2007年04月09日
ライカールトよ、攻めまくれ
ライカールトがオランダ代表監督だった頃の話―。 EURO2000のほんのちょっと前、 オランダ代表はホームにブラジル代表を迎えて親善試合を行った。 当時のブラジルはロナウジーニョがまだブレイク前で、 トップ下に君臨していたのはリバウドだった。 当時のバルセロナでも攻撃の中心として活躍していたリバウドは正に絶頂期で、 彼を止めないことにはオランダの勝利はない。 ライカールトは中盤の底を守るコクーをリバウドへマンマークにつけた。 僕の記憶は定かではないが、確かコクーだったと思う。 とにかく1人の選手をリバウドにマンツーマンでつけさせたのだ。 試合は引き分け。 翌日のスポーツ紙には、こんな見出しが躍ったという。 「オランダ代表にマンマークを取り入れるなんて! ライカールトは何て古臭いサッカーをしてくれたんだ!」 オランダ代表と言えばトータルフットボール、 トータルフットボールと言えばオランダ代表だ。 全員攻撃・全員守備。DFは積極的に攻撃参加し、FWは前線からプレッシング。 フィールドプレーヤーは神出鬼没にポジションを変えて相手を撹乱し、 人とボールが目まぐるしく動いてピッチで踊る。 1974年のワールドカップでオランダ代表が見せたサッカーは世界を震撼させた。 その申し子、ヨハン・クライフはアヤックスで、バルセロナで、 その才能を遺憾無く実力を発揮し両チームの一時代を築き上げた。 監督としてもトータルフットボールの系譜を引き継ぐスタイルを アヤックスとバルセロナに持ち込んだ。 クライフのアヤックス監督時代の教え子が、フランク・ライカールトだった。 名将の下でトータルフットボールのいろはを学んだライカールトは そのすべてをイタリアの名門・ミランで披露することになる。 現代サッカーのボランチの理想像とも謳われた彼のプレーは アリゴ・サッキ監督の掲げたゾーンプレスという革新的な戦術の完成に一役買った。 だがゾーンプレスとは一般的に、 DFラインをフラットな形で高く位置取りさせFWとの距離をコンパクトに保ち、 中盤と共にゾーンを張って前線から激しくプレスをかけてボールを奪う、 という戦術だ。 攻撃面についてはこれと言った戦術はなく、 ただ、ボールを高い位置で奪ったら素早く攻める、という特徴ぐらいだ。つまり、 トータルフットボール - 攻撃戦術 = ゾーンプレス なのだ。 ライカールトはそんなチームでキャリアの最盛期を過ごした。 バルセロナの監督になったライカールトについて、 僕は今シーズン、忘れられない采配がある。 UEFAチャンピオンズリーグ、グループステージ第6節のブレーメン戦、 ライカールトは守備的MFのモッタを、ジエゴにマンツーマンでつけた。 モッタはファウルも厭わない厳しいマーキングでブレーメンの司令塔を封じ込めた。 この試合はバルセロナにとってベスト16進出がかかった大一番だったが、 ロナウジーニョとグジョンセンの得点もあり、前半で2点のリードを得た。 後半8分、モッタがジエゴへのファウルでイエローカードをもらうと その7分後、ライカールトはモッタに代えて、センターバックのテュラムを投入した。 ボランチにはマルケスが入った。 翌日の報道は、バルセロナのベスト16進出を祝う見出しばかりだった。 オシムは以前「今のサッカーにはエレガントさがない」という類のコメントを発した。 僕もそう思う。だってバルセロナでさえ、これなんだから。 2点リードしたら守備的なMFに代えて、さらに守備的なDFを投入するんだから。 クライフ時代のバルセロナはどんな試合でも 2点リードしても3点目、4点目、5点目を狙いに行くチームだった。 カウンターで失点しても、関係なく攻撃的な姿勢をとり続けるチームだった。 それはファンハール監督時代のアヤックスも同じだった。 「エレガント」という言葉が適切かどうかは別として、 なんてカッコいいサッカーだろう、と今でも思う。 当時のバルサ、アヤックス以上にカッコいいチームを、僕は見た記憶がない。 僕には今のバルサは、全然カッコよく見えない。 ライカールト政権でもカッコいい時代はあった。でも、 04/05シーズンのCLベスト16、 スタンフォードブリッジでチェルシーに2-4で敗れたあの時、 あの時から本当にカッコいいバルサは死んだと思う。 僕はバルサが好きなので、大嫌いなチェルシーに負けて悔しかった。 でも、かつてクライフが言った 「負けるときは美しく」という精神を受け継いだような見事な負けっぷりだった。 でも最近の負けっぷりは後ろ髪を引かれすぎてはいないか。 現役時代、最も攻守のバランスを必要とされたポジションでプレーし続けたのだから、 監督になってもバランスを重視するのはわかる。 でも、ライカールトにはトータルフットボールの血が流れているはずなのだ。 それを今のバルサに、リーグ制覇も危うい状態のバルサに、注入してほしい。 なぜ今シーズンになって3-4-3システムを採用するようになったのか。 なぜトータルフットボールの代名詞とも言えるシステムを突然やり始めたのか。 それは今のバルセロナのコーチが現役時代、 クライフと共にトータルフットボールを体現していた人物だからだ。 3-4-3についてはよく「バランスが悪い」と揶揄されている。 僕はそうは思わない。 悪いのは、むしろ、それで攻撃を組み立てられない攻撃の選手たちだと思う。 いつからバルサにバランスなんか求めるようになったんだ。 セビージャだろうとマドリーだろうと、攻めて攻めて攻めまくれ!
posted by takuro7 |04:03 |
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