2009年03月06日

為末大が語る「実業団撤退」

今春からアメリカに生活拠点を移した陸上の為末大選手が、自身のブログで、不況による実業団の撤退について書いています。

実業団撤退を考える

以下、一部抜粋しながら、ボクも考えてみたいと思います。

株式会社は株主から投じられたお金を、人や物やシステムや、様々なものに置き換え、それが最大の利益を生むために運営するという使命を負っています。稼げなければ会社ではありません、ボランティアです。
《略》
実業団システムは企業が支えているものです。何度も言いますが、企業は利益を最大化する事を最も大きな使命として持っています。『損失は出しますが、人は助けています』。市場はそういう企業が生き残れるようなルールにはなっていません。

不況の波を受け、株式会社は派遣、そして正社員まで削減の対象としています。
それほどまでにコストカットに迫られる企業が、株主に「スポーツを残す」意義を説明することは難しく、廃部や休部を決定するしかないということでしょう。

まず、この仕組みを理解する必要がありますね。

続いて、この現実のなかで「では、どうすればいいのか?」ということになりますが、為末選手は次のように書いています。

ここ最近、外資系の企業が意識している、どれだけ世の中に企業が愛されているかという指標があります。世の中に愛されるほどブランド化した企業は、強くそして長く続くと言われています。
スポーツに与えられた使命はまさにここにあると思うのです。企業に対して還元するのは、世の中に、そして社内の人々に希望をもたらす事です。

上記の部分と重なる記事が、毎日新聞大阪版(2008年10月25日)にあります。

「野球部の役割は、社内の求心力を高めるだけでは済まされない。結果を出し、会社のブランドイメージに寄与しなくては」。野球部副部長の弓田鋭彦(49)は、部の存在の意義をこう説明する。

この野球部は、今年レッドソックスに入団した田沢純一投手が所属した新日本石油ENEOSです。
野球部は、少年野球の支援や障害者野球のサポートを行っているそうです。
「野球を通して健康的なイメージが広まり、ENEOSに親近感を持ってもらえれば」と、取締役常務執行役員で野球部長の山縣由起夫(59)は語っています。

もはや「勝利を目指してスポーツをするだけでいい」という状況ではありません。
企業がスポーツチームを維持する場合、チームは付加価値を提供して、ブランドイメージに貢献することが求められているのだと思います。

この姿勢が、不況が到来しようとも、切り捨てられないチーム作りにつながり、株主の理解を得るためにも必要なのでしょう。

■□■

為末選手が言及する企業スポーツ(実業団)だけでなく、運営形態には地域スポーツ(クラブ)があります。

1社で支える企業スポーツに対して、地域スポーツは複数のスポンサー収入と、入場料やファンクラブ会費(ファン)で成り立っています。

企業スポーツを支えるのは1社ですから、業績に影響されやすく、地域スポーツは業績の影響を企業スポーツほど受けません。
リスクを分散しているといってもいいでしょう。
当ブログに登場する滋賀レイクスターズがこの形態です。

ボクの理想はこの地域スポーツですが、Jリーグ浦和レッズのようなファンとの関係を築く(結果としてスポンサー収入につながる)には、相当な経営努力が必要で、また時間もかかります。

つまり、即効力のある夢のような方法はなく、新日本石油野球部の野球教室や、滋賀レイクスターズのレイクスキャラバンのように、企業スポーツも地域スポーツも、「地域」をキーワードに地道にやっていくしかないのでしょう。

■□■

為末選手は実業団(陸上)について、文章をこう締め括っています。

スポーツはこの世に無ければならないものだと信じています。しかし現に、スポーツ選手よりももっと多くの人が、解雇されている今、なぜスポーツだけは違うのかという理由を明確にできない以上、企業はこれからも実業団から撤退し続けるでしょう。

私がプロになってから、自分に常に問いかけている事です。『企業は金を払っている。私は何を還元できるのか』

果たして実業団は企業に取って必要のないものか、それとも日本社会、経済にとって必要なものなのか。陸上に関わる人、一人一人の行動によってその評価は決まります。

posted by sportsemotion |00:45 | スポーツ文化 | コメント(2) | トラックバック(0)
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為末大が語る「実業団撤退」

コメント投稿者ID :

税制を変えることです。企業が内部留保するよりも地域の文化・スポーツに寄与した方が儲かる仕組みを考え出して実行できれば、大きく変わるような気がします。
資本主義下ではスポーツ界は貧者です。ここの構造を変えていかなければなりません。
そのためには法律を変えて、資金がスポーツ界へ流れていくような仕組みを作る必要があります。
ドイツのスポーツクラブなどの経営を参考にするとよいと思います。

posted by かぼすシュート | 2009-03-07 05:01

為末大が語る「実業団撤退」

コメント投稿者ID :

>かぼすシュートさん

コメントありがとうございます!

グローバル社会になったことで、日本企業は海外との競合を強いられ、競争力強化(先行投資)のために内部留保を行う構図になっていますね。

こうした状況で、企業の努力だけでは限界があるでしょうし、かぼすシュートさんの提案を含めて国の施策も必要だと思います。

ただ、企業や国(税金を払う市民)に眼を向けてもらうには、為末選手が書いてあるように、選手やチームが、企業や社会に対して「何ができるのか」と考え実行することが大事なんでしょう。

posted by SC+(管理人) | 2009-03-09 01:47

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