2008年07月06日

【Review】浦和レッズ vs FC東京(7月5日(土)@埼玉スタジアム 19:00~)

背中を滴り落ちる汗もよそに、バックスタンド2階の席からじっとピッチを見ていた。
ピッチを鳥瞰すればするほど、レッズのサイドに開いたスペースばかりが気になった。
が、最後までFC東京がそこを効果的に使うことは出来なかった。

屈辱のホーム敗戦を見たナビスコカップ大分戦、リーグ再開後に10人で闘うしかなかった千葉戦、いずれにせよ不本意な戦いが続いている。
その連戦に共通するのは、その「スペース」の使い方と用兵術ではないだろうか、と思わざるを得ない試合だった。

■サッカーをすれば・・・■

東京中日スポーツで報じられた試合後の城福監督のコメント。

 「こういう志向のチームに負けたことが一番悔しい。“サッカー”をやれればチャンスはあると思ったが、残念だ」

レッズサポーターの方への失礼を承知で言ってしまえば、一サッカーファンとしては同意せざるを得ない。
一方で
「強ければそれでいい」
「"こういう志向"でも勝ちきる強さがあるのが強さ」
と同時に思うことも認めなければならない。
要はFC東京は完敗だったのだ。
相手の志向を崩すことも出来ず、その術中に嵌り、何も出来なかった。
それがこの試合を評するには十分な試合だった。
では城福監督が言った「"サッカー"をすれば」という言葉が意味する物はなんだろうか。
「ボールを動かし、自分たちの時間を多くして、そこから相手を崩す」
という日頃から聞きなれた言葉がその「サッカー」であろうことは想像に難くない。
が、どうもその「サッカー」のイメージが強すぎて、本来目指すべき「ゴール」から遠ざかりつつあるような気がしてならないのは自分だけだろうか。

■田中達也の必要性■

FC東京は出だしからして浦和の術中に嵌っていた。
私の目の前で繰り広げられる田中達也による再三再四のDDFライン裏への飛び出し。
FC東京のセンターバック、ボランチは明らかに彼を見失っていた。
消えてはゴール前の危険な位置に現れるこの選手こそが、浦和レッズに必要なワンピースだったし、逆にFC東京にも必要なピースではないだろうか。
結果田中達也にかき回されて混乱に陥った4分に、佐原が引っ張られ、本来マークすべきエジミウソンをフリーにさせてしまい、失点を喫した。
FC東京がポゼッションを重視し、再三中央でボールを持ってから考えた挙句ボールを回してくれる以上、レッズにとってみればこの1点で十分だった。

■抑えこまれたのか、自ら抑えてしまったのか■

決してスピードがあるとは言えないレッズの強固なスリーバック。
残念なことに、FC東京は川口が67分にカボレと交代するまで、DFの裏へ飛び出すFWの動きが皆無に等しかった。
この点が先に田中達也が東京にとって必要なピース、という意味である。
DFを押し下げることが出来れば、バイタルが開く。
バイタルが開けば2列目が飛び出してミドルが狙える。
ミドルを狙えばDFラインを前におびき出せる。
DFラインをおびき出せばFWがギャップを突ける。
この一連の動作がレッズの強靭なDFラインには必要なのに、そういった動きはなく、終始2~3人に囲まれる梶山にボールを集めてしまう。
梶山が苦しくなる分、エメルソンや羽生が中でボールを拾おうとするため、本来数的優位を築けるはずのサイドのエリアでは、レッズのサイドハーフと東京のサイドバックが1対1の関係となってしまっていた。
押さえ込まれた形の東京両サイドバックはオーバーラップも出来ない結果になり、それがまた中央でボールを集める以外の策が取れなくなる結果へと繋がった。
川口が投入され、DFの裏を狙い始めるとようやく、レッズの両サイドハーフが下がり始め、サイドへボールが回り始めたが、それももう試合終盤。
ボランチも含めゴール前を5人で固めたレッズ相手では、あまりにも虚しいクロスの連続となってしまった。
やろうとする「サッカー」は理解できるが、あまりにもサイドからの崩しが少なければ、「こういう志向」のサッカーが強い。
先に閉幕したEUROにおいても、サイドからの攻撃がなければ得点に繋がらないケースが多かった。
平山をトップ下に配した形と言えども4-2-3-1の布陣で闘う以上、3-5-2のレッズに対してはサイドで数的優位を保てるはずである。
川口のように愚直にDFの裏を狙うFWの動きが少なかったこと、そしてなにより、石川がロスタイム含め8分程度しかプレーできなかったこと。
これは大きな敗因だ。

■内容は別として、尚強しの浦和■

この試合のレッズでは田中達也以外では阿部が秀逸だった。
50-50のボールなら必ず勝つ上に、FC東京が拘り続けたDFラインの間を通したパスも悉く阿部が跳ね返し続けた。
阿部のカバーリング能力と2手先を読むポジショニングは、FC東京サポーターから観ても、感心する以外に術がなかった。
そして70分以降の完全カウンター狙いの戦い方。
守備に絶対的な自信があるからこそ出来る戦い方である。
そしてFC東京の不用意なサイドチェンジを見逃さずにボールを奪い、一瞬のスピードで永井がトドメを刺す。
公式戦5連敗といいながらも、狙う戦い方で勝てるのはチームの骨子が強いからである。
確かに「面白いサッカー」とは口が裂けてもいえない。
が、サッカーが「勝った者が強い」という見方である以上、浦和レッズは強いとしか言いようがない。

■スペイン病■

EUROを制したスペイン代表。
大会前まではビジャとトーレスの2トップ布陣は採用していなかった。
その理由は
「4-1-4-1を採用することで、中盤のボール支配に集中しすぎて、本来必要なゴールへの動きが少なくなるから」
であったそうだ。
美しいサッカーを目指すスペインらしい逸話であるが、そのためにセスク・ファブレガスを外して、ビジャを投入してヨーロッパナンバー1となった。
一方で、レベルは大違いなのだが、サッカーの方向性としては同一のコンセプトを掲げるFC東京もゴールへ向かう動きが少ないように思う。
それは同様にあまりにもコンセプトに対して実直すぎるからこそではないだろうか。
サッカーに必要なのはゴールであり、そのゴールを割るためには、手を変え品を変えで攻めなければならない。
カボレの1トップ、平山のトップ下で一見成功したに見えるが、ボールを支配することを主眼にしたがために、チャレンジングなドリブルやサイド攻撃、DFの裏を取る動きが少なくなってしまっている。
目指すサッカーが少しずつ出来ていることはこの試合後半のボール支配率を見ても分かる。
そこでもう一歩前に出て、愚直に裏を狙いまくるFWの動きや、縦に勝負するサイド攻撃があれば、更に見る者を楽しませられるのではないだろうか。

■いつか突き抜ける日■

4年間の呪縛を破ることの出来なかった試合であったが、ブレークスルーが見えているのも確かである。
後は選手が試合の中でそういったリスクを負った攻めに転じる勇気を持ってプレーしてくれるかどうかだ。
私は決して悲観していない。
突き破るのはなかなかに難しいブレークスルーだし、そこに行き着くまでは時間がかかるかもしれない。
が、一度そこを突き抜ければ、間違いなく右肩上がりのチームになり得る可能性が感じられるのだから。

posted by stanger |22:29 | FC東京 | コメント(4) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
【Review】浦和レッズ vs FC東京(7月5日(土)@埼玉スタジアム 19:00~)

"こういう志向"のチームがJリーグの首位であることが寂しいですね。

posted by うむ | 2008-07-06 23:23

【Review】浦和レッズ vs FC東京(7月5日(土)@埼玉スタジアム 19:00~)

じゃあ夢「ばかり」見ていればいいさ。

目覚めた時にどこにいるかは知ったこっちゃ無いが。

posted by うむ、だめだ。 | 2008-07-06 23:28

【Review】浦和レッズ vs FC東京(7月5日(土)@埼玉スタジアム 19:00~)

このエントリー素直に共感しました。試合分析はほぼ同意。

田中達也が必要なピースというのは同感。あの動きがあればと何度も思いました。
恐らくチームの意識としては今までは先ずボールをつなげることだったんだと。スペースを見つけて動いていくっていう動きが重視されていた。それはチームコンセプトとして戦えるサッカーのステップとして機能していたけど、一方でそれがゴールへの意識を弱めたように結果的に思う。堅守速攻を実践できる相手に対してはいかにゴールを先に奪うかという意識を強くしないと試合をものにできないように思う。そこは戦術よりも選手個々の気迫なのかな。そのあたり大分戦でも言えることだったかと。

ブレイクスルーを願ってますが、この試合を見た後でまだまだ壁は厚いなと思ったのもある。チームとしてやりたいことが見えた一方で開幕から見られたチームの中の守備への課題、攻撃への課題が改めてはっきりしたようにも思えます。けれど怖がって守りに入るよりもリスクをとって前に行く姿勢。確かにそれが見たいです。負けたことを糧にしてほしいし、俺も悲観せずに応援したい。いいエントリーだと思いました。

posted by ブランク | 2008-07-06 23:42

コメントありがとうございました

>うむさま

仰るとおりだとは思います。
が、本文にも書いた通り、それもまたサッカーの事実だと思います。
またまたEUROを引き合いに出してもうしわけありませんが、スペインのアラゴネス監督が言った
「世界が欲しているサッカーが勝利した」
といった意味合いの言葉がそれを如実に表していると思います。
理想のサッカーと現実のサッカー。
それがまたサポーターが熱くなる所以だと思います。

>うむ、だめださま

申し訳ありませんが、頂いたコメントの向きが分からないので、字面に対しての返信をさせて頂きます。
現実では浦和は強いです。
それは肯定せざるを得ないです。
但し、理想論で言えばあれだけの選手層でああいう勝ち方しか出来ない、と否定されても致し方ないかな、と。
サッカー観は十人十色ですから、あまり他の方に対しての攻撃的なコメントはお控え下さい。
管理人個人に対してならば幾らでも受け付けますので。

>ブランクさま

>そこは戦術よりも選手個々の気迫なのかな。そのあたり大分戦でも言えることだったかと。

仰る通りですね。
誰が誰を使ってリスクをとっても攻めにいくのか。
選手同士でポゼッションへの共通意識はありますが、個人同士の共通意識がまだ少なく思えます。
ブレークスルーへの壁が厚いのも事実。
でも一朝一夕には変わらないのも事実。
僕らサポーターも前を向いて、声出してサポートすれば、きっと応えてくれる選手だと思います。
夜明けを待ちましょう!

posted by stanger@管理人 | 2008-07-07 00:06

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