2006年07月10日

センターコートが眩しくて:その十二

決勝という場の雰囲気は、いつも独特ですね。
テレビの向こう側の光景なのに、空気が感じられるようです。

第一シードのフェデラー、第二シードのナダル。
この二人の決勝は、シードの上で順当でありながら驚きでもあり、誰もが望んだカードでもあります。
これからどんな光景が観られるのだろう。
落ち着かない観客の反応がそんなふうに感じさせてくれました。

いつものように、例のジャケットを着たフェデラー。
同じくいつものように、身体を揺さぶって集中するナダル。
そんな二人の登場の間を、やや強めの風が通り抜けていきます。
ラケットを取り、タオルを取り、水を口に含み、ボールを手にし練習に入る。
普段と変わらないルーティンの中に、高めていく集中がうかがえます。
試合開始にかけて、はやめにベースラインに立つフェデラーとじっくりと時間をかけるナダル。
最初の、印象的な光景でした。

試合内容はどう表現したらいいでしょう。
少なくとも、第一セットを予想できた人は間違いなくいないはずです。
準決勝までのフェデラーの強さに圧巻されつつも、
ナダルならなにか突破口を教えてくれるはずだと思っていたのに。
ナダルでも…ダメなのか。
驚くほど素晴らしいフェデラーのサービスに、むしろ本領を魅せ付けられた気分です。
そして、速い展開。
ナダルにストロークの感覚を掴ませないまま6ゲーム連取。

いったい何分で試合が終わってしまうのだろう。
そんな不安をとりあえず払拭してくれた第二セット。
ただ、接戦でありナダルの息が吹き返しつつあるのを認めながらも
やはりフェデラーの強さを思い知らされたセットでしょうか。
いきなりのナダルのブレイクにも顔色一つ変えない。
あ、これはいつものことか。
しかし、スライスを簡単に多用し始める判断力。
ストロークでのスライスはおろか、
ナダルのファースト・サービスにさえスライスでリターンする。
セット奪取が逆転であり、タイ・ブレイクである結果は
第四セットはないかもしれないと思わせるには充分だったような気がします。

そんな私の勝手な思い込みを潰してくれた第三セット。
本当に、セットを重ねるほどに力を爆発させるナダルの凄さ。
苦しめられたスライスをかわし、得意のストロークが精度を増します。
ダウン・ザ・ラインに、クロスに。
フェデラーがベースラインにいようが、ネットに出てこようが迷いがありません。
もう会場全体をナダルへの歓声で包み込ませていきます。

この雰囲気なら、まだフェデラーを苦しめられると思った第四セット。
だから余計にフェデラーの偉大さを感じましたよ。
思えば、中盤以降のフェデラーは
誰もが苦しむナダルのデュース・サイドのセンターへのサービスを攻略するんですよね。
このセットでは、どれだけナダルのサービスを読みきったでしょうか。
スライスは相変わらず効果てき面。
サービスの妙は、確率よりも大事なところでのエース。
ナダルのクロスがアウトになって、
フェデラーは膝を突き両腕を高々と西日の空へ突き上げます。

芝の王者…かぁ。
どこまでも強い芝のフェデラーには身震いすらします。
当然のように金色のカップを掲げる姿は、さらにその思いを強くしてくれました。
フェデラーはどこまで行くのだろう。
こうなったら、どこまでも観続けてみたい。
ジャケットのラケットの数が、何本なのか分からないくらいまで。
フェデラーへの想いが尽きないウィンブルドンでした。

そして、そのフェデラーをいつか止めるのはナダルだと
赤土の王者の名を覆すかのような活躍も思わないではないでしょう。
誰よりも躍動するプレーもガッツポーズも、
全仏と全英だけにとどまるはずがないだろう期待が膨らみます。

当然ですが、二週間前の美しい芝は原型を留めてはいません。
それでもセンターコートは眩しくあり続けるのでしょうね。
さまざまな舞台を魅せてくれた残像はそのままに、
また来年、美しい芝生で眩しいセンターコートで選手も観客も迎えてくれるまで。

posted by しん太 |17:41 | テニス | コメント(0) | トラックバック(0)
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