2008年04月21日

【考察】茂庭に何がおこったか

3月8日。味の素スタジアム。
背番号2の腕にはオレンジ色の腕章。
「ようやくきたか」
そう思った。
この男にこそキャプテンマークを渡さなければならない、ここ数シーズン思い続けてきた。
オリンピック、ワールドカップで得た経験値をFC東京のピッチでいかに見せるのか。
おちゃらけた印象ばかりに焦点が当たるこの男にこそ、FC東京のユニホームに袖を通し、ファンの期待を背に受け、チームを引っ張ることの重圧を感じてほしいと思い続けてきた。
その日が来た。
嬉しかった。期待した。

が、彼のキャプテンマークについて語られる以前に、パフォーマンスについて語られることが多くなってしまった。
そして私は決意した。
自称"茂庭オヤジ"が何が起こったのかを考えてみよう、と。
("考察"のため、多分に推測が含まれていることをお断りしておきます。)

■下がる男■

スタジアムで私は何度「下がるな」と叫んだことだろう。
1対1の場面で、彼は相手が細かいタッチのドリブルで迫ってくると、そのままずるずると下がってしまっていた。
「さがっちゃだめだ!前でこらえろ!」
DFとしてプレーする自分に言い聞かすように更に叫ぶ。
彼は見事に抜かれた・・・。

FC東京のホームページにある茂庭照幸の紹介文には
『常に落ち着いた守備と鋭い読みで相手の攻撃の芽を摘むセンターバック。抜群のスピードを活かした1対1の強さも魅力。 』
(http://www.fctokyo.co.jp/home/index.phtml?cont=player/player&pprof_id=2より抜粋)とあるが、この彼はどこに行ってしまったのだろう。
2003年にあのロナウドに対して「1対1で勝負しようぜ」と強気に手招きしたあの若者はもういないのか。
2004年ナビスコカップ決勝。
エメルソンに抜かれても抜かれても、周囲のカバーリングを信じ、積極果敢に勝負を挑んで行った彼は、あの時燃え尽きてしまったのだろうか。
少なくともここ最近見た彼は、我が家の気弱な愛犬が時折り見せるような"吠えながら後ろに下がる"という明らかに相手を恐れた姿を想起させた。
何度でも挑み続け、最後には止める、その姿勢こそが茂庭が茂庭たる所以にも関わらず、彼は自分自身でそのスタイルに蓋をしてしまったようである。
なぜだろうか。
いくつか気にかかる部分を踏まえながら考察してみたい

■怪我の影響■

昨シーズン開幕前、茂庭は左肩を脱臼し手術を受けている。
そして今季もまた、手術こそ免れたものの、右肩を脱臼をしてしまった。
幾つかのプレーを見ても、激しく当たるプレーについては自信がなさげである。
3節京都戦においても、CKの守備時に茂庭が転倒してしまったことで、フリーになった角田にヘディングからゴールを決められてしまっている。
そのほかにも、各試合でヘディングで競り合う場面などで、遅れて飛ぶ、裏に抜けるボールをケアするように敢えて競らない、などの場面が増えている。
詳細の診断結果などがクラブサイトでも出されていないため、なんともいえないのだが、反復性(再現性)があるとすれば、これは接触プレーが多いDFにとっては致命的なことである。
特にプロのレベルともなれば、肩同士でのぶつかりあいは当たり前なため、いつ反復してもおかしくはない。
反復性でないとしても、左右の肩を脱臼した以上、自身の体に自信を持てない可能性も高い。
そのためどうしても積極的に当たっていけないのではないか。
そう思えるぐらいに、接触プレーに対しての激しさが少なくなってしまっている。
それが故に、体を入れて相手を止める必要のある前に出る守備ができないのではないだろうか。

■DFとしてのスタンス■

一般にDFは、相手選手に対してとるべき基本スタンスと言われるものがある。
肩幅に足を開いた状態で、右(または左)の足を45度程度後ろに下げる。
そのまま腰を落とし、膝を柔らかく上下に動かせる角度に保ち、重心は前に。
文章で書くのは難しいが、重心を指の付け根辺りに持ってくるのが丁度良いだろう。
このようなスタンスを取りながら相手選手を迎え撃つ。
相手が自分の背中側に切り替えした場合は、後方の足を軸足にして前方の足を回転させるように基本スタンスの左右を入れ替える。またはその勢いを使って相手と併走するのが常だ。
調子の良い時の茂庭は、このスタンスがとにかく安定していた。
45度程引く足を、もっと引いてしまって、相手に対して90度の角度に近い状態で対峙するときもあったほどだ。
特にこのスタンスは相手選手がスピードのある選手であるほど顕著で、ドリブルが大きくなれば前に出した足でボールを引っ掛ける、抜かれれば即時に併走する、というように切り替えの速さを優先したものであると理解していた。
ある意味では、少年少女のお手本にすべき守備スタンスではない。
が、彼独特のスタンスこそが彼の強みであったのだ。
茂庭は見た目以上(失礼!)に足が速い。
そのため、ある程度相手の進む方向を限定できれば、多少の遅れを取り戻せるだけのスピードを持っている。
なので、一旦抜かれても併走さえ出来れば、相手を追い込んでゴールキックにしてしまうなど、1対1での強さが際立っていた。
が、不調になればなるほど、茂庭のスタンスは相手に対して180度平行に近い形になっている。
更には、前節で書いたようにその状態で後ろに下がるため、段々と重心が後ろに移ってしまい、体勢を取り戻そうとする瞬間に相手選手に抜かれてしまっている。
調子の良い状態の時は、腕も使って相手選手との1対1における駆け引きも長けている。
が、トップフォームにない現段階では、相手を受ける守備となってしまい、主導権を取れていない。
その原因がスタンスにあるのではないだろうか。

■迷い■

怪我、スタンスと述べてきたが、3つ目は彼自身の迷いであろう。
今季のFC東京はDFラインにおいても「ただクリアするだけではなく、繋いでいこう」ということが再三言われている。
そのため、DFはボール、相手選手、味方選手を自陣のゴール前という緊迫した状況下で判断しなければならない。
これは非常に難しいことだと思う。
自分がミスをすれば大ピンチになりうるのだから。
かといって、チームが主導するサッカーに自分だけが乗り遅れるわけには行かない。
積極的にチャレンジしなければならない。
このような状況において、茂庭自信のボール扱いにブレが生じている。
お世辞にもフィードが正確とは言えない。
そのため、繋ぐ際には横または近距離でのショートパスを選択するケースが多い。
が、最悪なのはそこで繋ぐことに意識を置き過ぎるのか、弱いパスが散見されることだ。
相手選手が高い位置からプレスをかけてくるチームであればあるほど、この茂庭の迷ったようなプレーが弱点となってしまう。
危険きわまりない状態を作るのであれば、まだ蹴りだしてしまった方がマシである。
器用なタイプではないだけに、城福監督が掲げるサッカーに対してのジレンマもあるのだろう。
あまりに迷いが周囲に伝わるため、彼がボールを持つとどよめきが起きるほどだ。
次のプレーへの先読みをしてしまうがために、思い切ったプレーに向ける集中力が欠如してしまうのではないだろうか。
逆に言うと、自分が望むプレーをするためには、自分が主導権を持った1対1をしなければならないのだが、今の彼にはその余裕がないように見受けられる。

■周囲の声を聞け■

この節には全く根拠がない。
ただスタンドから見ている限りでしかないため、実際のところは本人しか分からないが、せっかくなので書いておく。

恐らく、彼自身も年齢的にも経験的にも自分がやらねばと思っているに違いない。
共にドイツを経験した土肥はチームを追われた。
今や世界の経験が一番多い選手となってしまったのである。
だからこそ「俺が」という意識が高まるのは理解できる。
が、どうもその意識が空回りしているように思えてならない。
試合を重ねる度に、己のプライドのために闘う姿ばかりが際立つように見える。
もし茂庭が「俺が」と思うのであれば、今一度思い出してもらいたい。
湘南時代の彼の側には誰がいたか。
パラシオス。
FC東京で成長過程にあるときには。
ジャーン、土肥。
いずれの選手も真摯さと献身性で、つまりは背中で仲間の尊敬を勝ち得てきた。
普段の練習、試合での厳しさ、仲間への気遣い。
彼自身がチームを率いる立場にある、ということが重圧となり、本来のパフォーマンスを出せないのであれば、一度己を捨てて、リラックスしてサッカーに取り組んではどうか。
そもそも「そんな気はない」と言われてしまえばそれまでだが。

■それでも叫び続ける■

ここ数シーズンの茂庭の不調は、メンタルなものが大半なのではないかと思う。
先述したとおり、怪我の影響が反復性のあるものでないことが前提だが、メンタルな部分であれば、城福監督なりがきっちりと話をすれば克服できるような気がする。
余談だが城福監督の言葉にはかなりの効力があるようだ。
各選手のコメントからそれらがサポーターにも伝わってくる。
だからこそ茂庭には効果的な気がする。
元来誉めそやされて伸びるタイプの典型である。
周りが誉めてくれなくても、平気で自分を誉めて伸びてきた。
自分で自分を誉めてあげられない今、周囲が彼の迷いを払拭してあげればすぐに本来の「攻撃的な守備姿勢」を取り戻すだろう。
後は練習の中で崩れてしまった技術面を取り戻せばいい。
特に城福監督の練習は、技術面と戦術面の両者がバランス良く伸びるようなメニューが多い。
ネット上では「モニ」への批判めいた声が多く存在する。
ここで長々と書いてきたことも同類である。
が、最後に言っておきたい。
サポーターはみんな思っているはずだ。
「このまま終わる奴なのか!?」と。
茂庭照幸はもう一度上がってくるはず、そう信じている。
だからこそ、"茂庭オヤジ"は書かずにはいられなかった。
いつかここで「遂にモニが戻ってきた!」と言える様になるまで、俺はスタンドから叫び続けるだろう。
「下がるな。前でこらえろ!」と。

posted by stanger |23:03 | FC東京 | コメント(4) | トラックバック(1)
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ラブリーひろし! 【Football Odyssey スポナビ分室】

エルゴラッソを拝見すると、1面と続く2~3面をぶち抜きで東京をフィーチャーしてくれて有難う。 日曜日にトーチュウーを見て、驚いてしまっただけになおのこといいですね。 多摩川クラシコの4点目のゴールはまさしくラブリーでした。あれをラブリーと言うならば他に何をラブリーと言うのか(笑)。 選手も確かに入れ替わったが、中盤の軸となる梶山や今ちゃんは未だに居るし、徳永も元気だし。変わっているようで、実はスタメンの面子も土曜日に関してはさして入れ替わっているわけではない。 だけど、やっているものが全然違う。 監督が替

2008-04-22 00:29 | 続きを読む
この記事に対するコメント一覧
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【考察】茂庭に何がおこったか

大変に見事な考察で、勉強になった次第です。

仰せの通り、モニワは明らかに怖がってます。やはり、怪我があり、コンディションが戻らぬままの多摩川クラシコ等々力アウエーでの5-2という惨敗以降とことんおかしまま1年が経とうとしてます。

怪我と大量失点の恐怖で心身ともに厳しい状況にあるのは、観ていて分かります。彼が明らかにフィジカルコンタクトを怖がっているのをみるたびに情けない気持ちになるサポーターは多いものです。

昨年の大量失点は何もモニワ1人の責任ではありません。ただ、彼自身がDF陣を引っ張っていくんだ!という自負心が強いので、余計に空回りしているのだと思います。個人的には相手の選手と対峙したときの間合いの取り方が今までより変で、誘われるがままに飛び込んでしまうケースを今年もまだ引きずっていると思いました。

例えば、塩田や佐原がバンバン言うと余計にダメそうな気がしますので、ここはメンタルトレーナーと相談して気持ちを整えていく方策がいいのだと感じます。気持ちの重さが身体の重さに出ております。出足で相手に負けてますしね。

発奮を!と言いたいところですが、一旦精神面のトリートメントをクラブは考えたほうがいいのかもしれませんね。

私のブログもお暇なら観てやってください。ずばり東京の話ししかありませんので。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/sponavifootball/

posted by sponavifootball | 2008-04-22 00:16

【考察】茂庭に何がおこったか

>sponavifootballさま
東京サポである以上、いつも拝見させていただいてました。
ある種憧れにも似た感情を抱きながら、と言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、その方にコメント頂き、更にはお褒めの言葉を頂くとは!ありがとうございます。
東京だけに偏らないように、偏っちゃう拙Blogを今後とも宜しくお願いします。
前置き長っ。

>彼自身がDF陣を引っ張っていくんだ!という自負心が強いので

そうなんですよね。
そこに問題が根差している気がします。
明るくひょうきんなモニがいなくなってから、無駄に考えるシゲニワが登場したように思えます。
今一度メンタリティを「柔らかく」して、もう一度「誘いにのらない」茂庭を観たいものですよね。
これからもBlogを拝見させていただきますので、こちらにもご意見頂ければと思います。
宜しくお願いします。

posted by stanger@管理人 | 2008-04-22 01:08

【考察】茂庭に何がおこったか

>反復性でないとしても、左右の肩を脱臼した以上、自信の体に

×自信
○自身

posted by 校正マン | 2008-04-22 15:48

【考察】茂庭に何がおこったか

>校正マンさま

巡回ご苦労様です(笑)
ご指摘頂きました箇所、修正致しました。
校正頂くことで少しでも良くなれば、と思います。
誤字が多いので、今後も宜しくお願いします(笑)

posted by stanger@管理人 | 2008-04-23 00:02

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