野球いじり

中日ドラゴンズ 浅尾拓也選手の投球数を分析する ‐イニングと球数の関係‐

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はじめに

 浅尾拓也選手(以下,浅尾選手)は酷使されているのか?

 というテーマの下,ここのところあれこれと分析をしているわけですが,

 「投球数は考慮しないの?」

 というコメントをいただきました。リリーフ投手は先発投手ほど球数を投げませんし,ブルペンでの見えないところでの投球数も定かではないので,あまり投球数にはこだわらないつもりでしたが,一応検証はしてみようということで,前回リリーフ投手の平均的な投球数を調べてみました。

 このデータを使って今回は,浅尾選手の投球数とパフォーマンスの関係を分析しようと考えたのですが,思うところがあってもう少し投球数を詳しく分析しておきたいと思います。

 ある投手がどれくらい投げたのか?ということを評価するデータはいくつかあって,

 ・投球数
 ・対戦打者数
 ・投球回数
 ・登板試合数

 などが代表的なものでしょうか。それでは仮に,ある投手の年間の投球数が平均並だった場合,他のデータも同じように平均並のデータになるのでしょうか?

 もし,これらのデータの蓄積が,ピッタリとは行かないまでも,ほとんど変わらない水準で蓄積されていくのであれば,あまり投球回数だの投球数だのを区別する必要はなくなります。しかし,これらのデータがある程度ばらつきをもって蓄積されるのであれば,パフォーマンスの変化との対応をそれぞれ検討したほうが良いといえます。

 というわけで,今回は浅尾選手のデータを元に,投球数,対戦打者数,投球回数がどのように蓄積されていっているのかをまとめてみたいと思います。


分析データ

 分析に使用したデータには,2006年から2011年までに,先発での登板が無く救援で5試合以上登板し,かつ投球回数が30回以上の投手315名と,浅尾選手の2010年と2011年の成績を用いました。データは「プロ野球ヌルデータ置き場」様を参照しています。


各データの蓄積

 まずは,2010年と2011年の浅尾選手の投球数,対戦打者数,投球回数(イニング)の蓄積を偏差値化しました。偏差値化に使用した各データの平均値と標準偏差の値を表1に示します。

表1
 このデータは,315名の投手のデータより算出しています。  偏差値化の方法ですが,蓄積された投球数を以下の計算式で偏差値に換算しました。  偏差値 = 50 + [(投球数-平均)÷ 標準偏差 ]×10  浅尾選手の2010年の最初の10試合の投球数の蓄積のデータより,投球数と,投球数の蓄積,偏差値化した投球数のデータを表2に示します。
表2


↑これをスライドさせると表の右側が見えます

 この辺りはまあそんなものかと思っていただければ助かります。それでは,浅尾選手の各データの蓄積をグラフ化したものを以下の図1に示します。

図1
 データの種類が多すぎて見難いと思います。そこで,まずは2010年のデータを見てみたいと思います。データをグラフ化したものを以下の図2に示します。
図2
 このデータを見てもらうとわかると思いますが,浅尾選手の場合,投球数,対戦打者数,投球回数の蓄積ペースはNPBの平均から見て同じではないことがわかります。最終的な年間成績の偏差値順に見れば,「投球数 < 対戦打者数 < 投球回数」という順番になっていると思います。これは投球回数が蓄積されるペースと比較して,対戦打者,投球数の蓄積のペースが遅いことを示しています。つまり浅尾選手は,  投球回数と比べて対戦打者数が少なく,さらに対戦打者数と比べて投球数が少ない  ということを示しています。この裏づけとして,315名の投手の年間の投球回数と1イニングあたりの投球数の関係を以下の図3-1に示しますが,浅尾選手は2年とも1イニングあたりの投球数が少ないことがわかると思います。
図3-1
 また,1イニングあたりの対戦打者数と,打者1人あたりの投球数の関係を以下の図3-2に示します。ここでは,浅尾選手は1イニングあたりの対戦打者数が少なく,打者1人あたりの投球数は平均より低めであることがわかると思います。
図3-2
 次に,2011年のデータを見てみたいと思います。データをグラフ化したものを以下の図4に示します。
図4
 2010年と比較すると,2011年は対戦打者と投球数の蓄積がほぼ重なっていることがわかります。この原因としては以下の3つの可能性が考えられます。  ・対戦打者数の蓄積ペースが2010年よりも遅くなった。  ・投球数の蓄積ペースが2010年よりも早くなった。  ・対戦打者数の蓄積ペースが2010年よりも少し遅くなり,   投球数の蓄積ペースが2010年よりも少し早くなった。  さて,2011年には何が起こったのでしょうか。これを検証するために,今度はデータ別に2010年と2011年の蓄積を見てみたいと思います。投球回数の蓄積を図5-1に,対戦打者数の蓄積を図5-2に,投球数の蓄積を図5-3に示します。
図5-1
図5-2
図5-3
 これらのデータを見るに,投球数の蓄積ペースは2010年と2011年ではあまり変化が無いのに対し,対戦打者数の蓄積ペースは2010年よりも2011年のほうが遅くなっているのがわかると思います。  このデータより,2011年の浅尾選手は2010少ない対戦打者に抑えていた,つまり優秀であったと考えられます。しかし,2011年は図5-1にあるように投球回数の蓄積ペースも遅いので,2010年の投球回数が多かっただけのことかもしれません。 2010年と2011年を比較すると見えてくること  データ別に2010年と2011年を比較するとまた違ったことが見えてきます。まず気になるのは,図5-3を見ると2011年のちょうど偏差値が50を越えたあたりから投球数が増えていることがわかると思います。また,投球回数,対戦打者数も偏差値50の平均ラインあたりからペースが上がって,2010年と2011年の差が縮まっているのがわかると思います。  この偏差値50のラインは大体50試合前後になるわけですが,2011年はどうもこの辺りから登板のペースがアップしたようです。これを実際のデータでも確認できないかと,浅尾選手の2010年と2011年の,投球数,対戦打者数,投球回数を10試合ごとに合計したデータを表3に示します。ついでに,1イニングあたりと,打者1人あたりの投球数を出しておきました。
表3



 このデータをグラフ化したものを図6-1から図6-3に示します。

図6-1
図6-2
図6-3
 2010年の71試合以降でデータが激減しているのは,2010年の登板試合数が72試合だからです。グラフを見てもピンと来ないので,表3のデータより,1-50試合のデータと,51-70試合のデータをそれぞれ合計したものを表4に示します。
表4
 このデータを見ると,51-70試合のところで2011年は2010年とし比較してみると,  ・投球回は1回多い。  ・対戦打者は5人多い。  ・投球数は60球多い。  ことがわかります。この投球数の増え方はちょっと普通ではないと思います。60球増えることで身体的な負荷がどれくらい増えるかはわかりませんが,あるリリーフ投手が,1イニングの登板で打者5人に対して60球を投げるようなことはプロではまず無いと思います。やはり,2011年の51-70試合では投球数が増えていると見て良さそうです。 まとめ  以上の分析結果をから,浅尾選手の投球の特徴をまとめてみたいと思います。  ●投球回数に対して,対戦打者数と投球数が少ない。  これは,例えば浅尾選手が10イニング投げた時,平均的な投手よりも対戦する打者の数と投球数が少ないことを意味します。これは,打者を出塁させる機会が少ないことが原因であると考えられ,浅尾選手が優れた投手であることを示していると思います。  また,投球回数と対戦打者数と投球数の蓄積ペースがそれぞれ異なるということは,これらのデータは一緒にまとめて扱うことができず,それぞれ別々にパフォーマンスの変化と対応させて検討すべきであるといえます。これは,次回の分析に役立てたいと思います。  ●2011年の50試合以降の登板で投球数が増えている  これも,見逃してはならない特徴だと思います。日付に直して2011年は8月20日から9月28日の間に投げる球数が増えたということはどういうことか?というのは結構重要なテーマだと思います。詳しくは次回パフォーマンスとの関連を検討しながら見て行きたいと思います。




おわりに

 以上,浅尾選手の投球数とその他を検証してみました。本当は投球数とパフォーマンスの関係を分析しようと思っていたのですが,どうせやるなら丁寧にやったほうが良いだろうということで,自分の疑問を優先させました。

 これは全く経験則なのですが,データ分析をする際に「これってもしかして」と引っかかるようなことがあった場合は,多少遠回りになったとしても分析して確認しておいた方が良いと思います。まぁ大丈夫だろうとほったらかしにして分析を急ぐと,あとで痛い目に会うことが多い気がします。

 とりあえず,次回分析にあたって今回の結果からいえることは,

 ・パフォーマンスとの関連を検証する際,投球数と投球回等は別々に分析しておくべき
 ・2011年の後半から終盤に何故か投球数が増えている

 ということでしょうか。この2点を確認できただけでも個人的には今回の分析はやった甲斐がありました。

 では,次回はようやくですが,浅尾選手の投球数とパフォーマンスの関係を分析してみたいと思います。


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データ引用&参照サイト

 ・プロ野球ヌルデータ置き場

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