2007年09月06日

オシムの言葉

昨日、「オシムの実験」というエントリーを書いたあと、アジアカップ以降の「オシムの言葉」を振り返ってみた。
「なぜアジアカップと代わり映えしないメンバーを選んだか?」、オシムの言葉を紐解くことで、何か答えが見えてくると思う。

まずは、アジアカップで韓国に負けての言葉・・・
「負けた場合にはチームをいじるという原則がサッカーにはある。私はそれと反対のことにトライした。負けてもチームを変えなかったのだ。レギュラーの選手たちにもう一度、チャンスは与えられるようにした。私が選んだメンバーがよかったのか悪かったのか、もう一度見たいという考えが方針としてあった。結果については選手には何も文句は言いたくない。個人的にそう考えている。」

ここから窺えるのは、アジアカップ準決勝、3位決定戦の先発メンバーをオシムは現時点で「レギュラー」「中心選手」として考えていることだ。

サウジ戦
GK 川口能活 
DF 駒野友一、阿部勇樹、加地亮、中澤佑二 
MF 遠藤保仁→羽生直剛(後半30分)、中村俊輔、鈴木啓太、中村憲剛→矢野貴章(後半42分)
FW 巻誠一郎→佐藤寿人(後半23分)、高原直泰 

韓国戦
GK 川口能活 
DF 駒野友一、阿部勇樹、加地亮、中澤佑二 
MF 遠藤保仁、山岸智→佐藤寿人(後半33分、中村俊輔、鈴木啓太、中村憲剛→羽生直剛(後半27分)
FW 高原直泰→矢野貴章(延長後半10分) 

確かに、交代選手まで含めて不動のメンバーになってます。このうち、今回の遠征に呼ばれなかったのは怪我の高原と阿部だけ。ほかは全員呼ばれている・・・代わり映えしないわけだ。

また、オシムはこうも言っている。
「戦術的な選手の配置については、1人の選手が複数の役割を担わなければならないスタイルを取っている。選手がもう少しだけ個人のテクニックを上げることができていたら、さらに2~3人のよりスピードある選手を使うことができた。」

前々から言ってきた、「複数のポジション(役割)をこなせる選手」「スピードのある選手」がオシムのサッカーでは、やはり重要である。
そして・・・
「これは極めて大事なことだが、より優れたFWがいたら…。これには注釈があって、今のFWがよくないといっているのではない。もっと優れたFWがいたらという仮定の話だが、それに多少の経験を積んだ選手がいればもっとよかっただろうと思う。」
「今日は高原を長く残した。フィジカル的には無力であったにもかかわらず残したのは、彼は疲れていても、何とか試合を決めてくれるではないかと期待したからだ。その意味で、矢野の投入は遅すぎたのかもしれない。」

高原への信頼は揺るぎないものと言える。
さらに、
「今日はあえてリスクを冒してメンバーを組んだ。今日の試合を含めてこの大会はそうであったわけだが、相手が2トップできても2ストッパーで対応し、その隣にサイドがいるが、事実上真ん中の2人のストッパーとボランチ2人のうち1人の3人で中央を守る。そういうリスクのある守備をしつつ、中盤のプレーメーカーを自由にさせる。そういうリスクを冒しながらプレーするサッカーが、日本人には合っていると思う。そういうものを見たいと思う方には、変えるべき点が見えると思う。」

オシムが提唱する日本式のサッカーの定義が見えてきた。
「事実上真ん中の2人のストッパーとボランチ2人のうち1人の3人で中央を守る。そういうリスクのある守備をしつつ、中盤のプレーメーカーを自由にさせる。」サッカーが日本式のサッカーだということ・・・

そして総論として、この言葉・・・
「もちろん、人間だからミスは出る。サウジ戦で負けたが、もう一度、同じチャンスを与えた意味はそこにあった。もっとも、そのチャンスを生かせたかどうか。チャンスは3度ないかもしれない。私の故郷サラエボの諺で『同じチャンスは2度来ない』というのがある。それを2回与えて結果を出せなかった人間には、もうチャンスはないかもしれない」

この言葉をどう捉えるかによってオシムの考えが理解できるか変わってくるが、このメンバーには「2回のチャンス」を与えて、結果を出した。だからもう1回チャンス(今回の遠征)があるということか・・・

オシムはこうも言っている。
「サッカー監督とジャーナリストとは思考回路が違う。『2回続けて負けた』、つまりチームがカタストロフィー(破綻)に陥ったという雰囲気を作ろうとしてるのであれば、そしてオシムをクビにしようというのであるのなら……」

性悪説に立って考えればそういことか・・・

「興味のある方は、日本がアジアカップで優勝した当時の映像と、今日の試合の映像とを比べてみてほしい。細かいところまで、よく比べてほしい。その分析の結果、どちらの日本代表のほうがよいサッカーをしていたか、感想を言ってもらえるとうれしい。負けた勝ったではなく、試合の内容を見てほしい。」
「トルシエ、ジーコといった歴代監督、どちらのサッカーがいいサッカーをしていたのか。私は私の考えを持っている。今日の試合は…こういう比喩は顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれないが『2回ズボンを下ろして見せるべきでないものを2回見せてしまった』ということになるだろう(苦笑)」

そして、総論として
「これはアジアカップの結果だが、これでサッカーが終わるのではない。」と

その通りだと思うな。歴代監督との比喩はご愛敬だが・・・アジアカップの結果で、コンフェデの出場権が!という言う人がよくいるが、3位決定戦も含めてエキストラゲーム的な要素が強いので、(監督更迭論も含めて)あまり重要視する必要はないかと私も思う。


そして、カメルーン戦後にひとこと・・・
「一部の選手が予想以上に興味深いプレーをしてくれたことが収穫だと思います。」

収穫はあった。誰だ?その一部の選手とは?

「カメルーンに勝ったからといって、世界チャンピオンになったかのように錯覚するとすれば、話は振り出しに戻ってしまいます。」
「選手同士の関係、走る量、押し上げ、自己犠牲のプレーに対する意欲はトップレベルに近いものを出すことが出来たと思います。」

このメンバーでほぼ理想に近付いてきたと、オシムは自負しているが、
「選手たちはリーグ戦が詰まっていて、疲労がある中頑張ってくれたと思います。しかし問題はアジアカップに出場した選手は何とか走れていた、しかし出ていない人間はエネルギー切れをきたしていたというのは、皮肉なことです。いずれにせよ、今後の様子を見なければなりません。」

Jの結果から新たに選んだ選手より、アジアカップのメンバーをやはり「中心」と考えているようにうかがえます。
そして、
「阿部や鈴木啓太が遠藤のような攻撃が出来る選手だったらよかったのにと今は思っています。同時に、遠藤が先ほどの2人のような守備力を持っていればとも。しかし天は二物を与えませんでした。とくに日本では選手の役割分担がまだまだはっきりしている。モダンなサッカーに追いつくためには、攻撃も守備も両方出来る選手を増やしていかなければならないと思いました。」

またしても、「複数ポジジョンをこなせる選手」=ポリバレントな選手の必要性を唱えている。

そして、今回の遠征メンバーの発表に関して、
「日本代表は日本人相手に試合をするわけではない。Jリーグは大きな参考にならない。私はFWたるものはどんなプレー、どんな言動をすべきかというメッセージを出している。つまり日本ではボールを扱うのがうまい選手はいるが、もっと必要な要素があると考えている。それを含めてのメッセージだ。」
「大きなサプライズがないのは、いじる必要がないと感じたから。カメルーン戦メンバーで、今回呼ばれていない選手がだめというわけではない。中盤、DFの選手の力は信頼しているが、さらにレベルアップが必要だ」

アジアカップメンバーを「レギュラー」と考え、前線のオプションとスピード(松井、山瀬、達也)、複数ポジションをこなせる選手(稲本、橋本)を入れてきたと考えられますね。

以下は、呼ばなかった選手へのコメント
「高原の力は分かっている。私の計算のうちに入っている。彼のコンディションさえ良ければオーストリアに来るかもしれない」

改めて、高原への信頼は揺るぎない。

そして宮本への一言・・・
「年齢(30歳)の問題じゃなく、彼は遅い」

・・・。宮本へのコメントはあえて避けよう・・・

そして、
「(日本には)残念ながら技術があっても、スピードのある選手が少ない。現代サッカーでは攻撃的な中盤にはスピードが必要。松井は速い?きょうの試合でそう思ったなら、少しどうかしている。目が悪い。眼鏡をかえた方がいい。加地、駒野、(佐藤)寿人にはスピードがある。松井にそれがあればスーパープレーヤーだ」

やっぱりスピードか・・・加地、駒野、寿人のストロングポイントはスピード。

オシムの言葉を振りかえってみると、「スピード」「複数ポジション」「コレクティブ」「攻撃も守備も両方できる」がキーワードであることがよくわかる。これが「対世界」を考えたオシムの日本式サッカーであり、この熟成されたメンバーでの今回の「実験」の結果が楽しみになってきた。

posted by take4 |10:31 | 日本代表 | コメント(10) | トラックバック(0)
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Re:オシムの言葉

スピードにもいろいろあって、走る速度、俊敏さ、そして判断の速さなどが考えられますね。オシム監督が重視しているのはどんなスピードなんでしょうね。

posted by チョコバナナ | 2007-09-06 12:52

Re:オシムの言葉

>現代サッカーでは攻撃的な中盤にはスピードが必要。松井は速い?きょうの試合でそう思ったなら、少しどうかしている。


じゃあなんで呼んだんだよ

俊輔、遠藤にもスピードなんか全く無いだろ

攻撃的な中盤にスピードが必要って話だったのに
加地も駒野もサイドバックの選手じゃねーか
話変わってるだろ

などなど矛盾だらけw

posted by えっと | 2007-09-06 12:55

Re:オシムの言葉

オシムがそう思っているかどうか知らんが、
数少ないスピードのある選手は技術がないって言ってるんじゃないか?
で、現状ではスピードのみよりも技術のみを選択したとか。

呼んだ理由は当然使ってみたいとかあるだろうし、スピードがあるから呼んだなんて一言も言ってないし

松井に加地らのようなスピードがあれば良かったって理想論言ってるだけなのに、話が変わってるとか論点のすり替えもいいとこだし

などなど大抵論破できてないことをお忘れなく。ただオシムの言葉は俺には難しすぎて分からんので多分間違ってはいるんだろうが

posted by | 2007-09-06 13:20

Re:オシムの言葉

オシムの松井への発言は彼への期待の裏返しだと思います。俊輔の初召集の時も同じようにキツイ事を言っていました。そしてその後の俊輔は目に見えて変わった(プレースタイル、意識、走力などなど)と思います。オシムは期待してない選手には何も言いません。批判のための批判などは絶対にしない人です。松井への深い愛情だと思います。

それにしても俊輔ってほんと、サッカー大好きなんですね☆失敗し、指摘されたら、その後すぐに改善する。なんて愛すべきサッカー小僧かとビックリしました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070906-00000009-nks-socc

posted by 寝ずの番 | 2007-09-06 13:25

Re:オシムの言葉

ひとつだけ。

「複数のポジションができる」=ポリバレントではないと思います。

「複数の役割を担わなければならない」すなわち「攻撃も守備も両方出来る選手」がポリバレントだと思います。

posted by ym | 2007-09-06 13:53

Re:オシムの言葉

>ymさん
>「複数の役割を担わなければならない」すなわち「攻撃も守備も両方出来る選手」がポリバレントだと思います。

ポリバレントの解釈をどうとるか・・・私は「複数のポジションができる」こなすことによって、新たな化学反応、融合がおきるというように解釈してました。そうしたことで「選手同士の関係、走る量、押し上げ、自己犠牲のプレーに対する意欲はトップレベルに近いものを出す」ことができるのかと・・・

>えっとさん 寝ずの番さん
>オシムは期待してない選手には何も言いません。批判のための批判などは絶対にしない人です。松井への深い愛情だと思います。

寝ずの番さんのおっしゃる通りで、松井への期待を込めた、叱咤激励の意味で言ってますよね。逆にいえば、サイドバックの2人への皮肉(期待)をこめて・・・俊輔への発言しかり、以前の発言でも「阿部や啓太が遠藤のような攻撃が出来る選手だったらよかったのにと今は思っています。同時に、遠藤が先ほどの2人のような守備力を持っていればとも。」言ってます。

>チョコバナナさん
>オシム監督が重視しているのはどんなスピードなんでしょうね。

たぶんジーコのころからだと思ったんですが、日本人の特徴として「俊敏さ」という言葉が、マスコミで重宝がられて使われます。これはずるいなっていつも思います。「スピード」の核心が何なのかわからないですから・・・

posted by take4 | 2007-09-06 14:32

Re:オシムの言葉

松井に対する発言は別に松井を批判してるんじゃなくて、見当違いな質問者への反論でしょ?<各コメント氏

「阿部や鈴木啓太が遠藤のような攻撃が出来る選手だったらよかったのにと今は思っています。同時に、遠藤が先ほどの2人のような守備力を持っていればとも。しかし天は二物を与えませんでした。とくに日本では選手の役割分担がまだまだはっきりしている。モダンなサッカーに追いつくためには、攻撃も守備も両方出来る選手を増やしていかなければならないと思いました。」
またしても、「複数ポジジョンをこなせる選手」=ポリバレントな選手の必要性を唱えている。

この発言は「ポジション」のポリバレント性ではなく、「能力」のポリバレント性を求めての発言ではないですか?
組み立てもできるガットゥーゾや守備力のあるロナウジーニョが理想だよって感じの。
阿部や啓太をオフェンシブに使ったりしたいわけではないいんでない?

posted by G | 2007-09-06 14:47

Re:オシムの言葉

だとしたら、オシムサッカー中盤には長谷部がいいと思うんですけどねー。若いし。

posted by あs | 2007-09-06 16:27

Re:オシムの言葉

長谷部は今のJでのパフォーマンス見れば、呼ばれなくてもしょうがないですよ。

posted by ササ | 2007-09-06 20:11

Re:オシムの言葉

同感。今の彼はJ、それも浦和クラスであのプレーぶりですし
とても世界戦では使えないレベルだとおもいます
でもあのプレースタイルはいいですし彼の出来でチームを左右するくらいになれば
代表の常連はまちがいないでしょうし
もし代表の中核になるようなら世界で通用するような選手になってるでしょうね
今から代表で使って経験積ませても
そこまで伸びてくれるかどうか・・・私にはちょっとわかりませんが    

posted by そうっすね | 2007-09-07 00:13

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