欧州野球狂の詩(Ver.スポーツナビ)

「MLB王者=世界一」は本当か?

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 このブログをいつも読んでくださっている方々のうち、特に熱烈なMLBのファンであるという人にとっては、今回の記事は喧嘩を売る行為以外の何物でもないかもしれない。しかし、自分自身としてどうしてもこのテーマを疑問に感じ、また書かずにはいられなかったのでどうかそこはお許しいただきたいと思う。

 元々俺がこの記事を書くきっかけになったのは、つい先日までミスターベースボールの記事コメント欄にて、ある記事を巡ってアメリカ人の指導者と激しく議論をやり合ったことだ。その記事というのは、今月上旬に台湾で行われたU21ワールドカップの最終順位を報じるもの。そのアメリカ人が「この大会にはアメリカもカリフォルニアの大学選抜を送るつもりだったのに、出してもらえなかった。WBSCの陰謀だ」とコメントしたのに対し、俺が「実際に参加した国々が、全国から選手を選抜したナショナルチームを送り込んでいるのに、W杯への地域選抜の派遣なんて認められるわけないだろ。他の49州はどこに行ったんだよ」とかみついたのがきっかけで、侃侃諤諤の議論になった。

 実際の議論ではこのU21ワールドカップについての応酬も少なからずあったんだけど、この記事ではその中でも徐々に中心的な話題となっていった「野球世界一を決めるのはMLBの役割なのか」というポイントについて、自分なりの考え方を披露してみたいと思う。これをきっかけとして、少しでも議論が深まるならこの記事を書いた意義があると思う。ちなみに結論から言うと、俺の考えはNoだ。

 現状ではMLBのファイナルはワールドシリーズと名乗り、それを制覇したチームは一般的に各メディア上では「世界一」と形容されることが多い。しかしよく考えてほしい。MLBというのはあくまでも、アメリカとカナダに本拠地を置く30の国内クラブ(もちろんここでのクラブという表現は、あくまでも国家代表に対する国内チームの呼称であることをあらかじめ明示しておく)の集合体に過ぎない。彼らはあくまでもそれぞれ本拠地とする都市の代表であり、毎年の公式戦で対戦するのも同じ北米の球団だけだ。だとすれば、どうしてそのリーグの優勝チームが北米で一番ならともかく、「世界」で一番になれるというんだろうか?

 例えば、マンチェスターシティが各国の超一流選手を揃え、世界最高峰のプレミアリーグで優勝したからと言って、それだけを以てマンCを世界一のクラブだと呼ぶサッカーファンは、おそらく自分を満足させたいマンCのサポーター以外にはいないだろう。なぜならプレミアリーグはあくまでもイングランドサッカーの王者を決めるための戦いであって、もっと広い意味での王者を決めるのは欧州CLなりクラブW杯の役割だからだ。野球とサッカーではもちろんグローバルな感覚というのは異なるけれど、少なくともそれぞれのコンペティションが負っている役割をごっちゃにしてしまうのは、野球だろうがサッカーだろうが好ましい態度ではない。

 話を野球に戻そう。MLB各球団による年間162試合は、あくまでも北米でのNo.1を決めるためのもの。NPB各球団による年間144試合(来年からは143になる予定だが)は、日本プロ野球のNo.1を決めるためのものだ。この点に関しては、世界中如何なるリーグであろうとも全く変わりはない。もちろん実際には、集まっている選手の質やサラリー、あるいはプレーする環境という面では違いは存在する。その何れにおいてもMLBが世界最高峰のリーグであることは、疑いようのない事実だ。

 だからと言って、それらの要素が元々の選手権の目的まで変えてしまうわけではない。公式戦で実際に他国のチームと対戦することがない以上、彼らとの差は相対的なものでこそあれ絶対的なものではないからだ。その差が本当に絶対的なものであるのかどうか、それを証明することこそがWBCをはじめとする国際大会の役割であり目的なんだと思う。そして全世界のクラブが一堂に会して戦う場がない以上、本当の意味での野球のクラブ世界一を決定することなど今の野球界には不可能だ。だからこそ、野球界における「世界一」とは北米のクラブ選手権に過ぎないMLBではなく、各国の代表チームが集いMLBと世界野球ソフトボール連盟(WBSC)双方から公認されているWBCの優勝チームのみが名乗ることがふさわしいと俺は思っている。

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この記事へのコメントコメント一覧

「「MLB王者=世界一」は本当か?」へのコメント

いや、やるまでも無く、といったのは強さもそうですが、リーグの規模や盛り上がり、歴史、レベルの格差含めて総合的に見て、ってことだと思います。
サッカーはレベルの拮抗したリーグが欧州、南米などを中心に幾つもある。しかもリーグの上位に位置し出場権を獲得し、過酷なトーナメントを勝ち上がり大陸王者になり、最後に王者ごとの戦いで年間クラブ1になれる。
この実力の拮抗した多くのリーグという前提があり、その代表同士が、長く険しい戦いの末得られるのでno1クラブ、と自他ともに認められると思います。
翻って野球を見たとき、そのバックボーンとなるリーグレベルの差はどうでしょう。その差は明らかすぎることだと思います。
一発勝負だから勝負は分からない、と言及されていました。そうだと思います。だからこそ、レベルが拮抗していることが重要と思います。そこがかけていると、文字通り一発勝負の勝敗にしかならない。その勝敗に世界一の意味を持たせる説得力を世間に対し持ち得ない。ここは極めて重要だと思います。
今のまま仮にそのような試合をしても、メジャーも短期勝負では負けることもあるよね、位の世間の捉え方から脱却出来ません。

(サッカーはトヨタカップは一試合勝負でした。が勝敗に関してその捉え方をする人は少ないと思います。)

「MLB王者=世界一」は本当か?

>国別対抗戦とリーグをごっちゃにするというのは件のアメリカ人がまさにやっていたこと
まさにそうかもしれません。アメリカ人は国も広く、人口も多く、いろんな考え方、経済的政治的な層が分かれている国なので押しなべていうことは不可能ですが、それでもアメリカ人の一定の層に管理人さんのいうような考え方の人間がいるのは間違いないところだと思います。

確かにWBSC自身の発展も今後は大きく必要なところではありますよね。MLBやNPB・KBOといったプロリーグと共存共栄ができるように発展することを望んでやみません。

「MLB王者=世界一」は本当か?

>southbig99さん
記事中でも書きましたが、現在の名称はクラブW杯ですね。やるまでもなくということですが、勝負の世界に絶対はない以上実際に戦わない限りNo.1がどこかは本当の意味で決められないと思いますよ。まして野球なんて確率のスポーツで、一発勝負ならA級の投手がメジャーリーガーを抑え込むなんてざらにあるわけですし。とはいえ、野球版クラブW杯が存在しない以上はそれは結局のところ悪魔の証明なわけで、その意味でクラブの世界一を決めることは不可能だと俺は思います。日本球界がもっと真面目にアジアシリーズに取り組んでいれば、そこにMLBも巻き込んで発展的に解消する形でそういう大会を創設することもできたと思うんですが。つくづくもったいないことをしたと思います。

>godbacksさん
アメリカ人の旦那さんをお持ちなんですね!!向こうの方々の反応を直に聞いてご存知だというのは説得力ありますね。正論とお褒め頂きありがとうございます。

アメリカでもワールドシリーズに対する見方が変わってきている、というのは非常に興味深いなと思います。むしろそういう見方ができる人たちがちゃんといると聞いて安心しました。井の中の蛙大海を知らずと言いますが、自分が議論した相手はまさにそれがぴったりなタイプだったので。今までの球界は国内リーグの戦いで盛り上がれさえすればいいというのが基本姿勢だったと思いますが、社会全体がグローバル化してトッププロが参加する国際大会もできた以上、クラブによる国内リーグと国家代表による国際大会、その両方に目を向けなければいけない時代になってきていると思います。そういう価値観を共有できる人々が、アメリカでももっと増えてくれたらいいなと思いますね。

>100sai100saiさん
言わんとすることは分からなくもないですが、残念ながらそのご意見は若干的が外れていると指摘せざるを得ません。

まず移動の過酷さについてですが、そもそも111年前にワールドシリーズが誕生した時からMLBが今と同じような規模だったわけではないですよね。MLBが全米を網羅するようになったのは、ドジャースとジャイアンツが西海岸に移った1958年以降のことで、元々は東海岸にしか球団は存在していなかったはずです。4つの時間軸なり移動距離なりを克服して戦うようになったのは、ワールドシリーズの歴史の中でもせいぜい半分くらいですよ。当時は民間航空機も今ほど発達してなかったでしょうから、確かに実際に移動するのは大変だったでしょうが、その点に関しては国内で時差がないにせよ日本とて同じことです。そもそも日本だって、当たり前ですがプロスポーツは基本的に興業として運営されてますしね。地域の共有財産という色彩がMLBと比べて薄いと考えると、むしろ日本の方が見世物としての性格は色濃く持っていると思いますよ。

それとW杯なりWBCなりの国際大会で勝ったところで、リーグの世界一になれないのは当たり前です。なぜなら、これらの国際大会はあくまでも国別対抗でありリーグ対抗ではないからです。第2回WBCまでの日本、あるいはメキシコのように国内組と海外組が一緒にプレーする代表チームはたくさんあります(サッカー日本代表と同じですね)。例えばお互いに混成軍である日本とメキシコが対戦したとして、日本が勝ったからNPBの方がメキシカンリーグより上、あるいは負けたからその逆ということにはならないでしょう。その次元での優劣を決めることが大会の目的ではないからです。国際大会とはリーグ間ではなく国家間の優劣を競う物である、という線引きは最低限きちっとすべきだと思います。

「MLB王者=世界一」は本当か?

>seriseriさん
2度にわたる返信ありがとうございます。うーむ、正論すぎてなかなかうまい反論が見当たらないような(苦笑) ただ、国別対抗戦とリーグをごっちゃにするというのは件のアメリカ人がまさにやっていたことだなと思います。「野球界最高のチームはSFジャイアンツ、30番目くらいにはNPBのクラブも入るかもしれない。それと比べたら、IBAFの大会に出る代表チームなんぞせいぜい200位くらいがいいところだろう」と。国内クラブと代表チームを同列で語るなよ、と突っ込まざるを得ませんでした。そこは俺としては一線を引いているつもりです。

自分自身、例えばMLBが手掛ける普及活動に対してagainstでは全くないし、というかレイズファンのseriseriさんほどではないにせよMLB中継は普通に好きで見てるし、そもそも政治的にも反米主義者などではないので対抗意識と言われるとちょっと違う気はするんですが、このままMLBだけが国際球界において頭一つ抜けた権威を持ち続けるというのは、健全な形ではないとも思うわけですよ。まぁ、その歪さを生んだのは過去にやってきたことの積み重ねなので、別にMLBだけの責任でもないんですけどね。MLBが持っている力をうまく利用するというのはもちろんその通りなんですが、それに加えてWBSC自身も国際統括団体としての権威をきちんと持つように変えていく努力は必要だと思いますよ。そうでなければ組織体制を刷新した意味がないしね。じゃあ具体的にどうするのか、というのはちょっとすぐにはパッと思いつかないですけどね…。

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