欧州野球狂の詩(Ver.スポーツナビ)

ちょっと冷静になって考えてみた

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 昨日書いた「信頼を裏切った罪は重い」の記事、書いたとたんに物凄い反響があったようで、自分でも正直驚いている。いつものように過激な論調で書いたことで、ある程度は覚悟していたけれど、まさか1つの記事にコメントが30件以上つく(アメブロ版で48件、スポナビ版で32件。ベースボールジャーナルの転載記事のツイート数は、既に50件を超えている)事態になるとは思わなかった。今年初めに設定した「1日3000アクセス」という目標を、あっさり達成してしまったことも含めて、とにかくただただ度肝を抜かれている状態だ。

 ただ、昨日の記事を改めて読み返してみると、確かに事前に断わっていたとはいえ、明らかに感情的になりすぎている部分が多々あった。不参加のニュースを耳にしたショックが、まだ完全に癒えていない状態で書き始めたので、かなりとげとげしい表現を使っている部分も多かったし、一方的に暴言をまくし立てているように映った人も、少なからずいるかもしれない。そういう不快な思いをさせてしまった方に対しては、心から申し訳なく思うし、むしろああいう記事にも正面からコメントしてくれて、本当にありがたいなと感じる。

 というわけで、昨日から一夜明け、頭もだいぶ冷静になってきた今、日本プロ野球選手会がWBC出場を辞退した問題について、改めて自分なりの考えを書いてみたいと思う。今回は、なるべく感情などは交えずに、冷静な文体で書くつもりではいるけれど、もしかしたら説得力を出そうとしすぎるがあまり、また若干興奮気味な口調になってしまうことがあるかもしれない。その時は本当に申し訳ない。

 まずは、選手会の立場に賛同する方々がよく口にする、「日本はベストメンバーに近い面々を揃えて、本気で戦っているのに、MLBの方は明らかに手を抜いている」という意見に対する反論だ。この点に関しては、特にアメリカ代表に辞退者が多いことも、少なからず関係しているのかもしれないけれど、どうもこういった論調と、実際に出場しているメンバーの顔ぶれを比較すると、「イメージでしかものを語ってないんじゃないか」という風に、自分では思えるんだ。

 そもそも、MLBが大会の開催にあたって、運営面で手を抜いているというのは、大きな誤解だ。2006年の第1回大会の開催にこぎつけるまでは、MLBは各球団を説得するための交渉に、実に10年以上の歳月を要している。特に、シーズン前に所属選手が故障することを嫌がる、保守的なオーナーの首を縦に振らせるのは、至難の技だったはずだ。それほど実現に苦労した大会だからこそ、MLBは第1回大会から、物凄く気合を入れて運営に臨んでいる。大会運営に関わる諸費用はもちろん、会場として利用するスタジアムとの交渉や、各国連盟との日程調整、あるいは万が一赤字が出た時の補てんは、全て彼らが責任を負っているんだ。アンチWBC論者が言うところの「お遊びの大会」で、これだけのことを本気でやれるだろうか?

 そして、代表に選ばれている選手にしても、確かに辞退者は多いかもしれないけれど、それでもハイレベルかつモチベーションに溢れていた。例えばアメリカは、第1回大会のメンバーにロジャー・クレメンス(元アストロズ)、アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)、ケン・グリフィー・ジュニア(元マリナーズ)などを揃えた、ドリームチームを結成していたし、第2回大会でも若干格落ちとはいえ、それでも野手には球宴経験者がずらりと名を揃えた。なんだかんだ言って、メンバー全員を現役大リーガーで固められるのは、過去に参加して全16チームを見渡してみても、アメリカだけなんだ。

 さらに言えば、実際にプレーしている面々も、映像で見る限りはかなり真剣に戦っていた。第2回大会の2次リーグ、フロリダラウンドのアメリカ-ベネズエラ戦では、凡退したアメリカのマーク・デローサが、ベンチ裏でヘルメットを叩きつけた。同じフロリダでのアメリカ-オランダ戦では、アメリカのマット・リンドストロムが、オランダのヴィンス・ルーイの背後に投じた1球を巡って、一触即発の状態になった。その前段階であるサンファンラウンド、あの歴史的なオランダ-ドミニカ戦では、延長12回裏に逆転サヨナラ勝ちを決めたオランダは、優勝したかのような大はしゃぎ。負けたドミニカベンチは、さながらお通夜のような状態だった。

 負けたドミニカのあるファンは、Youtubeに掲載されていたこの試合のダイジェスト動画において、「ドミニカが世界一になれる競技は、現実的に見て野球かボクシングしかない。お前らアメリカ人にとっては、WBCは取るに足らない大会かもしれないが、俺たちドミニカ人にとってはそうじゃないんだよ」というコメントを、アメリカのユーザーに対して残している。人間が喜怒哀楽を爆発させるのは、例外なくその瞬間の出来事に対して、本気で向き合っていたからだ。もしWBCが、アンチの言うような単なる「国際オープン戦」だというなら、果たして実際にプレーしていた選手たちは、あるいは彼らを応援しているファンたちは、ここまで感情をあらわにしただろうか?

 2つ目にツッコみたいのは、選手会も掲げていた運営面での不満に対してだ。大会運営に必要なスポンサーを獲ってきたのは日本なのに、なぜその利益が日本に十分に還元されないのか、という不満は、今回の出場辞退劇の一番の理由でもあると思う。選手会にしてもファンにしても、スポンサーの利益をなぜ代表チームの物にできないのかと主張しているけれど、結論から言うと現段階のWBCでは、それは物理的に無理だ。

 日本からは、確かに多くのスポンサー企業が大会に協賛したし、それが大会運営にあたっても重要な資金源になったことは事実だろう。しかし現実的に見て、例えば前述のベネズエラやドミニカのような国々から、同じようにスポンサーを集めることはできるだろうか?彼らは、野球の実力に関しては紛れもなく超一流だけど、残念ながら経済力に関してはそうじゃない。こういった国々の代表チームを、経済的にバックアップできるだけの体力を持つ企業は、こういった国々にはそもそも存在しないか、万が一あってもごく稀なケースでしかない。かといって、まだサッカーのようにワールドワイドなスポーツでもないので、例えば中東の富豪がスポンサリングしてくれる、なんてことも期待はできないわけだ。

 冷静に見て、まだ過去に2回しか開催していないWBCは、「野球版FIFAワールドカップ」と言えるレベルには達していない。もちろん、将来的にはそうなってもらいたいし、現にそのための動き(IBAFワールドカップの廃止など)も加速しているんだけど、現段階ではまだ「野球の国際的普及」を前面に押し出さざるを得ないイベントに過ぎないんだ。だから、開催にあたっても当然無理をしている(日程の問題にしてもそう)んだけど、例えば五輪復帰運動への影響も含めて、それを通してでも開催するためには、主催者がスポンサー料を管理し、参加国に分配するしかないんだよ。WBCよりも、遥かに歴史も権威もある五輪やFIFAワールドカップと、全く同じ運営スタイルを採ることはできないんだ。

 もし、どうしてもこのことに不満があるのであれば、日本側もただ外野で愚痴るのではなく、第1回大会の時点から、もっとオペレーションの部分で協力すべきだった。であれば、同じ「主催者」としてのうまみを、望み通りもっと享受できたはずだ。にもかかわらず、大会運営を「主催者だから」と事実上MLBに丸投げしておいて、いざ儲かることが分かったら「取り分を増やせ」と言うのは、いくらなんでも客観的に見て筋が通らないだろう。確かにスポンサーに関しては、既に述べたとおり日本企業が数多く参加した。ただ、それは別に日本代表そのものに投資したわけじゃなく、あくまでも「大リーガーが参戦する、WBCという大会」の価値に対して投資するものだったはず。その価値を抜きにして、スポンサーがつくことなどありえないよ。

 昨日の記事を、感情論丸出しで書いてしまった俺にも非はある。ただ、このWBC出場問題について語る時、出場反対派はどうしても、俺以上に感情をむき出しにしてしまって、本質的なところを見過ごしてしまっているように思うんだ。言葉は悪いけれど、視野が狭いと言われても、仕方のない部分もあるんじゃないかな。例えば、俺が昨夜「NPBの試合は見ない」と書いたのに対して、「野球を見ないなら、お好きにどうぞ」とコメントした人がいるのだってそうだ。俺は、「NPBの試合は」見ないとは確かに書いたけど、野球を見ないとは一言も言っていないよ。MLBにせよ国際野球にせよ、野球文化は世界中に広がっているんだからね。こういう短絡的なところも、日本の野球ファンの視野が狭くなっている証左だと思う。この問題に関しては、もっと色々な側面から物事を見るべきだと思うね。もちろん、かく言う俺自身も含めてだけどね。



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ちょっと冷静になって考えてみた

ちょくちょく見せてもらってますが、いいこと書く人だなーと思ってました。

WBC不参加は日本の野球にとって本当に大きなものを失ってしまう。

ファンにとって(まあ自分は)はお金がMLBにいったとしても不満がありません。 MLBには外人枠もなく日本人を受け入れてくれる。 チャンスも平等(むしろ日本人には優しいか?)、年金までくれる。 野球も世界中で発展してほしい。 むしろ理由をつけて資金援助して、日本の地位を高めて欲しいと思っている。

一方日本のプロ野球選手に全部お金が行ったとしたら、何か不満です。 もともと彼らはお金をもらいすぎ。 人気もなくなって来てるのに年棒が上がる始末、下がらないと。 実力に見合ってるとも言えない。  WBC出場手当はどれだけもらえば満足なのか? スポンサー料11%だかで充分じゃないの?

「生活がかかっている」「飯を食っている」とよく言ってアピールしますが、それは一般人のセリフ。 「億ションに住む」「外車を乗りまわす」が本当のところ。 
原監督のケースにしても、野球選手の価値観は気色悪いくらい。  お金を求めるのは結構なことだけど、すり替えはダメ。

WBC不参加はお金が理由でしょう。 目先のお金を取って大きなものを捨ててどうする? なによりWBC出たくないか?

 日本では野球がうまい人は最高に恵まれている。 それはラッキーなだけ。 自分たちが恵まれた分、後輩達もそれ以上に恵まれるようにするべきじゃないのか。 選手会は過去の遺産を食い荒らしているようにしか見えない。 WBCは新しい野球熱の波を作れる価値あるもの。

ちょっと冷静になって考えてみた

コメント返しありがとうございます。

若干補足気味になりますが、自分が例にあげた台湾WCは、2001年の台湾WCです。プロアマ混成軍でしたが、高橋由・井口・阿部といった当時でも有名な選手がチームに参加していたので挙げました。(とはいっても、IBAF主催のWCには変わりないので、管理人さんのコメント返しの内容には影響しないとは思いますが)

ちょっと冷静になって考えてみた

NPBもMLBも好きな私としては頭が痛いです。
なんかMLB悪、アメリカ悪という感情論が結構目にするがそれは違うだろうと思うし、MLBの言い分もわかるし選手会の言い分もわかる。
これが今の世界の野球の国際現状なんだと思う。

もう正直出たくないならもう出なくていいよという感じですそのかわりもし他の国際試合をこれから日本代表を使ってやるようなら、応援する気がありませんw

単純にもっといろんな国からいい選手がたくさん出てきて
国同士真剣に戦うのが見たいね。
IBAFが開けばいいけど金がなくMLBからお金を寄付してもらわなきゃなりたたない状態だからなー。

世論はこれから選手会擁護、MLB悪に向かうのが見えてますね、なんせNPBファンがたくさんいますからw

ちょっと冷静になって考えてみた

ブログ主さんの記事で目を引かれたのが、「現行の世界王者はW杯優勝のオランダ」というところです。WBCがIBAFによって国際大会としてのお墨付きを貰うのが次回以降である以上、それは仕方のないことでしょう。

ここで自分がふと思ったのが、「第1回、第2回のWBC連覇って、実は大した価値がないんじゃないか?」ということです。
戦いの中で感動など様々な感情を巻き起こしたのは事実ですが、正直言ってそんなに大騒ぎすることなのかと。各国、各選手の温度差なども加味して。

逆に、「連覇した日本の選手会が不満を述べるからこそ説得力がある」という意見も説得力を失う気がします。
不満を述べられた主催者側、他の参加国からすれば「へぇー、連覇したんだ。それがどうかしたの?」とでも思われているのでは。
黄門様の印籠のような、大きな効力を持つものとはとても言えないんじゃないかと再考してるところです。

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