欧州野球狂の詩(Ver.スポーツナビ)

G.G.佐藤解雇に見る、日欧球界の価値観の違い

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 ヨーロッパ野球のファンにとっては、まさに衝撃的なニュースだったはずだ。昨日、今年からイタリアリーグでプレーしていたG.G.佐藤が、所属先のUGFフォルティチュード・ボローニャ1953から解雇された、という情報が飛び込んできた。俺がこのニュースを知ったのは、夜勤に備えて昼間寝ていたこともあって、他の国際野球ファンたちに比べて少し遅れてしまったんだけど、日本におけるヨーロッパ野球の広告塔の1人として、また俺の地元である市川の星として、彼のことは大いに応援していただけに、まさにこの知らせは寝耳に水と言う他なかった。

 自慢の長打力はやや影をひそめたとはいえ、それでも42試合にフル出場して打率.319、3本塁打、22打点、OPS.847という好成績を残しているので、決して成績が振るわなかったゆえの解雇というわけじゃない。むしろ今回の解雇は、ボローニャによる懲戒というイメージが強いんだそうだ。既にある程度広がってしまっている話ではあるけれど、なぜ彼がクビになってしまったのか、1度まとめてみようと思う。

 これまで、このブログではあまり取り上げては来なかったけれど、現在イタリアシリーズが開催中のイタリアリーグには、実はレギュラーシーズンと並ぶもう1つの大会がある。それが、日本のサッカー・Jリーグで言うところのヤマザキナビスコ杯にあたる、イタリアリーグカップだ。「野球版欧州CL」ことヨーロッパカップにおける、イタリア第2代表の決定戦となっているこの大会は、IBLのレギュラーシーズンが終了した段階で、まずシーズンの下位4チームの参加で始まる。そこに、プレーオフに出場した上位4チームが、シーズン終了が早い順に順次合流していく、という形だ。

 この大会について語るうえで重要なのが、この大会には外国人枠が存在しないということ。つまり、イタリアリーグカップにはイタリア国籍を持つ選手しか出られないというわけだ。二重国籍者でもない、純粋な意味での外国人選手(もちろん、G.G.はイタリア国籍を持っていないので、これに該当する)は、この大会が行われている間は、同時期に行われているIBL2(二軍リーグ)のチャンピオンシップに派遣されるか、カップ戦以降の大会に備えて調整するために、一軍に帯同するのが通例となっている。

 G.G.の場合、ボローニャが大会後にヨーロッパカップのファイナル4出場を控えていたこともあり、カップ戦の試合が行われるネットゥーノへの遠征(なんJまとめブログの記事では、このネットゥーノの愛称「Neptune」が「海王星」と誤訳され、ネタとして広まった)に帯同するよう、チームから要請されていた。ネットゥーノはボローニャにとって、ファイナル4でも対戦する可能性がある相手。試合出場はできないまでも、ベンチから相手投手の球を見ることで、コンディションなどについての情報を集めて欲しい、という意味もおそらくあったのかもしれない(もちろん、これはあくまでも推測の域を出ないけれど)。

 ところが、ボローニャの公式サイトによると、G.G.はこれを拒否。「どうせイタリア人以外は試合に出られないのなら」と、ファイナル4に向けたリフレッシュも兼ねて(?)、家族とともにバカンスに行ってしまったという。これに関しては、真偽のほどは定かではないけれど、球団からも事前に警告があったにもかかわらず、G.G.がそれを押し切ったという話もある。

 これらのストーリーの背景には、もちろんG.G.と球団との間に、少なからずすれ違いがあったこともあるだろう。しかし、それ以上に俺が感じたのは、日欧球界の間にある、短期的なカップ戦に対する意識の違いだ。そしてそれはいうなれば、それぞれの世界における野球の在り方の違い、もっと具体的に言えば、スケジュールの組まれ方や構造の違いに起因するものだと思うんだ。

 日本の場合、プロ野球選手が短期決戦を戦う機会は、プレーオフや国際大会にでも出ない限り、通常は存在しない。もちろん、交流戦もある意味短期決戦とは言えるかもしれないけれど、個人やチームの成績がそのままシーズンに合算されることを考えると、あくまでもシーズン144試合の一部であると見た方が適当だろう。3月下旬から10月頭までの長いレギュラーシーズンを戦い、その後プレーオフと日本シリーズをこなして、国内でのシーズンは終了。その間に、イタリアリーグカップのようなカップ戦が挟まる余地はない。

 一方、ヨーロッパの場合はスケジューリングが全く逆だ。もっともレギュラーシーズンの試合数が多い、オランダやイタリアであったとしても、試合数は42試合しかない。リーグ戦そのものは、あくまでも非常に短いんだ。だからそれを補うために、その合間に数々のカップ戦が行われる。ヨーロッパカップ、ハーレムベースボールウィーク/ワールドポート・トーナメント(オランダ)、プラハベースボールウィーク(チェコ)、フィンクストンボール(オーストリア)、アルペンカップ(スイス)…。もちろん、イタリアリーグカップもその1つだ。代表チームかクラブかを問わず、こうした短期間の大会は、ヨーロッパにおいてはごく当たり前に行われている。ヨーロッパでの野球シーズンは、いわば国内リーグとこうしたカップ戦の集合体というわけだ。

 こうした環境の違いを考えれば、G.G.がヨーロッパでの野球の在り方に不慣れだった、という見方は何ら不自然なものじゃない。ただヨーロッパの野球人にとっては、どの大会にも立派な存在意義があるわけで、たとえどんなに小規模なものであったとしても、それをないがしろにするような行動はタブーであると言える。酷な話ではあるけれど、それをきちんと理解しきれていなかったという意味で、G.G.がイタリア野球(というよりヨーロッパ野球)に、完全に適応し切れてはいなかったというのも、また間違いじゃないだろう。

 では、G.G.がネットゥーノ遠征を拒否するうえで、判断材料にしたものとはなんだったのか。もちろん、日本人である自分が出られないということも、1つの理由ではあったんだろうけど、たぶん他にも何らかの理由があったんだと思う。俺が思うに、彼はイタリアリーグカップという大会を、あるものと同じように考えていたんじゃないだろうか。日本人プロ野球選手が参加する機会がある、数少ない「短期決戦」の1つ。そう、先ほどの日本のシーズンについての概説の中で、敢えて触れなかったアジアシリーズだ。

 日本シリーズ終了後に、日韓台中(昨年は台湾開催のため日韓台豪、今年は韓国開催のため中国も復帰し、5か国6球団で行われる予定とか)の4か国のリーグ王者で争われるアジアシリーズ。「アジアNo.1のプロ野球球団を決める」という名目で行われている大会ではあるものの、長いシーズンが終わった後に開かれる大会のため、主力級は不参加というケースも多く、外国人選手も多くが帰国してしまった中で行われることが多い。それゆえ、特にNPB代表の参加チームは、顔ぶれが一軍半~二軍というようなケースも、昨年のソフトバンクをはじめしばしば存在する。

 既にイタリアに帰化している者も含め、外国人選手への依存が強いIBLでも、その頼みの綱が出場できないイタリアリーグカップは、やはり事実上一軍半のチーム同士の試合となってしまう。この点においては、アジアシリーズも事情は似たようなものだ。だから、G.G.も「参加しなくても構わない」と思ってしまったのかもしれない。ただし重要なのは、アジアシリーズの欠場が(道義的問題はあるにせよ)、それほど大きな意味を持たないものであったとしても、少なくともネットゥーノ遠征への参加拒否は、ボローニャにとってはそうではなかったということ。それを同一視してしまったことは、彼にとっては不覚と言えるかもしれない。

 いずれにせよ、G.G.が今回解雇されてしまったという事実は、あまりにも大きなものだと思う。事情がどうあれ、「遠征への帯同を巡って懲戒解雇」という既成事実ができてしまった以上、同じヨーロッパの球団で拾ってくれるところが見つかる確率は、いくらプレーそのものは計算ができるとはいえ、残念ながら高いとは言えないだろう。少なくとも、イタリアではもうプレーできないような気もする。現在34歳という彼にとっては、非常に厳しい状況であるのは間違いない。日本にいた頃から、グラウンド外での「雑音」は多かったとはいえ、そのトラブル体質がイタリアでも発揮されてしまったというのは、とても残念だ。ファイナル4で躍動するG.G.のプレーぶりを、もう伝えることができなくなってしまったという意味でもね。



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G.G.佐藤

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G.G.佐藤解雇に見る、日欧球界の価値観の違い

彼は、イタリア野球界からすれば給与などの面で破格の条件でした。
それはコーチ兼任ということもあったからです。
しかし、それをこなしていたとは言い難かったようです。
日本にいるときから、トラブルメーカーの彼の人間性は推してしるべしです。
弁護の余地はありません。アジアシリーズがどうだとか、カップ戦の位置づけがどうだとかは全く関係ありません。
先駆者である彼が、日本人の悪評を広めてしまったことは大変遺憾です。
テレビなどで報道された時もコメントなどの節々に、ヨーロッパ野球を舐めてる様子が見て取れました。
二度と、ふざけた真似はしないで欲しいです。

G.G.佐藤解雇に見る、日欧球界の価値観の違い

http://grandeslam.net/sotto-le-due-torri/39802-ultima-ora-sato-rilasciato-dalla-fortitudo-bologna


記事によると


外国人のでれないイタリア杯へのチーム帯同の要請に反発し自分のロッカーの用具類をチームメイトの前でゴミ箱にすてるなどの行為により解雇。


価値観の違いなど問題ではなく、単なる人間性の問題。

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