野球いじり

日本シリーズを分析する -短期決戦の兵法 Part4-2-

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第4回 中編:仮説の検証2

これは日本シリーズを分析していくことで,短期決戦を制するための戦術を模索していくことを目的とした企画です。以下のような予定で勧めており,今回は4回目の中編です。第4回は,都合3度(前編・中編・後編)に分けています。

今日初めて見ていただいた方の中でお時間のある方は,これまでの記事を見ていただければと思います

第1回:企画趣旨
第2回:基本的なデータの集計
第3回:分析手法の解説
第4-1回 前編:分析(仮説の検証1)

第4-2回 中編:分析(仮説の検証2) ← Today!

第4-3回 後編:分析(補足的分析)
第5回:分析(法則の適用性の検討)
第6回:まとめ


はじめに

 今日は2度目の分析になります。

 用いた分析手法については,Part3を読んでいただければわかるようになっていると思うのですが,結果の図表を見てもらえればわかるように努力しています。統計解析とか面倒なことが嫌いな方は図表と時々あるまとめを見てもらえればだいたいわかると思います。


前回の結果をまとめる

 短期決戦において,犠打や盗塁は有効であるか?というテーマについて分析しました。

その結果,以下のことがわかりました。

 ・犠打や盗塁がたくさん仕掛けられるほど,出塁率が高ければ勝利する確率はあがる
 ・出塁後に,犠打をするか盗塁をするかは勝敗に関係はない

 今回の目的はPart2で求めた試合結果の分類を用いて,各分類においての有効性をそれぞれ検討してみようというものです。

 試合結果の分類基準を以下に示します(詳しくはPart2をご覧ください)。

 投手戦:両チームとも3点以下
 平均的結果:一方が4点以上6点以下,もう一方が3点以下
 打撃戦:両チームとも4点以上6点以下
 大量得点:一方が7点以上,もう一方が6点以下
 大打撃戦:両チームとも7点以上

 これらの試合結果ごとに盗塁と犠打の有効性を検証していきたいと思います。

※ただし,大打撃戦自体の数が少ないため,今回は打撃戦とあわせて分析をしました。以降は,(打撃戦+大打撃戦)をもって打撃戦と表記しています分析

データ

 分析対象は,1950~2009年までの日本シリーズ全356試合中,引き分けの6試合を除く350試合分のデータです。ホームとビジターのチーム分で計700チーム分の勝敗と,「犠打・盗塁」との関連を検討します。


犠打と勝敗の関連

 表1に試合結果ごとの犠打と勝敗の関連を示します。こちらの表では,各試合結果に犠打数ごとに何チームが該当するかを見ていただければと思います。やはり4本5本と増えてくると該当するチーム数は減ってきます。

表1
   表1の勝率についてグラフ化したものが図1-1です。統計的な関連が認められた場合は太い線で,認められなかった場合は細い線で示してあります。
図1-1
 図1-1より,打撃戦以外の結果では,犠打と勝敗との間に関連が認められました。打撃戦は少しチーム数が少ないことも響いているかもしれません。  この結果より,大体の試合では犠打は有効な戦略といえそうです。しかし,前回の分析でも示したように出塁率の影響を受けている可能性が考えられます。つまり,  犠打が増えることによって勝率が上がるのではなく  犠打をするための前提である,出塁率が上がることで勝率が上がっている可能性です。  この可能性が正しくないことを証明して,初めて犠打は有効であるということが主張できます。というわけで,前回と同じく出塁率の影響を除いた犠打の値を算出し勝敗との関連を分析しました。結果を図1-2に示します。
図1-2
 分析の結果,投手戦における犠打のみが勝敗と関連があることがわかりました。一方,その他の試合結果では犠打は勝敗とは関係ないことがわかりました。  以上の結果より,両チーム3得点以下のロースコアーゲームでは犠打は有効な戦術であることがわかりました。しかし,図からも見て取れるように,犠打をすることで劇的に勝率が上がるようなものではなく,緩やかながら勝率が上昇する程度と考えて良さそうです。 盗塁と勝敗の関連  表2に試合結果ごとの犠打と勝敗の関連を示します。こちらの表では,各試合結果に犠打数ごとに何チームが該当するかを見ていただければと思います。こちらもやはり4本5本と増えてくると該当するチーム数は減ってきます。
表2
 表2の勝率についてグラフ化したものが図2-1です。統計的な関連が認められた場合は太い線で,認められなかった場合は細い線で示してあります。
図2-1
 平均的結果と大量得点の試合では盗塁は勝敗と関連があることがわかりました。一方,投手戦と打撃戦では盗塁と勝敗との間に関連は認められませんでした。  打撃戦はチーム数自体が少ないので,分析の信頼性が低いことも考えられますが,投手戦ではそういう問題はないので,これはロースコアーゲームでは盗塁はしない方が良いといえるのではないでしょうか。  こちらも犠打の時と同様に,出塁率の影響を除いた値を算出し,勝敗との関連を検討しました。結果を図2-2に示します。
図2-2
 出塁率の影響を除いた結果,どの試合結果においても盗塁と勝敗の関連はみとめられなくなりました。この結果は,どのような試合においても盗塁は有効な戦術ではないことを示しています。せっかく出塁できたのであれば,アウトになるリスクを冒す必要はないということです。 まとめ  以上の結果より,日本シリーズにおいて


 ・犠打は特定の試合(投手戦)のみ有効な戦術である

 ・盗塁は有効な戦術ではない


 と,いうことがわかりました。

 したがって,短期決戦には短期決戦での戦い方があるという考え方に対しては,極めて限定的にしかあてはまらない(投手戦における犠打のみ)といえます。

Part1の記事で引用した,ジョー・モーガン氏(MLB野球殿堂入りした二塁手)の,


 「ポストシーズンの場合は得点を作り出さなきゃいけない(マネーボール,p.345)」


 という主張は,実は出塁率によってもたらされた見せかけの法則であったといえるでしょう。今回の分析の結果は,出塁率を高めることが重要で,出塁することができればあまり動かない方が良いことを示しています


おまけ

 参考資料
参考データ


↑これをスライドさせると右側が見えます。




おわりに

 今回の分析で,短期決戦には短期決戦の戦い方があるという主張はあまり的を射てないことがわかりました。前回と今回の分析でわかったことは,短期決戦に有効な戦術は極めて限定的(投手戦のみ)であるということです。

 とはいえ,投手戦は全体の25%強を占めますし,投手戦がなかった年は7回しかありません。1シリーズあたり1~2回はあると見て良い以上,そこで犠打が有効であることがわかったのは収穫であったといえます。

 さて,今日はこのくらいにしたいと思います。次回は補足的分析ということで,これまでは犠打と盗塁を中心に分析を進めてきましたが,今度は他のデータも同じように勝敗との関係を検証することで,短期決戦に有効な戦術を検証したいと思います。

 では,今日はこのあたりで失礼します。

引用文献

 ・マネーボール(マイケル・ルイス著,中山宥訳,ランダムハウス講談社)

追伸

 プロ野球2010年を振り替えるという企画で皆さんからのアイデアを募集しております。
 お時間のある方はこちらも読んでいただいて,ご協力をいただけたらと思います。

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タグ:
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コメント返信

toshi さんへ

コメントありがとうございます


>シーズンの戦い方と短期決戦の戦い方の比較ですよね。

 そうです。一般的なシーズンで通用する戦術と、短期決戦での戦術の比較です。

 なので、「シーズンの戦い方」は、日本シリーズに出場したチームのシーズンの記録ではなく、全てのチームのシーズンの成績を対象としています。

 本来であれば、今回の分析と同様にシーズンのデータも1950~2009年までの全試合の結果を対象とすべきなのですが、毎年800試合前後もあるわけで、これが60年分もあるのですから、全てのデータを集める事も入力する事も断念してしまいました。

 というわけで、シーズンの記録はこれまで私が分析してきたデータを参考にしました。

 送りバントも盗塁も、シーズンの成績と比較すると有効な戦術とはいえませんでしたし、出塁率と長打率は、チームの得点と強い関連がありました。

 随分昔になりますが、その辺りは以前投稿した記事として残っていますので、代用にはなりますがこれで良いかなと思って今回は分析しています。

日本シリーズを分析する -短期決戦の兵法 Part4-2-

今は頭がまわっていないのであれなんですが、
シーズンの戦い方と短期決戦の戦い方の比較ですよね。
チームによってシーズンの戦い方は違うはずですから、
シーズンの犠打、盗塁の多いチームと少ないチームとで
比較する必要もあるんじゃないです?

そういうのも含めての話なんですかね?
ん~すいません管理人さんに丸なげ(笑

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