野球いじり

WBCと日本人とスモールベースボール

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はじめに

 今回はデータ分析からは少しはなれて,心構えの話を書いてみようと思います。タイトルにもあるように,WBCとスモールベースボールの話です。前回の記事でも少し触れましたが,少し遅めのWBCの感想文だと思ってください。

 あくまで心構えの話なので,具体的にどうすべきであるかという話は別にして大雑把に話を展開しますので,そのつもりで読んでもらえればと思います。

 今回この話を書こうと思ったのは,以下の記事を読んだからです。

「丸井」より「イガラシ」が必要だった…WBC敗退の侍Jになかった「イチロー的倫理」


 正直この記事が傾聴に値する内容なのかどうか微妙だとは思うのですが,主張していることはなかなか面白いものになっています。要約すると,

 日本人らしいスモールベースボールができなかったので負けた。

 ということになるでしょうか。これは裏を返せば「スモールベースボールをやっていたら勝てた。」ということになると思います。

 しかし,短期決戦の一発勝負でこうすれば必ず勝てるといった話はあるはずもなく,最善手を打ったとしても負けることもあれば,下手な手を打っても勝ててしまうのが野球だと思います。このような一発勝負での結果の不確かさを考慮せず結果だけ見るのはあまり良いことではないと思います。ただ,物事を煽るのもメディアの仕事といえなくも無いので,この点について今回はこれ以上触れないことにします。

 さて、今回一番主張したいのは

 スモールベースボールにこだわりすぎるのは危険ではないか?ということです。

 日本人らしい野球を目指すのは悪いことではないと思うのですが,あまり日本人であること,スモールベースボールであることに固執することには問題があるのではないかということです。


あるスポーツの現在

 なんでこのようなことを言うのかといいますと,あるスポーツ(名前は伏せます)の現状があるからです。

 このスポーツ,かつて30~40年ほど前,日本は世界を席巻していましたが,現在は低迷しています。その原因が,この日本人らしさへの固執,というよりは当時世界を取った戦術に固執したことにあります。

 かつて世界を制した日本の戦術ですが,これをお家芸と信じ込んで固執したため,世界の潮流から取り残されてしまいました。そのため,現行の戦術からは2世代ほど古いものとなってしまっています。しかし,代表監督レベルでもその潮流の変化についていけているかどうか怪しいところで,現在では対策が確立した戦術で挑み跳ね返されているのに,負けたときの会見は「外国人のほうが体格が良いから負けた。」という内容に終始してしまいます。

 もちろんこのような現状に対し無抵抗なわけではなく,外国人監督を招くなど改革を始めてはいますが,タイミングとしては15年ほど遅かったというところです。

 ちなみに,現在このスポーツの世界のトップの一角にはブラジルがいるのですが,日本が世界を制した時代にはそこまでの強豪ではありませんでした(だからサッカーではないです)。しかし,当時強かったころの日本のエッセンスを吸収し進化させることで,世界のトップへと躍り出ることとなりました。今,日本とブラジルが試合をすると,「ちょっと勝つのは難しいかな」と素人目にも感じるレベルです。

 そんなブラジルの代表監督は今の日本代表のチームを見て言ったことは,

「30年前から変わっていない。」(出典)

 という,ぐうの音も出ない一言です。もちろんこれは日本を馬鹿にしているのではなく,日本のに敬意を示しつつも,敢えて苦言を呈してくれたものです。


追求すべきは日本人らしさではなく,勝利するための方法論

 これが野球の未来を暗示しているとは言いませんが,下手をすれば30年後こんな未来が待っている可能性だってあるということです。しかし,今回のWBCでブラジル相手に苦戦しているのを見て,少し首がひやりとしたのも事実です。

 というわけで,日本人はこうだから,日本人はこうではなくてはならないという固定観念に縛られるということは,長い目で見ると結構危ない面もあるのではないかと思ったわけです。

 真に求められるものは,そういうこだわりを捨てて,勝利するためにはどのようにすべきであるかという方法論だと思います。そして,先ほどのスポーツの例にもあるように,どんなスポーツにも戦術や内容は時代とともに変化します。そこで,これまでのやり方に対する合理的な対策として新しい勝利するための方法論が表れます。これが普及することで,スポーツには流行が生まれます。 つまり,勝利するための方法論とは刻々と変化していくものであり,流行に対し常にアンテナを張っておく必要があります。

 そして,この勝利するための方法論を追求する過程の中で,日本人らしさというのは,良い意味でも悪い意味でもどうしても表れてくるで,そんなにこだわる必要は無いと思います。個性というものはそういうものだと思います。恐ろしいのは,こうしたスポーツの進化の流れに背を向ける,もしくは取り残されてしまうことです。

 まとめると,日本人であること,スモールベースボールであることにあまりこだわらずに,どうやったら勝てるか?ということを常に考えて実践すべきということです。

 現状として,スモールベースボールがそれに当たるのであれば,今のところは大丈夫です。ただし,スモールベースボールを明確に定義し,評価できているのかは疑問があるので,そのあたりは検証の必要があると思います。そして,勝利するための方法論は不変のものではなく,時代とともに刻々と変化していることも忘れてはなりません。今日正しい方法が,明日も正しいわけではありません。


おわりに

 随分大雑把な話でしたが,」お付き合いありがとうございました。

 WBCの中継を見たり,関連の記事を読んでいると,スモールベースボールや日本らしさが強調されることが多いのですが,某スポーツの現状があるために,ちょっとした危機感を感じたのでひとつ書いてみました。野球ではこうならないことを切に望みます。

 野球が国内だけで消費されているのであれば,日本人らしさにこだわっていくのも悪くは無いと思うのですが,野球でも世界へ挑む面白さをMLBへの挑戦やWBCを通じて知ってしまった以上,もう後戻りはできないと思います。

 既に賽は投げられた以上,これからは世界の潮流を意識し,世界へ挑むといった方向へ野球も変わっていかなくてはならないと思います。今回優勝を逃したことで,こうしたことに気づけたことを好機とすべきではないでしょうか。



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記事カテゴリ:
ちょっとしたはなし
タグ:
WBC
スモールベースボール

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コメント返信

YASUさんへ

コメントありがとうございます

 今回私が主張したいのは、今後も固執していると長い目で見て危険だということです。

 スモールベースボールの是非についは、印象ではなくもう少しきちんと検証が必要だと思います。
 それには、文中にも書きましたが、もう少しスモールベースボールを明確に定義すべきでしょう。

 しかし、そんなことをしなくても、局面局面で最も勝つ可能性の高い方法を検証するほうが重要だと思います。
 スモールベースボールをすることが目的なのではなく、勝つことが目的なのですから。

 スモールベースボールという手段を目的にしてしまうことは本末転倒で、文中で紹介したあるスポーツとやっていることは同じです。
 そのスポーツはかつて栄冠を獲得した日本的な戦術をやることを目的とすることで凋落しましたが、野球はそうなって欲しくありません。

WBCと日本人とスモールベースボール

今回のWBCについて、スモールベースボールにこだわるべきでないという意見だったので、興味深く読ませていただきました。
私はスモールベースボールにこだわるべきだという立場です。
私はここ数年ヤンキースの試合をTVで見てきました。
点の取り方は、盗塁あるいはバンドで2塁へ進塁させヒットで返すといった日本の野球の戦法はありません。
ランナーが出れば、ノーアウトであっても、強行に打ち、ホームラン等で、大量点を上げて、試合を決めるのがベースボールだと思っています。一方、去年何年ぶりか、日本の野球をかなり見ました。
一番感じたことは、統一球になったせいか、ホームランが出ることはあり得ないので、ホームランで点を取ることを計算にいれてはいけないことです。点を取る基本は1塁にランナーがでれば、盗塁か、確実にバンドで進塁させて、点を積み重ね僅差で試合を決めるのが、日本の野球、すなわちスモールベースボールだと思っています。オランダ戦でホームランが1試合で5本でたが、日本の野球であのような試合はほとんどのチームが経験したことがなかったと思う。
プエルトリコ戦で負けた原因は雑な空振り等、オランダ戦の影響がかなりあったと思っています。いいピッチャであれば、まず打てないことを頭に叩き込んで、いつもやっていたスモールベースボールをやれば、チャンスはあったと思っています。

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