2008年05月15日

【考察】味の素スタジアム問題

「書くネタがないな、プロのライターさんはネタ探しをどうしているんだろう。ま、俺はど素人だからネタが出来たらでいいか」
なんて思っていたら、FC東京の村林社長がネタを提供して下さいました(以下村林発言)。
この問題については別の角度から書こうと思っていたのだが、こういう問題として浮上したので、問題の考察をしてみようと思う。

■問題の本質■

今回の報道が成されてから、既にネット上では「新スタジアム建設」を中心として各種の論議が巻き起こっている。
サポーター夫々に意見があると思うが、私見として審判問題と同様に、問題の本質というのを考えてみた。
まず今回の村林発言の論理構造は

○味の素スタジアムの芝の養生が悪い
(過去2シーズンに渡って株式会社東京スタジアム(以下東スタ)には改善要望をしてきたが、希望する改善が見られない)
   ↓
○5月3日にコンサートが行われることが直前まで知らされなかった
   ↓
○不信感増長
(東スタ側の「問題は無い」発言が更に不信感を募らせる)
   ↓
○村林発言

となっているのではないだろうか。
つまるところ、問題の本質は「芝の養生が悪い」ということにしか帰結しない。
無論移転発言についてはFC東京というチームの営業としても、行く行くは考えねばならない問題とも言えるかもしれないが、発言の内容は以下の二つに分けて考える必要があるのではないだろうか。
1)芝の問題点
2)移転他、ホームスタジアムとチームの関係性
直前までコンサート云々、というのは問題を複雑化させる状況でしかないと思うので、ここでは割愛する。

■芝の養生■

過去コンサート会場として味の素スタジアムが使用された後に、ピッチが荒れるという問題は毎年述べられてきた。
それによりチームは主力選手が怪我をし、昨シーズンにいたっては芝が根付かずに試合中にボコボコとめくれ上がる問題まで出た。
残念ながらこの点に関しては、東スタ側が積年の不信感を払拭する解決策を提示してこなかったことにある。
果たしてその原因は何にあるのだろうか。
考えられる問題点は大きく分けて3つだろうか。
1)費用の問題
2)環境の問題
3)芝管理技術の問題
費用面においては、芝の張替え費用、そして管理費用が考えられる。
芝の管理維持費用については明確な費用例を見つけられなかったが、インターネット検索では1,000万~3,000万と幅がある。
一例を見てみると、佐賀県のホームページ(Googleキャッシュ)に肥料と芝刈りで500万/年と書いてあるため、手入れで500~1,000程度、そこに張替えの費用がかかるものと類推されるので、上記の1,000~3,000万というのは妥当に思える。
では味の素スタジアムがどの程度の費用計上をしているのだろうか。
東スタのホームページに決算報告があるが、東京都監査事務局にある2006年度の監査報告の方が内情が詳述されいてるので、そちらを参考にする。
恐らくピッチの管理は営業管理費に計上されていると見られるため、その項目を確認すると、
営業費用:9億3,975万
(内訳)
売上原価:7億6,413万
一般管理費:2億2345万
となっている。
売上原価には修繕費・広告費用などが含まれているため、ピッチの管理費用もここに相当するはずだ。
ピッチ管理費用の具体的記載が無いが、どうやらお金の面で問題があるようではない。
となると次に環境面。
日照等の自然環境、芝それ自体の質、それから管理環境と考えられる。
芝の育成については国立競技場のサイトに詳述があるので、そちらに譲る。
これを一読する限り、味の素スタジアムでも同じく西洋芝のティフトン419を使い、ウィンター・オーバーシーディング方式をとっているとのことで、芝それ自体と芝管理技術に問題はなさそうである。

となると自然環境面ではなかろうか。
名古屋グランパスの松浦ホペイロのBlogに気になる記事があった。
一部を抜粋させていただくと
(以下抜粋)
『粘土質の土壌は、水はけが良くありません。
東京ヴェルディ戦では雨が降ったので、
スパイクのポイントが刺さりにくく、
ツルツル滑ってしまいました。』
(抜粋終了)
とある。
恐らくこの土壌が一つの問題点なのであろう事が専門家の目から見て立証されている。
そこに日照の問題や、風通しなど、植物を育成する上で欠かせない状況が絡んでくるのであろう。
詳細は分からないが、(コンサート問題を除外して考えると)土壌の問題が要因であるのであれば、この改善が急務となる。
しかし、その費用捻出が果たして東スタに可能であろうか。
先に見た監査結果の当期純利益を見ると1億5,592万円。
ここから工事費用捻出が出来るものであろうか。
工事規模と費用が想像できないのでなんともいえないが、少々厳しそうに思える。
更には累積損失が11億円とあることを鑑みても、この工事は少々難儀なのではないかと思われる。
国なり都の援助があれば別ではあるが、東スタは石原都政下で独立採算を狙い第三セクター化されたため、営利団体として累積損失を1年でも早く黒字転換させなくてはならない。
となると、土壌入れ替えは大英断となるであろう。
一面だけ見ての東スタ批判は出来ないように思える。

■移転が正解か■

それでは村林発言の「移転」というのが果たして正解になるのだろうか。
移転となると、二つのことが考えられる。
1)新スタジアム構想
2)既存スタジアムへの移転
某巨大掲示板では「まさにMoving Football」なんて上手いことが言われているが、ジプシーのようにあちこちのスタジアムで試合を行うのは、短期的な解決策にはなるが、長期的に見るとチームの営業面にマイナスの影響しか及ぼさないだろう。
固定化されていないが故に、サポーターの年間チケット更新などは滞ったり、地理的にスタジアムに通えない人が出てくるので、急場凌ぎとしてしか使えないだろう。
では新スタジアム構想はどうか。
これも巨額の費用がかかる話であり、FC東京単体では片付けられない話であろう。
フクダ電子アリーナの総工費が80億円と言われているが、この費用は営業収入30億円台のFC東京には荷が重い。
東京都の援助があればなんとかなるかもしれないが、味スタ西側に総合スポーツ施設を作ると言う構想さえ論議を呼ぶ今、現実制は薄いと言わざるを得ない。
次に既存スタジアムであるが、国立競技場はホームスタジアムとしての使用が出来ない。
そのためサテライトの試合が行われる夢の島、江戸川陸上をはじめ、駒沢などが選択肢となるが、味スタと比べるとどうもインフラ面で脆弱と言わざるを得ない。
当座凌ぎにはなるが、椅子やトイレ、複数選択できる交通アクセスを考えると味の素スタジアムが現状では最適解ではないのかと思われる。

■解決に向けて■

土壌の問題は、費用面を除けばまずは急務であるだろう。
村林発言の真意は分からないが、裏読みすれば恐らくは警告なのであろう。
先の東スタ監査報告から読むと、Jリーグでの東スタ収入は3億1,700万。
売上の30%がJリーグ開催である。
東京ヴェルディは一切のコメントをしていないが、FC東京で少なくとも60%は寄与していると思われるので、2億円の売上をみすみす逃すのは企業努力としていかがなものかと思われる。
ましてや45年間で44億円の使用料を都に支払うためには、収入の母体であるJリーグチームとの関係性を良好に保つ工夫はしなくてはならない。
その点からも、村林発言は「優良顧客が逃げていいのか」という警告であり、これが額面通りに即移転実行とは考えていないのではないかと思う。
そのためにはまずできることは、双方の歩み寄りであり、今後の管理運営方法であろう。
土壌改良にどの程度の費用がかかるのかは分からないが、東スタをはじめとして、FC東京、東京ヴェルディもある程度の負担なり、代替案を提示する必要があるだろう。
他の例を自治体PFIセンター内の文書で見ると、蘇我球技場(フクダ電子アリーナ)のプロスポーツにおける利用料は、
(以下抜粋)
「675,000円または入場料等の総額の5%のうち多い方の額とする」
(抜粋終了)
とあるので、味の素スタジアムも大差ないのではないかと思う。
それを土壌入れ替え費用を長期負担する意味でも、1%上げるなど、歩み寄るのが最も短期的で効果的な解決策のように思う。
その上で、東スタから運営管理権を譲渡してもらい、運営管理はFC東京(及び東京ヴェルディ)、施設管理を東スタ、と分割してはどうだろうか。
競技が違うが、千葉ロッテの千葉マリンスタジアムと同様の管理にすることで、FC東京はスタジアム内でのイベントや、フードコートの開催が可能になる。
それにより東スタ側の収益も増加するのであるから、コンサート2回で5,400万という収入が減ったとしても、年間でそれなりに賄えるのではないだろうか(本来はフードコートの売上から仮説を立てて論じるべきだろうが、時間と気力が無いので・・・)。
ちなみに、千葉ロッテの「ボールパーク構想」の根源は、「いかに観客が球場に長く居てくれるか」をスタート地点としている。
同様の構想をFC東京が立案し、事業案を提示できるのであれば、検討する価値はあるのではないだろうか。
更には、そこで東京ヴェルディとも歩調を合わせて、両社がそれぞれ一つのインフラ上で競い合う形になれば、東スタ側が甘い汁が吸えて顧客と揉めることもないだろう。

あくまでもど素人が外側から見て、そして参考となる事例などから思うことを述べただけだが、
「出来る限り前向きな検討をし、土壌改良工事費用の捻出をお互いにヘッジしていく」
それこそが今求められる問題の本質的な解決策のように思う。

ちなみに、千葉ロッテについて少々言及したが、仕事で千葉ロッテのボールパーク構想の一端に携わらせて頂いたことがあるので、機会があればそれを踏まえて、チームとファン、スタジアムという「スポーツインフラ」についても述べてみたいと思う。

posted by stanger |00:25 | FC東京 | コメント(2) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
【考察】味の素スタジアム問題

更新お疲れ様です。私もこれは“警告”なんだと思います。

「試合の2日前にコンサートをやって、(東京スタジアムの)社長は『何がいけないのか』と言う。われわれは命をかけている。ああいう姿勢のスタジアムでは試合はできない」(村林社長談)
とトーチュウに書かれているように、東スタ側の芝の管理に対する姿勢を問題視しているのだと感じました。

「東京にはJ開催に適したスタジアムが他にないから、どうせ移転なんてできないでしょ?」なんて思ってるなら大間違いだぞ!もっと真剣に向き合ってほしい!という意思表示なんだと思います。

それともうひとつの意味があって、「東京サポに対してのクラブ側の意思表示なのでは?」と勝手にさらに深読みしてしまいました(苦笑)

ロッテの「ボールパーク構想」、名前は聞いたことがありますが内容に関してはまったく分かりません。非常に興味が湧きましたのでエントリー楽しみにしてます。

posted by 多摩っ子 | 2008-05-15 05:55

コメントありがとうございます

>多摩っ子さま

いつもありがとうございます。
お疲れ様、っていうよりも、まだまだ調べるべきことがあるんですが・・・。
活字フェチなんで書くこと自体は疲れないんですがね(笑)
今回の問題は報道各紙が「移転」なんていって書き立ててますが、どうなんでしょうね。
記事を投稿した後も、候補になるであろうスタジアムについて調べてみましたが、改築・増築費用に比べれば、土を入れ替える方が費用が安く済む気がします。
でも土入れ替えの間はどこかで凌がなくてはならないですよね・・・。
Jリーグに国立開催をお願いして、その間に味スタ土入れ替え、が良い気がしました。
って、返答になってないですね・・・。

ボールパーク構想については、各誌で論じられているのでそれのまとめになっちゃうと思いますが、現場で職員の方々にお聞きした話や、彼らの熱意も含めて書ければと思います。
土曜日に観戦してくるので、その時にも観察してきますね。
投稿がいつになるかは知りませんが・・・。

posted by stanger@管理人 | 2008-05-15 21:52

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