2007年03月24日

こんなドラマ観たことない!

大会も佳境に入り、いやがうえにも盛り上がりを見せます。

ソロフリールーティン決勝。またしてもドラマが生まれました。

22日、日本でもファンの多いフランスのビルジニー・デデュー選手の演技が注目を集めました。彼女は03年、05年と世界水泳ソロ競技で2大会連続ワールドチャンピオンになり電撃引退。そして今回、1年半のブランクを経て再び電撃復帰を果たしたのです。

試合前、プールサイドに現れた彼女を見て私は驚きました。背中、肩から腕にかけての筋肉がまるで彫刻の様。聞けば、たったの4ヶ月のトレーニングでこの身体に戻したと言います。復帰の動機は、昨年の9月のFINAワールドカップを観戦して、彼女の中にあるイメージが浮かんできたから。イメージとは自分がトライしてみたいテーマとアイデアのことでした。1年半のブランクを埋めるためには、それ相当の覚悟と過酷を極めるトレーニングが必要になってきます。しかし、そのシンクロに対する情熱が彼女を復帰へと突き動かします。

まず彼女がしたことは、身体作り。正直少しふっくらしていました。その身体を4ヶ月で試合に出られる身体に持っていくトレーニングメニューを専門のトレーナーに組んでもらい、1ヶ月半、ほぼ陸上だけで筋肉を作っていったそうです。ある程度出来上がってから、ようやく水中練習に。苦しかったと思います。

その経緯を経て、いよいよデデューの登場が近づいてきます。

決勝7番目に登場は日本の原田選手。今大会、この原田選手は風格を身に着けたような気がします。その演技は激しく力強く、「日本の新しいソリスト」としての魅力を存分にアピールするものでした。

トップ3の一角、スペインのメングァルも迫真の演技を披露。「情熱のアデージョ」と異名をとる彼女の演技は、エンニオモリコーネの胸に迫る音楽とともに切ない情念を訴えかけました。予選崩れたスピンも決まります。

そして最大のライバル、ロシアのイシェンコを次に控え、デデューが登場。

プラットフォームに登場したときから、デデューはもう20世紀最高のディーバ、マリア・カラスでした。マリア・カラスをテーマに選んだ彼女が大切にしていた「高貴さ」と「気高さ」が会場全体を包みます。とっても静かでした。

水の中の動きとは思えません。演技冒頭は素早く高い位置まで倒立姿勢に到達するブーストアップからスピンの技。いきなり鳥肌が立ちました。観客の心を鷲掴みにしたままクライマックスへ向かいます。彼女いわく「最後はほとんど気絶状態で足技が思い通りにいかなかった」と言いながらも、技術、芸術共にほぼ完璧に近い演技。得点は・・・

テクニカルメリットでオール9.9。アーティスティックインプレッションで5人中4人が10点満点をつけました。

そしてイシェンコの演技を待ちます。

イシェンコも芸術性を徹底トレーニングしてきたことが伺えるプログラムでした。高さ、スピンの正確性、どれをとっても引けをとりません。緊張の中、得点がコールされます。

合計得点を待つことなくデデューの勝利が確定されました。芸術点はオール9.9。ロシアの若いソリストは笑顔でした。

勝利を確信したデデューは突然観客席に向かって走り出します。皆がその突然の行動を見守ります。彼女が向かった先は、マネージャーであり恋人でもあるジェレミーさんの元でした。彼女を支え続けた最愛の人です。まるで映画の1シーンのよう。これまでの世界大会でみたことのない光景です。しかし会場はそんな彼達のことを祝福の拍手で称えました。

今大会前、デデューは復帰に向けて強気な発言をしていましたが、唯一、パートナーのジェレミーの前では弱音を吐いていたとか。心配で心配で、ジェレミーはイシェンコの演技を手で顔を覆って観れなかったと言います。

大会の盛り上がりもそうですが、こんなドラマティックな演出つき?で、私としても現地に来れていて本当によかったな・・・と思った瞬間でした。

この夏。私はデシューと松任谷由実さんのシャングリラに出演しますが、デデューの姿を見てかなりモチベーションが上がりました。マジでトレーニングしなくちゃ。

posted by 武田美保 |11:37 | シンクロナイズドスイミング | コメント(7) |
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この記事に対するコメント一覧
Re:こんなドラマ観たことない!

自分は大阪人なので武田さんのレポートが身近に聞こえて
楽しく拝見しています。
あまり上手にコメントできないですが、
かかさず見ていますので頑張ってください^^

posted by おっちぃ | 2007-03-24 17:12

Re:こんなドラマ観たことない!

”極めることは美しい”

posted by 沢村大和 | 2007-03-25 10:45

Re:こんなドラマ観たことない!

スポーツを見て初めて感動しました!!!シンクロはスポーツというより舞台を見ているような気分になります。特にフランスのデデュー選手の演技は吸い込まれるような不思議な感じで、シンクロのファンになりました。
今日武田さんのブログを読んで、テレビでは華やかで輝いている選手も影ではこんな思いでいるということを知りました。
夏に武田さんやデデュー選手が出演されるシャングリラは是非会場に見に行きたいです(^^)
楽しみにしています。頑張ってください。

posted by アユミ | 2007-03-25 21:23

Re:こんなドラマ観たことない!

武田さん、

世界水泳のリポートお疲れ様でした。新しい種目分けになり、エキサイトする回数が増えて大変です(嬉しい悲鳴)。
北京五輪、どうなるのか、今からますます楽しみです~~~ぅ。

武田さんも、今度はご自身のフィールドでのご活躍を期待しております。

posted by 沢村大和 | 2007-03-26 22:02

Re:こんなドラマ観たことない!

中国に惨敗したときはどうなることかと。復調ととらえてよいのでしょうか。ただ、美保さんのころのライバルはロシアだったように思います。今ロシアは遥かなる高みに達し、中国がそれを追ってつかのま見せたような凄味のある演技をしています。日本はマスコミでも関係者でも中継から聞こえてくるのはライバルはスペインの声ばかり。目の前の勝敗は確かにそうなのでしょうけれど、年々右下がりのような印象ばかり。自分の演技をするとの決意はそれはそれで正しいのですけれど、全体に遥かなる金色の演技の高みを望もうとする気概のようなものが感じられない。そのような印象を持ってしまってそこに一抹のさみしさを覚えるのは私だけでしょうか。

posted by 船乗りせむと月まてば | 2007-03-26 23:32

Re:こんなドラマ観たことない!

はじめまして。
シンクロをこれまでのスポーツに出来たのは武田様はじめ多くの選手・コーチ・裏方さんが人に言えない努力を積み重ねて来た結果だと思います。
各国のすばらしい演技(努力の跡が垣間見る事が出来ます)。日本の選手の頑張りすばらしかったです。
それにしてもビルジニー・デデュー選手の演技どのように表現していいものやら。
フィギュアスケートで荒川静香選手がオリンピックチャンピオンになった演技を見たときと同じ思いを持ちました。
それは【品位・品格の高さ】を感じました。アスリートではあるが芸術家を感じました。
言葉では表せない感激を味わいました。
日本選手も彼女を超えるような選手の出ることを心より期待しております。
元体操経験のある還暦のおやじより、それでは失礼します。

posted by 石の舟 | 2007-03-27 00:02

Re:こんなドラマ観たことない!

 や、失礼しました。誤解しないでくださいね。ただ、ライバル報道(連呼を伴う)が気になったのです。
 私が真にゾクッとするほど感動した演技は世界選手権での荒川さん(オリンピックではドラマに感動しました)、2005年グランプリシリーズで190点台を出したときのスルツカヤさん、アテネオリンピックでの新体操のエキシビジョンでのどこかの国の椅子を用いた演技でした。デデューさんの演技は見逃してしまい全く残念です。
 日本でも荒川さん、美保さんはじめ世界を感動させる演技をする選手、その予感を感じさせる選手が近年輩出してきました。シンクロ日本も未完のままの歌舞伎を採り入れた演技を始めこれからに期待できる内容と豊富な選手層を持っているのは間違いないところです。ぜひ北京ではさらなる高みへ登ってほしいと願っています。元卓球をちょっとかじった観戦者より、これからも頑張ってくださいね。

posted by 船乗りせむと月待てば | 2007-03-27 12:56

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