高校野球観戦日記

第99回選手権3回戦・大阪桐蔭v仙台育英

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上空は雲がなくほとんど快晴で、強い浜風がライトからレフトに吹き抜けている。前の試合が終わってもほとんど観衆が減らないまま、内野も外野もスタンドがほぼ満員の状態で試合開始になった。大桐蔭は前の2試合を比べて打順をいじっている。試合前のフィールディング練習では、大桐蔭の外野手からの返球はことごとく正確で、コントロールに寸分の狂いもなかった。 序盤から大桐蔭の攻撃力が炸裂するのかと思って試合を見ていたが、仙育英#1がいい立ち上がりを見せ大桐蔭打線を無得点に抑える。仙育英の外野手はそれなりに深く守っており、相手打線に対する敬意が感じられるのだが、いかんせん#1の投球が上回っているという印象だ。対する大桐蔭先発#11も走者を許すものの、連打を許さず進塁を許さない。序盤の様子から見て確実に投手戦の様相になってきた。 試合が動くきっかけが見つからないまま迎えた4回表、大桐蔭は3番が左中間への二塁打で出塁すると、次打者の内野ゴロの間に三塁へ進塁する。打順が中軸だからという理由で強攻策をとる大桐蔭の作戦には賛同するが、そのような状況で確実に進塁打を打つ打撃技術には恐れ入る。この試合で初めて走者が三塁まで進塁し、どのような攻撃で先制点を狙いにくるのかと注視していたが、続く5番と6番はいずれも強攻して二ゴロに終わり逸機する。ともに投手がよく投げているだけでなく、両チームの内野手の守備が機敏で軽快だ。 次の好機は仙育英に訪れ、5回裏の攻撃で先頭6番が安打で出塁する。ここでいきなり代打#17を打席に送るので、何を仕掛けるのかと思いきや、単純な送りバント。どうやら仙育英は犠打専門の控え選手をベンチに置いているようで恐れ入る。しかし迎えた一死二塁の好機も、後続が倒れて無得点に終わる。両先発が好投して投手戦になり、細かいミスや長打が勝負を分けそうな展開になった。薄暮ナイターになったとき、野手が打球を見失ったりしないかと思った(※2008年の3回戦で仙育英が横浜と対戦した時に失点したきっかけである)。 その後も一進一退の投手戦が続き、照明が点灯されて迎えた8回表、大桐蔭は2番が左線二塁打で出塁すると、続く3番の詰まった当たりの左線安打で生還して1点を先制する。長く続いた均衡がようやく破られた。対する仙育英も直後の8回裏に反撃し、盗塁死で好機が潰えたかに見えた二死後に四球と死球で二死一二塁とする。ここで2番の打球が左前安打となり、二塁走者は本塁を狙ったが憤死となり逸機する。流れは大桐蔭と思われた。 そして1-0のまま迎えた9回裏、仙育英は二死後に5番が中前安打で出塁すると、二塁盗塁を成功させて好機を広げる。さらに四球で二死一二塁となり、7番が放った打球は遊ゴロとなるも、送球を受けた一塁手の足がキャンバスに触塁していないとの判断で出塁する(一失)。そして迎えた二死満塁から、代走が出た関係で9回表の守備から出場していた8番#16が中越二塁打を放って二者が生還し、2-1でゲームセットになった。 う~ん、こんな結末になろうとは、球場にいた誰も予想しえなかっただろう。試合終了から校歌斉唱が終わるまでの間も、応援団にあいさつに行くときも、大桐蔭#11はずっと泣いていたけれど・・・、彼の姿を見て私もさすがに胸が締め付けられそうな思いがした。そして彼の横にはこの試合で登板しなかった#1がずっと寄り添っていて、頼りになるとともに優しい先輩なのだと感じた。大桐蔭は泣いている選手が多かったが、その誰も甲子園球場の土を持って帰らないままグランドに一礼して通路に引き上げていく様子を見て、これぞ王者の矜恃と感じずにはいられなかった。 仙育英としては、細かい要素を含めて9イニングでの失点を最小限に抑えたことが最終回での逆転につながった。8回表に先制点を許した場面では、打球を処理した左翼手が本塁へ投げるふりをして打者走者を誘い出し、二塁へ送球して打者走者を憤死させていた。9回表の守備でも走者を許したが、走者一塁からエンドランを仕掛けられたにもかかわらず、素早い打球処理で5→4→3の併殺を完成させてその裏の攻撃に結びつけた。特に8回裏の攻撃で#1が二塁から全力疾走して本塁まで走っていたので、全員の力で9回表の守備を無失点に抑えたことが大きかった。そして9回裏の二塁盗塁は、原貢さんが率いていた東海大相模もやったことのある作戦なので、初球から私は一塁走者の所作を注視していた(※ニュースステーションに出演した原辰徳さんが言っていた)。 野球の試合は勝負事である以上、何らかの形で勝敗を決めなければならない。たしかにこの日の試合では大桐蔭は勝者にならなかったのかもしれないけれど、だからと言って大桐蔭が何かに負けたとは私にはいまだに思えないし、試合に負けたことが受け入れられないでいる(もちろん仙育英は勝利に値したのだが)。内野ゴロが飛ぶたびに大桐蔭#4と#2が全力疾走でバックアップに走る様子や、外野手からの正確な本塁返球を見ていると、彼らのプレーもまた十分勝利に値したと思える。そして、勝負を分けるプレーに直接的に関わったからといって、誰も大桐蔭#11や#3を責めたりしないだろう。またいずれ必ずその機会はあるのだから、この先の人生で勝利者となる日が来ることを願っていたい。 それにしても、9回裏の得点機となる場面で、スタンドにいる観客がなにか闇雲にタオルを回して球場全体を煽るような行為に及ぶことには、いささかの興ざめな感情と憤りを禁じ得ない。この試合が劇的な結末となったことは誰の目にも明らかだが、その背後には品のない観衆の行動があったことは見逃してはならないと思うし、何かしらの対策を講じる必要性を感じずにはいられない試合であった。   試合終了のサイレンとともに、泣きじゃくる大桐蔭#11の姿を見つつ、流れてくる校歌の歌詞は“♪・・・青葉城~あぁ松島や、千賀の浦~・・・”(※私はもと仙台市民である)、そして甲子園の土を持って帰らず毅然と球場を去っていく大桐蔭の選手諸兄を見ていると、さすがの私もスタンドで涙を流さずにはいられなかった。鬼のような私の目にさえも、涙をにじませるほどのナイスゲームだったと、両チームの選手諸兄には万雷の拍手を贈りたい。

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阪神甲子園球場
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この記事へのコメントコメント一覧

第99回選手権3回戦・大阪桐蔭v仙台育英

>愛知のトンピーさま

コメントをいただき、どうもありがとうございます。

この試合に球場で立ちあうことのできた私は、この試合がとても美しい思い出です。

勝った仙台育英の選手諸兄だけでなく、敗れた大阪桐蔭の選手諸兄にとっても、いつかこの日の試合が美しい思い出になってほしいと願って、この記事を書きました。

本当にいい試合だったと思います。

第99回選手権3回戦・大阪桐蔭v仙台育英

良い記事ですね~

いい試合でした。

たまたま育英が勝ちましたが、
桐蔭の方が実力は、はるか上でした。

守備力といいますが、本当に守備が力になるという事を
証明した試合でした。

感動ありがとうです。

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