2007年08月15日
ドーピングと肉体
かつてある社会学者は、スポーツ選手の肉体を「スポーツをする身体」と表現した。そこには作られた肉体、というニュアンスが大いに含まれており、優れたアスリートは継続的な鍛練と摂生によってその肉体を「スポーツをするための身体」として完全なものへと近付けてきた。20世紀の陸上競技の記録の向上は、スポーツ科学の“肉体を作る技術”の向上と決して無関係ではない。 だがある者は薬物、ステロイドのような筋肉増強剤を用いて完全へと近付く。かつてのワールドカップ・ウィナーやメダリストが晩年になっての内臓疾患や男性化で、破滅にもまた近付いたことを教えてくれたとしても、だ。 スポーツと薬物。本来決して共存してはならない両者は、近年の検査技術の向上やIOCの厳しい取り締まりによって、随分疎遠になったと思われた。 だが1人の偉大なホームラン・バッターが、我々に薬物の問題をつきつける。 バリー・ボンズ。 先日メジャー・リーグの通算ホームラン記録を塗り替えたボンズは、限りなく“クロ”に近い薬物疑惑のせいで強烈に批判されている。先程私は「偉大なホームラン・バッター」と書いたが、時にはその偉大ささえ全否定されるほどだ。 彼の薬物疑惑の経緯については他に詳しいサイトがあるので、ここでは省略する。私もすでにそれを読んだが、だが私は、ボンズを否定しない。 薬物使用は、恐らく事実だろう。ニュース映像で見たが、以前のボンズは今よりずっとスリムで、走・攻・守3拍子そろった選手だったという。当時の体重は、90kg弱。それが今では筋肉で膨れ上がり、110kgに迫るという。 それでも私がボンズを否定しないのは、1つは筋肉がすなわちホームランを生み出すわけではないから。筋力がボンズのホームラン量産の助けになったのはまず間違いないだろうが、筋肉がホームランを打ったわけではない。正確にボールを捉え、筋力を余すことなくボールに伝えるバッティング技術があってこそ、ホームランが生まれたのだ。 またメジャー・リーグには、ドーピングに甘く、ステロイドが禁止されていなかった時代がある。ボンズはその過渡期を過ごした選手であり、彼を責めることはつまり、「禁止薬物でなければ服用してもいいのか」という倫理面の問題になってしまうのである。 とはいえ、今後のスポーツ界では、ボンズのような選手を産み出してはならない。ドーピングは否定されるべきもので、肉体を作り上げる手段では断じてないのである。
posted by taka911 |11:14 |
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