとDFを引き付ける。そしてここから、
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①同サイドを崩す。シティ戦のロナウドです。あるいはコンビネーションだと、バレンシア戦の後半10分くらいのプレーです。ロナウド+マルセロ→ベンゼマがシュートを撃った場面です。次に②サイドチェンジから逆サイドにいる、これも超一流の選手が一気にサイドを崩す。バレンシア戦のディマリアの得点です。こうやって相手にサイドを意識させた上で、
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手薄になったゾーンの隙間を狙って③ゾーン破壊者を中心にゾーンを破壊する。この時サイドにいるプレーヤーはゾーン破壊者の動きに連動して、サポートに入る必要があります。バジャドリード戦とか。→連環する者たち : スペースを掴め ポジションとスペース サイドアタッカーに求められているものは、状況にあった適切なポジショニングと、それに伴うスペースの変化を鋭敏に感じ取る力です。ドリブルやコンビネーションでサイドを崩す。そして機を見て中へ進入→中央を崩す。両方を高いレベルでこなす必要があります。 まあこんな感じで、まだ色々と問題はありますが、年内最後の試合を無事に勝利で飾ったレアル・マドリーは、冬休みに突入しました。 ジダンとデルボスケ この間ワールドサッカーキングという雑誌でレアル・マドリードの特集をやってたんで一応買って読みました。それでビックリしたのが、後半レアル関係ないやん。一冊丸々じゃないんだ。知らんかった。ただ、そこでジダンがデルボスケについて語っている部分があったので、それを引用して終わりたいと思います。



彼はほとんど口を開かなかったが、彼が口にした事は正しかったし、正しいタイミングで発言をしていた。彼の話には共感できた。彼が俺に言った。「君はボールを持ったら中に入れ。だが、ボールを持っていない時は、左に開け」ってね。あの指示もチームのバランスを保つ為だったんだ。口数は少なかったけど、説得力があった。(WSK2014年1月号・50頁より)



なぜデルボスケは、ジダンに「左に開け」と言ったのか?

まあ、答えも書いてありますけど、幅をとって欲しかったんですね。ピッチを最大限に使いたかった。彼の為にも、チームの為にも。だからデルボスケはジダンがサイドにいて欲しかった。

ポジションは必要だから存在する。

デルボスケからジダンへ。たったひとつの冴えた助言。

次回予告(嘘)
この次回予告あんま当てにならんけど、次回は「エピローグ : ビエルサからペップ、そしてクロップへと受け継がれる意志」です。さよなら。


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コメント投稿者ID : ELG00063169

新着にあったので覗いてみたらとても面白い記事だったので
ついつい他の記事も読んでしまいました!笑

イメージや思い込みで書いている記事が多い中、図や実際の映像、数字や動作での解説等とても分かりやすかったです!

文面も読んでいて非常に楽しめる記事ばかりで読みやすかったです!

自分も選手のプレーの細かい所や戦術の狙いを意識して見れるようになりたいと思いました!

また見に来ます!
次の記事も楽しみにしています♪

デルボスケからジダンに贈られた、たったひとつの冴えた助言 / ポジションを保つ事の重要性とスペースの管理

コメント投稿者ID : OOH00060594

今季のマドリーがポゼッションで上回りながら中々得点できないのは、やはり中央にスペースがないからですね。
特にアンチェロッティはロナウドに少し自由を与えすぎです。
ロナウドが流動的に動きすぎて、実質左サイドがマルセロ1人になってしまって、結果サイドのスペースが上手く使えなくなるわけです。
いくらイスコやベンゼマが気を効かせても、彼らはあくまで中央の選手ですからね。
そこの修正を期待したいです。
あと、マドリーの今後の右サイドの展望を記事にしてみると面白いかもしれませんよ?
来年間違いなくマドリーの鍵となってくる所ですから。

デルボスケからジダンに贈られた、たったひとつの冴えた助言@返信

コメント投稿者ID : tanakayamada

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