欧州野球狂の詩(Ver.スポーツナビ)

イタリア産「世界最強新人」、ロイヤルズと契約か?

このエントリーをはてなブックマークに追加

 大リーグ各球団の国際担当スカウトたちは、ドミニカやベネズエラといった国々で毎年100日以上を過ごし、世界に眠っている次なるスター候補生を日々探し回っています。しかしここ数年、彼らの目的地にはそれらの国々よりも少し「マイナー」な国が加えられているよう。それは、今年の米国外におけるナンバーワンプロスペクトの1人として、15歳のイタリア人遊撃手、マルテン・ガスパリーニが挙げられているから。身長183cm、体重79kgのスイッチヒッターは、20点から80点の間で採点されるスカウティングスケールにおいて、65~70点と評価されているスピードをトレードマークとしています。

 このガスパリーニ、実はこれまでMLB球団と契約したヨーロッパ人選手の中で、最高クラスの契約を勝ち取るのではないかと噂されているんです。ドイツ代表のマックス・ケプラー=ロシツキー外野手が、2009年にツインズと契約を結んだ際に手にしたのは80万ドル。当時のヨーロッパ人の中で最高値の契約を結んだ彼は、2013年シーズンにおいてツインズ傘下のプロスペクトランキングトップ10に名を連ねています。

 一方、今年7月2日に始まる国際アマチュアFA選手との契約可能期間に、MLB球団と契約を結ぶとみられているガスパリーニは、ケプラーの契約金をさらに上回る100万ドルを手にする可能性があるとのこと。現在はドジャース所属のボブ・エンゲル氏は、前所属のマリナーズを昨年11月に離れるまで、チームをヨーロッパ人と最も多く契約を結んだチームの1つに押し上げましたが、マリナーズ時代にはガスパリーニの獲得に非常に積極的に動いていました。また、イタリア代表の主砲であるアンソニー・リッゾ内野手を擁するカブスも、マリナーズ同様にガスパリーニに興味を示していましたが、現在はロイヤルズが獲得競争のフロントランナーとみられています。

 各球団から熱視線を集めるガスパリーニは、スカウトたちから「これまでの数多くのヨーロッパ人選手の中で、今まで見たことのないほどの才能の持ち主」と認識されていますが、実は彼の人気は単にヨーロッパ生まれだからというだけの物珍しさからくるものではありません。他の国々も含めた世界中のプロスペクトマーケットにおいて、彼はプレミアクラスの才能の1人として名を挙げられているのです。

 ある球団の国際スカウティングディレクターは、匿名を条件にガスパリーニについてこう証言しています。「彼は平均的な選手をはるかに上回るアスリートであり、素晴らしいアジリティとボディコントロールを兼ね備えた選手だ。有り余るほどの才能を収めるには十分な体の持ち主だよ。例えショートではなくセンターを守らせたとしても、彼はそのポジションでスペシャルな選手になるだろう。ヨーロッパでの野球レベルは、アメリカで言えば高校の中堅レベルといったところであり、それゆえに彼はドミニカ人たちのように92~94マイルの速球を打ってきた経験はしていない。ただ、彼は試合の中で安打を量産できる能力を持っている。非常に見ていて面白い選手だよ」

 イタリア人の父親と、ロンドン育ちのジャマイカ人の母親との間に生まれたガスパリーニは、イタリア語と英語のバイリンガル。スロベニアとの国境にほど近い、イタリア北東部のアルトゥーレという街で育った彼は、少年時代には友人たちと同様他のスポーツをプレーしていました。イタリアでNo.1の人気を誇るサッカーはもちろん、格闘技にも挑戦していたと言います。一方、チェルビニャーノという街の野球チームがたまたま近くにあったことから、野球にも取り組むようになった彼は、14歳になろうとしていた2011年5月、イタリア野球アカデミーのトライアウトに参加しました。

 現在、MLBインターナショナルのディレクターとしてイタリアアカデミーで指導し、イタリア代表のコーチも務めるビル・ホルムバーグ氏(元カブススカウト)は、ガスパリーニの持つポテンシャルを瞬時に見抜いたと言います。「まだ13歳の彼を見た時、私は『彼に数年間トレーニングをみっちり積ませれば、とてつもない選手を生み出すことができるはずだ』と確信した」と、彼はガスパリーニへの第一印象をこう語っています。

 2011年9月、イタリアアカデミーに入学することが決まった彼は、自宅から約300マイル離れたティレニアでトレーニングを始めました。「彼のショートでの動きはとてつもなく荒削りだったし、スイングの精度も今のように正確ではなかった」とホルムバーグ氏はこう回想します。「しかし当初から、彼のスイングスピードと守備範囲の広さ、そしてその強肩にはほれぼれするものがあったよ。13歳にして、ショートから85マイルの送球を投げることができたんだからね」

 イタリアアカデミーでの彼は、内野守備コーチのペドロ・ジョヴァ、打撃コーチのマルコ・マジェッリ(イタリア代表監督)、ジャンニ・ナターレ、アーマンド・グティエレス、ダニエレ・サントルーポの各氏をはじめとするコーチ陣とともに、練習に熱心にはげみました。そして14歳の時には、早くも大リーグのスカウトから注目されるような逸材になっていたのです。

 その1年後、ガスパリーニは2つの年代別国際大会に参加します。まず最初は、メキシコ・チワワで開催されたU-15世界選手権。MLB各球団のスカウティングディレクターが大挙して押し寄せたこの大会で、ガスパリーニは文字通りの大爆発を見せました。31打数13安打、打率.419、出塁率.514、長打率.710、1二塁打、4三塁打、6盗塁(しかも盗塁死0)という成績は、通算3勝5敗のイタリア代表の中ではとてつもないインパクトを残すものでした。

 この11日間のトーナメントが終わった数日後、ガスパリーニは今度は韓国・ソウルで開催された、U-18世界選手権にも飛び級で参加します。こちらの大会では、彼のバットは17打数2安打となりを潜めたものの、大会全体で2番目に若い参加選手として、3歳も年上の投手たち相手に奮闘を見せました。これらの大会を経て、彼は選手としてさらに大きく成長を続けます。今、スカウトたちが彼に期待している将来像は、スピードと長打力を兼ね備えた切り込み隊長としての姿なんだとか。

 「私がマルテンのプレーで一番注目しているのは、やはりそのスイングスピードだ」とホルムバーグ氏は言います。「私は、彼が純粋なスラッガーになるとは思わない。どちらかというと1番を打つような打者になるだろう。しかし同じ1番打者でも、彼のスタイルは年に20本塁打を打てるだけのパワーを併せ持ったものだ。それだけの選手には間違いなくなれると思う」

 もしガスパリーニに100万ドルの契約をオファーする球団があれば、おそらく彼らはこの選手に遊撃手としてキャリアを始める機会を与えることになるでしょう。彼の二遊間側における守備範囲は非常に広く、逆に三遊間に打たれたゴロの打球に対しては、その強肩が大きな威力を発揮します。もっとも、彼の送球のメカニックに疑問を呈するスカウトも少なくなく、それゆえに中堅手へのコンバートが現実的なプランであるという意見が大勢を占めているようです。

 あるスカウトはガスパリーニの送球フォームについて「腕の振りが小さくややばらつきもあるので、ショートを守るのに十分かどうかは確証が持てない」と言います。「ただ、彼は非常にアスレチックな選手であり、ヨーロッパ出身選手としては非常に素晴らしい動きをする。ドミニカやベネズエラで育った選手と比較しても、それほどそん色はないと言っていいだろう」

 ホルムバーグ氏自身は、ガスパリーニが遊撃手としてプレーできると考えている1人です。イタリアアカデミーでの在籍時代、コーチ陣のプランは「ガスパリーニがコンバートを余儀なくされるまで、遊撃手として育成する」というものだったそうですが、ここ最近はむしろ遊撃手として定着できると思われるだけの、素晴らしい成長ぶりを見せているんだとか。

 「デレク・ジーター。私がマルテンのプレーを見ていて思い起こすのは、間違いなく彼だね」と、ホルムバーグ氏は「ニューヨークの貴公子」の名をガスパリーニの比較対象に掲げます。「無論、ガスパリーニがジーターのレベルに到達するまでには長い道のりが必要だし、彼らのスイングをはじめとするいくつかのスキルが、決定的に性質の違うものであることも分かっている。しかし守備での動きを見れば、彼らは非常に似通った動作をする。彼の身分証明書にかかれている年齢を考慮に入れれば、マルテンはその年代の選手に期待されるよりもずっと上のレベルでディフェンスをしているよ」

 身長195cm、体重81kgのケプラーは、もう1人のヨーロッパ産プロスペクトとしてツインズ傘下でプレー。契約当初は左翼若しくは右翼でのプレーが濃厚とみられていましたが、昨季ルーキー級エリザベストンでは中堅での出場が大半でした。ガスパリーニは先輩のケプラーと比べると、まだビッグな選手では現段階ではないものの、彼を上回るスピードとプレミアムなポジションの選手になれるチャンスを秘めています。

 「マルテンほどの能力やアスレティシズムを持った選手は、残念ながらまだ他にイタリアアカデミーでは見たことがない」とホルムバーグ氏は言います。「もし、そのくらいの選手が毎年10人でもいれば、私の仕事は相当楽になるんだがね(笑) しかしこれは真面目な話だが、過去にアメリカでコーチ業をし、カブスでスカウトとして働いていた時も含めて、マルテンと同年代で同じような才能を持った選手を教えたことはなかった。もちろん、何人かはそれに極めて近い存在だったけれど、彼とまったく同列に語れるような選手ではなかったんだ。数年前、ドイツのケプラーはやはり素晴らしい才能の持ち主としてプロ入りしたが、彼とマルテンはプレーヤーとしてのタイプも、持ち合わせている才能の質も全く異なる」

 今年の3月、第3回WBCでイタリア代表は史上初めて1次リーグを突破。あわやサンフランシスコでの決勝ラウンド進出かという大躍進を遂げ、大きなサプライズをもたらしましたが、そのチームは必ずしも全員がイタリア出身というわけではありませんでした。ヨーロッパにおいて、ガスパリーニに匹敵する才能の持ち主を野球に引き込むのは、決して簡単なタスクではないようです。

 「我々がイタリアに置ける選手育成で最も不足していると実感しているのは、指導者でも施設でもない。ハイレベルな試合だ」とホルムバーグ氏は訴えます。「質の高いゲームをすることが、我々のスポーツに新しい才能を引き込むことにもつながる。我々には、自分たちが誇るベストな才能が年間120試合程度を戦えるような仕組みが絶対に必要なんだそうすれば、ヨーロッパからさらに多くの才能が現れ、MLB球団とも契約を結べるようになるだろう」

 ただ、ここ最近の国際球界の流れがいい方向に行っていることも確か。2011年には、ガスパリーニの先輩格でもあるアレックス・リッディ内野手(マリナーズ)が、史上初めてイタリアで生まれ育ったイタリア人プレーヤーとして大リーグでデビュー。先月末には、アメリカ生まれながらドイツで野球選手として頭角を現したドナルド・ルッツ内野手(レッズ)が、同国初の大リーガーとして歴史に名を残しました。

 「ヨーロッパ人選手たちのプレーの平均レベルは、年々向上している」とホルムバーグ氏は力説します。「コーチ陣のレベルも含めて、何もかもが5年前と比べて飛躍的に成長しているんだ。もちろん、サッカーをはじめとする他競技があまりに人気なので、ベストな才能の全てを野球界が手にすることはできないかもしれないが、ベースボールはこの大陸の若手アスリートたちにとって、少しずつながらも確実に選択肢の1つとして認知され始めている。私は、今の野球界がさらにいい方向に向かうことしか想像できないよ」

ソース:http://www.baseballamerica.com/international/marten-gasparini-15-might-be-europes-best-prospect-ever/



1ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
MLB
タグ:
MLB
ヨーロッパ野球
イタリア
ドイツ

【お知らせ】
Yahoo! JAPAN IDで記事にコメントできるようになりました

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

この記事にはまだコメントがありません

こんな記事も読みたい

【ダルビッシュレビュー】スライダー7割超え!ピアジンスキーが引き出した“5球連続のスライダー”【プロ野球 データスタジアム】

O's:連敗ストップ&ゴーズマン、コールアップ (Wow!)【Koji's Classroom】

【ダルビッシュ速報】主審はボブ・デービットソン【プロ野球 データスタジアム】

ブロガープロフィール

profile-iconsystemr1851

野球とヒップホップ文化が好きな20代男です。小学校3年生までイギリスに住んでいました。プロ野球、MLB、高校野球など何でも好きですが、今はヨーロッパ野球を追っかけています。

ご連絡はgimme_the_microphone☆yahoo.co.jpまで(☆を@に変えてください)
  • 昨日のページビュー:17
  • 累計のページビュー:1566937

(08月15日現在)

関連サイト:@systemr1851

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. G.G.佐藤解雇に見る、日欧球界の価値観の違い
  2. 信頼を裏切った罪は重い
  3. AAA世界選手権、いよいよ明日開幕
  4. イタリア産「世界最強新人」、ロイヤルズと契約か?
  5. Numberの記事に抗議の意を表します
  6. 「MLB王者=世界一」は本当か?
  7. 「本気かどうか」は戦ってから言え
  8. 欧州出身最強右腕、いよいよNPBへ!!
  9. ちょっと冷静になって考えてみた
  10. 裏切り者に夢を売る資格なし

月別アーカイブ

2017
05
04
03
02
2016
11
2015
12
11
10
09
07
06
05
04
03
02
01
2014
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2013
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2012
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2011
12
03
02

このブログを検索

https://www.twitter.com/systemr1851

スポーツナビ+

アクセスランキング2017年08月15日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss