野球いじり

野球におけるメンタルの重要性 -リラックスのすすめ-

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はじめに

 今日はデータ分析からはなれて久しぶりに野球における精神(メンタル)な部分について書いて行きたいと思います。

 さて,根性野球や精神論と聞いて今時あまり良い顔をする人は少なくなってきたのではないでしょうか?

 しかし,実力が拮抗した試合になると選手のちょっとした精神面の乱れが原因となって勝負を分けてしまうようなことも少なくはありません。

 野球に限らずスポーツにおいて精神的な部分は非常に重要な影響を持っています。では,根性野球や精神論という精神的な部分を前面に出した指導法は何がいけなかったのでしょうか?

 それは,指導方針や練習内容が非合理的で,選手にとって効果の薄い練習方法や故障のリスクを高めるような方法を用いていたことです。非合理的な指導方針や練習方法を否定することで,同時に精神的な部分まで否定するのは危険です。

 現在は,このようなスポーツにおける精神的な部分についてもメンタルトレーニングなど,科学的に理解しようという試みが進みつつあります。では,科学的に見て好成績をおさめることができるメンタルとはいったいどのようなものなのでしょうか?


パフォーマンスの科学

 ここで,良いパフォーマンスをあげる条件として,緊張の果たす役割を示してみたいと思います。以下に示す図は,ヤーキーズ・ドットソンの法則といわれるものを模式化したもので,緊張の度合いとパフォーマンスの関係を示しています。

図
 この図では,右に行くほど緊張が高くなり,上に行くほどパフォーマンスが高くなるのですが,この法則のポイントは,最もパフォーマンスが高くなる時の緊張の強さ(覚醒度)です。  一般に緊張することはあまりよくないことと捉えられがちですが,緊張の度合いが低すぎることも実はよくありません。もちろん,緊張が強すぎてもダメで,もっともパフォーマンスが高くなるのは適度な緊張状態であるときです。  厳密にはこれは生理学における法則ですので,このパフォーマンスをスポーツにおけるパフォーマンスにそのまま置き換えることはできないかもしれませんが,経験的にこのような緊張とパフォーマンスの関係が成り立っているような場面は良く見ます。  まず,緊張の度合いが低すぎる例としては,先のサッカーのアジアカップで「日本×サウジアラビア」戦におけるサウジアラビアの選手などがそれに当たるのではないでしょうか。確かモチベーションの低さを内田選手に試合後指摘されていたと思います。  次に,緊張が高すぎる例については,緊張でガチガチになって失敗する選手は数多くいます。以前TVで現中日の谷繁選手が,横浜時代に不振だった清原選手との対戦のことを話していたのを見た記憶があるのですが,なんと清原選手は  「ストレート……,ストレート……。」  と,自らの狙い球(フォークだったかも)をぶつぶつ口に出しており,その状態に気づいていなかったそうです。谷繁選手は,あえて狙い球を佐々木投手に要求しそれでも打ち取ったそうです。  最後に,実は最もパフォーマンスが高くなる適切な緊張の例を出すのは難しいのです。適切なラインが人によって違うからです。とはいえ,ひとつの例をあげさせてもらうと,桑田真澄氏の著書「心の野球」にこんな言葉があります。


 「おい,江藤,月がきれいだなぁ(p.159)」



 この江藤とは,江藤智選手のことです。この言葉は,桑田選手が,試合の大詰め,確かワンアウト二,三塁の場面で,サードを守っていた江藤選手がタイムを取って駆け寄ってきた時に江藤選手にかけた言葉です。その日は満月だったそうです。

 結局このピンチを脱し,江藤選手からは以下のような言葉をかけられたそうです。


 「桑田さん,凄い余裕でしたね。あんなピンチで,満月がどうのこうのっていうピッチャーは初めてですよ(p.159)」


 
 これはお世辞で言ったのではないでしょう。

 このときの桑田選手の状態が適切な緊張状態にあったかどうかはわからないのですが,1つのヒントとはいえるでしょう。要するに,

 高いパフォーマンスを上げるには,余裕をもつことが重要なのではないでしょうか?


どうやったら余裕がもてるか?

 しかし,身を削られるようなピンチの場面で,心に余裕を持つということは簡単なことではありません。

 「落ち着いていこう!」とか「冷静に!」と声をかけられて,では落ち着こうとしてそれがすぐに実行できる人などそうはいないと思います。

 いささか偏見ではありますが,日本人的な美徳に「がんばる」や「必死に」という言葉がありますが,ある程度緊張が高まった時に「必死にがんばって」も逆に過緊張状態になってパフォーマンスは下がってしまいます。

 そういう意味では,日本人って緊急状態で余裕をもつのが苦手なのかな?という気もしてきます。がんばり過ぎて過緊張状態になっては元も子もありません。


リラックスのすすめ

 がんばっても余裕は生まれないので,余裕を積極的に作り出す方法が必要になってきます。というわけで,最後にリラックスをする方法など紹介してみたいと思います。リラックスの方法には色々な手段がありますが,今回紹介するのは特に準備が必要でなく,誰にでもできる方法を紹介してみます。

 筋弛緩法

 筋弛緩法は医療場面でも用いられているリラクセーションの方法です。やり方は単純ですが,簡単に効果を得ることができます。本当は細かい手続きがあるのですが,簡単なやり方だけを紹介しておきます。

 筋弛緩法のコツは,自分で筋肉を緊張-弛緩させることにあります。要するに力を入れて緩めるという手順をとるということです。

 簡単な流れを紹介すると,


 ・利き手の拳を,爪をたてないように全力で握ってください。そして,握った拳に意識を集中してください。
 (この時,自分が緊張している感覚をつかんでください)

 ・握っている時間は20~30秒くらいで,それ以上持続が可能であれば限界まで握ってください。

 ・拳を握っている間は,息を細くして吐き続けるようにしてください
  (血圧の急激な上昇を幾分抑えることができます)

 ・限界が来たら握るのをやめてください,すると手のひらの筋肉が緩みます。
  その筋肉が緩んだところにも意識を集中させてリラックスしている感覚をつかみます。


 人間の筋肉はずっと緊張していられない性質を利用したリラックス法です。感覚的な表現で申し訳ないのですが,この筋肉が緊張-弛緩する感覚を上手くつかむことがより効果的に行うコツだそうです。

 実際には,手のひらが緊張している人はそうはいないわけですから,腕とか肩周りの筋肉でこれをやるわけです。筋肉を緊張させる時には全力でやることがポイントです。中途半端に力を入れても効果はありません。

 変なおまじないをしたりするよりはよほどリラックスできる方法です。また,特別な技術や設備がいらないのも利点です。実際に走者を背負った場面で投手がこれをやると,盗塁し放題になってしまうので,タイムを取ったり,打者の場合はネクストバッターの時にやっておくなどしたほうが良いのかもしれません。

 これをやったから不安がなくなるようなものではないのですが,それでも身体の余計な緊張を除けることは余裕を持つことにつながるはずです。

 注意すべき点としては,体力に余裕があるけれど精神的に緊張して身体がこわばっているような場合に有効であるということです。筋肉の疲労が限界の時にやっても効果はありません。また,運動の性質上血圧が上昇します。高血圧や高齢者の方にはあまりお勧めできない方法といってよいでしょう。

 こうやって積極的に精神面(メンタル)を管理していくことも,勝利への近道とはなりえないでしょうか?




おわりに

 今回は,緊張とパフォーマンスの関係と,リラックスの方法の紹介でした。もちろんこれはスポーツ選手に限らず,日常生活にも応用可能です。

 なかなか緊張状態から抜け出せない日々が続いています。知らず知らずのうちに,肩周りの筋肉がこわばってはいないでしょうか?いざというときに適切な行動を取れるようにリラックス法を実施してみてはいかがですか?

 ちなみに,腕や肩の筋肉を緊張させる時は「肉のカーテン」のポーズといってもわからないか……。量の拳を手のひらを内側にあごにつけるような格好を取ると腕や肩の筋肉に力を入れ易くなります。まぁそのあたりは自己流でもかまいません。

 では,今日はこのあたりで失礼します。

引用文献

 ・心の野球 超効率的努力のススメ} 桑田真澄(著)幻冬舎

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ちょっとしたはなし
タグ:
プロ野球
メンタル・トレーニング
リラックス

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takaranomasanori さんへ


 コメントありがとうございます

 >プロ野球開幕について

  今回の話題はこのことについてではないのですが、前回の記事は読んでいただけたでしょうか?
  一応そこに意見をまとめています。

  しかし、せっかくここでコメントをいただいているので、以下に回答していきます。

 >プロ野球選手は野球をするのが職業と発言されてましたが、選手のメンタル面は何も感じていらっしゃらないのか?

  今回の震災のような巨大な災害になると、直接被害を受けていない人間にも相当の心理的なダメージがあります。
  できれば、休ませてあげたいのが人情ですね。

  しかし、プロ野球をひとつの経済活動として考えた時、実施が可能であれば実施するという判断は経営者としては当然だと思います。
  冷たいようですが、この理屈で行くと日本中の会社がお休みになってしまいます。

  経済を動かしてお金を生み出していかないことには、現在の備蓄を全て復興に回したら終わりになってしまいます。今は辛い時期ですが、長い目で見ればもう動けるところから動き始める時期になってきていると思います。


  とはいえ、ご指摘のとおり首都圏での電力事情もあり、ある程度のスケジュール変更が必要で、その調整に時間がかかって予定通りの開幕は無理だと思っていたのですが……。

  やること自体には反論はありませんが、何かもう少し配慮が必要だったと思います。

野球におけるメンタルの重要性 -リラックスのすすめ-

プロ野球開幕について
今朝のテレビを見ていて、ジャイアンツ清武代表の発言はおかしいと思います。プロ野球選手は野球をするのが職業と発言されてましたが、選手のメンタル面は何も感じていらっしゃらないのか?無神経にも程がある!!政府も一体になって節電を呼び掛けているのにナイターでの消費電力は?野球で人々を励まそうと言う気持ちは選手も十分承知されていると思います。被災地は野球どころではないと思います。少し落ち着きを取り戻してからでも遅くは無いと思います。選手会との話し合いを大切にお願いします。

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