2009年10月27日
アルスベンスカン2009観戦記①10月24日 ユールゴーデンIF対オルグリテIS
最初に告白しておかなければならないが、私がスウェーデンのサッカーに関心を持ち始めたのは1994年の米国W杯以降だが、関心の対象は代表チーム限定で、国内リーグに関してはまったくといっていいほど知らなかった。3年前にスウェーデンに留学し多少スウェーデン語ができるようになってからアルスベンスカンのニュースに目を通すようになったが、自分としてはまだビギナーの域を出ていないと思う。実際、アルスベンスカンの試合を生で観戦したのは、2007年開幕戦のIFエルフスボリ対マルメFFだけだ(2005年に観光でスウェーデンを訪れたときにマルメの試合をみたことがあるが、そのときはイスラエルのマッカビ・ハイファとのチャンピオンズリーグ予備選だった)。そんな「スウェーデンサッカー通もどき」の現地観戦記、最後までお付き合いいただければ幸いである。この日観戦するユールゴーデンIF対オルグリテISの試合は、残留を争うチーム同士の一戦ということもあり白熱した戦いになることが予想された。ホームのユールゴーデンは、2000年代に入って5度の優勝経験をもつ強豪で、かつてはキム・シェルストロームやアンドレアス・イサクソン、ヨハン・エルマンデルといった現役スウェーデン代表選手、それに前イングランド代表のテディ・シェリンガムや前フランス代表で「サッカー界のデニス・ロッドマン」といわれたイブラヒム・バといった選手がこのクラブでプレーした経験をもつ。今季、シーズン開幕前はメディアの間で優勝争いに絡んでくると言われていたが、蓋を開けてみれば27節終了時点で最下位に低迷。「ストックホルムの誇り」という愛称をもつが、このままアルスベンスカンから降格ということになってしまえば、誇りどころか「ストックホルムの恥」なんて言われそうだ。
一方のオルグリテは、今季スーペルエッタン(2部)から昇格した、第2の都市ヨーテボリを本拠に置くクラブ。元スウェーデン代表マルクス・アルベックとブラジル人アルバロ・サントスの強力2トップを擁し、こちらもユールゴーデン同様に開幕前の評価は高く、「サプライズを提供するかもしれない」といわれていた。だがこちらも周囲の期待を大きく裏切り、開幕から6連敗。折り返し地点の15節になってようやく初勝利を挙げたという、別の意味でサプライズを提供してしまった。とはいえ、後半戦に入るとようやく戦力に見合った戦いをするようになり、徐々に勝ち点を伸ばす。前節ではヘルシンボリIFに3対0と快勝し降格圏外の18位に浮上。意気揚々とストックホルムに乗り込んできた。
試合会場のストックホルム・スタディオンは、正式名称はストックホルム・オリンピアスタディオンだが、今日ではスタディオンと呼ばれることが多い。地下鉄Stadion駅から徒歩約2分のところに位置するこのスタジアムは、1912年のストックホルム五輪のために建設された総合競技場で、国内建築家のトルベン・グルト氏によって設計された。収容人数は約15000人で、ユールゴーデンの試合はもちろん、フロアボール(インネバンディ)といった他スポーツはもちろん、コンサート会場としても使用されることが多く、スウェーデンの有名なロックバンドKent、国外ではKissや故マイケル・ジャクソン、ローリンズ・ストーンズといった有名アーティストが公演を行なったことがある。ロマン主義をもとに建てられたそうだが、スタジアム全体がゴシック風で荘厳な雰囲気を醸し出しているのが印象的で、この日のどんよりとした天候によってそれらは一層際立っていた。
試合開始時刻は14時。約1時間半前にスタジアムに到着したが、案の定、人はほとんどいない。入場しようとしたら、係りの人に「いまはまだ駄目。12時45分に開場だよ」といわれてしまった。何もすることがないので、サポーターショップで時間をつぶすことに。だが、ちょうど店の前に着いたとき、1台のバスが到着。「もしかして選手が乗っているのか?」と期待を膨らませていたら、やはり選手移動用バスだった。中からユールゴーデンの選手が続々と降りてくる。近くにいたサポーターが、チームの有名選手のひとり、セバスティアン・ラヤラクソ選手に対して「ラッヤ!」と声をかけると、ラヤラクソ選手はそれに対して手を挙げて応えていた。
サポーターショップで時間をつぶした後、開場時間を少し過ぎてから係員にチケットをみせ入場。同時に荷物検査が行なわれることに。バッグ、それに日本でもおなじみのファッションメーカーH&Mの袋をもっていたのだが、係員は「なかに何か硬いものは入っていないか?」と聞くだけで中身を見ようとしない。「まず中をチェックしろよ」と突っ込みたくなったが、「入ってない」と答えるとそのまま入場できた。
押さえた席は、メインスタンドの真ん中あたり。まだ選手らはピッチに姿を見せておらず、観客もまばら。写真を撮りつつ、配布されていたマッチプログラムとタブロイド紙Aftonbladetを読みながら時間をつぶす。Aftonbladetに入っているスポーツ紙Sportbladetの一面には、ドイツのローター・マテウス氏がスウェーデン代表監督に関心を示しているという記事が。「どうせまたガセネタだろう」と呆れながらページをめくっていくと、ブーイングが聞こえてきた。オルグリテの選手が登場したのだ。そのなかには、40歳のGKベングト・アンデション、そしてアルベックの姿もみられる。その直後、反対側からユールゴーデンの選手も登場。観客からは大きな拍手が起こる。両チーム選手の練習時間は、13時15分からおよそ30分間。パス練習や鳥かごを中心に行なっていた。
選手らがいったん姿を消すと、その後スタジアムに曲が流れてきた。どうやらサポーターソングのようで、観客も一緒になって歌う。曲が終わると、いよいよ試合が始まるという雰囲気が漂ってくる。そして、いよいよ両チームの選手らがピッチに入場。選手ひとりひとりの名前が紹介され、22人が持ち場のポジションに散ったあと、マルティン・ハンソン主審の笛によって試合が開始された。 両チームのスタメンは以下のとおり。個人的に一番注目していたユールゴーデンのラヤラクソはベンチスタートだった。 ユールゴーデン(4-4-2) トウライ:セーサイ、ヨハネッソン、クイバスト、ペッテル・グスタフソン:ユセフ、エコング、ハギンゲ、ミリッチ:ダールベリ、ヘルクイスト オルグリテ(4-4-2) ベングト・アンデション:ロビン・ヨンソン、デニス・ヨンソン、エルナンデス、ペレイラ:マルクス・グスタフソン、セバスティアン・ヨハンソン、メルクビスト、サバディル:アルベック、アルバロ・サントス 序盤、ユールゴーデンが左サイドのミリッチを中心に仕掛けるが、決定的なチャンスには至らない。ピッチを広く使おうという意図は感じられるが、セントラルMFのハギンゲとエコングはどちらも視野が広いとはいえず、なかなか良い攻撃には結びつかない。対するオルグリテは、右サイドのマルクス・グスタフソンが何度か好クロスを供給。だがこちらも攻めがちぐはぐで、前線のアルベックとアルバロ・サントスはほとんどボールに触れることができない。 この試合、オルグリテにとっては引き分けでも十分だが、最下位ユールゴーデンにとっては勝利が絶対必要だった。そういうわけで、ふがいないサッカーをみせるチームに対しサポーターは徐々に苛立ちをみせる。私の数列前に座っていた男性は、最初は選手に対して文句をいっていたのだが、しまいにはピッチとは別の方向に向かって中指を立て始めた。その向かう先をみると、ユールゴーデンのベンチ。「こんなチームになったのはお前ら首脳陣のせいだ!」とでもいいたかったのだろうか。
だが、スタジアムに険悪な雰囲気が漂い始めたそのとき、ユールゴーデンは先制に成功する。31分、ゴール中央でミリッチからのパスを受けたハギンゲがワントラップして右足を一閃。低い弾道のシュートはオルグリテゴールに突き刺さった。 このゴールで波に乗りたいユールゴーデンだが、依然として動きは良くない。先述したようにセントラルMFに展開力がないのも原因のひとつだが、さらにわかったことはボール保持者に対してのサポートがおそい。たとえば、左サイドでミリッチがボールをキープしても、左サイドバックのペッテル・グスタフソンのサポートが遅い、あるいはまったくないために攻撃が手詰まりになってしまう場面が何度もみられた。前半終了時、リードしているにもかかわらず、スタジアムには決して小さくはないブーイングが響いた。
後半が始まると、1点ビハインドのオルグリテが徐々に攻勢に出る。すると53分、コーナーキックからメルクビストが頭で合わせ試合を振り出しに戻す。 そしてその1分後、ユールゴーデンは不利な立場に追い込まれる。先制点を挙げたハギンゲが左サイドで相手選手のタックルを受ける。ピッチに倒れこむハギンゲ。スクリーンで見る限りでは明らかに足に当たっていたのだが、ハンソン主審はこれをシュミレーションと判断したのか、ハギンゲに何とレッドカードを提示。この判定に納得いかないユールゴーデンの選手はハンソン主審に抗議するが、判定が覆るはずはなく、ユールゴーデンはひとり少ない状態で戦う羽目になった。 ハギンゲの退場から1分後、ハンソン主審は今度はユールゴーデンを助ける。ペナルティエリア内ぎりぎりの位置でユセフが倒されると、ハンソン主審はPKの判定。これをミリッチが決め、ユールゴーデンは再びリードを奪った。
だがその数分後、ハンソン主審はミリッチが相手選手に仕掛けたタックルが危険な行為だと判断し、この日2枚目の赤紙を提示。ハギンゲとミリッチ、ゴールを決めた2人が退場処分を受けることになったのだ。 ハンソン主審はその後も、ユールゴーデンサポーターのブーイングというBGMを前に、「この試合の主演は俺だ」といわんばかりのジャッジを下していく。誰の目にも明らかなユールゴーデンのコーナーキックをゴールキックと判定したり、例をあげれば枚挙に暇がない。サポーターの怒りは頂点に達し、「Skit domare(ダメ審判)!」「Idiot(馬鹿)!」なんてのはまだマシなほうで、なかには「Tjockis(デブ)!」なんて叫んでいる観客も。
ハンソン主審の独演がしばらく続いたあと、66分、お目当てのラヤラクソがピッチに登場。FWと攻撃的MFと主に担当するこの21歳は昨シーズン、開幕から5試合連続ゴールを挙げるという離れ業をやってのけ一躍注目を浴びたが、その後のカルマルFF戦でラスムス・エルムに対し危険なタックルを見舞ったことによって退場処分をうけてしまい、以後ノーゴールに終わった。今季もこれまでわずか3得点と苦しんでいる。
2人少ないユールゴーデンは、ラヤラクソをトップに配置し4-3-1の布陣でオルグリテの攻めに耐える。それでも、オルグリテの攻撃がアイデアに欠けるために一方的な展開にはならず、ユールゴーデンは時折ラヤラクソが単独で相手DFを抜き去るなどしてチャンスをつくる。サポーターは、何度も「Kämpa Djurgården(戦えユールゴーデン)!」を合唱し、勝利を待ちわびる。そして規定のロスタイムが経過したあと、ついにタイムアップ。残留争いのライバルから勝ち点3をもぎとったユールゴーデンは、これでストックホルムのライバルであるハンマルビーを抜き15位に浮上。依然として厳しい状況であることに変わりはないが、9人で勝利を収めたことによって、チームは良い方向に向かうのではないか。 あとやはりこの試合で気になったのが、ハンソン主審だ。この日の彼のジャッジは、客観的にみても不可解な点が多すぎた。チャンピオンズリーグで笛を吹いたことがあり、さらには今年のコンフェデ杯決勝でも主審を担当したが、今後UEFAとFIFAは人選を改めたほうがよいのではないか、そう感じずにはいられなかった。 ユールゴーデンIF2-1オルグリテIS 31分 ハギンゲ(1-0) 53分 メルクビスト(1-1) 55分 ミリッチ(2-1) ユールゴーデン トウライ:セーサイ、ヨハネッソン、クイバスト、ペッテル・グスタフソン:ユセフ(72分 アユバ)、エコング、ハギンゲ、ミリッチ:ダールベリ、ヘルクイスト(65分 ラヤラクソ) オルグリテ ベングト・アンデション:ロビン・ヨンソン(78分 サンドベリ)、デニス・ヨンソン(46分 レイナル)、エルナンデス、ペレイラ(63分 アダム・エリクソン):マルクス・グスタフソン、セバスティアン・ヨハンソン、メルクビスト、サバディル:アルベック、アルバロ・サントス 試合のハイライトはこちら(svtより)
posted by swe1707 |16:07 |
生観戦記 |
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この日観戦するユールゴーデンIF対オルグリテISの試合は、残留を争うチーム同士の一戦ということもあり白熱した戦いになることが予想された。ホームのユールゴーデンは、2000年代に入って5度の優勝経験をもつ強豪で、かつてはキム・シェルストロームやアンドレアス・イサクソン、ヨハン・エルマンデルといった現役スウェーデン代表選手、それに前イングランド代表のテディ・シェリンガムや前フランス代表で「サッカー界のデニス・ロッドマン」といわれたイブラヒム・バといった選手がこのクラブでプレーした経験をもつ。今季、シーズン開幕前はメディアの間で優勝争いに絡んでくると言われていたが、蓋を開けてみれば27節終了時点で最下位に低迷。「ストックホルムの誇り」という愛称をもつが、このままアルスベンスカンから降格ということになってしまえば、誇りどころか「ストックホルムの恥」なんて言われそうだ。
一方のオルグリテは、今季スーペルエッタン(2部)から昇格した、第2の都市ヨーテボリを本拠に置くクラブ。元スウェーデン代表マルクス・アルベックとブラジル人アルバロ・サントスの強力2トップを擁し、こちらもユールゴーデン同様に開幕前の評価は高く、「サプライズを提供するかもしれない」といわれていた。だがこちらも周囲の期待を大きく裏切り、開幕から6連敗。折り返し地点の15節になってようやく初勝利を挙げたという、別の意味でサプライズを提供してしまった。とはいえ、後半戦に入るとようやく戦力に見合った戦いをするようになり、徐々に勝ち点を伸ばす。前節ではヘルシンボリIFに3対0と快勝し降格圏外の18位に浮上。意気揚々とストックホルムに乗り込んできた。
試合会場のストックホルム・スタディオンは、正式名称はストックホルム・オリンピアスタディオンだが、今日ではスタディオンと呼ばれることが多い。地下鉄Stadion駅から徒歩約2分のところに位置するこのスタジアムは、1912年のストックホルム五輪のために建設された総合競技場で、国内建築家のトルベン・グルト氏によって設計された。収容人数は約15000人で、ユールゴーデンの試合はもちろん、フロアボール(インネバンディ)といった他スポーツはもちろん、コンサート会場としても使用されることが多く、スウェーデンの有名なロックバンドKent、国外ではKissや故マイケル・ジャクソン、ローリンズ・ストーンズといった有名アーティストが公演を行なったことがある。ロマン主義をもとに建てられたそうだが、スタジアム全体がゴシック風で荘厳な雰囲気を醸し出しているのが印象的で、この日のどんよりとした天候によってそれらは一層際立っていた。
試合開始時刻は14時。約1時間半前にスタジアムに到着したが、案の定、人はほとんどいない。入場しようとしたら、係りの人に「いまはまだ駄目。12時45分に開場だよ」といわれてしまった。何もすることがないので、サポーターショップで時間をつぶすことに。だが、ちょうど店の前に着いたとき、1台のバスが到着。「もしかして選手が乗っているのか?」と期待を膨らませていたら、やはり選手移動用バスだった。中からユールゴーデンの選手が続々と降りてくる。近くにいたサポーターが、チームの有名選手のひとり、セバスティアン・ラヤラクソ選手に対して「ラッヤ!」と声をかけると、ラヤラクソ選手はそれに対して手を挙げて応えていた。
サポーターショップで時間をつぶした後、開場時間を少し過ぎてから係員にチケットをみせ入場。同時に荷物検査が行なわれることに。バッグ、それに日本でもおなじみのファッションメーカーH&Mの袋をもっていたのだが、係員は「なかに何か硬いものは入っていないか?」と聞くだけで中身を見ようとしない。「まず中をチェックしろよ」と突っ込みたくなったが、「入ってない」と答えるとそのまま入場できた。
押さえた席は、メインスタンドの真ん中あたり。まだ選手らはピッチに姿を見せておらず、観客もまばら。写真を撮りつつ、配布されていたマッチプログラムとタブロイド紙Aftonbladetを読みながら時間をつぶす。Aftonbladetに入っているスポーツ紙Sportbladetの一面には、ドイツのローター・マテウス氏がスウェーデン代表監督に関心を示しているという記事が。「どうせまたガセネタだろう」と呆れながらページをめくっていくと、ブーイングが聞こえてきた。オルグリテの選手が登場したのだ。そのなかには、40歳のGKベングト・アンデション、そしてアルベックの姿もみられる。その直後、反対側からユールゴーデンの選手も登場。観客からは大きな拍手が起こる。両チーム選手の練習時間は、13時15分からおよそ30分間。パス練習や鳥かごを中心に行なっていた。
選手らがいったん姿を消すと、その後スタジアムに曲が流れてきた。どうやらサポーターソングのようで、観客も一緒になって歌う。曲が終わると、いよいよ試合が始まるという雰囲気が漂ってくる。そして、いよいよ両チームの選手らがピッチに入場。選手ひとりひとりの名前が紹介され、22人が持ち場のポジションに散ったあと、マルティン・ハンソン主審の笛によって試合が開始された。
両チームのスタメンは以下のとおり。個人的に一番注目していたユールゴーデンのラヤラクソはベンチスタートだった。
ユールゴーデン(4-4-2)
トウライ:セーサイ、ヨハネッソン、クイバスト、ペッテル・グスタフソン:ユセフ、エコング、ハギンゲ、ミリッチ:ダールベリ、ヘルクイスト
オルグリテ(4-4-2)
ベングト・アンデション:ロビン・ヨンソン、デニス・ヨンソン、エルナンデス、ペレイラ:マルクス・グスタフソン、セバスティアン・ヨハンソン、メルクビスト、サバディル:アルベック、アルバロ・サントス
序盤、ユールゴーデンが左サイドのミリッチを中心に仕掛けるが、決定的なチャンスには至らない。ピッチを広く使おうという意図は感じられるが、セントラルMFのハギンゲとエコングはどちらも視野が広いとはいえず、なかなか良い攻撃には結びつかない。対するオルグリテは、右サイドのマルクス・グスタフソンが何度か好クロスを供給。だがこちらも攻めがちぐはぐで、前線のアルベックとアルバロ・サントスはほとんどボールに触れることができない。
この試合、オルグリテにとっては引き分けでも十分だが、最下位ユールゴーデンにとっては勝利が絶対必要だった。そういうわけで、ふがいないサッカーをみせるチームに対しサポーターは徐々に苛立ちをみせる。私の数列前に座っていた男性は、最初は選手に対して文句をいっていたのだが、しまいにはピッチとは別の方向に向かって中指を立て始めた。その向かう先をみると、ユールゴーデンのベンチ。「こんなチームになったのはお前ら首脳陣のせいだ!」とでもいいたかったのだろうか。
だが、スタジアムに険悪な雰囲気が漂い始めたそのとき、ユールゴーデンは先制に成功する。31分、ゴール中央でミリッチからのパスを受けたハギンゲがワントラップして右足を一閃。低い弾道のシュートはオルグリテゴールに突き刺さった。
このゴールで波に乗りたいユールゴーデンだが、依然として動きは良くない。先述したようにセントラルMFに展開力がないのも原因のひとつだが、さらにわかったことはボール保持者に対してのサポートがおそい。たとえば、左サイドでミリッチがボールをキープしても、左サイドバックのペッテル・グスタフソンのサポートが遅い、あるいはまったくないために攻撃が手詰まりになってしまう場面が何度もみられた。前半終了時、リードしているにもかかわらず、スタジアムには決して小さくはないブーイングが響いた。
後半が始まると、1点ビハインドのオルグリテが徐々に攻勢に出る。すると53分、コーナーキックからメルクビストが頭で合わせ試合を振り出しに戻す。
そしてその1分後、ユールゴーデンは不利な立場に追い込まれる。先制点を挙げたハギンゲが左サイドで相手選手のタックルを受ける。ピッチに倒れこむハギンゲ。スクリーンで見る限りでは明らかに足に当たっていたのだが、ハンソン主審はこれをシュミレーションと判断したのか、ハギンゲに何とレッドカードを提示。この判定に納得いかないユールゴーデンの選手はハンソン主審に抗議するが、判定が覆るはずはなく、ユールゴーデンはひとり少ない状態で戦う羽目になった。
ハギンゲの退場から1分後、ハンソン主審は今度はユールゴーデンを助ける。ペナルティエリア内ぎりぎりの位置でユセフが倒されると、ハンソン主審はPKの判定。これをミリッチが決め、ユールゴーデンは再びリードを奪った。
だがその数分後、ハンソン主審はミリッチが相手選手に仕掛けたタックルが危険な行為だと判断し、この日2枚目の赤紙を提示。ハギンゲとミリッチ、ゴールを決めた2人が退場処分を受けることになったのだ。
ハンソン主審はその後も、ユールゴーデンサポーターのブーイングというBGMを前に、「この試合の主演は俺だ」といわんばかりのジャッジを下していく。誰の目にも明らかなユールゴーデンのコーナーキックをゴールキックと判定したり、例をあげれば枚挙に暇がない。サポーターの怒りは頂点に達し、「Skit domare(ダメ審判)!」「Idiot(馬鹿)!」なんてのはまだマシなほうで、なかには「Tjockis(デブ)!」なんて叫んでいる観客も。
ハンソン主審の独演がしばらく続いたあと、66分、お目当てのラヤラクソがピッチに登場。FWと攻撃的MFと主に担当するこの21歳は昨シーズン、開幕から5試合連続ゴールを挙げるという離れ業をやってのけ一躍注目を浴びたが、その後のカルマルFF戦でラスムス・エルムに対し危険なタックルを見舞ったことによって退場処分をうけてしまい、以後ノーゴールに終わった。今季もこれまでわずか3得点と苦しんでいる。
2人少ないユールゴーデンは、ラヤラクソをトップに配置し4-3-1の布陣でオルグリテの攻めに耐える。それでも、オルグリテの攻撃がアイデアに欠けるために一方的な展開にはならず、ユールゴーデンは時折ラヤラクソが単独で相手DFを抜き去るなどしてチャンスをつくる。サポーターは、何度も「Kämpa Djurgården(戦えユールゴーデン)!」を合唱し、勝利を待ちわびる。そして規定のロスタイムが経過したあと、ついにタイムアップ。残留争いのライバルから勝ち点3をもぎとったユールゴーデンは、これでストックホルムのライバルであるハンマルビーを抜き15位に浮上。依然として厳しい状況であることに変わりはないが、9人で勝利を収めたことによって、チームは良い方向に向かうのではないか。
あとやはりこの試合で気になったのが、ハンソン主審だ。この日の彼のジャッジは、客観的にみても不可解な点が多すぎた。チャンピオンズリーグで笛を吹いたことがあり、さらには今年のコンフェデ杯決勝でも主審を担当したが、今後UEFAとFIFAは人選を改めたほうがよいのではないか、そう感じずにはいられなかった。
ユールゴーデンIF2-1オルグリテIS
31分 ハギンゲ(1-0)
53分 メルクビスト(1-1)
55分 ミリッチ(2-1)
ユールゴーデン
トウライ:セーサイ、ヨハネッソン、クイバスト、ペッテル・グスタフソン:ユセフ(72分 アユバ)、エコング、ハギンゲ、ミリッチ:ダールベリ、ヘルクイスト(65分 ラヤラクソ)
オルグリテ
ベングト・アンデション:ロビン・ヨンソン(78分 サンドベリ)、デニス・ヨンソン(46分 レイナル)、エルナンデス、ペレイラ(63分 アダム・エリクソン):マルクス・グスタフソン、セバスティアン・ヨハンソン、メルクビスト、サバディル:アルベック、アルバロ・サントス
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