2009年12月13日

2009 J1総括 ~悪しき波を乗り越える術~

 
鹿島アントラーズが前人未到のV3を成し遂げた2009年のJ1。
これで2005年の1シーズン制導入以降、
5シーズン連続で最終節に優勝が決まる展開となった。
確かに鹿島は強かった。
それでもかつてのヴェルディ、磐田、横浜のように
ダントツの強さを誇るチームではなかったのも事実。
毎年、秋にさしかかると各メディアが
「Jリーグは過去に例を見ない大混戦・・・・」
「勝ち点●差に△チームがひしめく・・・・・」
と謳いはじめるのは、お決まりとなっている昨今である。
 
そういう意味で考えると、当SEXY SPORTSでは
2009年のJ1を表す漢字を『波』と表現させていただきます。
 
上から順位を数えてみると、
鹿島、川崎、ガンバ、広島、東京、浦和、清水、新潟、名古屋・・・・・
と全部挙げたら切りが無いので、比較的上位にいた9チームに絞りますが
とにかくほとんどのチームが
1年の中で勝ち切れない、バイオリズムが最低の期間に苛まれた。
今季の大混戦の理由はここにある。
 
 
鹿島は8月1日の広島戦から、10月7日の川崎戦(再試合)までの9試合で
5連敗を含む2勝7敗という大失速が響いた。
夏場にさしかかって運動量が落ちたことで
連動性溢れるプレッシングの機能美が失われたことが主な要因。
5連敗中の総失点は13。
1年で30失点したチームだから、約半分をこの5連敗中に喫したわけだ。
浮上のきっかけとなったのは中田浩二のボランチ起用で
ディフェンスを建て直したことが大きい。
守備の負担が減った小笠原、野沢が躍動し始め、
気が付けば、いつもの鹿島に戻っていた。
 
ただ、チームの課題は目下のところ選手層の底上げである。
低迷脱出に一役買ったのはベテランの中田で、若手は依然として台頭しない。
昨シーズンの顔ぶれと違ったところは
新井場が陣取っていた左サイドバックの定位置をパク・チュホが脅かしたぐらい。
固定された11人だけで1年間ハイパフォーマンスを続けるのは難しく、
そう考えると夏場の失速も頷けるのだ。
シーズン終盤には「誰が出ても同じ戦い方をできるのが鹿島の強み」
と鹿島関係者からよく聞かれたコメントだが、僕はあまりそう思えない。
V3という名の座布団は座り心地がいいものだろうが
一歩間違えば世代交代に失敗する紙一重の局面にいる鹿島。
育成と補強。オリベイラ監督は来季、いっそう多忙になるだろう。
 
 
2009年最も波が穏やかだったのは川崎かもしれない。
リーグ戦での連敗は9月に喫した1度だけ。
敗れても的確な修正力で嫌な流れを断ち切った。
さらに選手層も日を追って分厚くなっていった。
菊池、横山、養父、田坂らは主力不在の穴を感じさせない安定感を見せ
レナチーニョは守備意識が高まり、
中村憲剛はボランチ、トップ下、サイドとポジションを変幻自在に変えた。
持ち駒の質を見極めて積極的に起用し、
プレーの幅をも広げさせた関塚監督の手腕には拍手を送りたい。
足りなかったのは、タイトルそのものだけだったが
しいて言えば、もう少し守備面での粘り強さが必要だろうか。
今季リーグ戦での完封試合は9つだが、これはAクラス9チームの中で最少。
爆発力あるFW陣を生かす守備面の、さらなる改善が求められる。
それでもコンスタントに勝ち切ってきた強さは、最もチャンピオンらしいものだった。
 
 
昨シーズンのアジア王者、ガンバ大阪は3位でフィニッシュ。
しかし、こちらも5月から7月にかけてホーム公式戦6連敗という時期があった。
すっかりお馴染みとなった中盤の構成力をいかしたオフェンス術だが
リトリートする相手を崩せず、カウンターをもろに食らって自滅する悪循環に陥った。
攻撃サッカーを展開する上で、守備面を非常に重要視している西野監督。
この危機から脱し、8月下旬のリーグ戦24節からの9試合を
6勝3分けの快進撃で過ごせたのも、やはり守備面の見直しが大きかった。
オリベイラ監督は中田の抜擢で局面を変えたが、
西野監督は、選手の顔ぶれはそのままに、守備への意識付けを変え、
コンパクトな布陣で守備ブロックの形成をきっちり行って、チームを軌道に乗せた。
今季も中東からマークされる、他のチームが持ち合わせない弱点を抱えていたが
途中加入のペドロジュニオールを加え、2ケタ得点者が4人いるのは流石。
前田遼一、ワシントン。早くもストーブリーグを沸かせているのも、ガンバの常だ。
 
 
 
ACL常連の上位3チームは、個の面でも組織の面でも頭1つ抜け出ている。
しかしこの3強に迫ったチームも見事な戦いぶりを見せた。
その顕著な例が4位のサンフレッチェ広島であろう。
 
J2を席巻した攻撃力に「J2だからでしょ」と高をくくっていた管理人は恥ずかしい。
驚くべき最終ラインのビルドアップ能力に、
サイド、中央を所狭しと駆け回る運動量溢れる中盤と、
それを引き出すエースの存在感。今季最大のサプライズと言っていいだろう。
泥沼の連敗には遭遇しなかったが、少なからず波はあったし、
4−1のスコアで勝利した18節の千葉戦と最終節の京都戦のあいだ、
15試合での勝ち試合がすべて1点差勝利という薄氷ぶり。
だがこのチームもガンバ同様、攻撃的なサッカーを模索する一方で
そのために守備面を見つめ直して、成果を出してきたチームだ。
攻撃時は1〜2バック、守備時は5バック。
割り切ったゲームプランが奏功し、粘り強く勝ち切れたのは確か。
森崎兄弟やストヤノフら負傷者が続出した中でも戦い方に大きなブレはなかった。
天皇杯でガンバが優勝すれば、来年はACL出場となる。
J2からJ1に上がって戦い方の幅が広がったように、
Jからアジアへ出て、また1つステップアップしそうなチームである。
 
 
管理人が愛してやまないFC東京は5位。昨季より1つ順位を上げた。
レビューは今度しますが、苦しい台所事情でよくランクアップしたと思います。
鹿島同様、固定された11人が高次元のポゼッションサッカーを展開しましたが
一方で鹿島をも上回るJ1最多完封試合15を誇る守備陣の奮闘も良かったっす。
ただ、やっぱり開幕10試合で6敗もしてしまったツケは厳しかった。
 
 
フィンケ体制でスタートした浦和。
「個」から「組織」、「点」から「線」への変革初年度だった。
僕は浦和は好きではないと言うか、はっきり言って嫌いなのだが
やってるサッカーは以前のもより断然好きだし、セクシーだと思う。
7連敗という負のスパイラルにハマって、
少し昨年のような堅守だけが売りの時期もあるにはあったが
(それに東京がやられたのも確かだが)
オフに人員整理をして、フィンケの求める人材が集まれば
来季はもっと面白い存在になりそうだ。ブレない戦いを続けてほしい。
 
 
一時は首位にも立った清水だが、最終的には7位。
7〜9月という一番暑苦しい時期を無敗で乗り切る“夏王”として名を馳せるが
例年スタートダッシュに失敗しているのも事実。
そして10年ぶりにリーグ戦首位に立った28節以降に5連敗を喫するなど
タイトルへのプレッシャーもあっただろう。
長谷川監督は大変“渋い”チームを作り上げたがメンタル面の強化は必要か。
そして、成熟した守備組織と決定力ある前線のタレントと比較すると
もう少し中盤に実力者がほしいような。
ヨンセンと永井を獲った昨年のような派手さをオフに求める。
「清水・小野伸二」の方向性がホントならアツいなぁ〜。
 
 
我がFC東京を開幕戦でボコボコにして波に乗ったのが新潟。
堅守速攻が魅力のチームにペドロジュニオール、大島が加わって
矢野貴章と組む3トップは少し新鮮だった。
マルシオリシャルデス、松下から繰り出すショートカウンターも一級品で
序盤のJ1を大いに盛り上げたが、失速したのは7月から。
5試合連続引き分けの後、3連敗。
やはり新潟にも強烈な「個」がもう1枚必要かもしれない。
当ブログでは『Jリーグオールタイムベスト11』という企画を進行中ですが
新潟というチームは、本当に人選に困るほどインパクトが薄いのです。
来季は黒崎監督というのは本当なんでしょうか。大丈夫なんでしょうか。
 
 
2008年のJ1で最もセクシーだったピクシー率いる名古屋は9位。
やはり発展途上のクラブだけにACLとの連戦は厳しかったか。
我がFC東京がリーグ戦とカップ戦でボッコボコにしてしまった夏場は
目も当てられなかった。それでもストイコビッチ監督は
ケネディやブルザノビッチ、三都主の獲得で現有戦力を底上げする一方で
昨年には無かった戦術面での柔軟性を発揮して乗り切った。
3バックと4バックの併用、玉田、小川らユーティリティ性が高まった主力選手、
リーグ終盤にはバルセロナを意識したような3トップまでハマったらしい。
ピクシー長期政権の様相。闘莉王も獲っちゃうようだし、来季も楽しみだ。
 
 
 
他に気になったチームを少し。
 
 
監督交代で揺れた神戸だが、
三浦監督就任後は伝統の堅守が復活し、降格圏内を脱出した。
しかしオフに大量補強を敢行したのも空しく、やはり下位に低迷。
このチームに求められるのは、一にも二にも攻撃面のリスクマネージメント。
上位陣が守備を改善して攻撃性能を高めたように、神戸にも
持ち前の守備力を巧く還元して攻撃に切り替えられる組織の構築が必要だ。
守備的志向と思われがちな三浦監督が就任した直後に
「イメチェンしたい」と漏らしたのだが、クラブに必要なのもそれだろう。
 
大宮や京都にも同じことが言える。
「まずは守備から入ってカウンター」という戦い方では
結果から見てJ1に残留するのが精一杯というところが実情なのだろう。
一時の上位イジメでJ1戦線を賑わすことはあっても
自らが上位へ進出することは難しいようだ。
 
そういう意味で、開幕前は降格の最有力といわれていた山形の奮闘が光る。
18チーム中、もっとも地味なタレント性ながら
小林監督の徹底したスカウティングと統一された戦術理解度でJ1を生き抜いた。
ストーブリーグでの活躍は望めないだろうが、健闘を祈りたい。
 
降格3チームに関しては致し方ないところだろう。
柏は、開幕当初の監督が何をしたかったのかさっぱり分からなかったし、
千葉に関しては、交代後の監督からも展開するサッカーの意図が見えない。
大分は、最近の報道を見ている限り、
14連敗は必然のものだったのかもしれない。
 
 
 
では最後に、SEXYSPORTS選定ベストイレブンを。
これが言いたいがために総括してるようなもんですからね。
 
 
【ベストイレブン】
                  ジュニーニョ/川崎
 
 
       マルシオ・リシャルデス/新潟    石川 直宏/東京
 
 
 
     遠藤 保仁/G大阪              中村 憲剛/川崎
 
                  小笠原 満男/鹿島
 
 
 槙野 智章/広島                       市川 大祐/清水
 
           今野 泰幸/東京    岩政 大樹/鹿島
 
 
                   曽ヶ端 準/鹿島
 
 
 
【SUB/次点】
 GK北野 貴之/新潟   DFストヤノフ/広島   DF岩下 敬輔/清水
 MF明神 智和/G大阪  MF柏木 陽介/広島
 FWエジミウソン/浦和  FW前田 遼一/磐田
 
 
【MVP】  岩政 大樹/鹿島
 
【新人王】 米本 拓司/東京
 
【最優秀監督】  ミハイロ・ペトロビッチ/広島
 
【ベストゴール】  ドラガン・ストイコビッチ/名古屋
 
 
 
審査基準は“1シーズン通してコンスタントに高いパフォーマンスを見せた”こと。
ケガで戦線離脱した選手も少しいますが、まぁそこが基本線です。
アウォーズの選考は、昔からA代表での働きも加味しているのか、
なんか政治的な匂いがして、かなりキライです。
てゆーか全員日本人選手なんてありえないでしょ。
 
GK、DF部門は堅守が光った鹿島、清水、新潟陣と
攻撃的DFとしてJを沸かせた東京、広島陣からという顔ぶれ。
今野を選ぶのは手前味噌な感じですが、ホントに良かったんですから。
さっきも言いましたがJ1最多15完封ですからね。
このポジションで34試合フルタイム出場だし。選ばれる権利はある。
ストヤノフは戦線離脱した分だけ、サブ選出となりました。
 
中盤は甲乙つけがたく、5人選出のクリスマスツリー型となりました。
3センターの顔ぶれは超豪華です。でも代表でこの並びは通用しないでしょう。
それにしてもマルシオ・リシャルデスは素晴らしかった。
アウォーズでは漏れましたが、
「誰か辞退してリシャルデスに譲れ」と言いたくなるくらい、今季は良かった。
本当は明神をスタメンにしたかったのですが、
アウォーズMVPに敬意を表して小笠原を中盤の底に無理やり入れました。
でも当ブログでは、MVPは岩政です。
年間通してパフォーマンスは落ちず、堅守を支えた。
小笠原はやはり5連敗時の低調ぶりや、つまらない退場とかあったので・・・。
 
 
なのでジュニーニョの1トップとなりました。
前田は素晴らしかったですが、上位から点を獲ってるイメージが無いので・・・。
やっぱりベストイレブンは上位から選ばなければ。
 
 
新人王は大卒の即戦力より、高卒の伸びしろを評価しました。
これも手前味噌かもしれませんが、
数字では分からない働きは素晴らしかったですね。
他にも菊池光将(川崎)も候補と言ってよかったでしょう。
そういえばどっかの新聞が
「MVPも新人王も得点王もいない日本代表の選考はいかがなものか」
的な記事書いてましたが、酷いですよね。
前田呼んでるじゃん。
新人王って、実力はあるにはあるけど、いきなり代表で通用すると思いますか?
 
 
最優秀監督は、すいません、ペトロビッチにしました。
V3の偉業は確かに素晴らしいのですが・・・・・
センセーショナルだった広島のサッカーにさせてください。
ベストゴールも、プレイヤーの決めたものの中で
コレといったものが無かったので・・・・・。
でもアレはすごかった。
 

※タイトル修正しました。
  ご指摘いただきありがとうございました。

posted by tacleau7 |15:35 | ■ Jリーグ/国内サッカー | コメント(3) | トラックバック(0)
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2009 J1総括 〜悪しき波を乗り越える術〜

コメント投稿者ID :

ベストゴールピクシーww
確かにすごかったなあ
でも浦和戦の寿人のゴールもよかったですよ。
広島のオールタイムベストイレブンやってほしいです。

posted by se | 2009-12-13 23:23

2009 J1総括 ~悪しき波を乗り越える術~

コメント投稿者ID :

>さっきも言いましたがJ1最多15完封ですからね。

今野を選ぶこと自体は良いのですが、上位からゴールをあげていないからと前田を外したのに、上位からボコボコのFC東京のDFを選ぶのは不公平でしょう。

>新人王は大卒の即戦力より、高卒の伸びしろを評価しました。

純粋に、残した結果から判定するのが良いのでは?
伸びしろとなどという不確定なもので現在を評価するのは手前味噌過ぎですよ。

>センセーショナルだった広島のサッカーにさせてください。

ペトロビッチを最優秀監督に選ぶのは良いのですが、選ぶべき理由は、センセーショナルだった前半戦のサッカーではなくて、現実的な戦術を取り入れた後半戦のサッカーだと思います。
理想に固執せずに、良さを消すことも無く、現実的なサッカーを取り入れることは簡単なことではありません。

>ベストゴールも、プレイヤーの決めたものの中でコレといったものが無かったので・・・・・。

ピクシーのベストゴールは納得ですが、本来ならば柏のフランサのゴールがベストでしょう。
あのスーパーゴールを見なかったとはもったいない。

posted by 手前味噌 | 2009-12-14 06:12

2009 J1総括 ~悪しき波を乗り越える術~

コメント投稿者ID :

川崎のチャンピオンらしいチームには疑問。
結果がそれを示している。
チャンピオンに必要なのは、コンスタントに勝つ事は当然、
重要なのは勝負どころで、きちんと勝つ事とだと思う。
そういう意味ではナビスコ決勝のFC東京のサッカーは
チャンピオンにふさわしいサッカーだったと思います。
ここ最近の強いんだか、弱いんだかわからない、
FC東京のサッカーから、脱却したかなと思わせる内容でした。

posted by チャンピオンらしいチーム | 2009-12-14 11:24

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