2007年09月25日
「新鮮味」の話。
ジョゼ・モウリーニョ監督のチェルシーが好きだった。 システマチックな守備からの、シンプルなショートカウンター。こう書くといかにもつまらなそうで、実際、バルセロナのようなスペクタクルは微塵も無かった。 だが、それがハマった時のチェルシーは最高に美しかった。言うならば「究極の機能美」。相手を追い込むような守備は、奪い所をチェルシーが自ら決めているようで、受動的なものだとばかり思っていた守備だが、能動的にもできるのだと教えてくれた。 加えて、最短手数で確実にゴールを陥れる速攻。攻守の切り替えの速さは先述の「能動的な守備」故の迷いの無さの賜物だろうが、両翼にアリエン・ロッベン、ジョー・コールと言う異才をそろえていたことも大きい。カウンターから高速でサイドのスペースを突くのに加え、自らもゴールを陥れるマルチ・アタッカー。彼らのドリブルを警戒したDFラインがズルズル下がってしまい、そしてできたスペースからランパードがフリーで強烈なミドルシュートを放つのも、モウリーニョの狙い通りといった感じで面白かった。 そのモウリーニョが、チームを去った。 2004年にチェルシーの監督に就任したモウリーニョは、その直前のシーズンにFCポルトを率いてCL優勝。スタイリッシュで不遜、傲慢な規律型監督はビッグクラブでスター選手を率いて手腕を発揮できるのか、一部では疑問をもたれていたが、一蹴。前記のように戦術的に完成されたチームを作り上げ、プレミア・リーグ2連覇を成し遂げた。 そんなモウリーニョの意外な最後を見るにつけ、思うのは「新鮮味」を保つ難しさ。 3年目を迎えた昨季の失速の直接的な原因は、新戦力として迎えたミヒャエル・バラックとアンドリー・シェフチェンコが全く機能しなかったこと、ウィリアム・ギャラスを放出したDFの層が薄くなったこと。だがロッベンら一部選手が不満を漏らし、オーナーのアブラモビッチとモウリーニョ監督の確執が表面化するなど、チームには一体感が欠けていた。 いかに優れた監督でも3年目にもなると、新鮮味を保てなくなるのか。20年以上も監督を続けているマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソンの例もあるが、3年はチームとして、1つのサイクルの終わりと見ていいのかもしれない。バラックやシェフチェンコの獲得は、マンネリ化を打開する刺激になりうるものだったが、結果的には逆効果で、今までの戦術的な蓄積を水泡に帰することになった。 「新鮮味」で思い出すのは、かつてのユベントス。ロベルト・バッジオ、フィリッポ・インザーギ、ジネディーヌ・ジダンら主力選手の放出を毎シーズンのように行ったのは、刺激を与えて新鮮味を保つためだった、という話を聞いたことがある。「常勝」の名は一連の問題で汚された感があるユベントスだが、勝ち続けていたのはそれなりの必然性がある。 さて、今後のチェルシー。新鮮味を感じられなくなったのはチェルシーなのか、モウリーニョ監督自身なのか、それはわからないが、いずれにしてもチェルシーは、グラント監督の下新たなスタートを切った。その船出はマンチェスター・Uを相手に0-2で完敗する散々なものだったが、このまま沈んでいって良いチームではない。再建に向け、グラント監督がまず最初にすべきチームは、信頼するモウリーニョを失って動揺する選手を、再び1つにまとめ上げることだろう。 ただ、モウリーニョを失った影響は小さくない。今季のプレミア・シップの優勝争いの中心から、チェルシーが外れたことは間違いなさそうだ。その中心にはマンチェスター・ユナイテッドがいて、リバプールがそれを追う。 ただそれ以上に面白そうなのが、ティエリ・アンリがバルセロナに移籍したアーセナル。それに代わる補強もなく、絶対的なエースを失った戦力ダウンばかりが目に付いたアーセナルだが、災い転じて福となす。アンリ放出が選手の危機感を煽り、甘えにも似た依存を失わせ、今まで以上の一体感を生んだ。特にアデバヨールが好調で、新たなエースになるべく凄まじいゴールラッシュを見せている。 21年目のファーガソンほどではないが、ベンゲルもアーセナルを率いて11年目。だがパトリック・ビエラやアンリといった、キャプテン・マークを巻く主力選手の放出をためらいもなく行うこの指揮官は、「新鮮味」を保つ術を知っている。
posted by taka911 |02:32 |
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