野球いじり

イチロー選手の過去10年間の成績を俯瞰しつつ2011年の結果を考える

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はじめに

※2011.10.04 追記 表2のデータのミスを修正しました。

 今更ですが,2011年のイチロー選手の成績は184安打と2001年より続いた連続200本安打の記録が途切れてしまいました。普通であればこんなに長い期間連続して200本安打を打ち続けるほうが異常なのですが,イチロー選手の場合は200本打てない方が話題になってしまいます。とはいえ,10年間も200本安打をキープしていた選手が今年はそれを達成できなかったわけですから,当然その原因は気になるところです。

 「なぜ2011年は200本安打できなかったのか?」というテーマについては既に多くの人の間で議論になっていますが,私もその議論に乗っかりたいと思います。

 では,どのような切り口で考えていこうかといろいろ思案したのですが,「これが不振の原因だ!」とデータを特定していくのではなく,年間成績単位でこれまでの10年間を俯瞰し,今年はどんな1年だったかを見て行きたいと思います。

 仮に,2011年は何か原因があっての184安打であれば,これまでの10年間の成績と比較して,データに何か変化が表れてくるかもしれません。

 というわけで今回は,FANGRAPHSのデータを元に2002年~2011年までの年間成績を比較してみたいと思います。その過程でなんらかの手がかりを示すようなデータが見つかれば良いな,くらいの気持ちでやって行きたいと思います。


年間成績2002~2011

 まずは,イチロー選手の年間成績を見たいと思います。以下の表1に2002年~2011年までの主だった年間成績を表1に示します。

 ※2001年のデータは一部無いものもありますので,2002年のデータから見ています。

表1



 御覧の通り2011年は184安打でついに200安打を割ったわけですが,これらのデータは結果というもので,これを見てもなぜヒットが打てなくなったのか?という原因は見えてきません。

 というわけで,ヒットになったかどうかということはひとまず横において,イチロー選手の打撃内容に何か変化はなかったのか?ということに着目してみたいと思います。

 打撃内容というのは,バットに当たったかどうかで大きく2つに分けることができます。バットに当たった場合の結果は一般にBatted Ballと呼ばれ,ゴロ・フライ・ライナーの3種類の打球に分類できます。一方,バットに当たらなかったものには,四死球や三振があります。これらのデータを表2に示します。

表2
 このデータをパーセンテージで示したものを以下の図1に示します。
図1
 ヒットになったかどうかは別に,打撃内容を見た限りでは2010年以前の成績と比較して2011年の成績は,多少ゴロは多いものの大きな変化があったとはいえないと思います。比較すれば2011年と同じような割合の年もあります。 もしかしたらバットにボールが当たらなくなった?  では,もう少しいろいろ分析してみたいと思います。2011年にヒットが少なくなったのはもしかしたら,バットにボールが当たらなくなった可能性も考えられます。というわけで,全打席のうちバットにボールが当たったデータを以下の表3で見てみたいと思います。
表3
 表中の値は以下のようなデータを示しています。  ・(G+F+L)/打席:全打席中バットにボールが当たった打球の割合  ・ゴロ/(G+F+L):バットにボールが当たった打球の中でのゴロの割合  ・フライ/(G+F+L):バットにボールが当たった打球の中でのフライの割合  ・ライナー/(G+F+L):バットにボールが当たった打球の中でのライナーの割合  これらのデータの推移を見るに,2011年のデータは他の年のデータと比較して大差はないことがわかります。したがって,バットにボールが当たらなくなった可能性は低いといって良いと思います。 四球と三振の傾向  では,バットに当たらなかった結果はどうでしょうか。このデータには,イチロー選手のデータだけでなく全体平均のデータもあるので一緒に見てみたいと思います。データを表4に示します。
表4
 このデータをグラフ化したものを図2に示します。
図2
 平均値と比較したところ,一貫してイチロー選手は,三振も四球も少ないという特徴はありますが,2011年のデータが特別なものとは言えないと思います。 もしかしたら走力が衰えた?  次に,走力が衰えた可能性についても考えてみたいと思います。イチロー選手の特徴には走力を生かした内野安打の多さがありますが,この数が減ってしまったかもしれません。内野安打に加えてバントヒットの割合も同時に見てみたいと思います。データを表5に示します。
表5
 このデータをグラフ化したものを図3に示します。
図3
 このデータも年度間で変動はありますが,2011年が特別低いわけではありません。したがって,2011年に特別内野安打やバントヒットが少ないとはいえないと思います。 選球眼も疑ってみる  最後に選球眼について考えてみたいと思います。FANGRAPHSは見送ったボールのデータまでご丁寧に掲載してくれているので,これを分析してみたいと思います。選球眼に衰えが見えれば,ストライクの見送りが増えて,ボールの見送りが減ることが予想されます。データを表6に示します。
表6
 このデータも数%の変動はあるものの,2011年のデータが特別なものであるとはいえないと思います。 まとめ  以上のデータを概観するに,2010年以前のデータと比較して2011年のデータは特別変わらないといえると思います。  では,これらのデータの内容に年度間で大差がないのに,なぜ2011年は200本安打を達成できなかったのでしょうか?原因を考えるにいくつかの可能性が考えられます。以下に箇条書きにすると,  ・大差はなかったが,この小さな差が実は重要で2011年の不振の原因となった。  ・今回取り上げていないデータで何か大きな変化が現れている。  ・技術的には問題なかったものの,不運な1年だった。  こんな感じでしょうか。  現状では,2011年が不振であったのか,不運であったのかはっきりしないというのが今のところの結論です。これでは結論になっていないかもしれませんが,過去10年のデータと比較するに一概に衰えたとは言えないデータだと思います。




おわりに

 以上,イチロー選手の分析でした。こういうメジャーな選手を扱うのは気が引けますね。

 今年の成績をどのように解釈するかについては,色々な考えがあると思います。これを読んでくださった皆様はどうお考えでしょうか?ご意見などいただけると助かります。

 話は変わりますが,今回データを引用させてもらったFANGRAPHSというサイトのデータの充実振りには驚かされます。NPBのデータもこれくらいあればと思いますが……。

 

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コメント返信

yoiyoi99jp さんへ

コメントありがとうございます。

 返信遅れて申し訳ありません。

 データ上で変化が無かったことは、それほどの問題ではなかったことを示しているのかもしれませんし、
 問題の本質をデータで捉えることができていないだけなのかもしれません。

 意識というのはどうでしょうね。
 数値化できませんので想像するしかありませんが、
 個人的には、見えないものに原因を求めるのは、データ化可能なものを全て検証した後にすべきことだと思うので、
 もっと詳細なデータ分析をしてみたいと思っています。

イチロー選手の過去10年間の成績を俯瞰しつつ2011年の結果を考える

これほど、詳細なデータ比較驚きました
ただ、データ的には、不振の理由で、それほど、特異な差がみあたらない
というのも驚きました

にも、かかわらず、不振ということで、一つ視点をかえいただくと、ある専門の分析では、意識の衰えという指摘がなされてました
意外に、目に見えるとこに、違いがないのでは、見えない部分に違いがある
という考え方もありではないかと思います

コメント返信

gomosoa86 さんへ

コメントありがとうございます。

 これは私のスタンスなのですが、

 >カウント別安打数と打率
 >1打席にかける平均の球数
 >前半と後半では安打、HR,打点どの位ちがうか

 こういうがなぜ必要なのか?というのがテーマというやつになるわけです。
 松井選手にまつわる「なぜ、どうして?」がないと、申し訳ないですが、なかなか食指が動かないのです。

 特定の選手が、単純に見てみたい、知りたいという方は
 FANGRAPHSやBaseball- Referenceなどのサイトを直接見たほうが良いと思います。
 上記にあげたようなデータは既にあるはずです。

 選手の晩年の成績の推移というものには興味があるのですが、
 「メジャーリーグの数理科学 (シュプリンガーフェアラーク東京)」 にデータが出ていたような気がします。

イチロー選手の過去10年間の成績を俯瞰しつつ2011年の結果を考える


松井選手のデータの件ですがカウント別安打数と打率を出して頂くのはいかがでしょうか?

松井選手はずっと見てきて初球の甘い球を良く見逃している事が多くまわりからも意見をもらっているはずですし本人も分かっているはずですが未だにその傾向にあります。

できればホームランもカウント別や1試合のうちの打席別で出して頂くのも面白いと思います。

私の推測では最初の方の打席の方がカウントが多くなってからヒットにしている事が多く、3.4打席あたりは速いカウントから打っているのではないかと思います。比較的カウント数が多いはずです。日本とメジャーの平均値も嬉しいです。
可能でしたら巨人時代1年目から、無理でしたらヤンキース時代からはいかがでしょうか。

あとは松井選手の1打席にかける平均の球数を知りたいです。これも巨人時代から。できれば日本プロ野球の平均値、メジャー選手の平均値も嬉しいです。メジャー選手全体では比較的早打ちが多いイメージがあるので何球位①打席に欠けているかも知りたいです。プロ野球やメジャー全体の平均値が難しいようでしたら代表選手でどなたかでも良いです。

あとは松井選手の1年目からの前半と後半では安打、HR,打点どの位ちがうか。どの位後半に強いかやメジャー選手の平均で前半と後半の平均。日本の平均値もどの位ちがうかなど。

あとは王さん、長嶋さん、落合さん、松井選手、イチロー選手の徹底比較。過去の素晴らしい選手を年齢別で比べれば晩年の共通点も出てくるのではないでしょうか。イチロー選手と松井選手の今後を占うのにも良いヒントがあると思います。

たくさん書いてしまいすみませんができましたらお願いします。

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