2007年09月12日

推進力を与えた2人  ~スイス戦レビュー~

 オーストリア遠征を前に、周囲のサッカーファンとの最大の議論の種は
「なぜオシムは三都主を選ばなかったのか」
だった。今年からザルツブルグ(オーストリア)に移籍したアレックスは、昨年末までは不動の「コア・メンバー」。慢性的な左サイドの人材難もあり、オーストリアで2試合を戦う今遠征は代表復帰の絶好の機会と見られていた。

 そこで思うのが、海外でプレーする難しさである。優れた才能を評価されて海を渡り、各国の代表選手と切磋琢磨して腕を磨く彼らは、能力と経験では一日の長がある。だが代表に参加できる日程の少なさから、戦術理解と連携にはハンデを抱える。

 ジーコ前監督は、前者のメリットだけに目を向け、半ば盲目的に信頼した。だがオシム監督はより現実主義者で、メリットとデメリットの両者を慎重に天秤にかけ、メリットに針が振れた時にのみ、海外組をチームに加える。アジアカップで中村俊輔と高原直泰を招集したのも、彼らの能力と経験に対する信頼と共に、攻撃の選手である彼らなら戦術理解と連携の不足のデメリットを最小限に抑えられる公算があったからだろう。

 オーストリアに移籍し、新たにデメリットを抱えるようになったアレックスは、天秤にかけた結果、「確実にプラスになる」とは判断されなかったと見るのが妥当か。これまでのオシム監督の言動を見るに、「確実にプラス」と見られているのは中村俊、高原の2人。



 今回招集された、稲本潤一、松井大輔の2人はどうか。「確実にプラス」といえるほどの実績は彼らにはない。あったのは「どうやらプラスになりそうだ」という期待感。彼らはそれを、「確実にプラス」に転じるほどのインパクトをこの2試合で残したのではないか。

 2人が加えたのは、前方への推進力。稲本の大胆なロングパスと力強い中央突破が、松井のドリブルと仕掛ける姿勢が、遅攻に偏りがちだった攻撃を前へ前へと牽引する。
 象徴的だったのが、スイス戦の58分のシーン。カウンターから豪快に中央を駆け上がった稲本が、左サイドの松井へ展開。一旦はボールを失いかけた松井だったが、「仕事場」で簡単にやられるはずもなく、巧みな身のこなしでスローインに逃げた。

 2試合に渡って稲本が見せた攻守に渡るダイナミズムとチャレンジする姿勢がチームに勇気を与えたのは、言うに及ばず。付け加えておきたいのは、松井に見た「型」を持つことの重要性。
「ストライカーは自分の型を持つべき」
と言ったのは自らも右45度からのシュートを得意とした釜本邦茂さんだが、松井の左サイドからの仕掛けはもはや「型」、「名人芸」の域に達している。51分のPK奪取のシーンといい、前述の58分のシーンといい、仕事場から仕掛ける松井は自信にあふれ、簡単には奪われないだろうという風格すら漂っている。
 仕事場から逃げ、簡単にバックパスを出す日本のサイドバック、攻撃陣は、松井を見習うべきだ。

posted by taka911 |12:34 | 日本代表 | コメント(16) | トラックバック(0)
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