2007年11月09日
野球界に一番足りないもの
半年という長い期間をかけ、自分は「ビジネスの視点から見た今の日本のスポーツ界に、一番足りないものとはなんだろう?」ということを考え続けてきました。その結果、最近やっとある結論にたどり着きました。それは、「人間がいない」ということ。言い方を少し変えると、「頭数はいるが、人材はいない」ということです。(あれ、もしかしてさらにわかりにくくなった?)プロ野球に限らず、今の日本のスポーツ界を動かしている人々を見ると、そこには大きく分けて2つのタイプがあることに気づきます。ひとつは、長く一流選手として戦ってきた現場上がりの人々。もうひとつは、たとえば球団の親会社から出向してくる背広組の人々です。しかし、この2つの類型に属する人々は、本当にスポーツビジネスに適しているといえるでしょうか? これはあくまで仮定の話でしかありませんが、たとえばマリナーズと契約が切れる2012年以降、イチロー選手がMLBを引退した後、すぐに日本の球団に運営スタッフとして呼ばれたとしましょう。そこで彼がすぐに成功できるかといったら、私は本人には失礼ながら否だと思います。私はイチロー選手の大ファンですし、彼の選手としての能力がすでに別次元にあることも十分理解しています。それでも、野球を実際にプレーすることと、それをビジネスとして動かしていくこととは、あくまで別の才能です。それゆえ、引退してすぐのイチロー選手をマリナーズがフロントスタッフとして採用するということはまずないであろう、と私は考えます。名選手が必ずしも名将にはなり得ないのとまったく同じ理屈です。 その意味では、ビジネスの理論を叩き込まれている「背広組」はまだマシかもしれません。しかし問題は、彼らが一般企業におけるビジネスとスポーツビジネスの違いを理解していないことです。 たとえば世界規模で見た自動車市場であれば、GM(曖昧さ回避のため、ゼネラルモータースと脚注します)とトヨタの関係は同業他社であり、あくまで競合相手でしかありません。悪い言い方をすれば、トヨタにとってのGM(その逆も然りですが)は、市場の制圧という究極の目標を達成するための踏み台でしかないといえると思います。これはかなり大げさな極論ですが、世界中の車を自社がすべてまったく問題なく供給できるのであれば、別に同業者がほかにいなくても自動車ビジネスは成立するはずです。 ところがプロスポーツビジネスにおいては、他球団がいないとそもそもビジネスが成り立ちません。「如何に白熱した試合をファンに提供するか」ということこそ、このビジネスの焦点であるからです。そのためには、全球団が共存し、共に成長していくという仕組みづくりが欠かせません。プロスポーツビジネスは、「同業他社は蹴落とすもの」という一般企業の論理が通用しない世界。それは2004年の球界再編騒動のとき、近鉄とオリックスの合併が「銀行同士の合併の論理と同じだ」と批判されたことを見てもわかります。このことを理解していなければ、スポーツビジネスの世界で成功することはありえないといっても過言ではないでしょう。 今まで長々とあげつらってきましたが、私が考える「本当にプロスポーツビジネスに必要な人材」とはすなわち、「スポーツビジネスを知るビジネスのエキスパート」です。たとえるなら「MLBの各球団をつかさどるGM(ゼネラルマネージャー)」です。現場の監督以上にチームのことを熟知していなければ勤まらない、といわれるのがGMですが、日本プロ野球においてはまだまだ少ないのが現状だと思います。これは他団体、他種目においても似たような状況ではないかと思います。 そのような人材が日本でこれまで育ってこなかった結果、日本のスポーツ界はビジネスとしてその力を出し切れていなくなっています。以前日経で読んだ記事によると、昨年度の日本のスポーツ界全体での収入は約7000億円程度。これに対し、アメリカはなんと6兆円規模にもなるそうです。確かにGDPを見ても、日本とアメリカには1桁の差があります(2007年、アメリカのGDPは1,3943,096(単位100万US$)でトップ。2位日本は4569,031。Wikipedia参照)。しかし日米の人口はおよそ2~3倍の差があるのですから、簡単に比較はできません。人口に2~3倍の差があるとするなら、単純計算で日本のスポーツ界の総収入がアメリカの半分から3分の1、2~3兆円規模なら正常値であるといえます。しかし、その値にもぜんぜん届いていない。 結局、スポーツビジネスが持つ「底力」を完全に発揮できるような運営をしてこなかったこと、そしてそのような運営をできる人がいなかったことが、今日のような状況を生んだのではないかと思います。これからは、スポーツビジネスで本当の意味での成功を収められる人材が、特に下の世代から台頭してくることが求められていると思います。そしてプロスポーツビジネスの世界を志す私自身も、そのような人間になりたいと思っています。長文失礼しました。
昨日の新聞で、「日本スポーツマネジメント学会」が設立されるというニュースがありましたね!!こういう動きが出てくることを、スポーツを学ぶ学生としてうれしく思います。実は、発起人の一人・原田宗彦先生は僕の大学における大先生なんですけども。学生でも発表できる機会はあるということらしいんですが、こういう記事を書いてる自分にもチャンスはあったりするんでしょうか?一度は公の場でプレゼンしてみたいものですが。
posted by systemr1851 |23:09 |
球界問題 |
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野球界に一番足りないもの
素晴らしいブログですね
はっきりいって私のようなものがコメントするのがためらわれます
管理人さんはまだ若いです、だから失礼かも知れませんが
管理人さんが知っている『情報量』は他の人よりも劣ることが多々あるかと思います
ただし管理人さんは知っている情報量の中で自分の思っていることを的確に表現する事に関しては
非凡なものをもっていると思います
私のブログが恥ずかしくなってきました
これからもこのブログを見て勉強させて頂きますね
長文失礼致しました
posted by HK | 2007-11-10 01:09
野球界に一番足りないもの
私もスポーツ界に従事した仕事を志しているものです。私の場合は書き手を目指しています。歳も近いです。
管理人さんのブログを読ませていただいて多少なりとも影響を受けました。私にはない、ビジネスとしての視点が新鮮でした。過去の記事にも目を通します。
私は最近はじめたばかりで方向性が安定していませんが、一度遊びにきてください。ぜひ感想伺いたいです。
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/life_sports/
posted by life_sports | 2007-11-10 01:42
野球界に一番足りないもの
揚げ足をとってるんじゃなくオイラは無知なんで聞きますが
GDPが低いヨーロッパでスペインリーグの連中の給料がバカ高いのは何故なんですか?
あらゆる資本が強力、あらゆる法律や現状のキャパとかも無視した場合アジアでソレは可能ですか?
posted by ??? | 2007-11-11 16:29
野球界に一番足りないもの
>???さん
ヨーロッパリーグの場合は、ロシアやトルコなどの強力な外国資本が続々と参入して、各国のトップクラブを買い漁っているという状況があります。国内企業がクラブを持っているわけではないので、たとえ国内のGDPが低くても高額年俸を支払うことが可能なんですね。
アジア、特に日本の場合は、外国資本の参入を制限する規約の関係上厳しいかと思われます。もちろん、このルールを改正すれば改正はあると思いますが。
posted by systemr1851 | 2007-11-11 22:51
野球界に一番足りないもの
管理人さんのおっしゃっている「人」の問題は
大きいと思います。
単なる「スポーツ好き」ではなく、「スポーツと
ビジネスを両立できる」人材こそ最も必要とされ
る人材だと思います。
「コストが一定で、売上げ変動率が大きい」と
いうスポーツビジネス特異の収益構造があり、
実は他の業種以上にマネジメントに優れた人材が
必要なのであると指摘される方もいらっしゃいま
す。
また、それに加え、「外部性」と「透明性」も
必須だと思います。
1.外部性
球団職員の採用に関して、まだまだ外部の人材を積極的に採用しているとは言い難いと思います。
また、Jリーグの「経営諮問委員会」のような
アドバイザリーボードのような位置づけも必須
です(「経営諮問委員会」の役割は、企業経営、
マーケティング、法務、会計等8人の外部からの
専門家により、「各クラブを訪問して経営状況を
把握し、問題への対処、立案をしていくこと」に
あります。)
2.透明性
何よりも経営者側による財務情報の公開は必須で
す。MLBが1994年にストライキを起こりました
が、これはサラリーキャップを採用しようとする
経営者側に対し、選手会側が反発して起こった
ものです。これは、「リーグ収入」を定義する
際、どの収入項目がサラリーキャップ算出額に
含まれるかを議論することとなりますが、
その議論の元となる経営者側から提示される
財務情報の信憑性に疑問がある場合、選手の給与
が不当に下げられてしまうリスクが残るため、
選手会側が首を縦に振らなかったからです。
これを機にサラリーキャップの導入はなりません
でしたが、代わりに「課徴金(ぜいたく税)制度」
が導入されました(が、上記課題は完全には解決
されたとはいえない状態です)。
Jリーグでも経営情報を公式HPで公開しています
し、時代の流れとして、透明性ははずせないもの
となるでしょう。
posted by Baseball all of my life | 2007-11-17 00:24


