2008年02月13日

解放された“今ちゃん”

 真面目で実直で、素朴な好青年。
 実際にあって話したわけではないが、インタビュー記事から、語られるエピソードから、今野泰幸(FC東京)にはこんなイメージを持っている。

 その今野を見ていて、我が目を疑ったのが昨年5月3日の鹿島戦での出来事だった。
 当時今野は、負傷で出遅れた茂庭輝幸の穴を埋めるべく、センターバックとしてプレーしていた。左腕には、「U-20代表以来」と語りキャプテンマーク。不慣れで窮屈なポジションと、自分では「不向き」と考えていたらしい役割とが、彼にストレスを溜め込んでいたのかもしれない。

 後半の60分過ぎ。今野と鹿島の選手が競り合って、ボールがタッチラインを割った。鹿島の選手が最後に触ったようにも見えたが、副審の判定は、鹿島ボール。
 次の瞬間、今野が副審に噛み付いた。鹿島は今野の猛抗議にもお構いなしで、素早いスローインで試合を再開。センターバックの一人がいない、ぽっかりと穴が開いたDFラインを臙脂(えんじ)の波が襲う。
 明らかに、チームに迷惑をかけていた。信じられなかった。いつだってチームの勝利のためにファイトしてきた今野が、するべきではない異議でチームのピンチを招いている。自然と起こったブーイングと歓声に気付いて今野は戻り、その穴をカバーしていた金沢の好守でFC東京は事無きを得た。だが、もし失点していれば大きな責任を負う、非常に愚かな行為だった。
 もしかすると、DFラインに押し込められ、チームも波に乗れないストレスが、悪い方向に出たのかもしれない。2階席にいた(しかも視力が悪い)僕の眼に、副審に抗議する今野の「鬼の形相」が飛び込んできたような気がした。


 その後にも先にも、今野がチームに迷惑をかける「愚かな行為」を働いたのは、少なくとも僕が記憶している範囲では、ない。「真面目な好青年」という僕のイメージは、たぶん外れてはいないのだろう。アウェーの鹿島戦では、田代有三に競り負けたところから失点し、涙したと聞く。そんな負けず嫌いで責任感の強い今野が好きだ。

 その後、今野はボランチに戻った。攻撃に守備に縦横無尽に走り回る彼が、ゴールした後に見せた笑顔こそが、本当に今野らしい顔だったと思う。重圧から解放された彼が見せた笑顔は、実に清々しかった。

posted by taka |23:24 | Jリーグ | コメント(4) | トラックバック(0)
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