2008年04月30日
全日本柔道選手権2008
柔道の全日本選手権をテレビ観戦。 開場の2時間前から行列が出来ていたようですね。 男子100kg超級の五輪代表選考を兼ねるだけあって注目度が高い大会でした。 マスコミ、メディアではこぞって井上康生選手にクローズアップ。 それだけの柔道家であるのは間違いありませんが、 どこか井上選手に対しての外堀が埋まっていくような気がしながらの観戦です。 テレビ放送からの準々決勝にはさすがの面々。 100kg超級での代表を狙う、棟田康幸、石井慧、井上康生。 昨年の優勝者であり100kg級代表、鈴木桂治。 体重別選手権では1回戦で敗退も実力者の高井洋平、そして常連の生田秀和。 いまの日本柔道を背負っていると言っていい猛者ですね。 さて、誰から書いていいものか…。(笑) 準々決勝というところから振り返れば、やはり井上vs高井ですね。 柔道人生のすべてをかけると言って臨んだ井上選手。 もうずっと、これが井上康生だと言える柔道を観ていませんでしたが、 この高井選手との一戦に関しては誰もが興奮を覚えたんではないでしょうか。 序盤は足も動かず高井選手に攻め込まれる場面も多いのですが、 中盤から後半には攻めることを止めない井上選手の姿がありましたね。 内またが軸であることは変わりませんが、大内でも果敢に攻めていきました。 最後はこの試合で2度目の内またをすかされて敗北。 押さえ込まれていた25秒の間、井上選手はなにを想っていたのでしょう。 ただ敗れた表情には決して悲壮感ではない、むしろ清々しささえ感じられました。 高井選手が巧いな、と感じたのは釣り手の使い方。 井上選手の釣り手の外から腕を回して釣り手を獲りにいく。 これは最近、外国選手が日本選手に対してよくやるんですよね。 この釣り手の獲り方だと、自分と相手の間合いが狭くなるという効果があります。 こうすると、特に内またのような技への対応がやりやすくなる。 後半は疲れもあったのか内側からでしたが間合いの狭さは保っていましたね。 あの内またすかしは計算どおりだった気がします。 準決勝では、棟田vs石井が重要な一戦でした。 内容も考慮されますが、勝ったほうが五輪代表に近づく一戦。 その意味では物足りないというのが正直な感想です。 棟田選手にとって、体重別選手権での準決勝敗退と、この全日本での敗退。 そのどちらにも感じられなかった執着心ぐらいの気迫さ。 いや、棟田選手ってどんな試合でも冷静に淡々とこなすように観えるんですよね。 それが棟田選手の柔道なんだと思います。 思いますが、組んだまま足さえ動かないのはどうしてなんだろう。 誰よりも五輪に近いところにいて、またそれを確実に掴める力もある。 準決勝の生田選手への素晴らしい支え釣り込みのときのような、 うまく組ませてもらえないならガシッと両袖を掴みにいったあの柔道が出せない。 やはり「弱いです」とあっさり自分の負けを淡々と認めてしまう棟田選手。 なにか、どこか、釈然としませんでした。 反対に、石井選手は執着心がありありでしょう。 内容はまったく面白くない、ただ勝つためだけのものです。 石井選手こういう柔道をよくやります。 昨年の嘉納杯や全日本準決勝での井上選手との一戦は記憶に新しいところ。 別に自分の技が決まらなくてもいいんです。 まず相手に技を出させないような組み手をして、あとは自分が攻撃の姿勢を示す。 あとは審判が相手に指導を出してくれます。 確かに柔道としてはまるで武道とはかけ離れるのですが、 むしろ外国勢のような勝つためのスポーツとしての柔道では主流でしょう。 石井選手はなにがなんでも優勝しなければ五輪選考への舞台にも立てない。 勝ちへの執着心だけの試合だったと思います。 そして、決勝は鈴木vs石井の3年連続同カード。 試合が始まった途端の石井選手の圧力はすさまじかったですね。 鈴木選手でさえも引かせてしまうんですから。 そんな鈴木選手の圧力に負けないように石井選手との間合いを詰めた瞬間でした。 ああも見事に石井選手の大内が決まるとは想像もしていませんでしたよ。 最初になりふり構わず圧力をかけておいて相手が出てきた一発目の大内。 石井選手の考え抜いただろう奇策が完全にハマりましたね。 そこからの寝技に持ち込む一連の動作は石井選手の得意とするところ。 まぁそこまでの流れはパーフェクトだっただけに鈴木選手の凄さが露わになりました。 残り2秒であの完璧だと思われた石井選手の上四方固めから抜け出す。 鈴木選手の強さは劣勢でもよく分かりますね。 あとはひたすら石井選手が逃げ回っての優勝でした。 注目された100kg超級の五輪代表は石井選手に決定。 全日本での優勝と、100kg超級に変わってから負けなしというのが選考理由のようです。 確かに負けてはいないんですが、嘉納杯の内容は決してよくない。 いや、よくないというか石井選手の柔道はそういうもんかもしれませんね。 一本を獲りにいく柔道ではないのが石井選手の特徴でしょうか。 石井選手は優勝してもその内容の悪さに号泣していましたが、 そういう柔道でもいいから勝ちにいって実際に結果を出せたことは評価されます。 怪我の影響さえなければもっと違った石井選手が観られると思っています。 そして、井上選手は引退を示唆。 また偉大な柔道家が終焉のときを迎えたようです。 ここ数年は本当に苦しい柔道でしたが、井上選手の功績の大きさは誰も否定できません。 メディアがこぞって今回も井上選手を取り上げたことからもよく分かります。 これからは指導者としての勉強に興味がおありだとか。 現役は引退でしょうが、井上選手の柔道家人生はまだまだ続きそうです。 これからも必ずするであろうご活躍を心より期待しています。
posted by しん太 |14:57 |
柔道 |
コメント(12) |
この記事に対するコメント一覧
全日本柔道選手権2008
こんにちは
私もテレビでみましたが、押さえ込みが解けた直後に、解説の篠原さんに
「この後逃げ回らなければいいけど」
といわれてしまい、
インタビューの号泣に対しても、
「彼は毎回こういうことを言うけど、毎回こういう試合をするんだよね」
といわれてしまう石井選手で本当によかったのか、と疑問に思ってしまいました。
posted by ま | 2008-04-30 16:46
全日本柔道選手権2008
>まさん
コメントありがとうございます。
ただ、負けないという事実は確かなんですよね。その柔道が良いか悪いか、また好きか嫌いかは違う面として考える必要があるかもしれません。
としても、はっきり言って連盟の選考にはまるで一貫性がないのも事実だと思っています。
posted by しん太 | 2008-04-30 19:06
全日本柔道選手権2008
オイラ以上にしん太殿が納得してないようね(^-^)
石井選手って19歳ぐらいで全日本優勝しませんでしたかね?当時大きく報道されたのですが、海外の大会をテレビで見た時はまったく活躍せんかったな~オイラの中で「内弁慶」という印象が石井選手にはあります。
確かに日本人が柔道で逃げまわるのはカッコ悪いよね。柔道ファンってのは柔道を「スポーツ」といて捉える前に「武道」として捉えてるフシがありますからね~
井上選手は引退示唆ですか?引退表明かと思ってました~テレビでは今後、指導者の道を歩むといってたんで・・
笑いが出るくらい強かったのはシドニーでしたかね?アテネでは五輪選手会長として凹む暇が無いほど様々な種目に顔を出し応援してましたね~
技が決まりすぎて相手が一回転半する内股は伝説ですよ(^-^)
井上選手お疲れ様でした~
で棟田ですか・・・・執着心を感じない?
なんかさ~古き良き日本人って感じがしない?
節操があり、我を隠し淡々といつも通りの姿。
「分」を持って試合前後に「礼」を真摯にする態度。
柔道家とはまさにこういう選手なんだと素人ながらに思ったね(^-^)
女子バレーの選考は割り切って応援しようという気になってますが、石井選手しかり、谷本選手しかり柔道はね~
釈然としないね。
posted by 小太郎 | 2008-04-30 21:17
全日本柔道選手権2008
私もテレビで見ました。正直言って石井選手の戦いぶりは、とても柔道とは思えないものでしたね。
石井選手の出る試合は、大概憤りを感じるが、特に、今年のこの選手権は大いに憤りを持ちました。
彼は、日ごろ「ヒールと言われても良い。勝てばいいんだ。」と言っているが、そのへんは大相撲の朝青龍を感じる。つまり横綱としての品格、人間性を感じない。本来柔道は柔道を通して人間性を磨くものではないのかな?それに、柔道にヒールは無い。
負けなければそれで良いのかな?これは好き嫌いの問題では無いと思う。
石井選手の試合(あえて柔道とは言わない。)は見ていて、汚さを感じる。なにしろ礼が無い。例えば、決勝での事。鈴木選手が座って着衣を整えているのに、石井選手は、自分の乱れた着衣を整えるどころか、立ったままで控え線を越え、速く立てとばかりの態度。全くいただけない。斎藤監督以下、国士舘大学の指導者は石井選手に何を指導しているのか。
柔道の基本つまり、心のことから教えなおしてもらいたい。
また、外国の選手はポイントを取に来る試合をするので、これと同じ戦いでも良い。という考え方を連盟はしているのかも知れませんね。しかし、外国の柔道をこのようにしてしまったのは、日本の過去の指導者の責任かも知れませんね。そういうことを考えると、オリンピック代表は石井選手ではなく、きちんと柔道ができる選手で、柔道とはこういうものだと世界に模範を示さないとね。
テレビの解説の篠原さんは、相当憤りを感じておられたようで、同じ気持ちで見ていた者として共感しました。
連盟の偉い方々しっかりしてください。
井上康生選手引退示唆。彼こそ柔道家だと思います。
良い柔道を見せていただいてありがとう。そして長い間ご苦労さまでした。彼は、きっと良い指導者になるでしょう。
posted by たか | 2008-05-01 02:28
全日本柔道選手権2008
石井が朝青龍に親近感をいだいているのは周知の事実。朝青龍が「ヒールで最強」だから、シンパシーを感じるのでしょう。たぶんその関係でしょうか、横綱も会場に来ていました。
勝負へのあくなき執念。篠原からは卑怯となじられようと、なりふりかまわず結果を出す。「こんどはまともな柔道をします」と泣いてみせて、心の内では舌をペロっと出す。
石井は武道家らしからぬ「したたかさ」と「ずるさ」を武器にして、北京で金を取れ。そのかわり、取れなかったときは、国民的ブーイングは覚悟しなければならないが、そのことは本人も重々承知しているはずだ。
・・・
井上の最後の内股を「すがすがしい」と見る向きは多いが、あれはいわば特攻精神だろう。「負けて名を残す」より、石井のように、「汚名を着ても勝つ」を選択してほしかった。アスリートは「勝ってなんぼ」の世界だと思うから。
posted by 猫太郎 | 2008-05-01 08:41
全日本柔道選手権2008
>小太郎さん
コメントありがとうございます。
棟田選手の結果が結果なだけに、石井選手の選考には納得してるんですよ。ただ選考理由を聞いちゃうと、じゃぁなんで上野順恵選手は落ちたんだと結局はそこでして。モヤモヤです。
石井選手が全日本で優勝は2年前の19歳。そのときはまだ積極的な柔道をしてたんですけどね。その全日本で優勝する前のアジア大会での優勝もいい柔道でしたし。それがだんだんと結果にこだわりすぎるようになってきてます。そりゃ勝てば官軍なんですが、なーんか…ねぇ。実力は申し分ないのに、もったいないなって気がしてます。
今回の記事で使った「執着心」という言葉は、あまりいい意味では使ってなくって。勝ちさえすればなんでもいい、という気持ちは棟田選手には感じられないかなと。小太郎さんの仰るとおり、棟田選手は柔道家たる柔道家だと思いますよ。柔道選手ではないですよね。
井上選手は明日に引退会見のようです。なので、引退表明ですね。アテネ五輪前年の大阪での世界選手権までは本当に強かったです。いったい誰が止めるんだろうっていうぐらい。今後はどんな選手を育ててくれるかが楽しみです。
posted by しん太 | 2008-05-01 15:49
全日本柔道選手権2008
>たかさん
コメントありがとうございます。
仰るように、負けなければそれでいいというのは好き嫌いの問題ではないのかもしれません。ですが、価値観の違いではあると思っています。私自身、柔道は武道であってほしいし、人間性を育んでくれるものであってほしいです。ですが柔道が五輪競技である以上、連盟は人間性で選手を選ぶわけではありませんからね。もっとも、私は石井選手の人間性はまったく知りません。ただ石井選手が誰よりも練習量の多い選手だとは知っています。石井選手は、石井選手なりの価値観で柔道をしているはずですよ。
海外のポイントを取りにくる柔道が決して悪いわけではありませんよ。スポーツですから当然です。また、海外はスポーツの柔道と武道の柔道をしっかり使い分けています。フランスでは人間性を育てる学校教育に柔道の授業が採用されていますしね。むしろ柔道の礼儀を知らないのは日本人かもしれませんよ。
posted by しん太 | 2008-05-01 16:04
全日本柔道選手権2008
>猫太郎さん
コメントありがとうございます。
まぁ、物は言いようってやつでしょうか。
石井選手にしても、井上選手にしても、自分の信じたところで勝負しているだけですよ。
posted by しん太 | 2008-05-01 16:10
全日本柔道選手権2008
選手選考に一貫性が無いって事ね。
石井選手なら上野選手も選ばれて当然やろうしね。
棟田選手が選ばれたなら一万歩譲って谷本選手選出も納得したかも・・・いやしないかな、やっぱり(^-^)
柔道引退で指導者の道に進む人と格闘技へ転進する人と分かれますよね。やっぱり相撲界みたいに一度他の道に行くと古巣には戻れないんですかね?そう言えばボクシングもそうやなかったやろうか・・・
ミーハー的意見で申し訳ないのですが、野村選手、井上選手の不在、選手選考のグレーな部分で、北京の柔道は多少盛り上がりに欠けるんやないやろうか・・・・
オリンピック日本代表選手団の主将は室伏で決まりかな?もう決まってるんですかね?
本命 室伏
対抗 野口
穴 北島
超大穴 谷
4つとも違う種目の金メダリスト。やっぱりアテネ組は偉大
posted by 小太郎 | 2008-05-02 03:08
全日本柔道選手権2008
日本は講道館柔道を貫いてほしい。
posted by 通りすがり | 2008-05-02 13:13
全日本柔道選手権2008
>小太郎さん
谷本選手は…私もやっぱ納得し難いですね(笑)。
井上選手、いや今日引退会見したんで井上さんは総合格闘技からかなりオファーがあったようで。吉田さんが開いた道ってやつでしょうが、井上さんははっきりと指導者への道に決めましたね。うん、そのほうがらしい気はします。
北京では、男子では鈴木選手、女子では谷選手にすべての注目がいきそうです。肩の荷が重くなるでしょうねぇ。
そうですね、室伏選手はカタイでしょうか。私は女子レスリングの吉田選手もあると読んでいるのですが。いずれにしても、やっぱり偉大なアテネ金メダリストです。
posted by しん太 | 2008-05-02 14:56
全日本柔道選手権2008
>通りすがりさん
コメントありがとうございます。
ルールのことなのか柔道そのもののことなのか分かりませんが、それなりに貫いてるとは思いますよ。
posted by しん太 | 2008-05-02 14:59



