2006年11月04日

相似形~ナビスコカップ決勝Review~

「千葉は今までどおり効率のいいサッカーをやっていることが印象付けられたと思いますし、努力を惜しまない気持ちを選手が実行にうつしたことが結果に繋がったと思います。」(J's GOALより引用)
負けた鹿島パウロ・アウトゥオリ監督のプレス会見での言葉だ。
この言葉がこの試合を一言でまとめる、何よりもの言葉だろう。

【相似形な立ち上がり】

両チームともにしっかりとしたゲームプランの下ゲームに入った。
狙いはミドルサードでの厳しいチェックからのボール奪取、速攻。
鹿島はA・ミネイロが、千葉はハースが体を張ってボールを収める。
相似形とも言える両者の立ち上がり。
昨年とも一昨年とも違う好ゲームの予感がした。
あれだけ両者が前半から激しく相見えれば、後半に必ず得点機会がやってくる。
それをどちらがどれだけ正確に沈められるのか。
これが勝利の分かれ目であることはご覧になった皆さんが分かっていたことであろう。

【国産千葉の千葉らしさ】

しかし、先に動かざるを得なくなったのは千葉だった。
前半28分に足を痛めたハースが坂本に交代すると、千葉イレブンは純国産へと変わった。
ボールの収まりどころであり、効果的なパスも出せるハースの交代は痛かったが、鹿島にとっては運動量の少ないハースが下り千葉の「隊長」坂本が入る方が、状況をややこしくされるに違いなかった。
怪我の功名とも言える交代。
千葉の真骨頂と言える走力全快のサッカーが展開される準備が整った。
坂本が左サイドを走ることで、羽生とのコンビで抜け出したり、山岸が中に切れ込んだりと、左サイドは千葉の主戦場となった。
鹿島の新井場も機を見て逆襲に転じようと懸命のオーバーラップを試みたが、相手があの二人では、自陣に差し込まれても仕方がない。

【狙いすぎ感もあるMVP】

千葉の左が活気付けば、自ずと右サイドへのサイドチェンジが効力を増してくる。
事実アウトゥオリ監督がハーフタイムに出した指示は
「相手の左サイドの攻撃に対する守備のバランスに注意すること。」(J's GOAL引用)
であった。
坂本投入以前から千葉の右サイドを魅力的にしていたのは、水野晃樹だった。
少々独善的とも取られかねないパス、シュート、ドリブル。
一つ一つのプレーが「この若いの狙ってるな」と苦笑いさせてくれるようなプレーだった。
その苦笑いがいつしかゴールの匂いに変わり、水野にボールを預けろとTVの前で声にしていた。
Jリーグにおいても、ボールを持つと期待させてくれる選手はそうはいない。
練習をボイコットしてしまうような強烈な個性の持ち主ではあるが、日本にもようやくそのぐらいの気骨のある若い選手が出てきた、と期待してしまう。
誉め過ぎかもしれないが、昨日の水野はリオネル・メッシに見えた。
ストライカーである巻が正に馬車馬のように走り回って作ったスペースに飛び込んで、ゴールをアシストを狙う水野が後半35分に出した結果は、MVPに値するゴールだった。
狙って狙って引き寄せたタイトル、ゴール、個人賞だったのではないか。

【若さの鹿島 今とこれから】

鹿島は若さが出たように思う。
冒頭に記したが、中盤からの激しい攻防から速攻、という消耗戦においては千葉に一日の長があったのかもしれないが、攻守の切り替えにおいては明らかに後手を踏んでいた。
右サイドで自由に水野を「遊ばせた」のは、外国人と日本人若手の連携不足である。
あれだけ自由にやられて対策が打てないというのは、チーム自体の若さを露呈したに違いない。
それでも深井のような気持ちを表に出してプレーできる選手や、体調不全でも強烈なシュートと非凡なパスセンスを見せた野沢、大失態を見せたが正確なロングキックを持つ青木など、まだまだこれから良くなる余地が大きい。
アウトゥオリ監督の去就が注目されるが、この日のプレーを続けられれば、鹿島が10冠を手にする日も遠くはないだろう。

【責任の所在を】

アウトゥオリ監督は会見で
「特に千葉がサイドチェンジから速攻を仕掛けてくることは分かっていたことで、それに対応しつづけていましたが、失点の場面では対応できなかった。誰かの責任ということではなくて、その役割が出来なかったことで勝敗が変わったと思います。」(J's GOAL引用)
と言っているが、これは誰かの責任である。
オシム代表監督も言っているように、「何かが、誰かが悪かったから失点している」はずだ。
2点目の責任はしっかりしている。が、鹿島にとって重要なのは1失点目の坂本→羽生→坂本でいとも簡単にサイドを破られたこと、そして散々右サイドを蹂躙された水野をフリーにさせたことだ。
鹿島が天皇杯を取りにいくのであれば、この点を明確にし、修正すべきだ。
後10分を持ちこたえられなかったのは大きな責任がある。

相似形で始まった試合は多くの過程を経て相対照の試合へと変化した。
90分を通して、多くの局面と駆け引きがある好ゲームだった。
そして、3年連続PK戦という議論を招きかねない結果に繋がらなかったのもまた、Jリーグファンにとっては効果的だったかもしれない。

posted by stanger |13:16 | Jリーグ | コメント(0) | トラックバック(1)
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