2008年03月25日

〈PLO/AMS〉セルビア勢がアベック優勝 前編

いろいろ波乱のあった春のグランドスラムの最初の大会が終了しました。みなさま、月曜日にもかかわらず、早朝から熱い試合をご覧になって、テンション高くなってしまったのではないでしょうか(あるいは、睡眠不足がどっときた?)。

さて、今年のIWは、女子も男子もセルビアの若手が優勝を手にするという結果で終わりました。

ジョコビッチもイワノビッチも、2006年あたりから一気にランキングを上げて、昨年、さらに飛躍した20歳の選手です。

ジョコビッチは昨年、このIWで準優勝を果たし(ナダルに敗戦)、マイアミで初のAMS優勝(QFでナダルを破った)、そして全仏とウィンブルドンでSFに進出し(いずれもナダルと対戦、ウィンブルドンは途中リタイア)、夏の北米ハードコート・シーズンのロジャーズ・カップ(トロントで行われたAMS)ではロジャー・フェデラーを破って優勝、USオープンでは決勝まで勝ち上がり、常にリードを奪いながらあと一歩のところでフェデラーに破れました。

その後はややバーンアウト、TMC(テニス・マスターズ・カップ)ではまったく元気なく全敗したものの、今年の全豪オープンでは、SFで再びフェデラーを破り、決勝では大会の台風の目となったツォンガをも破って、初のGSタイトルを手にしました。

イワノビッチが最初に手にした大きなタイトルは、2006年のロジャーズ・カップ(モントリオールのティアI大会)でした(対ヒンギス)。WTAツアー2勝目にして、この大きなタイトルを手にしたイワノビッチは、そこからさらに飛躍します。翌2007年の東レPPOでは、肩の故障で不調だったとはいえ、シャラポワをプレーで圧倒し(結局、シャラポワは途中棄権)、決勝に進出。決勝では緊張もあったのか、カタさが見られ、ヒンギスにリベンジを食らいましたが、彼女の成長には目を見張るものがありました。

そしてクレー・シーズンに入り、ベルリン・オープンでクズネツォワを破って優勝すると、全仏でもシャラポワ、クズネツォワを破り決勝進出(いきなりエナンをブレイクしたことで緊張が生まれ、その後は初の決勝という現実にガチガチになっていいところが出せませんでしたが)。そして、今年の全豪でも決勝に進出を果たしました。

日本では準決勝、決勝の合計3試合ずつしか放映されないため、今大会の2人の戦いぶりをつぶさに見ているわけではありませんが、決勝の2人のプレーを見て思ったのは、テクニックはもちろんのこと、20歳にして勝負どころでの強さ、駆け引きのうまさがよりレベルアップしているな、ということでした。フィッシュもクズネツォワも決して悪いプレーをしていたわけではありません。それどころか、非常にいいプレーをしたと思います。特にフィッシュ。勝ってもおかしくないプレーを見せてくれました。クズネツォワは…言いたいことは山ほどありますが(笑)、SFでの煮え切らないプレーとは違い、彼女もまた、勝てない試合ではなかったと思います。それでも、ジョコビッチとイワノビッチが勝つことになったのは、その違いが大きかったからだと言えるのではないでしょうか。

病気の影響でフィジカルが低下し、プレーのなかでも強いメンタルが見られないフェデラー、ハードコートでのプレーを模索するナダル、膝に爆弾をかかえているエナンと、肩に爆弾を抱えているシャラポワ。そういった側面はあるものの、いよいよこの若いセルビアの2人の足音が迫ってきている。今大会のジョコビッチとイワノビッチのプレーを見ながら、そうヒシヒシと感じております。

では、女子シングルス、男子シングルスの決勝について振り返ります。

アナ・イワノビッチ(SRB)[1] × スベトラーナ・クズネツォワ(RUS)[2] 6-4/6-3

この試合、イワノビッチのワイドへ大きく弾んで逸れていくスライス系の1stサービスを多用していました。クズネツォワをコートから追い出し、オープンコートへすかさず攻撃する(ジョコビッチのライジングショットのタイミングの早さも見事ですが、女子では今はイワノビッチがこのショット、ピカ一なんじゃないでしょうか)。とはいえ、クズネツォワは守備にも優れている選手。コートの外へ追い出されても、すかさず体勢を立て直し、ポジションに戻るだけのフットワークを持っています。ラリーにもキレが戻り、SFのようなミスはほとんどありませんでした(また、この日はクズネツォワのサーブも好調でした)。

この試合、先にブレイクチャンスを握ったのはクズネツォワでした(第1セット第4ゲーム)。一度はイワノビッチも40-15とするのですが、コートやや真ん中でのラリーからクズネツォワが後ろに下がりながらフォアでダウン・ザ・ラインへウィナーを奪い、40-30とすると、ラリーで主導権を握りながらも、すべてのボールに食らいつくクズネツォワの前にイワノビッチがフォアをネットにかけてしまい、デュース。さらに、ワイドへの1stサービスを読んでいたクズネツォワがフォアでクロスへ放ったリターンにバックハンドを大きくアウトさせて、クズネツォワがブレイクポイントを握るのです。

クズネツォワとしては、まだ全快モードではないイワノビッチをここで破っておきたかった。しかし、イワノビッチはワイドへの1stサービスからオープンコートへすかさずフォアでウィナーを奪ってデュースに戻すと、センターへのサービスウィナーでゲームポイントとします。クズネツォワがクロスへのフォアのパッシングで三度デュースにして粘りますが、今度はセンターへの1stサービスでクズネツォワのリターンをアウトにさせ、最後もセンターへの1stサービスでリターンを崩してセンターからフォアでクロスへのサイドラインぎりぎりを狙ったボールがウィナーとなり、クズネツォワを振り切りました。

その後、再びキープが続きますが、第9ゲーム(クズネツォワのサービスゲーム)、そこまであと一歩でブレイクチャンスというところまではいくものの、なかなかブレイクポイントを握れなかったイワノビッチがギアを上げてきます。ダウン・ザ・ラインへのフォアのパッシング、バックのダウン・ザ・ラインへのウィナーで15-30とすると(1本バックハンドのダウン・ザ・ラインをネットにかけて30-30となりますが)、ラリーでクズネツォワを左右に揺さぶりブレイクポイントを握ると、最後も、フォアでクロス、ワイドへとクズネツォワを走らせ、ブレイクに成功。そして、サービング・フォー・ザ・セットとなった第10ゲームでも、フォアのダウン・ザ・ラインへウィナーを奪うと、サーブ力でクズネツォワのリターンのタイミングをはずし、ラブゲームでキープ、第1セットを締めるのでした。

決して悪いプレーをしているわけではなかったのですが、私がクズネツォワ目線で試合を見ているからでしょう、勝負という部分で躊躇が見られるクズネツォワに、この日ももどかしさを感じていました。というのも、SFのシャラポワ戦でもそうだったのですが、いいコースへハードヒットして、一瞬、前に出ようとするのに、ステイバックするというシーンがかなりあったからです。なぜ、そこで畳み掛けていけないのか…テクニックだけをとれば、すべてのツールは揃っているんです。にも関わらず、その勇気が出ない。仮に失敗(ミス)したとしても、どんどんコートの中へ入ってプレーしようとするイワノビッチにプレッシャーをかけていかなければ、チャンスになったときに生かせないではないか!

また、クズネツォワはこの試合でイワノビッチのバックハンドを徹底して狙っていたのですが、以前よりもイワノビッチのバックハンドは安定感が出てきているだけでなく、キレと威力が増して武器にもなりうるショットを放つことができるようになっています(その通り、この試合のイワノビッチ、クズネツォワがバックハンドを狙いすぎたせいもありますが、おそらくフォアよりもバックハンドのウィナーが多かったのでは)。クズネツォワはダウン・ザ・ラインへのバックハンドも持っているのに、なぜ要所でそこを突いていけないのか(ま、最近、バックのダウン・ザ・ラインを狙って大きくアウトっちゅうのが多いとは思っていますが、それでも打っていかないと!)。

なーんて、愚痴ってますが(笑)。ほんとに、ほんのちょっとした気持ちの面なんですよねぇ。クズネツォワぁぁぁぁ……ほんとはこんなスコアになってちゃいかんのよぉぉぉぉ~……。調子は悪くなかったし、いいプレーもたくさんあっただけに、非常に残念。第2セット、第3ゲームをブレイクされてから、積極的なプレーになり、第4ゲームをすぐにブレイクバックしたのですが、なんでそれをもっと勝負どころでやらんのだー、となおさら思いました(苦笑)。

一方、ブレイクバックされてイーブンに戻されたイワノビッチは、さらにギアを上げてきます。第5ゲームこそ30-40のブレイクチャンスを生かせませんでしたが(それでも攻撃の手を緩めず)、自身のサービスゲームをしっかりキープし、第7ゲーム、リターンを叩き(第5ゲームでもどんどん叩いてくるようになっていた)、ラリーでもちょっとの隙あらばウィナーを奪いに行きます。そして、3度のデュースの末、ブレイクに成功するのです(クズネツォワもいいサーブを放ったんですが、イワノビッチのリターンがそれを上回り、フォアをネットにかけてしまいました)。

こうなると、イワノビッチ、止められません。第8ゲームをラブゲームでキープすると、そりゃもう、このまま決めてしまおうという気持ちが体からむんむん放たれていました。第9ゲーム、クズネツォワの2ndサービスをフォアに回り込んでクロスへコーナーいっぱいにリターン、これがリターンエースとなり0-15とすると、なんとここで、クズネツォワがダブルフォルト(弱気になったわけではないんですけどね、より深く、外へ追い出そうとした2ndは、そこまでリターンを叩かれていたことが効いていたのかもしれません)で0-30、さらには、ラリーでクロスへのフォア&バックハンドクロスとどんどん早いタイミングでボールを打ち、ウィナーを奪って0-40と一気にマッチポイント。

クズネツォワもセンターへの1stサービスを入れて、イワノビッチのリターンをアウトにさせ1本しのぎますが、最後は、1stサービスがフォルトのあと、観客の声が入って、間があいてしまったせいでしょうか(ちょっと気の毒だった)、2ndがやや甘く入って、イワノビッチにリターン(フォア)をダウン・ザ・ラインへ叩き込まれ、試合が終了しました。

シドニー、ドバイ、そして今大会も決勝では(しつこいようですが)決して悪いプレーはしていないんです、クズネツォワは。集中力もあったし、さすがのプレーもありました。でも、勝てないんですよね。

彼女の場合は、勘違いと思われるくらい自信満々になってもいいと思うんですけども(それくらいにならないと、この壁はなかなか破れそうにないと思うのは私だけ??)。先手を打てるテクニックを持っているのに、勝負師になれない、もう、それに尽きます(もちろん、以前に比べると、ずいぶん成長したと思いますが)。

ドバイでの表彰式では、スピーチのとき、無理に少し笑顔を作っていたクズネツォワでしたが、今回はニコリともしませんでした。チャンピオンにだけ贈られるブレスレッドを「ほら」というふうにクズネツォワにニコニコしながら見せようとするイワノビッチに対しても、カタい表情のまま前を見つめたままでした。相当悔しいと思います。でも、その悔しさが彼女に強い気持ちを植え付ける肥やしになるはず。そして、今度こそは決勝でスカッと勝って満面の笑みでスピーチする姿を見せてください!!!

と、クズネツォワのことばかり書いてしまいましたが、イワノビッチ、冒頭でも書きましたが、どんどん強くなっています。ライジングショットのタイミングの早さも、ここぞというときのサーブも本当に素晴らしかった。バックハンドもはっきり言って弱点ではない。今度はGS初タイトルを手にする姿を見てみたいです。おめでとう!!

ちょっと長くなってきましたので、男子決勝については次のエントリで。
が、しかし、間もなくまたしても泊まりの出張により、今から準備をしなくてはなりません。男子決勝については明日の夜にエントリしたいと思います。昨日までにいただいたコメントのお返事はその後にまとめてさせていただきますので、いましばらくお待ちくださいませ。

メンテナンスの影響か、記事ジャンルから「テニス」がなくなっているんですけど…

posted by takezoh |04:20 | テニス | コメント(4) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
〈PLO/AMS〉セルビア勢がアベック優勝 前編

女子にはほとんどコメントしていませんでしたが、決勝はちゃんと見ていましたよ。
アナちゃん優勝おめでとう!! takezohさんには申し訳ありませんが、完全にイワノビッチ応援でした。
本当に彼女は強くなった!勝敗を分けたのは、勝ちたいという気持ちの強さだったかもしれません。「アイデ!」を連呼していましたよね。
クズネツォワもいいプレーは随所にあったのに、なかなか勝利に結びつかなかった。表彰式ではホント悔しそうな表情をモロに出してましたもんね。
でも見るほうとしては、いい試合だったので満足でした。

イワノビッチはこれでGS優勝やナンバー1の座も見えてきたんじゃないでしょうか。シャラポワの返り咲きとどっちが先になるか、またエナンが調子を上げて2人の快進撃を阻止するのか、これからも面白くなりそうです。

posted by 美咲 | 2008-03-25 09:00

〈PLO/AMS〉セルビア勢がアベック優勝 前編

 先日発売したテニス誌のインタビューで、イバノビッチは「今年中にGSタイトルを取れると思う」というようなことを言ってました。う~む、強気だ。でもそれくらいの気持ちは必要なんでしょうね。
 ちなみに今回のインタビューでは、ツアーの中に特に親しい友人はいない、と言ってました。みんな戦う相手だから、とのことです。ヤンコビッチについては、実は彼女のことはあまりよく知らないそうです。あと、クズネツォワとゴロビンはすごくいい人なんだとか。
 で、その「いい人」クズネツォワですが、なんか準優勝が多いような印象があります。もうひとつ突き抜けませんね。

 ところで、このブログ(スポーツナビのブログ全体?)ですが、コメントを書き込むのに、暗号(?)を入力するシステムに変わりましたね。

posted by バラージ | 2008-03-25 23:18

>美咲さんへ

いえいえ、私もイワノビッチは好きな選手なので、どんどんイワノビッチを応援しちゃってください。どんどん彼女は強くなってきていますね。シャラポワがまた肩を痛めているので、すぐには真のガチンコ勝負はできないでしょうが、シャラポワに早くよくなってもらって、二人の対決を見てみたいです(エナンとの対決も)。

イワノビッチはクレーでも強いし、痛めていた足首も問題ないようですから、近い将来、ジョコビッチよりも早く世界1位になる可能性、大きそうだなぁ。あまりにもふだんから可愛らしいイワノビッチなので、あとはシャラポワとかエナンのようなオーラをまとったイワノビッチが見たいなぁ。

posted by takezoh | 2008-03-26 00:49

>バラージさんへ

そうなんですよね、イワノビッチ、キャーとか甲高い声をあげる選手で、ふだんもにこやかで可愛らしい選手なんですが、けっこう発言は強気です。今回の試合でも、勝負どころで本当に強くなったなぁ、と思いましたし、GS優勝、あるかもしれませんね。たぶん、エナンやシャラポワをのぞけば、一番近い位置にいると思います(全仏だって充分チャンスありか、と)。

クズネツォワはダレとでも仲良しですよね。セリーナとも買い物行くし、エナンとは大の仲良しだとか聞きますし…それが勝負の邪魔になっているとまでは思いませんが。ただ、決勝で勝てないっていうのはありますよね。実況・解説でもやたらと指摘されていました。あとで本人のインタビュー読むと、今回は相当悔しかったみたいで、ひとつの質問に対してのコメントの短さや、その内容からもそれがよくわかりました。この悔しさ、早くバネにしてもらいたいんですが…。

>このブログ(スポーツナビのブログ全体?)ですが、コメントを書き込むのに、暗号(?)を入力するシステムに変わりましたね。

そうなんです、今回のメンテナンスでスパムTBやコメントで荒れないようにというので、ブログ全体にそういう措置がとられたようです。お手間をおかけします。

posted by takezoh | 2008-03-26 01:04

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