2007年06月10日

〈全仏オープン〉エナンが3連覇達成

ジュスティーヌ・エナン(BEL)[1] × アナ・イワノビッチ(SRB)[7] 6-1/6-2

  胸が痛くなる決勝戦でした。

  もう、でも、これは仕方ないでしょう。

  イワノビッチ、19歳。決勝進出ということであれば、ティアIで3回(うち、2度優勝。ティアVでの優勝も1回ある)。グランドスラムに限って言えば、本戦初出場となった2005年全仏で、いきなりQFまで勝ち上がっていますが、それ以外は、4回戦進出が1度だけ(昨年のウィンブルドン)。

  今大会は、メディナ・ガリゲス、クズネツォワ、シャラポワの強豪を破って勝ち上がってきたとはいえ、初めてGSの決勝だったわけですから。

  ヒンギスやシャラポワなんかは、GSの決勝という舞台が初めてでもそのまま優勝を決めてしまう精神的強さがあったわけですが、イワノビッチは、そういった強心臓を持ち合わせているタイプの選手ではないんだろうと思います(もちろん、世界のトップで堂々と活躍する選手は、みな、負けず嫌いだろうし、強い気持ちを持っているのだと思いますが)。

  その証拠に、2度だったか、自ら、エナンのサーブやボールがINであると、自ら認めていましたし。しかも、そのうちの1回は、第2セット第8ゲーム、エナンの5-2、ポイント30-0から放った1stサービスがフォルトのコールだった場面、つまり、INならエナンにマッチポイントを握られる場面で、自ら、申告しましたから)。

  いいか悪いかは別として、相手が確認に来ないのなら、知らん振りするぐらいの心臓があれば、また違った内容になっていたことでしょう。イワノビッチは、そういう性格なんだろうし、そのフェアな精神は讃えるべきなんだと思いますけども(まぁ、早く終わらせたかったのかもしれません)。

  とにかく、最初の2ゲームからすれば、まさかこんな展開、こんな結末になるとは誰が予想したでしょうか。

  立ち上がり、イワノビッチも緊張していたと思いますが、明らかに、エナンの緊張のほうがすごかった。緊張で、体の筋肉が硬直して、思いっきりスウィングできていない。どのボールも浅く(サービスエリアのエンドラインぐらいにしか飛んでいなかった)、ミス連発(特にネットにかかるミス)。

  一方、エナンに比べると、立ち上がりはまだ思い切りスウィングできているイワノビッチ。フォアのウィナーを2本奪って、15-40といきなりブレイクポイントを握り、デュースにはなるものの、最後はエナンが、この試合唯一のダブルフォルトを犯して、イワノビッチがゲームを獲りました。

  第2ゲーム、まだエナンから緊張がとれず、イワノビッチの40-0となり、このままあっさりキープで、これは面白い展開になるぞ、そう思いました。

  しかし、ここから、エナンの緊張がじわじわとイワノビッチに伝染していきます。デュースに追いつかれたイワノビッチ、最初のデュースでは、先にアドバンテージを握りますが、ここからミスを連発。逆にエナンにアドバンテージを握られ、最後は、エナンのボールがラッキーなコードボールとなって、ブレイクバックを許してしまうのです。

  これで緊張から解放されたエナンは、サーブもストロークも調子が上がってきます。ストロークの深さも、明らかに最初の2ゲームとは違います。

  イワノビッチは、そんなエナンに反比例するように、緊張でガチガチになって、トスアップもバラバラ、体と気持ちもバラバラで、ストロークでも、SFまではほとんど見られなかった、というか、明らかに緊張が伝わるミスを連発し、それがさらに緊張を呼びます。

  この状況に、観客も「ええっ!?」「うわ~、どうしたイワノビッチ」と凍りついたというか、不穏な空気というか、嫌な静けさが広がり、これまたイワノビッチに緊張をさらにもたらす要因になってしまったかもしれません。

  解説の神尾米さんやダバディ氏も指摘していましたが、イワノビッチは、エナンのフォアを狙うのを意識しすぎているせいか、自分のもっとも得意とするショット、サーブではセンターへのフラット系の速い1stサーブを打たず、エナンにダメージを与えることができない…。

  しかも、トスアップがうまく行かないため、ダブルフォルトも多くなる(第4ゲームでは2つ、それも、2つ目のダブルフォルトで、ゲームを落としました。また、第2セット第1ゲームも、ダブルフォルト2つ。こちらも、2つ目のダブルフォルトでゲームを落としています)。

  いや、いいところもあったんです。フットワークはエナンに比べればまだまだのイワノビッチですが、それでもエナンの厳しいボールに対して、よく走って拾っていましたし、ところどころでは、フォアもバックも、さすがイワノビッチと言える、ウィナーやパッシングがありました。

  そういうショットをきっかけにして浮上したいところでしたが、必死のあまり、そこで集中力を高める余裕すらなかったのでしょう。

  そして、エナンは、自分のプレーに徹するだけで良かった、と。

  これがグランドスラムってやつなんですね…。イワノビッチがガチガチになって、ふだんならあり得ないミスを連発する様子を見ながら、こっちまで緊張で体が硬くなりました。そして、観ているのが本当に辛かった。エナンに3連覇達成してほしい~、と考えていた私も、途中からはイワノビッチ応援。実際に、「イワノビッチ、頑張れ!」と何度か口に出してしまったほどでした。

  イワノビッチは、これからもGSの決勝に何度も出てくる可能性が高い選手です。もしかして、再来週からのウィンブルドンで、決勝進出だってあるかもしれません。今後、グランドスラムの決勝で戦うときに、いつか、今日の試合があったから、と思わせるほどの強い気持ちで、タイトルを勝ち取ってもらいたいと思います。そして、それができる選手だと信じております。

  最後に、エナン、3連覇達成&4度目の全仏制覇、おめでとうございます!

posted by takezoh |00:56 | 全仏オープン2007 | コメント(8) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/takezoh/tb_ping/554
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
Re:〈全仏オープン〉エナンが3連覇達成

 諸事情で最終セットの最終ゲームしか見れませんでしたが、エナンの圧勝だったようですね。やはりローランギャロスは彼女の庭だったというところでしょうか。大会が始まる前は混戦気味かと思ってたのですが、終わってみれば全仏でエナンに勝てそうな選手が見当たらないという結果に終わってしまいましたね(セリーナの完敗は意外でした)。
 イバノビッチのマッチポイント前の正直な自己申告シーンは、僕も見てて「えっ!? そこはもうちょっとずるくなってもいいんじゃないの?」と思ってしまいました。そういう性格のよさが彼女が好かれる理由なのでしょうが、勝負師としてはどうなのかな。なんかクライシュテルスに似てる感じで、やや将来に不安を感じてしまいます。クライシュテルスやモーレスモのように「優しい性格が災いして、いざという時に勝負弱い」という選手になってしまいそうな……。ヒンギスやウィリアムズ姉妹・エナン・シャラポワなんかは絶対にそんなことはしないような気がしますし。

posted by バラージ | 2007-06-10 01:52

Re:〈全仏オープン〉エナンが3連覇達成

タケゾウさん、お体のほうはもう大丈夫でしょうか?
イバノビッチ・・・サービスに泣きましたね。セミのシャラポワは長いラリーになる前に次々ミスをしてくれましたが、エナンは無駄なミスはしないですからね~。しかもどんなボールも返してくる。エナンとしてはイバノビッチの強打を警戒してとにかく走って拾う戦法で行くつもりだったようですが、サービスが全く入らずストロークでもミス連発の今日のイバノビッチ相手ではそんな作戦を使うまでもなく、エナンはところどころギアを上げればいいという感じで、もう途中から勝ちを確信したような余裕(手紙何枚も見たり)がありました。
でもイバノビッチ、ついにブレイクしましたね!注目されてから思ったよりも時間がかかった感じですが、今大会のようなプレーをコンスタントにできればこれからもっと上にいける選手だと思います。シャラポワのように無理に強打しなくても威力のあるボールが打てますし、なによりスライスが巧い!両手打ちの選手であれだけ片手のバックスライスを巧くこなせるのはこれまでヒンギスとクライシュテルスくらいしかいないです。ウィンブルドンや全米のような早いサーフェスでも活躍が期待できますね。

posted by れも | 2007-06-10 02:49

Re:〈全仏オープン〉エナンが3連覇達成

エナン優勝おめでとう!
第1セットのファースト・ゲームをいきなりブレイクされた時は、かなり不安になりました。
でも、ちゃんとブレイクバックして、本来のエナンになったので一安心。
イバノビッチは…気の毒でした。
サーブする以前にトスが狂ったのは致命的ですよね。立て直すかなとも思いましたが、やはりまだ若いんですね。まだまだこれからだと思います。

エナン…容赦なかったなぁ。そして隙なし!
タケゾウさんも言ってましたが、コテンパンに若手を倒しちゃいましたね。
最後のゲームの前に、コーチからの手紙を封筒から開けて読むシーンが印象に残っています。
次のウィンブルドンも楽しみです。

posted by すずの娘 | 2007-06-10 11:57

>バラージさんへ

 本当に、終わってみれば「やっぱり女王はエナンだった」という大会になりましたね。
 エナンのボールをINと認めるところ、もうひとつは、プレーが始まっていたせいで、2ndさったエナンのサーブが、1stサービスからやり直しになっていましたし、あとひとつ、第2セット第1ゲームを落としたところなんですが、自分のサービスゲームでエナンのリターンがサイドアウトのコール(しかもコールが遅く)で、イワノビッチがINを認めてやり直しポイントになった結果、ダブルフォルトでゲームを落としているんですよね。
 おっしゃる通り、優しい性格は女子テニス界を席巻するには難しいものがありますよね。そういう意味では、いつか1位になったり、GSタイトルを獲っても、女王として君臨するのは厳しいかもしれません。これから経験を積んで、どういうふうになっていくのか、それはそれで楽しみではあるのですが。

posted by takezoh | 2007-06-10 14:22

>れもさんへ

 お気遣いありがとうございます。もうすっかりよくなりました。

 イワノビッチは才能豊かな選手ですし、状況での試合運び、自己コントロールを経験のなかで積めば、GSタイトルは絶対夢ではないと思います。おっしゃる通り、スライスも巧いですし。ほんと、バックが両手打ちの選手は、嫌なスライスを打つのがあんまり上手じゃないですけど、彼女はそれもちゃんとこなせていますから、経験を重ねて、試合運びの幅が出てきて、もっと自分に自信が持てるようになれば、エナンも苦戦を強いられるようになるんでしょうね。。。

 しかし、勝負は非情だと改めて思いました。そして、優勝をつかむためには、非情であるべきだ、とも。そういう意味も含めて、やっぱり女王の冠がふさわしいのはエナンだなぁ、と思った今年の全仏でした。
 メモをわざわざひとつずつ封をあけているのは、かなり興味深いシーンでした。

posted by takezoh | 2007-06-10 14:30

>すずの娘さんへ

 エナンは最近は特に、GS決勝の立ち上がりは異様なほど緊張している様子がよくあると思うのですが(守るものが多くなれば、緊張も高くなるもんなんですね…)、今回もガチガチで、いきなりブレイクされたので、この決勝はいったいどうなるんだ? と思いました。でも、予想とは違う方向へ行ってしまいましたが(苦笑)。

 試合前、あれだけにこやかにコートに入場して、最初の2ゲームも、自分のミスに笑うシーンがあったのに、どんどん表情が硬くなって顔がこわばっていくイワノビッチとは正反対に、タイトルは絶対私のものといわんばかりに「Allez!」とガッツポーズを続けるエナン。好対照な様子が印象的でした。やはり、エナンは勝負師ですよね。
 メモを、あのスコアで最後の最後でも読んでいたあたりも、勝負が終わるまで攻め続けるエナンの気持ちの強さが表われていたと思います。
 ウィンブルドン、どうなりますでしょうか(今年こそ、生涯GS達成なりますでしょうか??)。

posted by takezoh | 2007-06-10 14:36

Re:〈全仏オープン〉エナンが3連覇達成

エナンすごかった、おめでとう!これからも勝ち続けそうですねえ。やはり最後は精神力でしたか。イバノビッチはまだまだこれから!かんばってほしいと思います。
試合中に何度も読んでいたメモ、最初はこれを読んで、最後にはこの封筒を開けなさいと言うような指示があったのでしょうか。内容は「とにかく走れ」「ネットに出ろ」「君が1番だ」とかコーチからの励ましの言葉が書かれていたようです。試合中にも時々コーチの方を見ていたようですが、目が合っただけでお互いの考えていることがわかるというほどの信頼関係ですから、決勝に備えての心の準備も仕方も万端に整えていたのでよう。決勝にかける彼女の意気込みが伝わってくるようでとても印象的でした。

またまたジュークボックスの話をしてしまいますが、ベストテンが発表されました。やはり、1位はこの人、ジョコ君。2位ナダル。3位はジル・シモンでした。シモンのストリップもなかなかです。ロドラ君は惜しくも5位。

posted by ダニエル | 2007-06-10 21:13

>ダニエルさんへ

 エナン、さすがでしたねぇ。エナンも、これまでのGS決勝以上に緊張した出だしだったように思うのですが、絶対に優勝したい場面で、優勝ができる精神力の強さに感服いたします。
 今年はじめに離婚が決まって、その後、お父さんとも和解したそうですが、今大会の決勝は兄弟・姉妹も観客席に呼んで、コーチへの感謝の気持ちとともに、家族(そして天国のお母さん)へ自分の気持ちをスピーチで語る姿はとても感動的でした。まだまだ全仏はエナンが支配するかもですね。本当に彼女はローラン・ギャロスの表彰台がいちばん似合います。
 メモは「ネットに出ろ」のところだけ、日本でもダバディ氏が訳してくれていましたが、他はそういうことが書かれていたのですね。

 ジュークボックス、やはり今年はジョコビッチでしたか。「I Will Survive」の選曲は自分でだったのでしょうか?? ジョコビッチはあの曲が好きなのか、ディスコソングが好きなのか、はたまた、グロリア・ゲイナーが好きなのか(若いのに)……。
 シモン君のストリップもロドラ以上のものがありましたよね。フランス選手はみんなエンターテナーですねぇ。。。

posted by takezoh | 2007-06-10 21:41

コメントする