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アジア杯に挑むスウェーデン産アタッカー「パレスチナを世界に示したい」

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 9日に開幕したアジア杯で、日本は12日の初戦でパレスチナと対戦する。ここでは、今大会が初出場となるFIFAランク115位の代表チームについて、スウェーデン生まれのFWを通して紹介したい。 ※本人のコメントは、スウェーデンメディアのインタビューをもとに構成した

「パレスチナを世界に示したい」

と話すのは、マフムード・イード。昨季までスウェーデン3部リーグにあたるディビジョン1のニーショーピンBISでプレーしていたアタッカーだ。クラブではサイドハーフを担っていたが、パレスチナ代表では2トップの一角としてプレーする。イードの両親は1992年にパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区中部の都市ラマッラーからスウェーデンに移住。その1年後、イードが誕生した。

 スウェーデンで生まれ育ったイードは、少年時代はパレスチナとはほぼ無縁の生活を送ってきたようだ。「パレスチナのすべてに関心を抱いたのは15歳のころ」だと話す。サッカー選手としては、国内の古豪ハンマルビーの育成チームに在籍し、2013年から2014年までニーショーピンでプレーした。ボールを蹴る傍ら、ニーショーピンの学校でユースワーカーとして従事している。

 イードに転機が訪れたのは2014年秋。同年11月の親善試合(サウジアラビア、ベトナム)に挑むパレスチナ代表メンバーに招集された。「それ以前にもパレスチナサッカー協会とは連絡を取り合っていたんだけど、スウェーデン代表としてプレーするチャンスを放棄するのは難しかった。だけど、協会はアジアカップのために私のことを本当に必要としていたんだ。だから決断するのは容易だったよ」

 イードはサウジアラビア戦で2トップの一角として先発出場してパレスチナ代表としてデビュー。続くベトナム戦では早速初ゴールを記録する。その後、ウズベキスタンと中国とのテストマッチにも出場したイードは、本大会のメンバー入りを果たした。「サッカーの世界は進むのが早いね。数ヶ月前は(スウェーデンの)3部リーグでプレーしていたのに、これからビッグトーナメントに挑もうとしているんだから」

 パレスチナ代表に招集されるまでは同地に足を運んだことはなかったイードだが、今では「自分自身のサッカー人生を通して、パレスチナがテロや戦争、爆弾とは別物だということを示すのが目標のひとつになった。私自身、パレスチナにはまだたくさんの親戚が残っているんだ。家族は常時彼らに送金している。代表チームでプレーするということは、自分なりの援助なんだ」と自らのルーツへの想いを示す。

 パレスチナ代表の環境は決して恵まれているとは言えない。パレスチナをアジア杯出場権獲得に導いたジャマル・マフムード前監督が指揮官の座を退いたのは、自宅を爆撃されたことが原因ではないかと言われている。チームの主力でセンターバックのレギュラーだったハイサム・ディーブは政治に翻弄されて本大会に帯同できなくなった。サッカー選手の傍らでイスラエルの学校にて教師をしているディーブは、同国から出国を拒否されたのだ。「イスラエルはパレスチナの成功を邪魔するためなら何でもやろうとする」とエイドは憤りを隠せない。

 パレスチナ代表を構成する選手のバックグラウンドは様々だ。難民キャンプでボールを蹴り始めた者もいれば、エイドのように先進国で戦争とは無縁の生活を送ってきた者もいる。

「もちろんチームメートとは話をしてきたよ。当然ながら、私は彼らとはまったく異なるバックグラウンドを持つ。このチームが経験してきたことというのは言い表せない。だけど、そういう経験がわれわれを強くするとも言える。私にとってパレスチナ代表の一番の魅力は、どんな相手だろうと恐れないという点だ」

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94年の米国W杯でスウェーデン代表を観て、スウェーデンのサッカーに興味を持ち始める。 『ワールドサッカーダイジェスト』『スポーツナビ』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿。
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