2007年10月22日
〈MMMM〉ナルバンディアンAMS初優勝!!
ダビド・ナルバンディアン × ロジャー・フェデラー[1] 1-6/6-3/6-3 第1セット、フェデラーの6-1というスコアだけを見ると、フェデラーがナルバンディアンを圧倒していたと思われるでしょうが(そして、なぜその後、逆転負けを食らったのか不思議に思われるかもしれませんが)、決してナルバンディアンが押されていたわけではありません。ストローク戦では、むしろナルバンディアンのほうが押していて、それによってフェデラーが無理をするという構図のほうが多かったと思います。 ナルバンディアンは立ち上がりからリターンもよく(というか、だからリターンゲームでもストローク戦で主導権を握るシーンが多かったといえます)、フェデラーの1stサービスにもしっかり対応していました。 それでもフェデラーが第4・6ゲームとブレイクして、第3ゲームから5ゲーム連取することになったのは、フェデラーのフットワーク、守備力、瞬時の判断力などによる、最後のツメ(切り返してウィナー)の部分の差なのでしょう。
ちなみに、試合全体を通して、フェデラーはデュースサイド、アドサイドのいずれも、ワイドへのサーブを軸にしていました。特に試合が進めば進むほど、ラリーでは早い段階でポイントを獲らなければならないシーンが増えていくので、コートから追い出してオープンコートを作り、リターンをすかさずオープンコートへ叩く(そしてネットに詰めてボレーを決めるなど)といった形をより多く作ろうとしていたと思います(で、要所でセンターへ)。 しかし、第2セットに入って、徐々にフェデラーのアンフォースド・エラーが増え、ナルバンディアンのストロークのキレ、テンポが上がってウィナーが増えていきます。そして、第2ゲーム、ワンチャンスでブレイクに成功(ナルバンディアンのストレートへ持っていったバックハンドのスライスに、フェデラーのフォアの強打が大きくアウト)。次のゲームではしっかりとラブゲームキープし、流れを引き寄せます。 が、第1セットでもナルバンディアンがデュースからアドバンテージを握った際に、フェデラーのワイドへのサービスエースに対してチャレンジを要求するも、機械の故障か何かでチャレンジできずというアンラッキーな場面があったのですが、ここでもナルバンディアンにやや不利な状況に。第4ゲーム、フェデラーの30-0のところで、なんと、ナルバンディアンの後方の花壇にあるホースが故障して、水漏れが発生。しばしの中断があったのです。 もちろん、フェデラーもプレーを止めなければならないので、中断そのものの時間は両者にとって同じ状況ではありましたが、せっかく3ゲーム連取して、そのリズムで試合を進めたいナルバンディアンにとっては、少し嫌な中断になったのではないかと思います。 その通り、その後は比較的楽にキープするフェデラーに対して、ナルバンディアンは第5・7ゲームといずれもデュースになる展開。第7ゲームでは30-40、40-Aとフェデラーに2度もブレイクチャンスを許してしまいました。しかし、ここでもナルバンディアンは気持ちを切らすことなく、フェデラーの攻撃をしのぎ、最後は甘くなったボールをフェデラーに抜かれそうになりますが(ストレートへのフォアのパス)、それを読んでボレーし、キープに成功します。 そして、第8ゲームはフェデラーにラブゲームキープを許したナルバンディアン、第9ゲームも0-30とフェデラーに2ポイント先行を許しますが、そこから4ポイント連取で、第2セットを奪い返しました。 フェデラーはこの試合、ラリーでもハードヒットを多用して、とにかくナルバンディアンをコートの外へ追い出す、深いボールでベースラインの後ろに下げようとしますが、ナルバンディアンが崩れないため、アウトになるボールがかなり多かった。それだけ、ナルバンディアンがいかに試合を通して、ストローク戦でフェデラーを押していたかがおわかりいただけると思います。 第3セット第1ゲームこそ、フェデラーはラブゲームでサービスゲームをキープしますが、第3ゲーム、そのような形でナルバンディアンにポイント連取を許し(ワイドへのフォアのアプローチショットがアウトで30-40、ナルバンディアンのブレイクポイントでバックハンドクロスをアウトにさせて)、ここでも先にブレイクを許してしまいます。 より積極的にフェデラーを左右に振り、オープンコートへウィナーを奪いに行こうとするナルバンディアン。そのぶん、ミスの数も出ますが、イージーなミスは、第2セットの終盤、チャンスボールでボレーミス、くらいだったと思います。それ以外は、攻めた上でのミスがほとんど。フェデラーも負けずにタイミングを変えてナルバンディアンのミスを誘う、あるいは、カウンターでウィナーを狙うなど、攻撃的な姿勢は崩しませんでしたが、なかなかナルバンディアンをブレイクすることができません。 そして、第9ゲーム(フェデラーのサービスゲーム)、ここをキープしなければ負けてしまう場面、15-0、30-15とポイントは先行するのですが、そのたびにナルバンディアンに追いつかれ(30-15からはナルバンディアンがダウン・ザ・ラインへバックハンドのリターンエースを決めて30-30にした)、次のポイントではストローク戦でフェデラーが先にミス(クロスへのフォアをアウト)。遂に、ナルバンディアンにマッチポイントがやってきます。 ここで1stサービスが欲しいところなのですが、このゲームはあまり1stサービスが入っていなかったフェデラー。ここでも1stサービスが入りません。そして、センターへの2ndサービスをナルバンディアンが叩き、フェデラーをフォア側へ走らせ、すかさずネットに詰めてオープンコートへボレー。ワンチャンスで試合を決めたのでした。 今回の試合は、ナルバンディアンが最後まで流れをフェデラーに渡さないといった、勝ちへの気持ちが強く出た試合だったと思います。試合後、スタンドにいるナルバンディアン陣営のところへ駆け上がって抱き合った後、ちょっと泣いてましたね、ナルバンディアン。決勝という舞台も久々ですし、ツアータイトルも久々、しかも初めてのマスターズ・シリーズのタイトルですから。フェデラーに勝ったことよりも、優勝した事実が、ナルバンディアンの目に涙をもたらしたんだと思います。 フェデラーが調子悪かったとかではありません(フェデラーが負けると、そういう方向に話が行きがちですが、体調も良さそうだったし、ショットひとつひとつのキレもあったと思います)。おそらく、GSではまだまだフェデラーが強さを見せることが多いと思いますが、マスターズ・シリーズ以下の大会では、フェデラーの調子が悪くなくても、負けるシーンが増えていくんだろうな、そう思った試合でした(この後、地元バーゼルの大会も出てパリと連戦が続くので、ちょっとパリも心配だったりしています)。 ここ最近は、ニュー・ボールズ世代がなかなかフェデラーに勝てない状況が続いていましたが、そのニュー・ボールズ世代のひとりで、今季低迷していたナルバンディアンがついに復活。やはり、彼はいい選手だなぁ、と改めて思いました。この決勝もいいプレーを見せてもらいましたが、彼はまだまだもっと高いレベルでもプレーができると思います。以前から世界1位になれる選手、GSのタイトルを獲れる選手だと言われていたわけですし、そのどちらもまだ実現していませんが(そして、世界1位は難しいでしょうけど)、マスターズ・シリーズのタイトルを獲った次はGSも頑張って狙ってほしい。 そして、同世代の他の選手は、これに刺激されて、後に続いてほしい、そう思います。 ナルバンディアン、マスターズ・シリーズ初優勝、おめでとう!!!
posted by takezoh |05:37 |
テニス |
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この記事に対するコメント一覧
Re:〈MMMM〉ナルバンディアンAMS初優勝!!
ナルバンディアン優勝おめでとう!見事でしたね。第2セット以降は素晴らしい出来でしたね。フェデラーを振り回し自分のプレーに徹してましたね。以外だったのがマスターシリーズ初優勝だったこと・・・これで完全復活ですか。
フェデラーは調子が悪くはありませんでしたよね。ただエースを狙ったものが入らなかったり、ナルバンディアンの球に押されてましたね。でもフェデラーらしいプレーも随所に見られましたからまだまだナンバー1は譲らないとは思いますが、他の選手との差が縮まってきたのかな、と思い始めました。。。
posted by rieechan | 2007-10-22 08:24
>rieechanさんへ
マスターズ・カップでは優勝しているのに、マスターズ・シリーズのタイトルがないっていうのも不思議な感じですよね。これを機に、本来の強さを安定して出してもらいたいなぁ、と思います。って、すぐにシーズンオフですけども。
フェデラーは体調は良さそうだったので、ナルバンディアンに無理させられていたという感じでしたよね。なかなか肝心なところでエースが決まらなかったりしたのは、ナルバンディアンのリターンが良かったからなんだと個人的には理解しています(フェデラーは、今、いちばん優れたリターナーはフェレールと言っていたそうですが、ジョコビッチ戦、フェデラー戦のナルバンディアンを観る限りは、ナルバンディアンが一番、という印象を持ちました)。フェデラーは今後は、いかにフィジカルを大事な大会すべてで万全に持っていくか、というのが重要になってくるでしょうか。でも、そこそこ調子悪くてもまだまだたくさん優勝するんだと思うんですけども。
posted by takezoh | 2007-10-22 23:02
Re:〈MMMM〉ナルバンディアンAMS初優勝!!
初めまして。la merさんのブログでこちらを知り、ちょくちょく読ませていただいていましたが、コメントさせていただくのは初めてです。
ナルバンディアンが好きで、ずっと期待していたので、今回の優勝を本当に嬉しく思います。やればできるじゃん!という感じです。
フェデラー、決して調子悪くはありませんでしたよね? 少し心配でしたが、タケゾウさんの解説で安心しました。
これからも更新を楽しみにしています。
posted by slycat | 2007-10-22 23:57
Re:〈MMMM〉ナルバンディアンAMS初優勝!!
フェデラーはミスが38本もあったとのことなので、不調だったのかと思いましたが、そうでもなかったのですか。前にナルバンディアンが勝った2005年マスターズ・カップ決勝のときは、フェデラーが怪我をしてたわけですが、今回はガチンコ勝負と考えていいのかな?
ナルバンディアンは、ナダルとジョコビッチにも勝ったのだからもちろん彼が素晴らしかったのだろうとは思いますが、それと同時にフェデラーの強さが絶頂期を過ぎたんだな、とも思わずにいられません。今年の全仏・ウィンブルドン・全米を見ても、全豪までの圧倒的な強さは影を潜めたように感じます。
奇しくも『スマッシュ』12月号のスマッシュ調査団では、「誰がフェデラーの次に1位となるのか?」というテーマでしたが、その中で「同世代のヒューイット・サフィン・ロディック・フェレーロ・ナルバンディアンらがそろって24歳限界説にやられてしまったのに対して、フェデラー1人がその壁で踏みとどまったことが、彼の独走の一因でもある」というような文章がありましたが、ようやく彼にもその限界が訪れたということなのでしょう。
ともかくナルバンディアン、おめでとう。あとはこの調子を1年通して維持し続けていくことが肝心ですね。GSで優勝する実力は十分にあるはず。ニュー・ボールズ世代だけでなくベイビー・ボールズ世代とも争っていかなければなりませんが、十分チャンスはあると思います。
posted by バラージ | 2007-10-23 00:02
Re:〈MMMM〉ナルバンディアンAMS初優勝!!
ナルバンディアン優勝おめでとうございます。すごくいい試合でしたね。
ファンの応援がフェデラーよりナルバンディアンのほうが多かった気がするのですが、やはり同じスペイン語圏だからだとか旧宗主国と元植民地という関係とかでアルゼンチンの選手が人気あるんでしょうか?
それから、Box席の最前列にリアル・マドリーのカンナバーロとラウル、他のBox席にもセルヒオ・ラモスが観戦に来てましたね。ATPのPhoto galleryにフェデラーとカンナバーロがディナーを一緒にした写真が出てましたが、フェデラーが招待したとか?それともカンナバーロが応援に行くよと約束でもしたとか?
やっぱりスター選手になると他のスポーツのスター選手とも交流がたくさんあるんですね。US openにタイガー・ウッズが応援に来てたのは有名な話ですし。
Takezohさんのレポートを読んでいると、ATPではフェデラーと他の選手との差が少し小さくなってきたような気がしますが、WTAでは逆にエナンと他の選手との差が大きくなってきてる気がします。
posted by えんつぉ | 2007-10-23 00:09
>slycatさんへ
はじめまして、コメントありがとうございます。
ナルバンディアンの優勝、おめでとうございます! 優勝もそうですが、久々に彼のいいプレーが観られたことも嬉しいですよね。本人も来年い向けていい弾みになったとコメントしているようですし、来年(もちろん残りの大会も)がとても楽しみです。
フェデラーの調子、私は悪くなかったと思います。もし悪かったのであれば、ナルバンディアンがそうさせたんだろう、と私は考えています(と書きつつ、こればっかりは主観的なものも入るので、フェデラーのファンの方は調子が悪かったと思う人も多いかもしれませんが/笑)。
ボールを捉えるタイミングといえばフェデラーの絶妙さはずば抜けているかもしれませんが、この試合のナルバンディアンも、それに負けないくらい、うまくタイミングをずらして、フェデラーに無理させていたなぁ、と感じました。
posted by takezoh | 2007-10-23 21:16
>バラージさんへ
上記でslycatさんへのお返事でも書かせてもらったんですが、私自身は、フェデラーの調子が悪いのではなく、ナルバンディアンのボールのタイミングのずらし方、配球で、フェデラーが無理をさせられていたなぁ、という印象のほうが強いです。ボールを深いところに押し込もうとして(しかもハードヒットして)アウトになったりと、けっこう無理させられていたように感じました。
今年の全豪ではパーフェクトな優勝を飾ったフェデラーですが、その後は、大きなものではないですが怪我があったり、体調が万全でなかったりというのがけっこうありましたし、そういう意味でも絶頂期は過ぎたのかもしれないですよね(あと、クレーシーズン+全仏にも神経を使ったというのもあるんでしょうね…)。
そのスマッシュ探偵団による「24歳限界説」ですが、その壁にやられてしまったと言われている他のニューボールズ世代の選手とは違い、ひとり進化していったのがフェデラーで、それが他との差を広げてしまい独走状態になった要因となるってことですよね。サフィンやヒューイットみたいな大きな怪我もなかったですし。今後は下の世代もどんどん伸びてくるでしょうし、同世代の選手もレベルの高い選手はたくさんいますから、独走状態を保つというのは厳しくなるのかもしれません。とはいっても、まだまだ強いとは思うんですけども。
ナルバンディアンは、試合後のコメントによると、今年前半は怪我なんかもあって、なかなかちゃんとトレーニングできなかったため、調子が上がらなかったそうです。ウィンブルドン以降は怪我も癒えて、トレーニングもしっかりできるようになったということですし、今回の優勝で来年に向けて弾みになったと言っているようですから、トップ10返り咲きへのモチベーションも上がっていそうです。その気持ちで残りのシーズンと来年、頑張ってもらいたいですよね。
posted by takezoh | 2007-10-23 21:32
>えんつぉさんへ
いい試合でしたね、特にナルバンディアンのいいプレーが久々に見られて良かったと思います。
ナルバンディアンは、他の大会でも「David!」と声がかかるのをよく耳にするので、もともと人気の高い選手なんだろうとは思いますが、同じスペイン語圏だから、というのもあるかもしれないですよね(一般的にスペイン→南米は好意的な部分はありますが、南米→スペインは一般的には、ですが、あんまり好意的ではなかったりします)。
レアルの選手、昨年もラウルやセルヒオ・ラモス(あと、フェルナンド・トーレスとかも)観戦に来ていたと記憶しております。マドリッドなので、フェデラー個人がではなく、大会主催者側が招待しているんじゃないかと思います。で、試合後とか選手のロッカールームを訪ねたりという配慮もあるんじゃないでしょうか(今年の全仏ではアンリなどが観戦に来ていて、一緒に写真にうつっているのがATPサイトにもありました)。ヨーロッパではテニスはメジャーなスポーツなので、他のスポーツ選手との交流とかも多そうですよね。
フェデラーと他の選手の差はじわじわ縮まってきているというのは感じますよね。女子も若手が続々と台頭してきていますが、絶対的な強さはやっぱりエナンなんですよね。特に今年は復活してきたウィリアムズ姉妹も退けちゃいましたし、他のトップ選手を倒した10代も難なく下しているので、頭ひとつ抜けたという印象が強いのかなぁ、と思います。
posted by takezoh | 2007-10-23 21:43


