2010年02月15日

上村愛子 金メダル以上の存在

 
つくづくすごいと思うのは、
上村愛子が“バッシングされた”という経験が思い浮かばないことだ。
 
長野五輪で一躍、時のアイドルとなり、
ウインタースポーツ界の華となる。この時、18歳。
世界を転戦していく中で、名だけでなく実も備わっていく。
華麗なエア、高速のターン。
性格は良い。メディア映りも素晴らしい。何よりルックスも悪くない。
それでも五輪では期待されつつ、メダルを逃す。
これだけの要素を踏まえれば、
普通はタブロイド紙や女性週刊誌にとっては格好の標的になるのが常。
夏季五輪の金メダリストだって狙われるご時世で、
このクリーンさは凄い。
 
 
以下はバンクーバー五輪、女子モーグル決勝直後のインタビュー。
 
 
 
(Q.決勝は見事な滑りだった)
「細かい事を挙げたらきりがないと思うんですけど
五輪という舞台で “全力で滑りたい” っていう気持ちは
しっかり果たせたと思えたんで満足・・・・・ちょっと悔しいですけど・・・・・」
 
(Q.レース後、ポイントを見た感想は) 
「あそこで1番という数字が出てほしかったというのはあったので
でも前に滑ったシャノン(バーキー)が
すごく良い滑りをしたという事なんだなと思って
シャノンと“良かったね”っていう話をしていました」
 
(Q.またしてもメダルには届かなかったが)
「なんでこんなに一段一段なんだろう、と思いましたけど、
五輪で自分が全力を出すという事が第一の難関というか、
すごく難しいところだったので、それがクリアできて
皆さんに良い滑りをしたという事は、しっかり観てもらえたと思うんで
良かったと思います」
 
(Q.プレッシャーと戦う4年間だったが)
「昨シーズンとその前のシーズンで自分の事をずっと応援してくれた人に
恩返しのできる成績を残していたので・・・・・。
皆さんにメダルを見せられる事が
次の “ありがとう” かと思っていたんですけど、今回の試合は
“自分(上村自身)のために頑張って” と言う人がすごく多くて
“私(上村)らしく滑ってくれ” っていうメッセージばっかりだったんで
それができたことがすごく嬉しいです」
 
(Q.レース後、たくさんの人に労ってもらっていたが)
「私がこういう風に泣いたりすることがあまり無いので
みんな “大丈夫だよ、大丈夫だよ” って言ってくれて、
コーチたちには全力を出し切った事をすごく褒めてくれたし
“カービングターンを追求してきたことを誇りに思う”
って言ってくれたんで、本当にそれが嬉しかったです」
 
 
 
文面にすると、“上村愛子”という人柄が滲み出ている気がする。
もちろん動画であれば、なお感じることだが。
 
悔しくないわけがない。
初出場の長野五輪を除けば、五輪過去最高の滑りを見せた。
持っているものが100だとしたら、101を出したレースだっただろう。
それでも残念だが、今シーズンのワールドカップなどで見られた波が
悪い方向に出てしまった。課題の第1エアは無難にまとめたが、
ミドルセクションでのターンではバランスを崩してしまった。
第2エアでの着地も板が少し流れてしまったが、
表彰台に立った選手と明暗を分けたもの、1ポイント以上の差は、
ミドルセクションのターンの差でもあっただろう。
自分はそれなりに上村愛子のファンなのだが、
「24.68ポイント 現在2位」のテロップを見た瞬間、
彼女のメダル獲得は奇跡でも起こらない限り無い、と感じた。
それこそ上村の後の競技者4人中3人でも転倒しない限り・・・・・。
不謹慎ではあるが、あの時点での“奇跡”とはそういうことだった。
それが現実だった。
 
それでも自分の上を行った選手に「良かったね」と声をかけられるところに
彼女の成長を一番感じとれる。
ソルトレイクでも、トリノでも、レース後は一人悩み、一人泣いた。
だが今回は苦しさや悔しさを昇華してライバルへの賞賛や、
自分を支えてくれる人への感謝の意として伝えられる術を備えていた。
大会前から、メダル獲得の鍵は「メンタリティ」と言われていただけに
そのポイントをクリアしていたのには、我々が嬉しくもあっただろう。
 
 
 
 
個人的に思うのは、
上村にモーグルの素晴らしさを伝え、上村が追い続けた存在、
里谷多英の滑りが上村に勇気を与えたのではないか、
と勝手に思っている。
第2エアで転倒はしたものの、それまでの里谷の滑りは正に鬼気迫るもので
ミドルセクションでのダイナミックなターンは、
五輪の大舞台に強いというジンクスを再認識させるものだった。
板をゴール目掛けて縦に、いわゆる攻撃的な滑り― 、
それは10代の頃から世界を転戦している上村愛子の真骨頂でもある。
上村のターンは確かにバランスが崩れていたが、
それは何よりも上村自身が攻めの滑り、上村らしい滑りをした証でもある。
 
 
 
そして、オリンピックとは言わば“巡り合わせ”でもある。
 
00-01シーズンはW杯総合2位。
しかし2002年のソルトレイク五輪では6位。
五輪後の02-03シーズン、レークプラシッド大会でW杯初優勝。 
エア強化に励みだした04-05シーズン、
必殺のコークスクリューを決めて、ボス大会でW杯2勝目。
それでも2006年のトリノ五輪では5位。
 
トリノ以後、基本に立ち返りターン技術を磨くべく、肉体改造へ。
ヤンネ・ラハテラのもとカービングターンを習得。
そして上村の競技人生を燦然と輝かせる07-08シーズン、
ワールドカップ5連勝を含む、総合優勝の快挙。
08-09シーズンは猪苗代の世界選手権で、
シングル・デュアル両部門で優勝の快挙。
 
世界を知っている。
天下も獲っている。
それでも“たまたま”五輪で結果を出せないだけ。
 
なによりも今回、表彰台に立った選手たちは、
07-08シーズン、他を圧倒した上村の男子顔負けのカービングを見て
自らもターン技術を磨いた選手たちばかり。
銀メダルを獲得したカナダのジェニファー・ハイルは
「アイコがモーグルのレベルを上げた」とまでコメントしているらしい。
自らのメダル獲得のために取得した高度な技術が
結果的にライバルたちにも手助けとなってしまった。
30歳の上村、26歳のハイル、金メダルのハナ・カーニーは23歳、
強靭な肉体を手にして始めて駆使できるカービングターン。
モーグル界でベテランの域にさしかかりつつある上村にとって
これを“巡り合わせ”と言わずして何と言おう。
 
 
彼女がモーグルと出会ったバンクーバー。
“ここでメダルを取れたらやめてもいい”という考えさえあったという。
そして2014年、ソチ五輪では34歳になる。
個人的には、まだまだ彼女の滑りを見ていたい。
 
 
「楽しんでやりたい」
 
 
よくオリンピックや、スポーツの世界大会に臨む選手が口にする言葉だ。
もし、上村愛子が4年後のソチを目指すなら
「楽しんで滑る」、それだけを意識して滑ってほしい。
トリノからバンクーバーまでの4年間、
彼女は相当なプレッシャーと付き合ってきたはずである。
それならば、そんなプレッシャーと引き換えに
モーグルを通して感動を与えてくれた上村愛子に、
オリンピックの素晴らしさを伝えてくれた上村愛子に、
ソチまでの4年間は、ただただ「楽しんで滑る」という特権を
プレゼントしてあげたいと思うのは、僕だけではないだろう。
 
 
何と言えばいいだろう。
「自分で自分を褒めてあげたい」と言った、
かつての伝説的マラソンランナーのような境地にいる上村愛子。
とにかく「お疲れ様でした」、と声をかけてあげるのが一番でしょう。
そして、彼女は旦那様の応援を頑張るのでしょう。
 

posted by tacleau7 |06:57 | ■ その他 | コメント(1) | トラックバック(2)
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上村愛子ちゃん、一歩一歩・・・メダル届かなくて残念 【FX初心者応援!主婦投資家の100万円運用ブログ】

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上村愛子 金メダル以上の存在

コメント投稿者ID : NID00001522

良いエントリーですね。少し涙が出てきました。

愛ちゃんは清清しくて、潔癖でスポーツマンの鑑だと思います
ストイックで言い訳がましくなくて見習いたいところが多いです

個人的には減りつつあるスキー人口活性化のためにも
辞めないで続けてほしいと思いますが、このままひっそりと
湯沢か白馬でスキー宿をしてゆっくり暮らしていくのも
愛ちゃんだからこそ出来得ることなのかなとも・・・

日本の全てのスポーツマンのために、愛ちゃんには
もっと多くのことを語っていって欲しいと思います

posted by lullaby | 2010-02-17 17:56

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